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異能力者達の夜明け  作者: ゆーろ
冒険者達の午後
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冒険者達の午後 破×2

冒険者達の午後 破×2

冒険者達の午後 破×2


0:ーーーー「故意に恋するラブリーファッキン」ーーー



ガロ:男。ガロンドール・ウォンバット。冒険家。準ギルド「アホレンジャー」リーダー。


ジャイロ:男。ジャイロ・バニングス。賞金稼ぎ。準ギルド「アホレンジャー」


ノエル:女。ノエル・ベルメット。A級ギルド所属。元探偵。準ギルド「アホレンジャー」兼「グランシャリノ」


カラス:男。カラス。姓なし。侍。準ギルド「アホレンジャー」


ロイド:男。ロイド・フォーキンス。ギャング・サーカス。アンドンの息子。「男」を兼役


ジュリイ:女。ジュリイ・ウルカレット。ウルカレット財団。エストックの娘。「女」を兼役


アンドン:男。アンドン・フォーキンス。ギャング・サーカス。のボス


マーレ:女。マーレ。ギャング・サーカス。アンドンの懐刀


エストック:女。エストック・ウルカレット。ウルカレット財団会長。「受付」を兼役


ジェバンニ:男。ジェバンニ・ハンス。ウルカレット財団。ジュリイのボディガード。「職員」を兼役


ルーファス:男。ルーファス・フルブルーノ。ウルカレット財団 第二支社社長。



0:ーーーー「故意に恋するラブリーファッキン」ーーー



0:回想

0:2年前。1989年。5月

0:キャリオンマウンテン。見晴らし峠


ロイド:「……。今日、めちゃくちゃいい天気だな」


ジュリイ:「そうでございますわね?」


ロイド:「……。今日、何食った?」


ジュリイ:「お昼にシフレのマリトッツォと、パンを二切れ頂きましたわ」


ロイド:「そうか。俺、鹿肉」


ジュリイ:「そうですのね。顎が疲れてしまいそうですわ」


ロイド:「おう。」


0:沈黙


ロイド:「今日。天気悪いな」


ジュリイ:「さっきと言っていることが違いましてよ。どうしたんですの、ロイド。急にこんな所に呼び出して。いえ、会えるのは嬉しいのですけど」


ロイド:「んーーー。」


ジュリイ:「……っ!お!おお、男らしくないですわっ!。それでも、こうっ、ギャングの息子ですのっ。」


ロイド:「わかったよ!わかってるよっ。うっさいなぁーもう!」


0:ロイドは手汗を拭いた


ロイド:「ジュリイっ。」


ジュリイ:「は、はいっ。」


ロイド:「いつかさ。俺が、もっと、逞しい男になったら、絶対にっ。お前を幸せにするって約束するから……」


ジュリイ:「はい」


ロイド:「その時、また、ちゃんとこうしてプロポーズするっ。」


0:沈黙


ジュリイ:「……。なんですの?それ」


ロイド:「いや。え。だから、今言った通りで」


ジュリイ:「はぁ〜〜。チキン」


ロイド:「はあ!?これでも頑張ったんだぞてめえっ。」


ジュリイ:「私だってそれなりの心持ちで来ましたわっ。キャリオンマウンテンの、見晴らし峠っ。夕日が落ちる頃に、うら若き男女二人っ。これで勘づかないほど察しは悪くありませんっ。」


ロイド:「お、おぉ……。悪かったよ。」


ジュリイ:「まったくもう。」


ロイド:「でも、まじでっ。今はまだ、お前をめとるほどの男じゃねえって思うんだっ。だから、そん時。改めてまた言わせてくれ」


ジュリイ:「……。分かりましたわ。でも。私はウルカレット財団会長の娘ですわよ。いつまでも焦らしていると、知りませんわよ」


ロイド:「お、おう!任せろ!」


ジュリイ:「ふふ。告白の告白だなんて。初めてされましたわ」


ロイド:「うるせえよ。」


ジュリイ:「約束、ですわよ。ロイド」


ロイド:「ああ。約束だ。ジュリイ」


0:時間経過

0:リベール市 キャリオン街


ジャイロ:(M)1991年。5月21日。


ガロ:「おぉおおおっ。」


カラス:「らぁあああっ。」


ジャイロ:(M)やあみんな!俺だぁ。俺たち準ギルド。アホレンジャー。今日も元気に爆走中っ。バス使えばいいのにな!そんな金ねえんだわ!それじゃ、またな〜!


ノエル:「ぜえっ。ぜえっ。おまえ、ら……っ。ちょっとは、気使え…!」


ガロ:「無理だって!そんなチンたらしてたら遅れちまうだろっ。」


ノエル:「元はと言えばお前が寝坊したせいだろっ。」


ガロ:「うるせぇなぁ〜。もう、おぶってやっから。」


ノエル:「ナイス……!」


ジャイロ:(M)いつもの通路。見慣れた町。歩き慣れた道路。俺を取り巻く日常はかくもやかましい。


0:フランス

0:ギルド本部


ガロ:「頼もーっ!」


カラス:「邪魔するぜ」


ジャイロ:「なんだかんだと余裕で間に合ったな」


ノエル:「お前らが早すぎんだよばか」


ガロ:「別にいいじゃん。早い分には」


ジャイロ:(M)ギルド本部。大陸支援団体を名乗るお節介集団の総本山と呼ばれる場所。リベールの都心部に世帯を構えた、見慣れた場所。俺らギルドメンバーはここに張り出されている依頼を達成し、日々その日の飯代を稼ぐ為に働いている。


ジャイロ:(M)ただ、今日は違うッ。なんと今日は、俺達に直接指名での依頼が飛び込んできたっ。


受付:「あ、おはようございます!」


ガロ:「おーっ、おはよう!」


受付:「よかったです、間に合ったようで」


カラス:「そりゃあ、俺たちが遅刻するみてぇな言い方だな」


ノエル:「別にするだろ。私達は」


ジャイロ:「で。肝心の依頼人は……。まだみてぇだな」


受付:「はい。現在別件対応中ですので、後ほどお声がけしますね」


ガロ:「別件?」


マーレ:「なんだ。彼らもギルドの一員か?」


受付:「はい。そうですよ。あ。ちょうど準ギルドの方々ですね」


マーレ:「ほお。」


ガロ:「おー?誰だそいつ」


受付:「依頼主の方です。たった今ご相談頂きまして」


ガロ:「おおっ。依頼主っ。」


ジャイロ:「へへぃ、肩もみやしょうか。かた。別に胸でも」


ノエル:「バカおっしゃい、まずはお茶でしょうよ」


カラス:「お前らの生き汚さには関心を覚えるな」


マーレ:「私から依頼する条件は厳しいぞ。内容もだ。」


ガロ:「おーっ。そういうの待ってたんだよ」


ジャイロ:「条件ってのは、もう聞いてんのか?」


受付:「はい、ご提示頂いた条件はみっつ。依頼人の護衛。二人以下である事。戦闘経験がある事。です。」


ガロ:「そういうのだよっ。そういうのっ。」


ジャイロ:「だが、二人以下か。ちなみに期日は?」


マーレ:「今日だ」


ジャイロ:「Today!?」


カラス:「じゃあダメだな。俺たちは今日、指名を受けている依頼がある。」


ノエル:「ちょちょ。ちょっと待て。」


カラス:「なんだ。」


0:ヒソヒソ


ノエル:「確かに私達は今日依頼を受けるけど。べつに人数の指定はなかった。対して、あの人の依頼は二人以下らしいじゃないか」


カラス:「それがなんだ」


ジャイロ:「ほお。つまり、二手に分かれて以来達成料ぶんどり作戦ってこったな」


ノエル:「そうだっ。」


カラス:「なるほど」


ガロ:「なるほど」


ジャイロ:「確かに。悪い手じゃねえ。いいや、それどころか妙案だ。お前には感服するぜ、名探偵」


ノエル:「ふふ。元だけど。」


マーレ:「おい。何を話してる。どうするんだ。無理なら無理で他をあたるが」


ノエル:「受けマース!受けます受けます!」


ジャイロ:「二人って事なんで!この四人の中から二人選定って形でいいかなぁ!?」


マーレ:「ああ。構わない。こっちも急ぎなんだ。今決まるなら助かるよ」


ノエル:「ッシャオラ」


ジャイロ:「シャシャイのシャイっ」


カラス:「それで。俺らの中から二人だろ。どうチーム分けすんだよ」


ガロ:「それなっ。どっちの依頼も行きてぇ〜」


ノエル:「確か、今日指名で依頼を受けてたのは……」


ジャイロ:「依頼人不明、条件。準ギルドである事。依頼内容を口外しないこと。これだけしか分かってない、中々きなクセェ案件だが」


カラス:「まあ。どっちも似たようなもんだろ。」


ガロ:「確かに。」


ノエル:「……」


ガロ:「ん。何難しい顔してんだよ」


ノエル:「いや。2人に分けるってなったら、これかなり難しいわ」


ルーファス:(M)その時ッ。ノエルは脳をフル回転したッ。2×2の組み合わせの数々ッ。その先に「視える」最も最善な選択をッ。


0:ノエルの頭の中


ルーファス:(M)ノエルとガロの場合ッ!


ガロ:「うぇ〜い!」


ノエル:「おい!どこ行くんだ!」


ガロ:「うぇ〜い!冒険冒険!うぇーい!」


ノエル:(M)却下。私が疲れる。


ルーファス:(M)ジャイロとカラスの場合ッ!


ジャイロ:「あんこらこらこらあーんこらっ」


カラス:「こらこらこらこらあーんこらこらっ」


ノエル:(M)却下。依頼どころじゃない


ルーファス:(M)ガロとカラスの場合ッ!


ガロ:「うぇ〜い冒険うぇ〜い」


カラス:「刀うぇ〜い。剣豪うぇ〜い」


ノエル:(M)却下。依頼そっちのけでどっか行くかもしれない。


ルーファス:(M)そしてノエルはたどり着いたッ。このクソみたいなメンバーの中、まだトラブルが回避出来そうなメンツをッ。それ即ちッッ。


ノエル:「ガロ、ジャイロ。行ってこい」


ガロ:「っしゃー!行くぞジャイロっ。」


ジャイロ:「なるほど。お守りか」


ノエル:「こっちもバカ剣士連れてんだ。頼むぞ、ジャイロ」


ジャイロ:「はっ。ナマクラと一緒よりかぁずっとマシだ。」


マーレ:「決まったのか。」


ガロ:「おうっ。俺と、こいつが受けるよ」


ジャイロ:「よろしくなぁ」


マーレ:「わかった。君、彼らを依頼請負人としてくれ。」


受付:「かしこまりました。では。こちらが依頼請負証明書と、契約書です。」


ガロ:「はいよー。へへ、俺。ガロンドール・ウォンバットっ。ガロでいいよ、よろしく」


ジャイロ:「俺ァジャイロ・バニングスだ。」


マーレ:「ああ。私はマーレだ。詳しいことはこっちで話す。着いてきてくれ」


ガロ:「わかった!そんじゃあお前ら!また後でな!」


ノエル:「はーい。迷惑かけんなよ。」


ジャイロ:「じゃあなぁナマクラ。死んでろよ」


カラス:「てめぇがしね」


受付:「行ってらっしゃいませ〜」


0:3人はギルドから去った


ノエル:「さて。私達は例の指名依頼まで適当に時間潰すとしますかね。」


カラス:「おう。飯屋にでも行くか」


ノエル:「いかねぇよ。さっき食ったろ」


0:場面転換

0:ギルド本部のすぐ外

0:人混みの中


ガロ:「いやぁ〜今日はラッキーだなっ。まさか依頼にふたつもありつけるとは」


ジャイロ:「まったくだな。」


マーレ:「ギルドと言えば毎日多忙なイメージだが。そうでも無いのか」


ガロ:「ん〜。暇って言われたらそうでもねえけど。依頼内容が、なぁ?」


ジャイロ:「んだ。老人介護とか、迷子犬の捜索とか。その辺なわけ」


マーレ:「本当に戦闘経験あるんだろうな君ら」


ジェバンニ:「すみません。通ります」


ガロ:「ああ、悪い。」


ジャイロ:「おいおい、あのあんちゃん。随分いい匂いしてんな。金の匂いだ」


ガロ:「そんなの分かるのか」


ジャイロ:「舐めんなよ〜。」


マーレ:「……。」


0:場面転換

0:ギルド本部


ノエル:「最近暑くなってきたなぁ。嬉しい」


カラス:「俺は寒い方が好きだ」


ノエル:「え。なんで。絶対暖かい方がいいじゃん」


カラス:「寒い時は着込めばいいだろ。暑さは全裸が限界だ」


ノエル:「脱がねえんだよそもそも」


ジェバンニ:「失礼します。ウルカレットのジェバンニと申します。」


受付:「はいっ。お待ちしておりましたっ。依頼証を確認しますっ。」


ノエル:「ひぇ〜。金持ちそうな身なりだ」


カラス:「そんなの分かるのか」


ノエル:「舐めんな」


受付:「はい。確認しました。ありがとうございます。ノエルさん、カラスさん、依頼人の方がいらっしゃいましたよ」


ノエル:「でぇ!?あの人かよ!」


ジェバンニ:「ジェバンニ・ハンスです。よろしくお願いします。」


カラス:「ああ。カラスだ。よろしく。」


ノエル:「よろしくお願いします、だろうがっ。」


カラス:「よろしくお願いします」


ノエル:「ノエル・ベルメットです。どうぞ、よろしくお願いします」


ジェバンニ:「はい。詳しい話は本社で致します。」


ノエル:「ほんしゃ?」


カラス:「ほんしゃ?」


ジェバンニ:「今回の依頼は、ウルカレット財団会長直々のご依頼です。本社までは車を手配していますので、乗ってください」


ノエル:「ウ」


カラス:「う?」


ノエル:「ウルカレット財団んんん!?とんでもない大金持ちじゃないか!?」


カラス:「ほお。そうなのか」


ノエル:「お前は知らないだろうなっ。リベールで、いいやっ。フランスで一番有名と言ってもいい財閥が、ウルカレットだっっ。まさかそんな大御所の依頼だったなんて……」


ジェバンニ:「そういう反応になるのを分かっていたので隠しておりました。噂になっては困るとの事でして。申し訳ありません」


カラス:「いいや。そりゃごもっともだ。で。行くんだろ」


ジェバンニ:「はい。西口に車を手配してあります」


カラス:「ほれ。ノエル。行くぞ。」


ノエル:「え、あ、うん」


0:耳打ち


カラス:「そんだけ大袈裟な組織からご依頼なんざ。ろくな依頼じゃねえ。」


ノエル:「え。あ。はい。そっすね。」


カラス:「言っとくが。自分の身は自分で守れよ。」


ノエル:(M)あれ?こいつ。普段ガロと馬鹿やってんの見すぎて忘れてたけど。案外冷静に物を見れるタイプなのか?なーんだよー。そうならそうって言えよなぁ〜。株上がったぜカラス〜。ごめんなぁ〜バカ扱いして〜ちゃんとしてんじゃ〜ん


カラス:「西口は。こっちか」


ノエル:(M)そっちは東口だけど〜


0:場面転換

0:リベール北区 下町


ガロ:「おーい、マーレ。結構歩いたけど。いつになったら着くんだよ」


ジャイロ:「まったくだ。足がうどんになっちまうぞ」


マーレ:「もう着く。黙って歩かないか。うるさいな、君たちは」


ガロ:「だってよぉ〜。代わり映えしない街並みで退屈しちまうよ〜」


ジャイロ:「この辺はリベールでも相当治安の悪い下町だからな。薄暗いわ人は居ないわ臭いわで最悪だ」


ガロ:「まあ、こういう雰囲気は嫌いじゃねえけどな。俺の故郷はもっと賑わってたスラムだった。気がする」


ジャイロ:「なんだ気がするって」


ガロ:「昔のことはあんま覚えてねぇんだなぁ〜」


ジャイロ:「いいじゃねえか。そんくらいの方が生きやすいってもんだ」


マーレ:「着いたぞ。」


0:大きなオフィスが聳え立つ


ガロ:「お。おぉ。急に小綺麗なビルだな」


ジャイロ:「おいおい、まじか。」


ガロ:「あ?なんか知ってんのか、ジャイロ」


ジャイロ:「いい機会だ。お前も知っとけよ。リベールで、喧嘩を売っちゃいけねえ三つを。」


0:インターホン越しに喋るマーレ


マーレ:「ボス。ギルドから依頼人を見つけた。」


ジャイロ:「いち、ギルド。に、俺。」


アンドン:「ああ。早いな。よくやった。入って貰え」


ジャイロ:「三。リベールの下町に門門を構える。ギャング・サーカスだ。」


マーレ:「さあ。ボスの許しも出た事だ。一度受けると言った以上、今更辞めた、とは行かないぞ。準ギルド。」


ジャイロ:「は。こりゃあ。かなり面倒な依頼に引っかかっちまったかもなぁ。」


0:場面転換

0:リベール ドリート街

0:ウルカレット財団 本部オフィス


ノエル:「…」


カラス:「ふぁ…」


0:応接室のソファに座る二人。


ノエル:(M)冗談だろぉ〜っ。ウルカレット財団がとんでもない金持ちグループなのは百も承知だったけど、なんだこのオフィスっ。全面大理石じゃねえかっ。見張り番も居るしっ。どーすんの?なんでカラスはこんな呑気なの?やっぱ馬鹿だから大理石の価値知らないのかな。未だにどんぐりが通貨だと思ってそうだもんな


カラス:「ノエル、来たぞ。」


ノエル:「ごくりっっ。」


ジェバンニ:「お待たせしました。会長、社長。こちらに。」


エストック:「ああ。失礼するよ」


ノエル:(M)来た〜っ。ウルカレット財団会長っ。エストック・ウルカレットっっ。女性でありながらその手腕で落ち目のウルカレットグループを立て直し、各地方に事業を展開する凄腕カリスマ経営者っっ。


ルーファス:「彼らが噂の」


ノエル:(M)で。またまた大物。ウルカレット財団の稼ぎ頭、第二支社社長。ルーファス・フルブルーノ。こんな上流国民が私達に何の用だってんだっっ。


ジェバンニ:「はい。キャリオンマウンテンを半壊させたと噂の準ギルドの面々です。他2人は入用らしいですが。」


ノエル:「ぎくっ。」


カラス:「ああ。水女の時のやつか。」


エストック:「初めまして。私はエストック・ウルカレットだ。今日は遠路はるばる、ありがとう。」


0:エストックは慣れた手つきで名刺を渡した


ノエル:「ここ、こちらこそっ。御高名はかねがね…。ノエル・ベルメットですっ。」


エストック:「ノエル・ベルメット…?」


ノエル:「は、はい?」


エストック:「まさかとは思うが。ベルメット探偵事務所の子か」


カラス:「…?」


ノエル:「…。はい、そうです。随分昔の話なのに、お耳に届いていたようで、光栄です」


ルーファス:「会長、ご存知なんですか?」


エストック:「彼女の兄上にな。過去に世話になったことがある。フランスで最も私が信用した探偵だよ。」


ノエル:「兄が世話になっていたようで、ありがとうございます。」


エストック:「いいや。こちらこそだ。名こそ暫く聞かないが、兄上は息災にされているか。」


ノエル:「…。はい。私も暫く連絡は取れていませんが、兄のことなのでっ。きっと何処かで元気にやってると思いますっ。」


エストック:「そうか。それはよかった。また会う機会があれば宜しく伝えておいてほしい」


ノエル:「はい。わかりました。」


エストック:「それで。そっちの君は?」


カラス:「カラスだ。」


ノエル:「敬語使えっっ。」


0:殴った


カラス:「〜〜。カラス、です。」


ルーファス:「はは。噂通りだ。僕はルーファス・フルブルーノと言う。よろしく頼むよ」


ノエル:「よろしくお願いしますっっ。」


カラス:「おう。さっさと…」


ノエル:「( ・᷄ὢ・᷅ )」


カラス:「よろしく。お願いします。」


ジェバンニ:「それでは。皆様ご多用の渦中かと存じます為。本題へ移らせて頂こうと思います。」


ルーファス:「ああ。それがいい。」


エストック:「まあ待たないか。まずは茶や菓子のひとつでも出さないでどうする。客人だぞ」


ジェバンニ:「失礼致しました。すぐに手配致します。」


ノエル:「あ、いえいえ。お気づかいなく」


エストック:「ベルメット氏。私も一応、壮丁そうていの人間だ。顔は立たせてもらうよ」


ノエル:「は、はい。では、お言葉に甘えて」


カラス:「随分と肝の据わった御人じゃねえか。」


ルーファス:「相変わらずお優しいですね。会長」


エストック:「馬鹿を言うな、ルーファス。社会人として礼儀を欠く事を厳しさとは言わないよ」


ルーファス:「ご最もですね。」


ノエル:(M)流石の威厳だっっ。これが株価を揺るがす財団のトップ…!


エストック:「さて。とは言ったものの。私情で申し訳ないが、32分後に別件が控えている。依頼内容を話させてもらおう。呈茶ていちゃの中での談を許して欲しい。」


ノエル:「とんでもありませんっ。よろしくお願いしますっ。」


カラス:「いつにも増して深々としたお辞儀だな」


ルーファス:「本依頼内容をシンプルに言うと。会長のご令嬢を連れ戻す事だ。」


ノエル:「ご令嬢を…?」


カラス:「娘か。家出でもしたのか」


エストック:「恥ずかしい限りだが。それと変わりない。言葉を濁さずに言うなれば、駆け落ち、のようなものだ。」


ノエル:「か、駆け落ちぃー!?」


カラス:「ほお。夜逃げか。」


ノエル:「なな、何でですかっ。駆け落ちって言うとっ、やっぱり恋人との失踪とかなんですかねっ。」


カラス:「急に食いつくじゃねえか」


ノエル:「女の子はこういう話が好きなんだよっ。」


ルーファス:「まあ。そうだ。ご令嬢の名は、ジュリィ・ウルカレット。会長の、ただ一人のお子様だ。」


エストック:「…」


カラス:「こんな大層なとこの娘だ。さぞかしてんやわんやだろうな。」


ノエル:「んまぁ〜、事件性は十分に有り得るけれど。恋の力って凄まじいからね。時に冷静さを欠く事もしばしば。それでそれでっっ。その、ご令嬢のお相手というのはっっ。」


エストック:「ギャング・サーカスというギャンググループ直系の息子。ロイド・フォーキンスという男だ。」


ノエル:「…は?」


ジェバンニ:「お待たせしました。アッサムティーです。」


ノエル:(M)こりゃあ。大層面倒なことになったな…


0:場面転換

0:リベール下町


アンドン:「わははははっ。そうかそうかっ。マルセイユでの異常気候はそういう経緯があったのかっ。」


ガロ:「だっははははっ。そうそうっ。いやぁ〜わりぃな!なんか迷惑かけちまったみたいでっ!」


アンドン:「いいや構わんっ。輸送車も無事ではあったしなっ!なにより、その気概!気に入った!わははは!」


ガロ:「だははっ!ありがとなぁ〜俺もおっさん好きだ!」


アンドン:「わははははっ」


ガロ:「だははははっ」


ジャイロ:(M)なんでこいつらこんな意気投合してんの〜〜〜〜???はぁ〜??怖いもの知らずだとは思ってたがここまでかぁ〜〜??


マーレ:「ボス。連れてきたよ」


アンドン:「おおっ。来い来いっ。」


ガロ:「お?誰が来るんだ?」


マーレ:「二人とも、入ってくれ」


ロイド:「あ、どうも」


ジュリイ:「初めまして、ですわ」


ジャイロ:「ん…?」


アンドン:「紹介しようっ。こいつはロイドっ。俺の愛する息子だっ。」


ジャイロ:「息子っ。まじかよ」


ロイド:「ロイド・フォーキンスだ、よろしく。」


ガロ:「おうっ。ガロンドール・ウォンバットだっ。よろしくなっ。」


アンドン:「ロイド、彼が2ヶ月前のマルセイユで砂が降ったっつーとんでも現象の発端らしいぞっ。わはは!」


ロイド:「そうかよ。うるせぇよ親父」


アンドン:「冷たいなぁ〜ロイドっ。とーちゃん悲しいぞ」


ロイド:「今どき親子で仲良くする方が珍しいってんだよっ。」


ジャイロ:「あ〜。俺ぁジャイロだ。よろしく」


アンドン:「そんでこっちの彼も中々の曲者だ。噂の異能狩りだぞ」


ロイド:「えぇっ。まじかよっ。なんでそんなやつ家に入れてんだよっ。」


アンドン:「今はギルドに入ったらしいっ。失礼なこと言うな!客人だぞ!」


0:殴った


ロイド:「いてぇ〜!いてぇんだよこのゴリラオヤジ!」


アンドン:「わははは!愛だよ、愛!」


ジャイロ:「あぁ〜いいよいいよ。そんで、そっちのイカした姉ちゃんはどちらさんで?」


0:ジュリィは丁寧にお辞儀した


ジュリイ:「こほん。初めまして。ジュリィ・ウルカレットと申しますわ。」


ジャイロ:「んん!?」


ガロ:「おう!よろしくなっ。」


ジャイロ:「ちょちょちょちょっっと待て!今ウルカレットっつったのか!?」


ジュリイ:「はい。申しましたわ」


ガロ:「なんだよなんだよ。また知り合いか?」


ロイド:「まあ。そうなるわな、普通」


ジャイロ:「ウルカレットっつったら、まさか。いやいやいや、まさかとは思うがっ。ほんとーーにまさかとは思うがっっ。実家、金持ちだったりする?」


ジュリイ:「ええ。お金が無いと言えば、嘘になりますわ」


ロイド:「どーせ説明するから前もって言うけど。彼女はウルカレット財団のご令嬢。君の予想は当たってるよ。」


ジャイロ:「ンゴォぉぉおおおおお!」


ガロ:「うっせーな!なんなんだよ!」


ジャイロ:「ぽまぇ〜〜ガロっ!ウルカレット財団を知らねえなんて情弱にも程があるンゴねえ!リベール、いや、フランスいちの金持ち集団がウルカレット財団やっ!」


ガロ:「へぇ〜っ!すげぇじゃんっ。お前んとこの家。」


ジュリイ:「ええ。凄いかどうかは分かりませんが、普通とは少し違うと自負しておりますわ」


ジャイロ:「普通じゃないンゴ!もっと庶民に気使ってクレメンス!」


ロイド:「ああ、君の言う通りだ。ジュリイ、もっとお前は財閥の娘だって言う自覚を持った方がいい。いちいち店に入る度にフルネームを名乗るのもやめろ。」


ジュリイ:「なにがいけませんの。私は私の名前に誇りを持っているだけです。」


ジャイロ:「この場合の誇りは嫌味になるんだよ!」


ロイド:「そもそも!そんな所のお嬢様が店に来たってだけで店員の顔色が変わるんだよ!そりゃもう凄い方向に!お前は今、隠れてなきゃいけない身だって事わかってんの!?ねえ!わかってんの!?」


ジュリイ:「んー。」


ロイド:「ピンと来てねえ!そりゃそうだ!こういうやつだ!」


アンドン:「なんでもいいじゃねえか!」


ガロ:「なー!」


0:大爆笑する2人


ロイド:「ああいう所が、本当に合わない。まじであの人の遺伝子が流れてんのか。俺に」


ジャイロ:「よかったぜ、まともなやつが居てくれて。」


ロイド:「ああ。親子もあんなんだしな。俺も少し安心している」


ガロ:「あ、でさ。なんでそんなすげーところの奴がギャングの家に居るんだよ。」


ジャイロ:「ハッッッ。そうだ、そこだぜっっ。まさかとぁ思うが!犯罪の片棒を担がせようって訳じゃねえだろうな!?拉致とか!」


ロイド:「あ〜。まあまあ。そうなるのは分かる。けどまあ…」


ジュリイ:「それは違いますわ。」


ジャイロ:「ああ、違うのね。言わされてるとかじゃねえだろうな?」


ジュリイ:「失礼ですわよ。本当に違いますわ。」


ガロ:「そうだぞ。失礼じゃねえか」


ジャイロ:「黙ってろタンコブ野郎!相手は腐ってもギャングだ!で、その家に大財閥の娘がいる!この状況を見て犯罪を疑わねえバカは居ねえんだよお前とナマクラウンコくらいしかな!」


ガロ:「でも本人がちげえって言ってんじゃん。」


ジャイロ:「本当にギリギリ価値観が合わねえ。まあ、一旦話だけは聞くがな。俺達は準とは言えギルドだ。犯罪の片棒を担ぐ気はねえし。そもさんアンタらが犯罪を侵そうとしているなら、俺にはここでアンタらをしょっぴく権利と義務がある。そこんとこ踏まえて説明しろよな。」


ロイド:「わかったわかった。そうなるのは想定済みだ。ていうかマーレ。お前ちょっとも説明しなかったのか?」


マーレ:「どーせここに来たら説明するんだし。いいかなって思った」


ロイド:「ああそう。もういいや。えー。じゃあ、まずまず。俺とジュリイの関係から説明するよ」


ジャイロ:「おう」


ロイド:「俺たち。…。あ〜。その。」


ジャイロ:「あ?」


ジュリイ:「もう。ロイド。貴方の男気な無さにはたまに悲しくなりますわ。」


ロイド:「いや。なんかやっぱ恥ぃじゃん」


ジュリイ:「もういいですわ。私から」


ジャイロ:「おいおいなんだなんだ」


ジュリイ:「わ。私は!ロイド・フォーキンスと。交際しておりますのっっ。」


0:静寂


マーレ:「くしゅんっ。」


ジャイロ:「……ま。まままま。まじでぇぇええええええ!?」


0:リベール


ジャイロ:「まじでぇぇええええええ!?」


0:フランス


ジャイロ:「まじでぇえええええええ!?」


0:地球


ジャイロ:「まじでぇぇぇええええ!?」


0:リベール下町


マーレ:「きーーーん。」


ガロ:「今日はいつにも増してうるせえな。ジャイロ」


ジャイロ:「ああ。俺もこんなに声出す予定じゃなかった。いやまじで。ほんとに」


ロイド:「まあ。それも当然の反応だと思ってる。ギャングの息子と、財団の娘が交際してるなんて。」


ジャイロ:「いやいやいや、結構な事態ですけど。」


アンドン:「ウケるよな!わははは!」


ジャイロ:「うけねえよ!」


ガロ:「別にいいじゃねぇか。個人の自由だろー。」


ジャイロ:「お前のそういうところ。本当に嫌い」


ロイド:「で、本題はここからだっ。俺達は、今日の夜。フランスから逃げる」


ジャイロ:「…ん?」


マーレ:「作戦開始は18時ぴったり。経路。車。バス。特急列車。飛行機を使って、イタリアまで逃がす。」


ジャイロ:「んんん?」


アンドン:「で。二人はめでたく国外で結ばれるって訳だ。」


ジャイロ:「それってつまり。駆け落ちってこと?」


ロイド:「まあ。言うなれば。」


ジャイロ:「帰る!!!」


ガロ:「まーーてーーよ!ジャイロ!」


ジャイロ:「いいか!!財団の娘を国外逃亡させる!その片棒を担がされかけてんだぞ!犯罪かどうかはこの際置いといて!明らかに面倒事の類だ!俺ァ帰る!お前らで好き勝手やってろ!」


ガロ:「もーーちょい!もーちょい話聞いてこーぜ!な!?」


マーレ:「まったく。しょうがないな」


アンドン:「待て。マーレ」


マーレ:「なんで。ここまで聞かれたら、もう逃がすわけにはいかない」


アンドン:「いいから。待たないか」


ロイド:「…」


ジュリイ:「ロイド」


ロイド:「分かってる。どーせこうなるだろうって踏んでたし。」


ジャイロ:「離せ!じゃねえとてめぇを殺しちまうぜガロぉ!」


ガロ:「いーーやーーだ!」


ロイド:「待ってくれ!!」


ジャイロ:「んだよ。どけコラ」


0:ロイドは頭を下げた


ロイド:「頼む!!とてもじゃないが、俺たちだけじゃ力不足なんだっっ。さっきは失礼なことを言ったが!異能狩りの異名は聞いている!マルセイユ異常気候の君も!君達には絶対に迷惑はかけない!だから、頼む!話だけでも、聞いてくれ!!」


ジャイロ:「…」


アンドン:「ったく。俺の息子ながら、最高にダサいぜ」


ジュリイ:「ふふ。そういう所が好きですの」


マーレ:「私は嫌い。」


ガロ:「ほれ。こんなに頼まれてんだ。もうちょい聞いてみようぜ」


ジャイロ:「…。はぁ〜。わぁーったよ。ただし。聞くだけだ。実際にそれを手伝うかどうかはその後決める」


ロイド:「…!恩に着るよ、ありがとう」


ガロ:「だはは、俺。ジャイロのそういう所好きだなぁ〜」


ジャイロ:「うるせぇよ。」


ジュリイ:「まずは、何処からお話致しましょうか」


0:場面転換

0:リベール ドリート街

0:オフィス

0:ソファに座る4人と、一人立ち話ているジェバンニ


ジェバンニ:「ーーーお嬢様とロイドの馴れ染めは、丁度お嬢様が15歳になられた頃です。」


ルーファス:「ウルカレット財団のご息女だ。一般家庭の同年代とはどうしても合わないものが多い。環境、価値観、身なり、待遇。色々教育委員会から聞いている。」


ジェバンニ:「ええ。社会と自分を取り巻く全ての乖離性に、孤独を感じてしまわれたのかと思います。結果、15歳の誕生日を迎えた日、お嬢様は初めて家出なされました。」


ルーファス:「大変だったな、あの時は。」


ノエル:「なるほど。で。その家出先で出会ったのがロイドって訳ですか」


ジェバンニ:「ええ。」


0:回想

0:4年前。1987年。12月。

0:リベール下町


ロイド:「お前。誰だ」


0:隅で泣いている


ジュリイ:「…。」


ロイド:「おい。聞いてんのか」


ジュリイ:「…。」


ロイド:「…。よっと。俺、ロイドっ。なあ、暇なら遊ばねーか」


ジュリイ:「え?」


ロイド:「今日学校寝坊してよ。ついでにサボってやったんだ。だから暇なんだよ。お前も暇なら遊ばねえ?」


ジュリイ:「…。嫌ですわ」


ロイド:「なんでだよ。いいじゃねえか。」


ジュリイ:「そんな気分じゃありませんの。」


ロイド:「でもそんな所で泣いてたってしょうがねーだろ。しかもこの辺りは治安悪いからな。危ねぇぞ」


ジュリイ:「ほっといて下さい。私の事なんか。」


ロイド:「…」


0:ロイドはため息をつき。ジュリィの手を取った


ジュリイ:「えっ。ちょっ。」


ロイド:「ほれ。ゲーセン行こーぜ、ゲーセン。外寒ぃし。」


ジュリイ:「ちょっと待ってくださいまし、私は行くなんてまだ…」


ロイド:「いいじゃねえかっ。お前も暇だろ」


ジュリイ:「私は暇じゃありません」


ロイド:「どう考えても暇だろこんなところでっ。」


ジュリイ:「失礼ですわねっ。私だって忙しいんですっ。もうほっといてくださいっ!私に構ったって、なんの得もーーー」


ロイド:「ぅぅうるっっせえなお前ぇ!!!」


ジュリイ:「えっ」


ロイド:「いいか!?俺が!ゲーセン行こうって言ってんだよっ。そんな断られると流石に心いてぇってんだっ。こちとられっきとした男子だぞ!分かる!?」


ジュリイ:「…」


ロイド:「…。なんだよ。」


ジュリイ:「ぷっ。ははは。」


ロイド:「おい。なに笑ってんだ」


ジュリイ:「ふふ、すみません。そんなにハッキリ物を言う方は、初めて見ましたので」


ロイド:「うるせえ。で。行くのか。行かないのか。」


ジュリイ:「…。じゃあ。折角なので。」


アンドン:(M)そん時は冬でなぁ。いやぁ〜。大爆笑だったなぁ。あのバカむっつり息子が、まさかこんなべっぴんさんを引き連れて下町を遊び回るだなんて


0:場面転換

0:ゲームセンター


ロイド:「〜〜…。」


ジュリイ:「〜〜…。」


0:UFOキャッチャーをする2人


マーレ:(UFOキャッチャー)うぃーん。うぃーん。


ロイド:「もうちょい右か!?」


ジュリイ:「奥かと!」


ロイド:「よしっ…。」


マーレ:(UFOキャッチャー)うぃーん。うぃーん。がしっ。


0:ぬいぐるみを掴んだ


ジュリイ:「これで何回目でしたっけ。」


ロイド:「39回目だ。いい加減頼むぜ〜まじで。」


マーレ:(UFOキャッチャー)うぃ〜〜〜〜ん。


ジュリイ:「ごくり」


ロイド:「ごくり」


マーレ:(UFOキャッチャー)がたんっ。ゲット!おめでとう!


ロイド:「うぉおおお!?よっしゃあああ!」


ジュリイ:「やりましたわーー!」


ロイド:「ほれ!ハイタッチ!ハイタッチ!」


ジュリイ:「は、はいたっち…?」


ロイド:「なんで知らねーんだよっ。こうして、こうだ!」


0:二人はハイタッチした


ジュリイ:「…」


ロイド:「いやぁ〜。腹減ったなぁ。なんか飯食ってかねえ?」


ジュリイ:「…」


ロイド:「ん。おーい。聞いてんのか」


ジュリイ:「あ、はい。なんでしょう」


ロイド:「飯くいに行こうぜって。」


ジェバンニ:(M)初めて触れた下町での遊びは、お嬢様にとって刺激的なものだったでしょう。自由と無秩序の境にあるその景色に。ある種、羨ましさすら感じていたかもしれません。


ロイド:「もぐもぐもぐ」


ジュリイ:「これが、ハンバーガーっ。美味しいですわっ。」


ロイド:「そうだろ。」


ジュリイ:「…。ねえ。ロイド」


ロイド:「なに?」


ジュリイ:「まだ。名乗っていませんでしたわね。」


ロイド:「ああ。そうだな。」


ジュリイ:「…。私は。ジュリィ・ウルカレットと言いますの」


0:ジュリィはゆっくりと顔を上げロイドを見た


ロイド:「そうか。よろしくな、ジュリィ」


ジュリイ:「…。え?」


ロイド:「え?」


ジュリイ:「それだけ、ですの?」


ロイド:「なんだよ。何求めてんだよ」


ジュリイ:「私、ウルカレット財団の娘ですの。」


ロイド:「あ〜?だからなんだよ。」


ジュリイ:「…」


ロイド:「ていうかそもそもなぁ。下町にそんな小綺麗な格好でいる時点でわかるっつーの。」


ジュリイ:「え」


ロイド:「言っとくけど。俺は気使ったり、ご機嫌取りなんかしないからな。」


ジュリイ:「…。そう、ですか」


ロイド:「なんだよ。お嬢様扱いされなくて悔しいか」


ジュリイ:「いいえ。いいえ。」


ロイド:「…」


ジュリイ:「私。学校で腫れ物扱いされてますの。先生も、生徒も。それどころか、リベールを歩いていて私を、ジュリィとして見てくれる人なんか。一人も居ませんでした。私はあくまで、ウルカレット財団の娘らしいです。」


ロイド:「まあ。普通はそーだろーな。しゃーねえよ。」


ジュリイ:「…。そう、ですわよね。」


ロイド:「俺もギャングの息子だし。よく分かるよ」


ジュリイ:「…え!?」


ロイド:「はは。ギャング・サーカスって聞いたことあんだろ。俺、そこの息子」


ジュリイ:「ええ!?」


ロイド:「だから気持ちは分かるよ。お前のと比べちゃいけないとは思うけど。でもさ。そんなの関係ねーって思うんだ。誰が俺をどう見てても。俺は俺だからな」


ジュリイ:「…」


ロイド:「ギャングの息子ならこうあるべき〜とか。周りからよく言われるよ。だから、全員ぶっ飛ばてやったよ。ひひひ」


ジュリイ:「…。凄い、ですわね」


ロイド:「凄かねえよ。親のレール通りに歩けるほど、俺は凄くない。だから、俺は俺なりに。ゆっくり歩くことにしたんだ」


ジュリイ:「そんなの、カッコつけて言うような事じゃないでしょう」


ロイド:「はは。そーだろ。だせーだろ。でも、これが俺だからな」


ジュリイ:「…。私も。貴方みたいになれるでしょうか」


ロイド:「はぁ〜?無理だろ。だって、お前はお前だろ。俺じゃない。」


ジュリイ:「…。ふふ。そうですね。」


ロイド:「おう。そーだ。」


0:ジュリィはハンバーガーを食べた


ロイド:「…。美味しいか?」


ジュリイ:「はい。美味しいです」


ロイド:「ならよかった。」


ジェバンニ:(M)お嬢様にとって、対等に接してくれる人間は。彼が初めてだったのでしょう。ウルカレットである事で態度を変えない。さぞかし。嬉しかったでしょう。


ジュリイ:「私。帰りますわ」


ロイド:「おお。そりゃ帰るだろ」


ジュリイ:「実は。もう帰らないつもりで居たんですの」


ロイド:「おお。そーなのか。いいじゃんな、別に」


ジュリイ:「でも。帰ります。私も。私の生きたいように。生きてみます」


ロイド:「おう。そーしろ。」


ジュリイ:「また、来てもいいですか」


ロイド:「勿論っ。待ってるぜ」


0:場面転換

0:回想終了

0:オフィス


ノエル:「ええええっ。なにそれ!胸きゅんなんですけどっ。」


カラス:「うるせえな」


ジェバンニ:「その日、帰ったお嬢様は。その時のことを嬉しそうに話してくれましたよ。」


カラス:「しかし、随分詳しいな。」


ジェバンニ:「ええ。申し遅れましたが。私は、ジュリィお嬢様専属のボディガードですので。」


0:場面転換

0:リベール下町


ガロ:「ひゅーーひゅーー!」


ジャイロ:「ひゅーひゅーひゅー!」


アンドン:「ひゅーひゅー!」


マーレ:「ひゅーひゅー。」


ロイド:「茶化すな!親父とマーレは黙れ!」


ジュリイ:「照れますわね。」


ジャイロ:「なるほどなぁ。で、何回か会う内に、惚れたと。ち、な、み、にぃ〜。どっちからどっちからぁ〜??」


ジュリイ:「…。」


ロイド:「お、おお。俺だよ!」


ジャイロ:「ナイスガッツ!」


ガロ:「だはは!好きだなーお前ら」


アンドン:「流石俺の息子だ!」


ガロ:「で。それから駆け落ちにどう繋がるんだよ」


ロイド:「…。まあ。かたや財団の娘で、かたやギャングの息子だ。とーぜん、向こう側には反対されるわな。」


0:回想

0:1か月前


エストック:「何を言い出すかと思えば。ジュリィ。貴方が今、私に何を言ったか分かっているのか」


ジュリイ:「分かってますわ。私。ロイド・フォーキンスと交際します。」


エストック:「…」


ジュリイ:「お母様。私、もう子供じゃありません。自分のことは、自分で決めたいんです。」


エストック:「駄目だ。」


ジュリイ:「…。反対される事は分かっていましたわ。でも…」


エストック:「ジュリィ。」


ジュリイ:「…はい。」


エストック:「貴方は誰だ。私の娘だ。貴方の人生は、貴方1人のものじゃない。それが大人になるということだ。私に何かを許可させたいなら、それ相応の理由を。私を納得させるだけの口実を用意するべきだ。もし何かが起こった時、誰が貴方の尻拭いをすると思っている。貴方に危険が迫った時、誰が助けてやれる。」


ジュリイ:「…」


エストック:「もう子供じゃないと言うのなら、貴方も、貴方を取り巻く全てに責任を持つべきじゃないか。貴方のそれは、独り立ちでは無い。」


ジュリイ:「なんで。お母様はいつも、私の目を見て話をしてくれないんですの」


エストック:「…?」


ジュリイ:「ずっと。私の身の回りの世話はジェバンニがしてくれましたわ。学校でも、先生も、学友も、皆私の目を見て話をしてくれはしません。勉学はルーファスが、食事はケリンが。そこに、お母様は居ましたか…?私は、独りなんですよ。ずっと…っ。私を娘と呼んでくれるなら、なんで…。」


エストック:「ジュリィ」


ジュリイ:「私を見てくれるのは。あの人だけです。」


エストック:「待て、ジュリィ」


ジュリイ:「失礼します。」


エストック:「ジュリィっ。」


0:回想終了

0:オフィス


ジェバンニ:「…。以上が、事の顛末です。」


ルーファス:「ウルカレット財団は、8年前。旦那様がお亡くなりになられ、一度は落ち目と言われ、経営難が続きました。それからは、現会長の嘆かわしい努力により、今の勢いを取り戻した。だからこそ。旦那様の残された意思を。ウルカレットを。お嬢様を。その全てをお守りする使命がある。どこぞのギャングに唆され、お嬢様をあらぬ事に巻き込み、次第にはウルカレットに影響を及ぼす事は確定している。」


エストック:「…。本当に。恥ずかしい限りだ。」


ノエル:「…おお。」


カラス:「あ?」


ノエル:「おおおおおおんっ!うぉぉおおんっ!」


カラス:「なに急にタコ泣きしてんだようるせえなあ。」


ノエル:「だってぇぇっ。だって、悲しすぎるよぉぉおっ。」


カラス:「あー。まあ、あんたらの気持ちはよく分かるが。娘の意志を尊重する気はねえのかよ」


エストック:「…。ジュリィの心に決めた相手が、ギャングでさえ無ければ、私もそれを尊重したかもしれない。女が、現代社会を生きるのは想像以上に険しい。ジュリィには。ジュリィにだけは。私のような人生は送って欲しくない。だから、この通りだ。私の娘を、ギャングから取り返して欲しい」


ノエル:「ぐす。うおお。」


カラス:「どうする。ノエル」


ノエル:「どーするもこーするも!ギャング・サーカスはリベールでも有名だっ。当然!!取り返しますよ!絶対に!娘さんを幸せにしましょう!?ギャングなんかっ、こてんぱんにしますよっ。こいつがっ。」


カラス:「俺なのか。」


エストック:「恩に着る」


カラス:「まあ、いいさ。依頼は依頼だ。それで、その娘の居場所は割れてるのか」


ジェバンニ:「この1ヶ月、様々な場所を転々としているようです。今は、一度リベール下町。即ち、ギャング・サーカスの本部ビル近辺で目撃情報があります。」


ルーファス:「ギャングどもがリベール近辺で妙な動きがあるのも確認している。車もダミー含め、数台手配されてある。どれも、バスの時間、列車の時間を計算した配置だ。」


ジェバンニ:「恐らくは。今日。お嬢様を連れ、国外逃亡、という可能性が高いでしょう。」


ノエル:「今日!?」


エストック:「20時から22時発のイタリア行きの便の中に、ギャング数名の名前があった。ブラフの可能性もあるが、今日の夜。出立予定なのはほぼ確定だろう。」


カラス:「それが本当なら、やばいじゃねえか。」


ルーファス:「だから急ぎだと言っている。」


ノエル:「じゃあまじで急ごうっ。まずはリベール下町だろっ。」


カラス:「ちょっと待てよ。フランスから出るってわかってんなら空港で張ってるのが一番確実だろうが」


ノエル:(M)た、確かにィ〜!こいつ、なんでこんなたまに確信をつくんだ〜!


ルーファス:「勿論。国外逃亡の線を見て空港には一週間うちの護衛陣が待機しているが、飛行機による国外逃亡自体がブラフの可能性がある。」


カラス:「なるほど。カチコミと張り粘りで両ハサミってか。そりゃ抜かりねぇな。」


ノエル:「まあ、いくらウルカレットとは言えど数週間も飛行機を止める訳にも行かないだろうからな…。そうならそうで!本当に急がないと」


カラス:「だな。」


ジェバンニ:「よかった。思ったよりも早く話が進んだようで。勿論、私も同行致します」


ルーファス:「僕と会長はこの後の業務が終われば向かう。」


エストック:「19時前後には合流出来るつもりでいる。苦労をかけるが、よろしく頼む」


ノエル:「任せてください!!絶対に!!娘さんを取り返してみせます!」


カラス:「よし。じゃあ、俺らは先に行くか」


ノエル:「ああ!それでは、お先に失礼しますっ!」


ジェバンニ:「では、こちらへ。」


0:三人退室


ルーファス:「…。大変ですね。ただでさえご多忙だというのに」


エストック:「…いいや。これが、母親としての責任だ。逆に君たちを巻き込んで済まないな」


ルーファス:「とんでもございません。」


エストック:「…。なあ。ルーファス」


ルーファス:「はい」


エストック:「私は。どこかで間違ってしまったのだろうか。」


ルーファス:「そんなはずがございません。旦那様の残された責務を、これ以上なく全うされていらっしゃいます。」


エストック:「…。ありがとう」


0:場面転換

0:リベール下町


ロイド:「と。まあ、こういうわけだ。」


ジャイロ:「うおおおおぉんっ。うおおおおんっ。はかねえなぁ〜っ。恋、はかねぇなぁ〜っ。うおおんっ。」


ガロ:「なんだよ!ムカつくな!こいつの人生なのにっ。好きにさせてやれよっ。」


アンドン:「わはははっ。それな」


ジュリイ:「…」


ロイド:「まあ、話したところで。結局は、その。駆け落ちと変わらないけど。」


ガロ:「いーーやっ。俺はこいつらを手伝う!」


ロイド:「本当か…!」


ガロ:「ああ!恋愛のことはよく分からんが!たとえ親でも誰かの自由を奪っていいはずがねえ!」


アンドン:「やっぱり話の分かる奴だ」


マーレ:「ボス、ガロのこと気に入ったね」


アンドン:「ああ!養子に貰いたいくらいだ!」


ジャイロ:「仕方がねえ!うら若き少年少女の恋を応援すんのは大人の役目だごらぁ!手伝ってやるよ!」


ロイド:「…!ありがとう!」


ジュリイ:「ありがとうございます…!」


ガロ:「だはははっ。やっぱお前ならそう言うと思ってたよ」


ジャイロ:「うおおおんっ。こいつらの若いからこその無茶に惚れちまったぜ俺はぁ。」


アンドン:「さあ。じゃあ、早速移動を開始しよう。」


ガロ:「ああ、そうか。もう時間ねえんだっけ」


マーレ:「イタリア行きの便は21時半のものを取ってある。その前後2本にブラフとして私たちの構成員を乗せるつもりでいる。まずは車でマルセイユまで移動するよ」


ガロ:「おう!」


ジャイロ:「任せろっ。お前らの恋、必ず成就させてやるっ。」


ロイド:「あ、ああ。ありがとう、急に乗り気だな」


ジャイロ:「こういうのには弱いんだよなぁ〜!」


ガロ:「だははっ。よし!じゃあ!行くぞ!」


ジャイロ:「おお!」


マーレ:「裏口の車に乗って。若、ジュリィも。」


ジュリイ:「はいっ。」


アンドン:「気張って行ってこいよ。」


ガロ:「お。おっさんは行かねえのか?」


アンドン:「わははっ。車なんて大概4人乗りだろうがっ。ただでさえ一人オーバーしてんだ。俺ァ後から向かうよ」


ロイド:「…。ありがとな。親父」


アンドン:「構わねえよ。お前は昔からそういう奴だ。だからこそ、俺の息子だ。」


0:場面転換

0:リベール キャリオン街

0:車中


ノエル:「ちょっとちょっと!飛ばしすぎじゃないですか!?」


ジェバンニ:「すみません。我慢していただけると幸いです。」


カラス:「随分焦ってんな」


ノエル:「いやそりゃ焦るだろうけどさぁっ。」


カラス:「ちげぇよ。急ぐと焦るは別だ。あんた。一般の人間じゃあねえだろう。少なくとも、戦闘経験はある。そういう筋肉と体の使い方だ。」


ジェバンニ:「…。」


ノエル:「ボディガードだぞ。そんじゃそこらの人よりは場馴れしてるっつーの。」


カラス:「護衛や護身で身につく筋肉や視線じゃねえって言ってんだ。いいや、別にあんたのことを疑うつもりなんざねえが。あんたほど修羅場を括っていそうな奴が、随分と「焦る」もんだな。と。そう思っただけだ」


ノエル:「…。カラスって、もしかして馬鹿ではない?」


カラス:「は?」


ジェバンニ:「…。お見事ですね。東方の剣士もどきかと思っていましたが。想像以上に洞察も考察も、実戦を体験した人間のそれだ。」


カラス:「そりゃあどうも。」


ジェバンニ:「こちらから依頼したとは言え、あんな短時間で見破られるもは思いもしませんでした。」


ノエル:「いや、ほんとにほんとに。私でもあれだけの時間で気付くのは難しいぞ」


カラス:「ついでに言えば、あの女の横にいた胡散臭い男。ルーファスとか言ったか。あいつも軍人かそっちの肌の人間だろ」


ノエル:「えぇ!?」


ジェバンニ:「…。本当に。脱帽だ。ええ。そうですよ。私とルーファスは、元ドイツ軍人です。軍を辞めてから、前会長。今は亡きエストック会長の旦那様に拾われウルカレットで世話になりました。ですので、必死なんですよ。私はジュリィお嬢様のボディガードとして長年お傍に仕えて来ました。ルーファスは旦那様亡き後、ウルカレット第二支社へ入社し、今では代表にまで上り詰めた。私達にとって、ウルカレットは。お嬢様は宝なんです。私の命よりもまた、重い。」


ノエル:「うぉおおっ。いい話だなぁあっ。」


カラス:「いちいち泣くんじゃねえよ鬱陶しいな」


ノエル:「いや、お前みたいな唐変木には分からないよ、ほんとに」


ジェバンニ:「だから。今だけは焦らせてください。」


カラス:「は。別に、咎めるつもりじゃねえよ。探るような真似をして悪かったな」


ジェバンニ:「こちらこそ。少々見くびっていた事をお許しください。」


ノエル:「あっ。キャリオン街を抜けた!そろそろ下町ですねっ。」


0:カラスは刀を持つ


カラス:「さて。」


ジェバンニ:「飛ばします。法定速度うんぬんについては、後ほどギルドと市警からお聞きしますので」


ノエル:「勿論、今そんな野暮なことを言うつもりなんて無いですよ。酔ってきただけで」


カラス:「お前は本当に乗り物耐性ないな。」


ノエル:「ガロが1番乗り心地悪い」


カラス:「あいつ乗り物なのか」


0:ジェバンニはアクセルを踏んだ


ノエル:「って!早い早い!!こんな狭い道路で!人ひくぞ!」


カラス:「まあ、不自然なほど人っこ一人いねぇがな。」


ジェバンニ:「確かに。妙です、ね…っ!」


0:急カーブ


ノエル:「うおおおろろろっ。気持ち悪いぃいっ。曲がるなら曲がるって言ってくださいよぉろろろろっ。」


カラス:「やかましい。」


ジェバンニ:「着きました!降りてください!」


カラス:「ああ。」


0:車を急停車し二人は車から降りた


ノエル:「ちょ、ちょっと、待てって…!おえっ。」


0:ギャング・サーカスビル1階


カラス:「…。妙に静かじゃねえか。」


ジェバンニ:「2階より上は埃が溜まってますね。恐らくはガサ入れ対策。どこかに地下か隠し部屋があるかと。」


カラス:「了解。」


ノエル:「ま、まて…よ…っ。」


0:壁にもたれ掛かるノエルは何かの仕掛けを押した


ノエル:「うわ!なんか押した!うおおっ!!壁が!壁が沈んでいく!」


カラス:「ナイスだノエル」


ジェバンニ:「流石名探偵ですね。」


ノエル:「ふ。ふふんっ。まあ、こんなもんよっ。」


0:3人は扉を蹴破り中へ入った


ジェバンニ:「誰も動くな!」


カラス:「…」


ノエル:「ギャングこらぁ〜!お前らぶっ飛ばしてやる!こいつが!」


カラス:「俺かよ」


0:しかし人は居ない


ジェバンニ:「…。もぬけの殻、ですか。」


カラス:「もう逃げられたか?」


ノエル:「ちょっと待ってね。…奥で埃が舞ってるし。…ソファもまだ暖かい。まあ、さっきまで誰かがここに居ただろうね」


0:ノエルは床に落ちている一本の髪の毛を手に取る


ノエル:(M)足跡もあるし、髪の毛も落ちてる。相当知識が無いか、急いで逃げ出したかのどっちかだな。足跡からして、ここに居たのは…。4〜6人前後か。


カラス:「敵が居ないってんじゃ俺はお手上げだ。こういうのは探偵に任せる。」


ノエル:「…。ジェバンニさん、ジュリイさんの髪の色は何色ですか」


ジェバンニ:「長髪のホワイトブロンドです。」


ノエル:(M)…。長髪、軟毛。色も一致。女性の髪の毛なのも確定。摘発対策の隠し部屋までするギャングが、こんな初歩的な隠蔽を疎かにするか普通。少なくともさっきまで誰かがこの部屋にいた事は確実だ。私達の車の音を聞いてから逃げ出したにしたって間に合わない。単純に入れ違いの線で追うのなら、こんなあからさまな証拠は残さないはずだ。…ってなったら。


0:ノエルは小声で呟いた


ノエル:「まだ。誰かこの部屋にいる。」


カラス:「まじか。」


ジェバンニ:「罠、という事ですか」


ノエル:「さあ。まあ、あのタンスに向かってホワイトブロンドの髪の毛が数本落ちているなんて出来すぎた事。わざと以外考えられないと私は思うけどね」


ジェバンニ:「…。私が空けます。」


カラス:「…。ああ。こりゃあ」


0:ジェバンニはタンスを空けた


ジェバンニ:「…!」


カラス:「動くな…!」


ノエル:「なに!?なに!?誰かいたの!?」


カラス:「ああ。いたはいたぜ。」


ジェバンニ:「…。」


0:女装したアンドンがタンスにいる


アンドン:「いや〜ん!お着替え中ですわ〜!やめてくださいまし〜!」


ジェバンニ:「貴様…っ!」


ノエル:「…!カラス!そいつがこのギャングのボスだ!!気を付けろ!」


カラス:「そうか。ちょうどいい。あんた殿しんがりつもりだな。ウルカレットの娘はどこに行った。」


アンドン:「私ですわ!!!」


カラス:「この…。」


0:ジェバンニは銃を構えた


ジェバンニ:「アンドン・フォーキンス。田舎のギャング風情が、私達に喧嘩を売るな。私は今。お前を撃ってもいいと。本気で思っているんだ。」


アンドン:「いやーん!怖いですわ!」


カラス:「てめぇっ。動くなってーーー」


アンドン:「このォ…!」


0:アンドンは両腕を振り上げた


ノエル:「2人とも!危ない!」


アンドン:「エッチィーーーーーッ!」


0:ジェバンニとカラスは弾き飛ばされる


ジェバンニ:「ごほっ…!」


カラス:「うおぉ!?なんだぁこの馬鹿力ァ!」


0:アンドンはカツラを脱ぎながらタンスから出てくる


アンドン:「ウルカレットんとこの小僧がァ、随分大口叩くようになったじゃねえか。おい。わはははっ。」


ジェバンニ:「アンドン・フォーキンス…!!」


カラス:「お前ら!先に行っとけ!こいつぁ俺が引き受ける!」


ノエル:「ええ!?いいのか!?」


カラス:「いいもなにも、ここで取り逃したら元も子もねえ!足取りを途絶えさせない為にゃあ誰か一人足止めしるしかねぇだろ!お嬢様が心配なんだろ、ボディガード」


ジェバンニ:「…。ありがとうございます。ノエルさん、車に戻ります。」


ノエル:「わ、わかった…!カラス!迷子になったら連絡するんだよ!」


カラス:「うるせえっ。てめぇはオカンか!」


アンドン:「おーっと。行かねせねぇだろ。なんの為に女装してたってんだ俺ァ!」


カラス:「桜華流・下段。」


アンドン:「おぉ?」


カラス:「旋回…ッッ!」


アンドン:「おっっとォ!!なんだなんだ、ドスなんか持ち歩きやがって、物騒なガキだなぁおい!」


カラス:「これがドスに見えるかよぉっ。さっさと行け!」


ノエル:「頼んだ!ジェバンニさん!はよ!はよ!」


ジェバンニ:「はい。」


0:二人はその場から逃げ出した


アンドン:「…。あんた、カタギの人間じゃあねえだろう。」


カラス:「そう見えるか」


アンドン:「ああ。俺らと同じ匂いがする。仁義の匂いだ。」


カラス:「はっ。そりゃありがてぇ。」


アンドン:「どうしてウルカレットに手を貸す。どこの人間だ」


カラス:「ギルド」


アンドン:「はっ。アンタらもギルドに駆け込んだか。だが分かってんだろう。リベールで俺達に喧嘩を売る意味が」


カラス:「悪ぃが門門の脅し文句にゃ興味がねえな。」


アンドン:「なあ。そこをどいてくれねぇか。息子の大舞台なんだよ」


カラス:「良い父親だな。そういうのは嫌いじゃない。」


0:カラスは刀を構えた


アンドン:「ったく。若いってのはいいねえ。怖いもの知らずだ。」


0:場面転換

0:マルセイユ駅


ガロ:「いやぁ〜。この列車が来るのを待つ時間、好きなんだよなぁ〜」


マーレ:「ちょっと分かるかも。」


ジャイロ:「分からねえよ。イライラする」


ロイド:「俺もイライラする」


ガロ:「お前ら短気か?」


0:ジュリイは手荷物を確認する


ジュリイ:「…。」


ロイド:「ジュリイ?どうした?」


ジュリイ:「あ、ありません…」


ジャイロ:「あ?なんだって?」


ジュリイ:「ありませんわぁ〜!!!」


ロイド:「おぉい!うるせぇって!!」


ジュリイ:「ど、どうしましょう、ロイド」


ロイド:「なんだよ、何がねえんだ」


ジュリイ:「昔、ロイドに貰ったぬいぐるみ、下町に忘れて来てしまいましたわ…!」


ジャイロ:「ぬいぐるみぃ?」


ロイド:「なんだよ、ビックリした。いいよ、また取ってやるから」


ジュリイ:「嫌ですっ。私の宝物ですわよっ。」


ロイド:「お、おお。ありがとな。…。いや、いやいやいや。無理だぞ。今更引き返せねぇから。」


ジュリイ:「取りに帰りますっ。」


ロイド:「お前なぁあああ」


ジャイロ:「嬢ちゃん、そりゃ無理な話だ。今頃下町はウルカレットの連中がガサ入れしてる頃だろう。」


マーレ:「うん。無理。予定も狂うからやめて。」


ジュリイ:「嫌です!!」


ロイド:「聞き分けて!?」


ジュリイ:「嫌です!!!」


ガロ:「だっははは!いいじゃねえかっ。取りに帰れば」


ロイド:「はぁぁぁ!?」


ジャイロ:「おめぇ〜はまたそうやってややこしくしやがる!!」


ガロ:「だって大事なもんなんだろ」


ジュリイ:「はいっ。宝物ですっ。」


ガロ:「ほら。」


ジャイロ:「なにがほらなんだよ!」


マーレ:「もう列車も来るし、今から戻って、例えウルカレットの警護官達を凌いでも、時間的に間に合わない。フロントセンターまでどうやって来るつもりだ」


ジュリイ:「な、何とかしますわっ。」


ガロ:「そーそー。なんとかなるって!」


ロイド:「…。ったく。しゃあねえ。」


マーレ:「若」


ロイド:「しょうがねえだろ。こいつは1回やるっつったらやるんだから。」


マーレ:「はぁ…。」


ジャイロ:「おいおい、どーすんだよ。」


マーレ:「1回引き返す。多分、ウルカレットの警護官が下町から各駅を巡ってる頃だろうから、警戒は多少弱まってるだろうけど、どーせ直ぐに当たりをつけてくる。だから、私が殿しんがりを務める」


ジャイロ:「しんがりっつったって」


ロイド:「ふふ。異能狩り。うちのマーレはな、FBIの特務スパイだったんだ。」


ジャイロ:「はあ…?はあ…!?」


ガロ:「スパイ!?まじかよ!!」


マーレ:「ちょっと疲れるけど、しょうがない。」


0:マーレは服を脱ぐ


ガロ:「あ?なんで脱ぐんだよ。」


ジャイロ:「いいんですかあ!?」


0:マーレは衣装ケースを開けて素早く着替えた


マーレ:「しゅばばばばば」


ジャイロ:「な…!なにィ〜!?残像で全く見えねえ!確かに!そこにあるのは下着姿の女のはずなのに!目の前にあるのは無数の残像だとぉ〜!?そんな残酷な話ねえってもんだぜぇ〜!?」


0:着替え終わったマーレはジュリイと同じ服装になった


マーレ:「ふう…。はしたない所を。お待たせしたわね。」


ジャイロ:「!?」


ガロ:「!?」


ジュリイ:「何度観ても圧巻ですわねえ〜」


マーレ:「ふふ。見に余る光栄ですわ」


ジャイロ:「ありのまま今起こった事を話すぜ…!目の前の女が、分身しやがった…!これは…。閃いたッッ!」


ロイド:「何をだよ」


ガロ:「すげぇええなぁ!?変装か!すげえ似てる!雰囲気もなんか、こう!似てる!」


マーレ:「まあ、こんなのよく見たら直ぐにバレてしまいますわ。ですので、あくまで殿しんがり。あまり長時間有効だと思わないでくださいまし。」


ガロ:「スパイっぽい!」


ジャイロ:「ったく。元FBIがギャングなんざ、どーなっちまってんだ。あんたらの組織は」


ロイド:「はは、親父が色物が好きなだけだ。」


マーレ:「それでは、私は次の列車で先に向かいますわね。恐らくその列車内にもウルカレット財団の手の者が数人待機しているのは確実ですので。さくっと撹乱でもしてきますわ」


ロイド:「さくっと撹乱なんて言えんの、お前くらいだよ。マーレ」


マーレ:「まあ。ありがとうございます」


ジャイロ:「じゃあ、俺はこの元スパイと一緒に列車に乗るわ。」


ガロ:「え?なんでだよ」


ジャイロ:「お探しの姫方が一人で列車に乗ってるなんざ考えられねえだろ。ブラフもやるなら徹底的に、だ。」


ガロ:「なるほどなぁ〜」


ジャイロ:「ロイド。ここまでの道、覚えてるか」


ロイド:「ああ。任せてくれ」


ジュリイ:「なんで私は頼りにされませんの?」


ロイド:「なんでだろうな。思い当たる節がないならしょうがないよ。ほんとに。どうしようもない」


ジュリイ:「今バカにしましたわね」


ロイド:「した。」


ジュリイ:「むきーーー!」


ジャイロ:「そんじゃあガロ。そいつらの護衛は任せたぞ。」


ガロ:「おう!任せろ!」


ロイド:「悪ぃな、マーレ」


マーレ:「別に。ボスの命令だから。それに、若には早く幸せになって欲しいし」


ロイド:「おょょょょ。」


ジャイロ:「おょょょょ。」


ジュリイ:「ほら、行きますわよ!」


ガロ:「おう!」


ロイド:「なんでお前らが仕切ってんだよっ。そんじゃあ、ちょっくら行ってくる!」


マーレ:「行ってらっしゃい」


0:3人は駅から去った


ジャイロ:「はぁ〜。うるせぇのがどっか行ったな」


マーレ:「そうだな。」


ジャイロ:「その衣装でその口調。なんか逆に。いいな。」


マーレ:「ありがとう」


ジャイロ:「…。心配かぁ?」


マーレ:「まあ。流石に。いくらガロが強いと言っても、相手はウルカレットだし」


ジャイロ:「はっ。元スパイの癖して相手を見る目もねぇのか。あの馬鹿はやるっつったらやるさ。それに、あいつの拳は国を割るぜ」


マーレ:「ふ。期待してる。」


ジャイロ:「にしても。随分とアンドン・フォーキンスに肩入れしてんだな。」


0:場面転換

0:マルセイユ道中

0:車内


ジェバンニ:「どうしてギルドに依頼をしたか、ですか?」


ノエル:「はい。ウルカレット財団のご令嬢がギャングと駆け落ちだなんてのが発覚したのは一か月前なんですよね。」


ジェバンニ:「はい。」


ノエル:「じゃあ、その一か月でなぜ捕まえてしまわなかったんです?もっと前にギルドに依頼をしていればこんなに急ぐこともなかったかもしれなかったのに」


ジェバンニ:「おっしゃる通りですね。もちろん、捜索は常に行っていました。ただ、足取りが掴めなかったのと、今日まで本格的に奪還を試みなかったのには理由があります」


ノエル:「理由」


ジェバンニ:「ひとつは、単純に余計な噂や騒ぎを避ける為です。ここまでの上場企業となれば、反社会勢力と繋がりがあるだけで株価に影響しかねませんので」


ノエル:「まあ、そうでしょうね。もうひとつは?」


ジェバンニ:「マーレという人間の存在ですね。あれは我々の手にも余る厄介者だ。何度も撹乱されてきました。」


ノエル:「ただのギャングが軍人を騙すほどの曲者なんてことがあるんですか?」


ジェバンニ:「彼女だけは他のギャングとは一線を画す。なんせ、元FBIの人間ですから」


ノエル:「ええ!?FBIがギャングに!?どゆこと!?」


ジェバンニ:「詳しい事情は知りませんが、知り過ぎた人間は、いずれ使い捨てられるものです。例えそれが命令であったとしても。」


0:回想

0:10年前


マーレ:「…」


0:冬空。血まみれで歩いている


マーレ:(M)これは。いよいよ不味いか。血を流し過ぎている。視界も悪い。体が思うように動かない。


0:マーレはその場に倒れた


マーレ:「…。ああ。…くそ。…本当に。ろくでもない人生だった…」


アンドン:「…おぉ?」


マーレ:(M)私の視界に、革靴が入り込んだ。28cmほどの、長身と想定される男。


アンドン:「なんだ。そんな洒落た格好して。ダンス帰りか?」


マーレ:(M)その男の姿を見る前に。私の意識は途絶えた。


0:場面転換

0:リベール下町


マーレ:「…ん。」


アンドン:「おお。目が覚めたか。おはよう。」


マーレ:「…っ。」


アンドン:「おいおい、そう警戒しなさんな。年頃の女に睨まれちゃあ、俺だって辛い」


マーレ:「誰だあんたは」


アンドン:「俺はアンドン。ここいらでしがないギャングをやってる」


マーレ:「…アンドン…?まさかお前、アンドン・フォーキンスか…!」


アンドン:「おお。知ってるのか。嬉しいねえ、有名人になったもんだ」


マーレ:「なんでギャング・サーカスのボスが私を匿う」


アンドン:「なんでって。血まみれで倒れてる女が居りゃあ介抱くらいするだろ」


マーレ:「…」


アンドン:「ほら。食えよ。俺の作ったスーパースープだ。随分冷えたろ」


マーレ:「毒か」


アンドン:「失礼だな。」


マーレ:「…。」


アンドン:「あんた、ここいらじゃ見ない顔だな。どこから来たんだ。」


マーレ:「お前には関係ないだろ」


アンドン:「別にいいだろ。雑談くらい」


マーレ:「…。本当に私を知らないのか?」


アンドン:「んー。」


0:アンドンはマーレの顔を眺めあ


アンドン:「…。いいや。昔の女にあんた程のべっぴんは居なかったな。」


マーレ:「…。」


アンドン:「ただ。よっぽどの修羅場をくぐってきたと見える」


0:アンドンはマーレの来ていたコートから銃を取り出した


アンドン:「こんな物騒なもん持ち歩くなんざ。それにこりゃあ、RKK442モデル。消音に特化した自動式拳銃で有名だが。こんなもんトーシローが持ってていいもんじゃあねえな」


マーレ:「返せ」


アンドン:「いいよ。」


マーレ:「…は?」


アンドン:「え?」


マーレ:「いや。なんで返す」


アンドン:「返せって言われたから」


マーレ:「なんでだっ。もっと、こうっ。疑ったりするだろ普通っ。私がお前を殺そうとしたらどうするっ。」


アンドン:「ついさっきまで低体温症と出血多量でくたばり掛けてた奴がかぁ?冗談きついね」


マーレ:「…。やってみるか。」


アンドン:「ああ。どうぞ。」


0:しばしの沈黙


マーレ:「…。はあ。やめだ。噂通り、変な奴だな。アンドン・フォーキンス」


アンドン:「良い男で通って欲しいもんだ。」


マーレ:「…。」


0:マーレの腹の音が鳴り響く


ノエル:(腹の音)ぐぅ〜ぎゅるるるるるるる!


アンドン:「…。今の、腹の音?」


マーレ:「違う」


アンドン:「いやでも」


マーレ:「違う」


アンドン:「ああそう。とりあえず飲めよ。俺のスーパースープ美味くて吹っ飛ぶぞ」


マーレ:「…。」


アンドン:「睨むな睨むな。別に取って食いやしねえよ。俺はもっとむっちりした女が好みなんだ」


マーレ:「…。」


0:マーレはスーパースープを飲んだ


アンドン:「どうだ。美味いだろ、スーパースープ」


マーレ:「ま」


アンドン:「ま?」


マーレ:「まっっっっっっっず!!!!!」


アンドン:「ええええええ!?」


マーレ:「お前!!これ!!やっぱり毒だろ!!青酸カリの味がするぞ!!」


アンドン:「いやしねえって!!不味いはずがねえ!ちゃんとアイツのレシピ通りに作ったぞ!!」


マーレ:「誰のレシピかは知らんが!こんなもの例え毒じゃなくても毒だ!!本当に吹っ飛ぶかと思ったぞ!!比喩的な意味でなく!」


アンドン:「嘘つけ!!!」


マーレ:「じゃあ飲んでみろ!!」


アンドン:「ああ飲んでやるよズズズまっっず!!!」


マーレ:「まずいんじゃないか!」


アンドン:「なにこれ!?毒!?吹っ飛びかけた、意識が!どーすんだよ!これ俺の晩飯だぞ!」


マーレ:「…。はあ。キッチンはどこだ」


アンドン:「あ?向こうだけど。っておいおい、まだ立たねえ方がいいだろ」


0:マーレは立ち上がった


マーレ:「うるさい。私もどうせ飲むなら美味いスープが飲みたい。」


アンドン:「まじで!?お前料理出来んの!?」


マーレ:「少なくともお前よりはな!」


アンドン:「助かるぜぇ〜!!!」


マーレ:(M)これが。アンドン・フォーキンスとの出会いだった。多少マシになったスープを飲んだ後、気絶するように眠った。これがスーパースープによる気絶か、疲労による気絶かはもはや分からない。目が覚めると、当然の様に朝飯が置いてあった


アンドン:「おお。おはよう。朝飯出来てるぞ。昨日の反省を活かして作ってみたんだ。食ってくれ」


マーレ:(M)その男は。私を当然の様に日常に迎え入れた。行く宛てもない私は、一先ずその男と共に生活する事にした。あと一日、あと一日と過ごすうち。ズルズルと一ヶ月が過ぎていった


アンドン:「いやぁ〜。飯の後の一服は五臓六腑に染みるねえ〜」


マーレ:「なあ。」


アンドン:「お?」


マーレ:「なんでアンタは。私を追い出さない」


アンドン:「なに急に」


マーレ:「かれこれ一ヶ月だ。傷口もだいぶ塞がってきたし。もうアンタが面倒を見る必要は無いんだぞ」


アンドン:「別にいいじゃん。居たけりゃ居て。ああ、出ていきたいなら話は別だけど」


マーレ:「そういう話をしてるんじゃないっ。私は、アンタの日常の異物だぞっ。どこの誰ともしれない奴を迎え入れて、どうかしてる。」


アンドン:「んー。ちょうど2ヶ月前さ。」


マーレ:「?」


アンドン:「嫁が死んだんだ。」


マーレ:「…」


アンドン:「で、若い衆どもがちょっと一人でゆっくりしろって言うもんだからこんな山奥に追いやられてんのよ。ンマー結構暇なんだわ。」


マーレ:「帰ればいいじゃないか」


アンドン:「その時に死にかけのお前を拾ったんだよ」


マーレ:「…。そうか。悪かったな。邪魔して。明日には出ていくよ」


アンドン:「なあ。」


マーレ:「…なんだ」


アンドン:「お前。帰るところねえだろ」


マーレ:「…。お前には関係ない」


アンドン:「あるだろ。流石に。一応一ヶ月一緒に過ごしたんだから」


マーレ:「ない!」


アンドン:「ある!」


マーレ:「…。わかった、あったらなんだ。」


アンドン:「お前。うちに来ないか」


マーレ:「は…?」


アンドン:「息子が居るんだ。ちょうどお前と変わらないくらいの。」


マーレ:「なんで私の歳がわかる」


アンドン:「見た感じ11かそこらだろ?若いのに苦労してんね」


マーレ:「私は18だ。」


0:凝視


アンドン:「…まじで?」


マーレ:「なんだその視線は」


アンドン:「ぷっ。はははははっ!」


マーレ:「なにがおかしい!」


アンドン:「いや、わりいわりい。そうかぁー。人は見かけに寄らんなぁー。」


マーレ:「…。捜査局でも、そう言われたからな。慣れてる」


アンドン:「捜査局?」


マーレ:「私は、連邦捜査局の特務派遣官だった。」


アンドン:「その歳でぇ!?」


マーレ:「正規局員じゃない。身寄りのない子供に軍教育を叩き込んで使い捨てる鉄砲玉だ。」


アンドン:「へぇー。」


マーレ:「あんたは。ずっと私の過去について触れもしなかったな。初対面で銃口まで向けられてるってのに」


アンドン:「まあ。別に。どうでもいいし」


マーレ:「…。捜査局は。中央政府に吸収された。」


アンドン:「ああ。知ってるよ。つい先月のことだろ」


マーレ:「私は。もう要らないと。言われた。それどころか、秘匿事項保持の為に殺されかけた。そこで、あんたに拾われたんだ」


アンドン:「…」


マーレ:「私は。もう誰かの下に居るのは嫌なんだ。ああやって、使うだけ使って捨てられるのは。もうゴメンだ。」


アンドン:「別に俺の下につけだなんて言わねえよ。」


マーレ:「…は?」


アンドン:「息子の名前はロイドって言うんだ。まだ8歳になったばかりの糞ガキでな。そんな盛んな時期に母親が死んじまった。こりゃあ、子供にとっちゃ。これ以上なくしんどい事だよ」


マーレ:「…。」


アンドン:「だから。息子の面倒、見てやってくんねえかな。お前なら、いい姉ちゃんになれると思うんだが」


マーレ:「…。本気で言ってるのか?出会ってひと月ひか経ってない私に?」


アンドン:「ひと月も一緒にいたら十分だ。お前は良い奴だし。面倒見もいいし。何より、飯が美味い」


マーレ:「…」


アンドン:「どうせ行く宛てもねえなら。お前、うちに来いよ。」


マーレ:「…。マーレだ。」


アンドン:「あ?」


マーレ:「お前じゃない。私の名前は。マーレだ。これからはそう呼べ」


アンドン:「…。わははは!そうか、よろしくな、マーレ」


0:場面転換

0:列車の中


ジャイロ:「おぉおおおっ。いい話だなぁああっ。お前ら好きだなぁァァ俺ぇええっ。」


マーレ:「ちょっと、列車の中で大きい声出し過ぎですわよっ。目立ちますわっ。」


ジャイロ:「すまん。ずび。」


マーレ:「まあ、そんなこんなで。私は若のお着きになったわけですわ。」


ジャイロ:「そうかぁぁ。絶対幸せにしようなぁぁっ。あいつ。」


マーレ:「ええ。当然ですわ。私にとって、弟のようなものですもの。」


0:場面転換

0:車内


ジェバンニ:「と、まあ。そういうわけでアンドン・フォーキンスは組織力拡大の為にマーレを誑かした卑劣な男だ、という噂ですね」


ノエル:「なんだそれ!!許せねえ!!毒入りスープを飲ませるだなんて!!」


ジェバンニ:「ギャングの考えることなんてそんなものですよ。それに、噂は湾曲しますからね。どれが真実かは、本人たちのみぞ知る、と言うやつでしょう」


ノエル:「いーや!ギャングだもん!会長の娘さん連れ去るくらいだもん!その噂はまじだね!絶対に!」


ジェバンニ:「まあ。その辺は私にはどうでもいいことですよ。」


0:ジェバンニの携帯が鳴る


ジェバンニ:「ちょっと失礼。はい。ジェバンニです。」


ルーファス:「ルーファスだ。18時48分発の列車の中にお嬢様らしき人物と、謎のアロハシャツが咽び泣いている姿を確認したとの報告があった。恐らくギャング構成員では無いだろう、外部の用心棒と言ったところだ。」


0:ジェバンニは時計を見た。時計の針は18時54分を示している


ジェバンニ:「…。なるほど。分かりました。列車に向かいます」


ルーファス:「マーレの変装の可能性もあるが、この際なりふり構っていられない。頼むぞ、ジェバンニ」


ジェバンニ:「はい。必ず。」


ルーファス:「…。二人きりの時くらい、敬語じゃなくてもいいんだがな」


ジェバンニ:「貴方は今第二支社社長で。私は一介のボディガードに過ぎません。もう対等ではないですよ。」


ルーファス:「…。そうか。こっちもそろそろ会議が終わる。19時発の列車でパリに向かう予定だ。既に数人向かわせているが、お前はそのままお嬢様の足取りをおってくれ」


ジェバンニ:「了解しました。」


ルーファス:「無茶はするなよ」


ジェバンニ:「しますよ。するしか、ありませんから。」


ルーファス:「…。そうか。そうだな。それじゃあ、頼んだ」


ジェバンニ:「はい。」


0:通話終了


ジェバンニ:「失礼。また少し飛ばします」


ノエル:「え?なに?何か目撃情報でもあったんですか?」


ジェバンニ:「はい。既にお嬢様は列車に乗られた様です。パリ行きの特急列車なので、他の警護官が対応中とは思いますが、何やら怪しげな男がお嬢様の護衛につかれているとの事です。恐らくは外部の雇われ用心棒のようですが」


ノエル:「怪しげな男〜??許せねぇ…!汚ぇ手でお嬢様に触るんじゃねえぞ…!」


ジェバンニ:「まったくです。では…」


ノエル:「…ん?ジェバンニさん。そこ、道路じゃないです。ていうか、そのまま行けば線路です。」


ジェバンニ:「はい。少々手荒ですが。仕方がありません。300m先の傾斜で飛びます。今のうちに降車の準備を」


ノエル:「ちょちょちょちょっと待って!?まさかとは思うけど飛び降りて列車に乗る気ですか!!」


ジェバンニ:「はい。」


ノエル:「えええええええええ!!?」


ジェバンニ:「3.2.1で降ります。いいですね」


ノエル:「いやよくない!よくないよ!」


ジェバンニ:「3」


ノエル:「ちょっと待って!ねえ!」


ジェバンニ:「2」


ノエル:「うわっ!飛んでる!車が!空を飛んでいる!」


ジェバンニ:「1」


ノエル:「ああああもう!こういうのばっっか!」


ジェバンニ:「降りますっ。」


ノエル:「えええいもう!ままよ!」


0:二人は車から飛び降りた

0:場面転換

0:列車の中


ジャイロ:「ーーーったく。」


マーレ:「ふぅ。」


0:ウルカレットの警護官達が倒れている


ジャイロ:「変な通信してんじゃねえよ。ビビらせやがって」


マーレ:「これで全部でしょうか。」


ジャイロ:「多分な。不自然なほど人が乗ってねえと思ったが、殆ど警護官だとはよぉ」


0:天井から物音がする


マーレ:「…!異能狩り、天井から物音ですわ」


ジャイロ:「ああ。人でも降ってきたか。岩か。まあ、人だろうなぁこの際。とりあえずこの惨状を見られるのはまずい、移動するか」


マーレ:「ええ。そうですわね。」


0:場面転換

0:列車の上


ノエル:「はあ…!はあ…!死ぬかと、思った…!」


ジェバンニ:「立てますか」


ノエル:「立てるわけないだろ!!」


ジェバンニ:「そうですか。では、私は車内を見てきます。余裕が出てきたらお越しください」


ノエル:「あ、ちょっと!ちょ、待って…」


0:ジェバンニの姿は無い


ノエル:「ちくしょぉ〜〜〜!やけだやけ!クソ野郎!ファッキン!」


0:場面転換

0:車内


ジェバンニ:「…っ!お嬢様!」


マーレ:「…」


ジェバンニ:「…!よかった、お探ししましたよ、お嬢様、ご無事ですか…!」


マーレ:「…」


ジェバンニ:「…。お嬢様…?」


マーレ:「ジェバンニ。」


ジェバンニ:「…」


マーレ:「私。もう行くと決めましたの。だから、もう私に構わないでくださいまし。お母様にもそうお伝えください。」


ジェバンニ:「誰だお前」


マーレ:「…。あら」


ジェバンニ:「よりにもよって、俺の前でお嬢様を騙る気か。マーレ。」


マーレ:「私の変装、そんなに下手か?」


ジェバンニ:「また殿しんがりにひっかかったか…!」


マーレ:「間抜けだなぁ、ジェバンニ・ハンス!」


0:マーレはジェバンニを蹴るが、防ぐ


ジェバンニ:「…!貴様ぁ…!」


ジャイロ:「おっと。動くなよ。ぼっちゃん。」


ジェバンニ:「…。貴様か。報告にあったアロハシャツの男は」


ジャイロ:「はぁい。俺でぇ〜す」


ノエル:「はあ…!はあ…!ちょっと、ジェバンニさん!3号車!なんかめっちゃ人倒れて…る…」


0:目と目が合う


ジャイロ:「…ノエル?!」


ノエル:「ジャイロ!?」


マーレ:「は?」


ジェバンニ:「…。なんですか。お知り合いですか」


ノエル:「知り合いというか、なんというか、なんでお前がここにいるんだ」


ジャイロ:「そりゃこっちのセリフだぜお嬢。そのぼっちゃんと見知った間柄か?」


ノエル:「いや、この人は私の依頼主だよ」


ジャイロ:「い!?」


ノエル:「お前こそ、なんでジェバンニさんにナイフ向けてんだよ。ていうか隣のお嬢さん誰」


ジェバンニ:「あれが先程車で話したマーレです。」


ノエル:「はぁ!?なんでお前がギャングと一緒にいるんだよ!」


ジャイロ:「いや、こいつが俺の依頼人だからだけど…。ていうか一応こいつと今朝あってるぞ、お前」


ノエル:「う!?」


ジェバンニ:「なんの因縁があるかは知りませんが。応えろ。マーレ。お嬢様は何処にいる」


マーレ:「そう言われて答えるアホがどこにいるんだ。」


ジェバンニ:「はは、まったくだ。」


ジャイロ:(M)どういうことだってばよ…


ノエル:(M)どういうことだってばよ…


0:場面転換

0:リベール下町


ガロ:「着いたーーー!」


ロイド:「はあ、はあ、なんだ、その足の速さ…!」


ジュリイ:「でも良かったですわ、警護官も殆ど居なかったですし、なんとか、見つからずに戻ってこれましたわ」


ガロ:「ただいまーー!」


ロイド:「ああ、2階じゃない。ここに隠し部屋があるんだ…」


0:隠し部屋は開いている


ジュリイ:「…。ロイド。私たちが出る時。ちゃんと隠し部屋の扉。塞ぎましたわよね」


ロイド:「ああ。確かに。」


ガロ:「誰かが入ったんだろ?」


ロイド:「…。まあ、そうか。そりゃうちの事務所から調べるよな。」


ガロ:「んな事より早くぬいぐるみ取って帰ろーぜっ。遅れちまうっ。」


ジュリイ:「そうですわねっ。」


0:3人は部屋へと入っていった


ロイド:(M)何となく。嫌な予感がした。母さんが死んだ日の時みたいな。鉄と。砂の臭い。いつもの事務所に、足を踏み入れた


ジュリイ:「…!」


アンドン:「ーーー。」


0:アンドンが横たわっている


ガロ:「…は?」


ロイド:(M)親父が。血みどろで倒れてる。その前に居るのは。東方の剣士のような身なりをした男。


カラス:「…あ?ガロじゃねえか」


ジュリイ:「きゃあああああああっ!」


ロイド:「親父ぃい!!」


カラス:「おお、なんだなんだ。お前の親父か?ん?待てよ。じゃあお前、噂のロイドか」


ロイド:「親父!おい!返事しろ!親父!」


ジュリイ:「アンドンさん!すぐに止血しないと…!」


ガロ:「…」


カラス:「なんだよ、ガロ。お前がこいつら捕まえたのか?もう別件の依頼は…」


ガロ:「カラス」


カラス:「おお。なんだ」


ガロ:「これ。誰がやった」


カラス:「え?」


ガロ:「誰がやった。」


カラス:「あー。俺だけど?」


ガロ:「ーーーーー…。」


0:ガロは拳を握った


ロイド:「親父!!親父ぃ!!」


ガロ:「カラス。お前」


カラス:「…ん?」


ガロ:「見損なったぞ!!!」


カラス:「はあ!?」


ガロ:「うおおおおおおお!!」


0:ガロはカラスを殴った


カラス:「うお!?あっぶねえ!何しやがるガロてめぇ!」


ガロ:「お前がそんなにひとでなしだとは思わなかった!!」


カラス:「何の話だよ!!」


ガロ:「おっさんを斬りやがったなお前!!」


カラス:「落ち着けって!!こりゃあお互い同意の上でだな!!」


ガロ:「言い訳なんか聞きたくねえ!!」


カラス:「言い訳とかじゃねえって!!まじで!!」


ガロ:「GRID・BORROW…ッッ!」


カラス:「はあ!!?待て待て待て!!殺す気かお前!」


ガロ:「ああ!死ね!!」


カラス:「ダメだこいつ…!頭に血が上ってやがる…!」


ガロ:「フル…っっ!」


カラス:「旋回ッッ!」


ガロ:「がはっっ…!」


ロイド:「ガロ!!あんた!もうやめてくれ!」


カラス:「うるせえな!こいつ止めなかったら俺もお前も死んでたんだぞ!!」


ガロ:「お前ぇええ!絶対に許さねえ!!」


カラス:「くそ…!話も聞きやしねえ…!」


0:場面転換

0:列車の中


ノエル:「お前は最低だジャイロ!!!」


ジャイロ:「てめぇらの方が最低だろうがボケ!!」


マーレ:「何を言い争いしてるんだ異能狩り!」


ジェバンニ:「余所見か、余裕だ、な…っ!」


マーレ:「がはっ…!くっ…そ!」


ノエル:「前々から終わってるとは思ってたけど、まさかここまで性根が腐ってるとは思わなかったぞ!ボケジャイロ!」


ジャイロ:「お前に言われたかねえよ!!一番まともそうな顔して、金の為ならなんでもする犬なんだなあてめぇは!」


ノエル:「金の為ぇ!?私は会長の親としての愛に惚れたんだよ!!確かに少年少女の恋を蔑ろにするのはいたたまれないが!実らせない方がいい恋がある!!」


ジャイロ:「てめーーーが恋語ってんじゃねえよブス!!!」


ノエル:「はぁーーー!?今ブス関係ないんですけど!!!!」


0:ジェバンニの携帯が鳴る


ジェバンニ:「ちっ。こんな時に!はいもしもし!」


ルーファス:「ルーファスだ。そっちはーーー」


ジェバンニ:「この列車に乗ってるのは偽物!マーレだった!今交戦中だ!」


マーレ:「余裕見せてくれる!!」


ジェバンニ:「ぐっ…!現場は以上!もういいか!」


ルーファス:「焦ると昔みたいだな。そんな事だろうと思ってたパリから車で逆走してる」


ジェバンニ:「そんな事だろうと思ったならさっさと言え!」


ルーファス:「僕もさっき気付いたんだ。一斉に列車に乗っている警護官の通信が切れた。とりあえず、あと5分で着く。それまで耐えてくれ」


マーレ:「ぉおおおっ!」


ジェバンニ:「ごほっ…!ったく、さっさとしろよ、ルーファス!」


ルーファス:「了解。」


ノエル:「種無しぃいいいいい!」


ジャイロ:「マグロォおおおおお!」


マーレ:「お前らはなにやってんだ!!」


0:場面転換

0:下町


カラス:「ーーーったく…!」


ガロ:「うおおあああああああああ!」


カラス:「落ち着けって言ってんだろ、ガロ!!」


ガロ:「うるせぇえええええ!」


0:ビルの中


ジュリイ:「包帯、持ってきましたわ!」


アンドン:「いいや…。それにゃあ及ばねえよ」


ロイド:「…!親父…!」


ジュリイ:「アンドンさん…!よかった、息があって…!」


0:アンドンはだるそうに起き上がる


アンドン:「まったく、こんなかっこ悪い姿見られるとはなぁ…。」


ロイド:「おい、無理すんなよ親父。結構血出てるんだから」


アンドン:「あー…?違う違う。こりゃ俺の血じゃない。さっきまでここに居た東方の剣士の血だ」


ロイド:「…ん?」


ジュリイ:「ん?」


アンドン:「ぼっこぼこに殴ってやったのに、全然倒れねえのな。わっははは。いやぁ、いい峰打ちもらっちまった!わははは!」


ロイド:「んんんん?」


ジュリイ:「んんんんん?」


アンドン:「ていうかお前ら。なんでここに居るんだよ。」


ロイド:「ちょっ。となんか。ガロ達止めた方がいい感じしない?」


ジュリイ:「しますわ」


0:場面転換

0:列車の中


マーレ:「はぁあああっ!」


ジェバンニ:「おっ。と!」


マーレ:「がはっ…!」


ジェバンニ:「元FBIと言えど、肉弾戦じゃ軍人が勝るだろう、なっ!」


マーレ:「ごぼぉっ…!けほっ。こほっ。」


ジャイロ:「だーーから!お前はひとでなしなんだよてめえ!」


ノエル:「こっちのセリフなんですけど!!」


マーレ:(M)くそ!異能狩り!ずっとあの女の相手してて全然使えない!ジェバンニとじゃ、あいつの言う通り私じゃ全然相手不足。どうするかな。


0:外から声が聞こえる


ルーファス:「ジェバンニ!!」


ジェバンニ:「…!」


マーレ:「増援か…!?」


ルーファス:「遅くなった!乗れ!」


ジェバンニ:「…。お嬢様がここに居ない以上、ここでやり合う意味はありません。ここいらでお暇しますよ。」


マーレ:「待て!」


ジェバンニ:「待てと言われて待つ馬鹿が何処にいるんですか。」


マーレ:「くっそ、行かせるか…!」


ジェバンニ:「諦めの悪さだけは、捜査局並みです、ね!」


0:マーレの腹を蹴った


マーレ:「がはぅ…!」


ジェバンニ:「それでは。失礼します」


マーレ:「ま、て…ジェバンニ…!!」


0:ジェバンニは窓から飛び去った


マーレ:(M)くそ…!追わなきゃいけないのに、足腰立たない…!くそくそ…!


0:列車の外

0:車にとびのるジェバンニ


ジェバンニ:「っ…。失礼します。いい車ですね。ルーファス社長」


ルーファス:「ああ、嫌味か。オープンカー、好きだろ。ドライブしよう」


ジェバンニ:「結構です。お嬢様はどこに」


ルーファス:「居場所は掴めてない。一度パリの空港まで移動する。」


ジェバンニ:「分かりました。」


ルーファス:「…は。」


ジェバンニ:「何か?」


ルーファス:「僕は、傷だらけの君が好きだな」


ジェバンニ:「…。そうですか。」


0:場面転換

0:下町


ガロ:「うおおおおおおおおお!」


カラス:「だああああああもう鬱陶しい!まじで斬っちまうぞ!!」


ガロ:「やれるもんならやってみろ!!」


0:窓の外から叫ぶ


ロイド:「がろおおおおおおおお!」


ガロ:「なんだよ!!!」


ロイド:「1回戦うのやめてくれ!!!」


ガロ:「断る!!こいつは1回ぶっ飛ばす!!」


カラス:「くそがっ。舐めやがって…!」


ジュリイ:「生きてましたの!!アンドンさん!死んでませんわ!もうピンピンしてますの!」


ガロ:「嘘つけーー!血みどろで倒れてんの見たんだ俺は!そんで!お前がやったって!お前の口から聞いたんだ!カラス!」


カラス:「いや、だから…!」


アンドン:「おーーーーーい小僧!生きてるぞ俺ァ!」


ガロ:「……。お?」


カラス:「はあ、はあ。ったく。やっと正気になりやがった。」


アンドン:「おーーい侍の兄ちゃん!さっきはボコボコに殴って悪かったな!あんたのタフさには驚きだ!やられたよ!」


カラス:「はあ。いいや。こちらこそ。久しぶりに強い奴とやれて楽しかったさ」


ガロ:「…ん?どゆこと?」


0:カラスは刀でガロを殴りながら話す


カラス:「あのな。俺はな。あのおっさん殺してねえんだよ。」


ガロ:「ん。いやでも。めっちゃ血が」


カラス:「ありゃ俺の血だ!!あのおっさん、あの見た目で結構やるぜ。」


ガロ:「なぁーんだよー。そうならそうと言えよなー」


カラス:「お前が全然話聞かなかったんだろうが!!」


0:場面転換

0:列車


ジャイロ:「がみがみがみがみっ。」


ノエル:「がみがみがみがみっ。」


マーレ:「おい、ジャイロ。」


ジャイロ:(^^ꐦ)


ノエル:(^_^ꐦ)


マーレ:「ジャイロっ。」


ジャイロ:「ああ!?なんだよ!このクソアマに人情の何たるかを教えてやらねえと気がすまねぇ!」


ノエル:「あんたマーレだろっ。目を覚ませっ。あんたアンドンに騙されてんだよっ。」


ジャイロ:「てめぇー。あのジジイがマーレを騙すわけねえだろっゴタゴタ適当抜かしやがって!」


ノエル:「お前は1回黙ってろ話をややこしくするなっ。」


ジャイロ:「てめぇーがややこしくしてんだろうがクソアマァ!」


マーレ:「ちょっとっ!」


0:殴った


ノエル:「まよねずっ」


マーレ:「静かにしろぉ!」


0:蹴った


ジャイロ:「けちゃぷ!」


マーレ:「言い合いしてる場合じゃない、頭冷やせ、バカ」


ノエル:「いったぁ〜い!!ぶった!ぶったぞ!」


ジャイロ:(M)な、なんだァこいつ〜!流石の元FBI〜!体捌きが伊達じゃねえっ。


マーレ:「それで。なんで朝まで一緒に居たあんたらが言い争ってる。あんたはウルカレットの回し人か」


ノエル:「回し人もなにも、私達は元々今、私が受けてる依頼を受ける予定だったんだ。でも、朝君が依頼を持ち込んだものだから、ジャイロと、あともう1人。ガロを派遣した。」


ジャイロ:「はあ!?ちょっと待てよ、お前のとこの依頼主、ウルカレット財団なのか!?」


ノエル:「ああ。そうだよ。」


ジャイロ:「じゃあなんだ、俺らが二手に別れた依頼は奇妙にも対立関係に並んだってことか」


マーレ:「どんな偶然だ…」


ノエル:「あー。読めてきた。さては私たち、知らず知らずの間に依頼達成からお互い遠ざけてきたわけか。」


ジャイロ:「そういう事になるな」


ノエル:「いやでもっ。マーレさんっ。あんたアンドンに騙されてるよっ。」


マーレ:「は?」


ノエル:「アンドンは組織拡大の為にあんたを誑かして、ギャング・サーカスに捕らえたんだっ。毒入りスープまで飲ませて…!」


ジャイロ:「はぁ??」


マーレ:「どういう伝わり方をしているかは知らないが。そんな事実は無い。確かにボスの作ったスープは毒と変わらないほど不味かったが。」


ノエル:「え…?」


ジャイロ:「なあ、ノエル。こりゃあれだ。片方から見た悪が、片方の正義ってやつだ」


ノエル:「いやでも!確かにジェバンニさんが!」


ジャイロ:「はぁ。しょうがねえ。じゃあ説明してやるよ。このマーレと、アンドンの間にあった超絶泣けるエピソード。真実ってやつを。いいよな?」


マーレ:「ああ。別に構わないが」


ノエル:「えぇ〜。本当に泣けんの〜?まじで〜?」


0:場面転換

0:下町


ガロ:「だっはははは!」


アンドン:「わはははは!」


カラス:「何がおかしい。殺されかけたんだぞ。俺はお前に」


ガロ:「いやぁ〜悪かったって!」


ロイド:「そんな偶然があるのか…」


ジュリイ:「現実は小説より奇なりというやつですわね。まさかお母様がそんな依頼をギルドに出しているとは…」


アンドン:「いやぁ〜こりゃ中々に愉快だっ。悪かったな、侍の兄ちゃん。まさかこのガキの連れだったとは」


カラス:「いや。いい。あの状況ならお互い矛を向ける。」


ロイド:「それで。どーするんだ」


ガロ:「あ?何がだ?」


ジュリイ:「だって、ガロンドールさんと、カラスさんの依頼内容は、お互いにぶつかり合ってしまいますわよ。」


カラス:「あー。」


ガロ:「確かに。」


アンドン:「あと、ジャイロと、あんたらの連れも心配だな。もしかしたら喧嘩してるかもしれねえ。ぷっ。おまえらみたいに」


カラス:「何笑ってんだよ」


ロイド:「それで。どうするんだ」


ガロ:「んー。どうするっつってもなぁ。どうする?カラス」


カラス:「俺は別にどっちでもいい。依頼に変わりはねえからな。」


ガロ:「じゃあ俺らと一緒に来いよ」


カラス:「俺は構わねえが」


ロイド:「おいおい、そんな簡単に決めていいのか…?」


ガロ:「そんなもん俺らが決めることだ」


アンドン:「わはははっ。俺、こいつら好きだなぁー。」


ジュリイ:「一応、ウルカレット側の依頼を放棄する、という事になります。それはそれで面倒な事になり得ますわよ。」


ガロ:「んー。そっかあ。向こう、どんな感じだった?」


カラス:「そりゃ大層心配してたな」


ジュリイ:「…」


ロイド:「なんでもいいが、早く決めてくれ。21時半までには空港につかなきゃいけない。今から出てもギリギリだ。」


ガロ:「うーーーん。」


0:ガロは暫し悩んだ


ガロ:「よし。あいつらに相談しよう」


アンドン:「あいつらってーと、お前らのお仲間か?」


ガロ:「そうだっ。ノエルが何処にいるかは分かんねえけど、とりあえずジャイロに」


0:ガロは携帯を取りだした


ガロ:「…。使い方わかんねえ」


ロイド:「あーーもう!貸せ!」


ガロ:「だはは、悪ぃなあ」


0:場面転換

0:列車


ノエル:「うわぁあはんはんはぁんっ。おおっ。おあっ。おおおおぉんっ。」


ジャイロ:「ひーーん。ひぃーーん。およよよ。何度聴いても泣けるぜェ〜」


ノエル:「こりゃ泣ける。泣けるなぁ〜。」


マーレ:「お前たち、仲良いんだな。まあ、そういう訳で。私は別にボスに取り入れられたわけでも、利用されているわけでもない」


ノエル:「随分信頼してるんだな」


マーレ:「ああ。私の親のような人だからな。」


ノエル:「うおおおおおおんっ。」


ジャイロ:「うおあああああんっ。」


マーレ:「うるさい」


0:ジャイロの携帯が鳴る


ジャイロ:「ったく。誰だよこんな時に。ハァイもしもし。こちらジャイロさん」


ロイド:「ああよかった。ジャイロ。今大丈夫か。」


ジャイロ:「その声。ロイドか」


マーレ:「…!若は無事か!」


ロイド:「ああ、マーレも一緒なんだな。よかった。こっちは無事だと伝えてくれ」


ジャイロ:「大丈夫だと」


マーレ:「そうか、よかった」


ノエル:「そいつが諸悪の根源かぁ〜!」


ロイド:「ん。他に誰かいるのか?」


ジャイロ:「ああいや。ほっといてくれ。それで、どうした。こりゃガロの番号だろ」


ロイド:「ああ、変わるよ」


ガロ:「おぉ〜!ジャイロ!元気か!」


ジャイロ:「約40分ぶり。元気だよ。超元気」


ガロ:「こっちでカラスと合流したんだ」


ジャイロ:「は?うんこと?」


ガロ:「おう。なんかアンドンのおっさんと喧嘩してた。」


ジャイロ:「あぁ〜。なるほど。入れ違いだったわけか。ノエル、糞アホナマクラがガロと一緒にいるらしい」


ノエル:「えっ。ガロもいんのか!ちょっと貸せ!もしもしもしもしガロぉ!」


ガロ:「あれ。ノエルかー?なんだよ、お前らも一緒に居たのか!」


ノエル:「お前ら!!なんでそんな奴匿ってんだ!早く差し出せ!」


ガロ:「やだよ。良い奴だぞ、こいつら。」


ノエル:「そんな訳ねえだろ!」


ガロ:「ほんとだって。な?カラス」


カラス:「あー。まあ。悪い奴らではねえな」


ガロ:「ほら」


ノエル:「信用できるかぁーー!そのロイドってやつが!ジュリイお嬢様を誑かして攫ってったんだ!いい様に言いくるめられてるんだよ!」


ロイド:「酷い言いようだな」


ジュリイ:「なんとも。変なつたわり方をしてますわね。」


ガロ:「そんな事ねえって!こいつらの話聞いたらそんな事言えなくなるぞっ。絶対!」


ノエル:「嘘つくな!そんなわけないだろ!」


ガロ:「いいから聞けって」


0:場面転換

0:パリ 国際空港


エストック:「…。」


ルーファス:「会長。お疲れ様です。」


ジェバンニ:「お疲れ様です。」


エストック:「ああ。遅くなってすまない。状況を聞こうか」


ルーファス:「申し訳ございません。お嬢様の足取りは未だ掴めていません。」


エストック:「20分前の通信はなんだったんだ。ジュリイを見つけたと聞いた以降続報を聞いてないが」


ジェバンニ:「パリ行きの列車内でお嬢様に変装したマーレを警護官が誤報した様です。たかだかギャングに遅れを取り、お恥ずかしい限りです。」


エストック:「またマーレか。まあいい。過ぎた事を言及するつもりは無い。ギルドの面々はどうなった。」


ジェバンニ:「一人はギャング・サーカス事務所にて待ち伏せしていたアンドンの対応に。もう一人は先程のマーレの件で置いてきてしまいました」


エストック:「…置いてきた?」


ジェバンニ:「なにやら言い争いをしていたので、私も列車から車へ飛び移った事もあり、同行を促す余裕がございませんでした。申し訳ございません」


エストック:「また無茶をする。さて、こうなってはジュリイの居場所を割り出すのはまた一苦労か。今日の出立は諦めたか」


ルーファス:「ありえません。」


エストック:「なぜ言い切れる」


ルーファス:「今までは我々が本件を表沙汰にしまいと、消極的な動きで準備を整えてきましたが。今日。公共交通機関での戦闘含め、既になりふり構っていられなくなった。明日以降はより強い厳戒態勢を敷くことになるでしょう。必要であれば空港、公共交通機関の全てを停めます。アンドン・フォーキンスはああ見えて頭の回る男だ。その辺は容易に想像がつくでしょう。最悪、我々が誘拐事件と銘打って中央やギルドが出張ってくる事を最も恐れるはずです。」


エストック:「…なるほど。実行日を延ばせば首が締まるのは向こうの方が先か。であれば今日勝負を仕掛けてくる。と。些か相手依存な考えだが。今回ばかりはそれで良い。つまり、今日取り逃しさえしなければ良い。と言うことだな」


ルーファス:「流石でございます。既に中央、並びにギルドへの手配も済んでいます。明日以降、リベール総捜索をジェバンニが手配しました。一晩で。この際、多少の心情悪化は間逃れません。であれば、一気に叩く他ない。僕はそう考えますよ」


エストック:「手が早いな。ありがとう。最も。それが世界規模となると資金も経済世論にも大きく影響を与える。私達も長期戦は望ましくない。本当に、最悪の最善手だ。やはり、今日が賭けだな。」


ルーファス:「いえ。勝手な判断、失礼致しました。」


エストック:「構わない。私が君でもそうする。」


ルーファス:「ありがとうございます」


エストック:「警護官の配置を確認してくる。今日。穏便に事を済ませられなかったら。私もそれなりの覚悟を持って臨む他無さそうだ。少なくとも明日の食事会は延期だな」


ルーファス:「まったくですね。アーヘン料理。楽しみだったんですが。」


エストック:「空港外部周辺の配置は任せるが、いいか。」


ルーファス:「はい。お任せ下さい」


エストック:「ああ。じゃあ、頼んだよ。ジェバンニ。ルーファス」


ルーファス:「はい。」


ジェバンニ:「はい。」


0:エストックは空港内に去った


ルーファス:「…。はあ。本当に。手のかかるお嬢様だ。」


ジェバンニ:「そうですね。では、私も配置へ」


ルーファス:「なあ。ジェバンニ」


ジェバンニ:「はい。なんでしょう。」


ルーファス:「お前。やっぱり僕と一緒に来ないか。ギルドと中央への手の早さは、そこら辺の社員よりも優秀だ。ボディガードに留まるには勿体ない」


ジェバンニ:「貴方も諦めが悪いですね。私には。お嬢様をお守りする役目がありますので。」


ルーファス:「お前こそ。いつもお嬢様お嬢様と。諦めが悪いな」


ジェバンニ:「よして下さい。私はただのボディガードです。それ以上でも以下でもありません。」


ルーファス:「お嬢様の存在が、お前の足枷になっていると。僕は思う。僕達の目標は、旦那様の作ったウルカレットを守り、成功への手助けになることだったじゃないか。いつまで子守りをしているつもりだ」


ジェバンニ:「…。お嬢様こそ。生きる旦那様の意思です。」


ルーファス:「仕事熱心な事だ」


ジェバンニ:「貴方にとっては仕事でも。私には違うんですよ、ルーファス。」


ルーファス:「…。そうか。悪かったな。こんな話をして。」


0:場面転換

0:列車内


ロイド:「と、まあ。こんなわけだ…」


ジュリイ:「お恥ずかしいですわね、こんな話。お電話でなんて」


ノエル:「うおおおおお!青春だああああ!!」


ジャイロ:「そうだろ!?紛うことなき愛!!セックスしろセックス!!」


ノエル:「失礼だな!!純愛だろ!」


マーレ:「うるさい。」


ノエル:「こんなの!協力したくなっちゃうよぉ〜!!ちょっと一日考えない!?」


アンドン:「まあだが。向こうさんも躍起になる頃だっていうのも間違いはねえだろう。逃げ出すなら今日がラストチャンスだ。」


ノエル:「ぐわはーーー!でも私もそう思う!」


ガロ:「でさ。俺ら。こいつらの手助けしたいんだよ。でもそうしたらそっちの依頼がダメになっちまうじゃん。だから相談」


ジャイロ:「やっぱり俺は断然ギャング派だな!!」


ノエル:「珍しいな、お前なら金目当てでウルカレットの肩を持ちそうなものだと思ったけど」


ジャイロ:「人情でしか動かねえ場面ってもんがあんのよ。人生には」


ノエル:「うーーーん。でもなあ。やっぱり会長の気持ちもめちゃ分かるんだよなぁ」


ガロ:「ああ。俺もお前らの話聞いて思った。ジュリイのかーちゃんの気持ちも分かる。」


ジャイロ:「こればっかりは、リーダーが決めろよ。お前が選ぶ方に着いていくさ。」


ガロ:「俺が選んでいいのか?」


ノエル:「お前以外誰が決めるんだよ。意見は完全に割れて、しかもどっちの気持ちもわかると来たんだ。後は、どっちを冒険譚に書いた時。お前が恥ずかしくないかだよ。ガロ」


ガロ:「…」


カラス:「まあ。どの道ここまで関わっちまったんだ。今更お手上げ御免だなんて胸糞悪い終わり方は出来ねえよ。」


0:暫しの沈黙


ガロ:「俺。ロイドとジュリイの力になりてぇ。」


ロイド:「ガロ…」


ガロ:「その代わり。ジュリイ」


ジュリイ:「は、はいっ。」


ガロ:「ちゃんとカーちゃんに、行ってきますって言えよ」


ジュリイ:「…え?」


ガロ:「こいつらももうガキじゃねえんだ!自分の事は自分で決めるっ。ただ、親が居るなら、行ってきますとただいまくらい言わねえとな。」


ジュリイ:「…。でも、今日お母様に会える保証なんて…」


ガロ:「どーせ空港で待ち伏せしてんだろっ。あとはお前が言いたいなら言えるはずだ。どーすんだ。もし言わねえなら、俺はどっちも手伝わねえ。お前の好きなようにしろ。」


ジュリイ:「きっと。お母様は、私の事なんてどうでもいいんですの。意味なんてありませんわ。私がロイドと交際した後の、会社のことしか考えてませんの」


ガロ:「だーーかーらっ。そんなのどーーでもいいんだって。結局お前がどうしたいかだろっ。」


ロイド:(回想)「お前はお前だ。俺じゃない」


エストック:(回想)「お前は私の娘だろう。」


ジュリイ:「…い。」


ガロ:「い?」


ジュリイ:「言いますわっっ。言いたいですわっっ。行ってきますって!もう子供じゃないんだって!!言いますわっ!」


ガロ:「…はは。よし。お前ら!!俺!こいつらの力になりてぇ!いいか!」


0:ガロとジュリイ以外笑った


ノエル:「ぷっ。」


ジャイロ:「ははははっ。」


ノエル:「はははは。」


カラス:「は。」


マーレ:「はは。」


アンドン:「わはははははは!」


ロイド:「はは。あんた。天然ものの馬鹿だな」


ガロ:「あ?なんで悪口言うんだよ」


ジャイロ:「条件が!行ってきますって!意味わっかんねえ!」


ガロ:「なんか文句あんのかっ。」


ノエル:「いーや、まったくもって意味の分からない、最高に不出来なアンサーだと思うっ。」


ガロ:「なんなんだよ。で、どーすんだよ。乗るのか。乗らないのか。」


ジャイロ:「もちろん。」


0:3人は同時に喋る


ノエル:「乗った!」


ジャイロ:「乗ったぜっ。」


カラス:「乗った。」


ガロ:「っしゃっ。改めて。準ギルド「アホレンジャー」一同!お前らの依頼、受けさせてもらう!」


ジュリイ:「あ、あほ…?」


アンドン:「わはははは!俄然!気に入った!!」


ロイド:「どこまでもふざけた奴らだよ。リベールにあんたらみたいな人が居たなんてな」


アンドン:「まったくだ。いい巡り合わせに出会えたもんだなぁ。ロイド」


ロイド:「ああ。本当に」


ジュリイ:「…。皆様っ。改めましてっ。よろしくお願いしますわっっ。」


ロイド:「こほんっ。よろしく頼むっ。」


ノエル:「よし!20時38分!作戦開始だ!」


アンドン:「よし!特急列車で片道1時間かかる!車だと倍!」


ロイド:「…え?」


ジュリイ:「ええ?」


ガロ:「タイムリミット、何時だっけ」


アンドン:「21時半だな!最終便だ!」


ノエル:「それって、つまり…?」


アンドン:「わははは!雑談してる間に!間に合わんくなっちまったな!わははは!」


0:静寂

0:一同、一斉に口を開いた


ノエル:「ええええええええ!?」


ジャイロ:「ええええええええ!?」


カラス:「あーあ。」


ロイド:「ええええええええ!?」


ジュリイ:「ええええええええ!?」


ガロ:「ええええええええ!?」


マーレ:「えぇ…」


アンドン:「わははははは!参ったなぁーーーこりゃ!」


0:場面転換

0:パリ 空港


ジェバンニ:(M)思い出すのは。日々の所作。


エストック:「皆。配置に着いたか。」


ルーファス:「鉄道方面。抑えました。」


ジェバンニ:「リベール方面。抑えました。」


エストック:「…。20時40分。ギャング構成員マーレを含む構成員の乗った特急列車がマルセイユより到着する。その他、空港内外にも数十人の構成員が確認されている。」


ジェバンニ:(M)湯を沸かし、62度程が好ましく、甘ければ甘い程よい。紅茶の横には必ずセブンスクッキーを4つ添える。


エストック:「必要であれば、戦闘も視野に入れて貰うが、本件の目標はあくまでジュリイを取り返す事に限る。極力、民間人への被害は出さないよう心がけてくれ」


ジェバンニ:(M)これを。ボディガードの仕事というのだろうか。


エストック:「作戦行動まで5分を切った。」


ジェバンニ:(M)私の知る貴方は、優しく。かくも弱い。


0:回想

0:10年前


ジュリイ:「私。ジュリイ。」


ジェバンニ:「…。ジェバンニ・ハンスだ。」


ジュリイ:「貴方が、私のボディガード?」


ジェバンニ:「そうだ。言っておくが。俺は、あくまで旦那様に拾われてこの家に来ただけだ。俺の役目はお前を守ることだが。お前に従うわけじゃない。」


ジュリイ:「お父様は、もう死んじゃったの」


ジェバンニ:「知ってるよ。そんなの。知ってる。」


ジュリイ:「ジェバンニは、お父様が好きだった?」


ジェバンニ:「恩人だ。感謝している。」


ジュリイ:「…」


0:ジュリイは背伸びをしているが、届かない


ジェバンニ:「何をしている」


ジュリイ:「頭を、撫でようと、思って」


ジェバンニ:「ふざけるな。何を考えてる」


0:ジュリイは背伸びを辞めた


ジュリイ:「だって。悲しい時は、頭を撫でてあげるって。本に書いてあったから。私はお父様の顔も覚えてないけど。私のお父さんを好きでいてくれて、ありがとうって思ったから。」


ジェバンニ:「…。なんだそれは。余計なお世話だ。」


ジュリイ:「…へへ。余計なお世話で、ごめんなさい。」


ジェバンニ:(M)初めて会った時から。違和感を覚えていた。


ジュリイ:「ジェバンニ、ジェバンニ」


ジェバンニ:「なんだ。俺は今忙しい」


ルーファス:「おいおいジェバンニ。お嬢様に対してなんつー態度だよ」


ジェバンニ:「知るか。俺が仕えたのは、旦那様ただ一人だ。俺に与えられたのはこいつの命を守る事。それだけだ。それで、何の用だ。」


ジュリイ:「あ、えっと。ごめんなさい、お湯が沸いていたので、大丈夫かな、と」


ルーファス:「お前のミスじゃないか。謝れ」


ジェバンニ:「…。悪かった。」


ジュリイ:「いいんです、余計なお世話だったら、ごめんなさい」


ルーファス:「というか。湯なんか沸かしてどうするつもりだったんだ。給仕に転職でもする気か」


ジェバンニ:「黙れ。」


0:ジェバンニは茶葉箱隠すように持っている


ルーファス:「……は。お嬢様、僕の同僚が、すみません。あいつぁ自分の気持ちを表現すんのが下手なんですよ。決してお嬢様に敵意を持っている訳じゃないんですけどね」


ジュリイ:「大丈夫です、わかってます。」


ジェバンニ:(M)初めて入れてみた紅茶は。余りにも拙く。提供まで一時間もかかった。


ジュリイ:「紅茶、ですか……?」


ジェバンニ:「俺のを淹れるついでだ。」


ジュリイ:「…。ありがとうございますっ」


0:ジュリイは紅茶を飲んだ


ジェバンニ:(M)あの顔を。今思い出したら。あの紅茶は、随分と渋かっただろう


ジュリイ:「……」


ジェバンニ:「ど。どうだ」


0:ジュリイは嫌な顔ひとつせず紅茶を飲み続けた


ジュリイ:「ありがとうございます。とっても。美味しいですわっ。」


ジェバンニ:(M)貴方は。自分の気持ちを言わない。それは優しさなのか。かくも。


0:回想終了


エストック:「以上だ。私情に巻き込んで済まない。」


ジェバンニ:(M)ーーーお慕いしております。お嬢様。


エストック:「皆、よろしく頼む」


ルーファス:「了解しました。」


ジェバンニ:「了解しました。」


0:場面転換

0:列車内


ノエル:「…。さて。そろそろ着くな」


マーレ:「本当にあんな作戦で挑むつもりか」


ジャイロ:「それしかなかったんだ。賭けだよ、賭け」


マーレ:「あんなの賭けどころじゃないだろ…」


ノエル:「成功するかしないかは私達にかかってる。気張っていくよ」


ジャイロ:「おう。当然だ」


マーレ:「不安だ」


エストック:(アナウンス)パリ。パリに停車します。


ノエル:「…し!行くよ!」


0:ドアが開いた


男:「居たぞ!マーレだ!」


マーレ:「やっぱり待ち伏せか…!」


女:「捕まえろ!全員!6号車付近まで来い!」


ノエル:「走れ!ジャイロ!!」


ジャイロ:「おう!ダッシュ!!ダーーッシュ!」


男:「一人走って逃げだ!報告にあったアロハシャツだぞ!」


女:「逃がすなーー!」


マーレ:「待て待て、お前らの相手は私だよ!」


0:マーレは警護官達を蹴り飛ばした


男:「ぶふへっ」


女:「おこがっ」


ノエル:「ナイス!!私達も急いで空港に行くよ!」


マーレ:「分かっている!」


0:場面転換

0:空港


ジェバンニ:「マーレ達が到着したそうです。異能狩りの姿も確認しました。」


ルーファス:「ギルドの元探偵はどうした。同じ車両に置いていったんだろう」


ジェバンニ:「情報がありません。簀巻すまきにされたかもしれませんね。」


ルーファス:「冷静な声して残酷なことを言うな」


ジェバンニ:「私も出ます。」


ルーファス:「ああ、頼んだ」


0:場面転換

0:駅前

0:走るジャイロ達


ジャイロ:「さーーて、もうちょい向こう行っとくかァ!?」


ノエル:「多分リベールから月に向かって飛んだらもうちょい森の方に着陸するはずだ!」


マーレ:「ガバガバだな」


ジャイロ:「しゃあねえだろっ。」


ノエル:「とにかく急ごう!私たちがヘマったら皆死んじゃうんだ!」


ジェバンニ:「おや。」


ジャイロ:「…!」


ジェバンニ:「お久しぶりですね。ノエルさん」


0:ジェバンニはジャイロを蹴った


ジャイロ:「ごはぁあっ!」


ジェバンニ:「どうして、彼らと行動を共にしているのか。ご説明頂いてもよろしいでしょうか。」


ジャイロ:(M)なんだぁあ!?こいつ!絶対にパンピーじゃねえ!いってええええ!


ノエル:「あ〜!どうもジェバンニさん!ご無沙汰してます〜!酷いじゃないですかぁ置いてくなんて〜!」


マーレ:「ノエル、下がって」


ノエル:「へーーー」


0:ジェバンニが蹴り、マーレが防いだ


ジェバンニ:「…。また、貴方ですか。」


マーレ:「こっちのセリフだ。ノエル、ジャイロ、先に行って。あんまり長くは持たない」


0:二人は台詞を待たず逃げ去る


ジャイロ:「頼んだぜぇ〜!マーレ!」


ノエル:「ひゃぁぁああっ」


マーレ:「逃げ足早」


ジェバンニ:「やっぱり仲間内でしたか。どういう状況かは、聞く暇もなさそうだ」


マーレ:「説明しようか」


ジェバンニ:「私に。その暇がないと言っている」


0:場面転換

0:下町

0:車に乗る三人


アンドン:「こりゃあ中々、大胆だなぁ」


ロイド:「ほほほほほ、本当に大丈夫なんだろうなっ。」


ジュリイ:「信じるしかありませんわっ。アーメンっ!」


ガロ:「しっかり縛れてるか?」


カラス:「ああ。最悪一生車を背負って生活するくらいにはがっちり縛った」


ガロ:「おっけー、さんきゅう。」


カラス:「ああ。あと運とお前に任せた」


0:カラスも車に乗った


ガロ:「くっそ。うごきづれぇ…。全員乗ったな!」


ロイド:「や、やや、やるなら早くしてくれ!死刑囚な気分だ!」


アンドン:「人生で一度、味わえるか味わえないかのジェットコースターだ」


ジュリイ:「心臓が爆発しそうですわ…!」


カラス:「いいぞー。」


ガロ:「よーーーーしっ。」


0:回想

0:10分前


ノエル:「ガロ。お前の異常性、足にも使えないか?」


ガロ:「足ぃ?」


ノエル:「いっつも拳で殴ってるけど。もしあの異常性が脚力にも影響できるとしたら、噴射気も驚きのエネルギーを放出できると踏んだ」


ジャイロ:「は?それでロケットみてぇに飛んで行くってか?」


ロイド:「いやいや、そんなコメディドラマじゃあるまいし」


ノエル:「その通りだ」


ジャイロ:「(゜ロ゜)」


ロイド:「(゜ロ゜)」


0:回想終了


ガロ:「GRIDグリッドBORROWボロウ…!!」


ロイド:「ああああああこわいこわいこわいこわい」


ジュリイ:「ひーひーっふーっ。ひーひーふっ。」


アンドン:「肝っ玉小さいなぁ。それでも俺の息子か」


カラス:「うるせえ。全員頭を背もたれから話すなよ。頭かち割るから」


ロイド:「ちょっ待っーーー」


0:ガロの足元の地面が割れる


ガロ:「ShiftシフトBURSTバーストッッツ!!」


ロイド:(M)刹那。鼓膜が破れそうな爆音が鳴り響き、窓の外が砂と石だらけになった。内蔵が置いていかれるような感覚を味わった後。俺達はーーー


ジュリイ:「きゃああああああああああ!!」


ロイド:「うぎゃあああああああああ!!」


アンドン:「うおおおおおおおおお!!」


カラス:「うるせえ」


ロイド:(M)空を、飛んでいた


ガロ:「だーっははは!行けた行けた!ラッキーー!目指せ、パリ空港!!行くぞお前らあああ!」


ジュリイ:「きゃああああああああああ!!」


ロイド:「うぎゃあああああああああ!!」


アンドン:「うおおおおおおおおお!!」


カラス:「うるせえっつってんだよ!!!」


0:場面転換

0:パリ


ジェバンニ:「お前は!」


マーレ:「ごほっ。」


ジェバンニ:「いい加減にっ!」


マーレ:「がはっ…!」


ジェバンニ:「しつこいんだ、よっ!」


マーレ:「ぐっ…!お前も、だろうが!」


ジェバンニ:「…っ。この…!」


0:何かの音が聞こえる


ジェバンニ:「…。なんだ、この音…!」


マーレ:「…!まじでやりやがった…!」


0:場面転換

0:森付近


ジャイロ:「この辺りか!」


ノエル:「ジャイロ!携帯鳴ってる!」


ジャイロ:「はいはい、もしもしぃ!なんだァうんこ!」


カラス:「そろそろ墜落する。」


ジャイロ:「余裕こいてんじゃねえよスカタン!何が見える!」


カラス:「森だ」


ジャイロ:「森のどの辺に落ちる!」


カラス:「…。ビンゴ。お前がいる辺りだな」


ジャイロ:「はっ。あれか。」


ロイド:「ぎゃあああああああああ!墜落する!」


ジュリイ:「終わりましたわ!終わりましたわ!」


アンドン:「わははは!スリリングだな!」


ガロ:「おー!あれジャイロじゃねえか!おーーい!ジャイローー!」


ジャイロ:「まったく。マジでやってのけるのがお前のすげえところだよ、相棒…!」


ノエル:「コンマ1秒でもズレたらお前もあいつらも死ぬぞ!ちゃんとしろよジャイロ!」


ジャイロ:「わぁーってる!ったく、よくもまぁこんな無茶な戦法思いつくもんだ!」


ジュリイ:「きゃああああああああああ!!」


ロイド:「うぎゃあああああああああ!!」


アンドン:「うおおおおおおおおお!!」


ジャイロ:「ーーーAdsorptionアドソープション!!」


0:ジャイロが車を右手で触ると、車は衝撃を失い、その場に落ちた


ロイド:「うおおっ!?」


ジュリイ:「きゃあ!」


アンドン:「おっっふ。」


カラス:「よくやった。アロハ」


ガロ:「はっははー!着いたー!」


ジャイロ:「はぁ…!はぁ…!あっぶねええ!死ぬかと思った!!まじで!!」


ノエル:「よくやったお前ら!!」


ロイド:「あれ。生きてる…?」


ジュリイ:「生きてますわね…」


アンドン:「これも異常性か。すげえんだな、あんたら。」


ガロ:「いやぁ〜それほどでも」


0:全員車から降りた


ジャイロ:「あ〜。あと15分で飛行機出る!ぼさっとすんな!」


ノエル:「手、貸すよ」


ジュリイ:「ありがとうございます。」


ルーファス:「驚いた。」


ノエル:「…!」


ルーファス:「異音がすると思ってきてみたら。どんなカラクリだ?準ギルド。」


ジュリイ:「ルーファス…!」


ルーファス:「お嬢様、ご無事で何よりです。それで、訳を聞かせてもらってもいいか。ノエル・ベルメット。カラス」


ノエル:「い、いやぁ〜これは…」


カラス:「どうもこうも。見て分かるだろ。俺らはコイツらに力を貸すことにした」


ノエル:「がはーーっ。」


ルーファス:「そうか。残念だ。腕利きの異常体も、名探偵も。犯罪の片棒を担ぐわけだ」


ジュリイ:「違いますわ!私が、お願いしたんですの!」


ルーファス:「お嬢様。これは拉致罪にあたります。」


ジュリイ:「同意の元です!」


ルーファス:「保護者が捜索願いを出しています。」


ジュリイ:「私はもう子供じゃありません!」


ルーファス:「…」


ジュリイ:「沢山迷惑をかけて、ごめんなさい。でも、今までこんなワガママを言ったこと、ありません。私だって。私の人生を生きたいと思ったんですの。だから、そこをどいて下さいまし」


ルーファス:「ああ。ご立派になられた。もちろん。悪い意味で」


ジャイロ:「よく言ったぜ、お嬢様。」


カラス:「先に行きな。ここは俺が持とう」


ジャイロ:「は?俺だろ」


カラス:「俺だ」


ロイド:「…っ。ジュリイ、急ごう!」


ジュリイ:「は、はいっ。よろしくお願いしますわっ。」


0:二人は走り去った


ルーファス:「いいやいいや。そういうのは望んでいない。」


ジャイロ:「望んでようがなかろうが関係ねーってんだよ!」


ルーファス:「どけ。」


0:蹴った


ジャイロ:「ごほっ…!」


カラス:「なにやってんだ、邪魔だアロハァ!」


ルーファス:「次から次へと」


0:殴った


カラス:「ぶはっ…!」


ルーファス:「一応。昔は名の通った軍人だったんだ。舐めてもらっちゃ困る」


ノエル:(M)あの二人があんなにあっさり…!?まじかよあいつ!!


ガロ:「あれ、足、動かねえ」


ノエル:「ガロ!何やってんだ!早く行くぞ!」


ガロ:「なんか、動けねえ」


ノエル:(M)〜〜〜!次はなんだ!異常性の反動か!?でも今まで動けないなんてこと無かっただろ…!


職員:「こっちだー!こっちにいたぞー!」


ノエル:「増援か…!って、やばい人数来たぞおいおい!」


アンドン:「うぉおおおおおらぁあああああ!!」


0:アンドンは警護官をなぎ倒した


職員:「だばべーーーーっ!」


アンドン:「ひと暴れの時間だァ!アンタら!行ってやってくれ!!」


ルーファス:「アンドン・フォーキンス…!」


ジャイロ:「おいおい、おっさん!一人で平気かよ!」


カラス:「安心しろアロハ」


ジャイロ:「あぁ?」


カラス:「一度戦ったからわかる。あのジジイは強いぞ。お前より」


ジャイロ:「ふざけんな。殺すぞてめえ」


ノエル:「あーーもういいから!早く行くぞ!誰かガロおぶってやって!」


ジャイロ:「ったく、しゃあねえな…!ほれ、行くぞガロ!」


ガロ:「おお、わりぃな。おっさーん!気ぃつけろよ!」


アンドン:「わははは!任せろ!」


ルーファス:「ミスミスと逃がすわけがないだろ…!」


アンドン:「おっっと!」


0:蹴った


ルーファス:「ぐぁっ…!てめぇ…!!」


アンドン:「悪いな、息子の花舞台なんだ。邪魔しないでやってくれよ」


ルーファス:「老兵が現役気分か。」


アンドン:「言ってろ。クソガキ」


0:場面転換

0:空港


ロイド:(M)ーーまた。地面に顔がくっついてやがる。いっつもそうだ。いっつも。


ロイド:「はぁ…はぁ…。ごほっ…!くそ、ジュリイ…!」


ジュリイ:「ジェバンニ!もうやめて…!」


ジェバンニ:「…。はい。やめます。」


ロイド:(M)この場で。俺が一番、弱い。


ジュリイ:「…お願い。そこを、退いて。」


ジェバンニ:「……。断ります。」


ロイド:(M)この場でっ。俺が一番…!ジュリイを守れてない……!


ジュリイ:「…っ。そこを退いて!」


ジェバンニ:「貴方が。私にそこまで強く何かを懇願するだなんて。初めてですね。お嬢様」


ロイド:(M)このまま、意識を失っちまったら楽だろうな。自分に嘘をついて、逃げちまえば楽なんだろうな。でも。どんだけダサくても。情けなくても。自分を曲げちゃダメだ。


ジェバンニ:「まだ、立ちますか。」


ジュリイ:「…ロイド」


ロイド:(M)それが。俺が、ロイド・フォーキンスである証拠なんだ……!


ジェバンニ:「そんなボロクズになってまで。ご執心ですね。」


ロイド:「ジェバンニとか言ったか…っ。あんたの話は、散々、ジュリイから、聞いてたよ。出会い頭、ボコボコにしてくるようなやつだとは思わなかったけど、噂通り、そこらの不良とは訳が違うんだな」


ジェバンニ:「…。元はと言えば、全部あなたのせいなんですよ。ロイド・フォーキンス。」


ロイド:「なにが、だよ。」


ジェバンニ:「貴方が余計な入れ知恵さえしなければ、会長がお気を煩われることも無かった。私達も普段の仕事がある。そんな中、こんな事もしなくて良かったんです」


ロイド:「はっ。知ったこっちゃねえな。そこどけよ、イケメン」


ジェバンニ:「…。どうして。貴方はそんなに弱いのに。虚勢を張るんですか?」


ロイド:「あ…?」


ジェバンニ:「なぜよりにもよって。貴方なんでしょう。」


ロイド:「何の話だよ」


ジェバンニ:「お嬢様は、私たちの宝なんです。貴方みたいな何処の馬の骨とも知れないばかりか、反社会的勢力のゴミクズが。なぜお嬢様を連れて行けると思い上がってしまったんですか?」


ロイド:「…そんなもん、お前が決めるな…!」


ジェバンニ:「…。準ギルドの肩入れがあったそうですが。貴方達が何を巻き込み、何を敵に回したか。お分かりになられてないんですね。あなた達が敵に回したのはウルカレット財団。世界に並ぶ大企業グループです。」


ロイド:「…」


0:場面転換


ノエル:「こっちだー!こっちに休めるところがある!」


ジャイロ:「ガロてめぇ!大丈夫なんだろうな!」


ガロ:「おう!元気は元気だ!」


カラス:「追ってきてる!早く行け!」


ノエル:「わかってるっつーの!」


ジェバンニ:『貴方のせいで、彼ら準ギルドは立場を失うでしょう。貴方のせいで、ギャング・サーカスは解体されるでしょう。』


0:二人は激しい戦闘を繰り広げている


ルーファス:「ははははは!耄碌したなぁ!アンドン・フォーキンス!」


アンドン:「黙ってろよクソガキぃ!」


ルーファス:「もう諦めたらどうだ。今のあんたじゃ僕には敵わない!分かるかっ、敵じゃないって事なんだよ!」


アンドン:「ごほっ…!」


ルーファス:「これがウルカレットを敵に回すという意味だ!よぉく覚えておけよ、ギャング・サーカス!自由と無秩序は違う!勇敢と無謀は違う!」


ジェバンニ:『理想と夢想は違う。履き違えるな。お前達の自由で、どれ程の人が迷惑をする』


ルーファス:「どれだけの人間が巻き込まれる」


ジェバンニ:『お前達の我儘に付き合っていられるほど。』


ルーファス:「暇じゃないんだよ。大人は。」


アンドン:「……。はっ。」


ルーファス:「何がおかしい」


アンドン:「うるせえよ。」


0:場面転換


ロイド:「うるせえよ。話なげーな。大人は」


ジェバンニ:「……馬の耳に念仏でしたか。」


ロイド:「俺らだってな、あんたが思ってるほど餓鬼じゃねえんだ。」


アンドン:『あいつらが何を巻き込んだかだなんて、そんなもんあいつらが一番。分かってる。』


ロイド:「そうしてでも。勝ち取りたいものだってだけの話なんだよ。こりゃあ。」


0:回想

0:一年前


アンドン:「わっははは!」


マーレ:「ボス。大人気ないぞ」


アンドン:「心はいつでも少年だ」


ロイド:「……ごほっ……!まじで手加減なしかよ……!」


アンドン:「あるはずが無いだろ。惚れた女の為に、ギャングのボス一人ぶっ飛ばせなくてどうする。言ったはずだ。ここで俺を認めさせる事が出来なきゃ。お前とは縁を切る。」


ロイド:「はっ。こっちから願い下げだよ」


0:殴りかかった


ロイド:「こんのクソジジイっ!!」


アンドン:「いてっ。父親に向かってなんだその口のきき方はーーーっ!」


0:殴った


ロイド:「ぼへみあんっ。」


マーレ:「おお。顎に入った」


ロイド:「げほっ。げほっ。」


アンドン:「父さんな。あんまり息子のそう言う事情にとやかく言いたくない。気まづいし。だが、今回ばかりは言わせてもらう。俺達の立場と。ウルカレットのガキの立場。その間に出てくる問題を、お前一人で尻拭えんのか?」


ロイド:「舐めんなよクソ親父!拭えるに決まってら……!」


アンドン:「言うのは簡単だ。だから、俺に示して見せろ。父さん、息子が心配だ」


ロイド:「…はっ。なんだよ、今更になって。父親面かよ。」


アンドン:「……」


ロイド:「今まで、俺の世話は全部マーレがやってくれたっ。学校で俺がいびられてても、飯も作らねえっ、アンタはバカ笑いするだけで、何にもしてくれなかった!てめぇのガキ一人面倒見れてねえのに!今更俺をガキ扱いしてんじゃねえっ。」


マーレ:「ロイド」


ロイド:「何が惚れた女の為に示せだよ!!アンタがギャングなんかやってるからっ!母さんは死んだんだ!アンタがギャングなんかやってるから、俺がギャングの息子だから、自由がねえって言うのかよ!!ちょうどいい機会だ、あんたには言いたいことがーーー」


0:言葉をさえぎってマーレがロイドの顔面蹴る


ロイド:「がぶっ……!」


マーレ:「今の言葉を撤回しろ。ロイド」


ロイド:「…っ。なんだよ。お前も結局、ジジイの味方なんだな。」


マーレ:「今はそんな話してない。今すぐ発言を取り消せ。」


ロイド:「だってそうだろ!!産まれた時にゃあ俺はギャングの息子だった!!皆ボス、ボスってっ。結局お前だって!ジジイのご機嫌取りで俺の世話してるだけなんだろうが!」


マーレ:「ふざけんなっ。私はーーー」


アンドン:「ロイド」


ロイド:「……なんだよ。クソジジイ」


アンドン:「俺はお前を。ガキだと思ってない。何も出来ない、愚図の子供だと思っていない。」


ロイド:「は?嘘つくなよ」


アンドン:「本当だよ。悪かったな、親父がギャングなんざやってるせいで。カーちゃんも死んじまった。俺には、分不相応な良い女だったよ。だから、俺の手から溢れちまったんだ」


ロイド:「……」


アンドン:「お前が言う通り。俺は父親と呼ぶには不出来な奴だろうよ。けどな。俺は今。ただ一人の男として。父親として、責任を果たさなきゃならん時なんだ。惚れた女を娶るって言うのは。そういう事だ。」


ロイド:「……」


アンドン:「お前は俺の息子で嫌かもしれんが。俺は、お前が息子で嬉しいよ。」


ロイド:「とってつけたような。言葉、並べやがって」


アンドン:「お前。俺のことが嫌いだろ。内心、ずっと憎かったんだろう。なんで俺だけって。思ってただろ」


ロイド:「……。ああ。」


アンドン:「弱さもまた、強さの証だ。さあ、ムカつくなら。俺をぶっ飛ばしちまえ。ついでに惚れた女も抱きにいけ」


0:回想終了

0:パリ空港 森林近辺


アンドン:「お前ら。俺の息子と。娘を甘く見たな。あいつらは、お前らが思ってるより。大人気ないを楽しんでるぜ」


ルーファス:「……。ああ。そうか。それだけか。ここまでの事をしでかした言い分は」


アンドン:「男が惚れた女を抱きに行くってんだ。それを止める理由なんざ。必要かよ」


ルーファス:「ご立派な事だ」


0:鈍い音が響く


アンドン:(M)自由の代償は、充分払った。俺も。お前も。大丈夫だ。お前は、俺達の自慢の息子だよ。ああ、それとーーー


0:場面転換

0:空港西口近辺


ロイド:「それと。親父がイタリア土産楽しみにしてんだ。だからさっさとそこ退け。」


ジェバンニ:「理解に苦しむ。」


ジュリイ:「ジェバンニ」


ジェバンニ:「……。はい。」


ジュリイ:「私。お母様と話したいの」


ジェバンニ:「何をですか」


ジュリイ:「私の我儘を聞いて、って。言いたいんです」


ジェバンニ:「そんな。子供じゃあるまいし」


ジュリイ:「私は。子供ですわ。エストック・ウルカレットの。子供なんです。子供が親に我儘を言うのは、おかしな事でしょうか」


ジェバンニ:「……」


0:回想


ジュリイ:「欲しいもの?」


ジェバンニ:「ああ。あ、えっと、はい。そろそろ誕生日だから。ですので。」


ジュリイ:「ふふ。敬語が上手になりましたわね。でも、無理しなくてもいいんですのよ」


ジェバンニ:「ありがとう。ござす。私が決めたことなので」


ジュリイ:「欲しいものは……。今はないかもしれませんわね」


ジェバンニ:「そうか、そうですか。」


ジュリイ:「ありがとう、貴方なりに。考えてくれているのね。嬉しいですわ」


ジェバンニ:(M)何も欲しない。何も望まない。夢を見ることすらしない。だから私は。狭い鳥籠の中で。貴方と長い時間を過ごせたんでしょう。


ジュリイ:「聞いてジェバンニ!今日下町で面白い方と出会いましたの!」


ジェバンニ:(M)その男の事を。嬉々として語る貴方の話を。私はどんな顔で聞いていたと思いますか?


ジュリイ:「私もいつか。あんな風に。自由に、生きてみたいですわ。」


ジェバンニ:(M)溢れていくような。零れていくような。日に日に。私の手が届かない場所で、私の知る貴方では無くなる日々の話を。どんな思いで、笑って聞いていたと思いますか?


ジュリイ:「私なんかに。出来るかしら、ジェバンニ」


ジェバンニ:「……。出来ますよ。お嬢様なら。」


ジュリイ:「ふふ。ありがとう」


0:回想終了

0:空港西口近辺


ジェバンニ:「……。」


ジュリイ:「今ここで、またお母様の元に戻ったら。それはもう、私じゃないんですの。身勝手な事だとは分かっています。自分勝手だと、分かっています。だけど。私は。私の意思で。我儘を言ってみたいんです。」


ロイド:「はっ。よく言った…っ。」


ジュリイ:「だから、そこを退いて。ジェバンニ」


0:車が急停車する


マーレ:「若!ジュリイ!」


ロイド:「…!マーレ!良かった、無事…じゃないな!」


ジュリイ:「車…!?どこで手配したんですの!?」


マーレ:「そんなのはどうでもいい!早く乗れ!」


ロイド:「ああっ。本当に頼りになるよお前は!」


ジュリイ:「…」


ロイド:「ジュリイ!何してんだっ。早く乗れ!」


ジュリイ:「…。はい!」


0:ジュリイはロイドの手を取った


マーレ:「あと5分も無い!飛ばすぞ!」


ロイド:「頼んだ!!」


0:車はそのまま走り去った


ジェバンニ:「……。」


0:ジェバンニはその場に立ち尽くしている


ジュリイ:『頭を、撫でようとしたの。』


ジェバンニ:「……」


ジュリイ:『美味しいです。ありがとうございます』


ジェバンニ:「……」


ジュリイ:『ジェバンニっ。聞いてくださいっ。』


ジェバンニ:「……っ。」


0:ジェバンニは煙草に火をつけ、ゆっくり煙を吐いた


ジェバンニ:「……。」


ノエル:「こっちだ!こっちこっち!」


ガロ:「おぉおぉ、揺らしすぎじゃねえ!?」


ジャイロ:「うるせえ!文句言うな!」


カラス:「待て。誰かいる」


ノエル:「うげっ。ジェバンニさん!」


ジャイロ:「ちぃっ!もう構ってらんねえぞ!」


ノエル:「いいから走れ!まずは走れ!」


ジェバンニ:「……」


0:4人は走り去って行った


カラス:(M)なんだ。追ってこない。


ガロ:「おーい、カラス!早く行こーぜ!」


ノエル:「お前が言うな!」


カラス:「…。ああ。」


0:一人残るジェバンニ


ジェバンニ:「だ。そうです。会長」


エストック:「……。ああ。」


ジェバンニ:「少し。インカムを、外しますね」


エストック:「分かった。次は。私の番だ。」


ジェバンニ:「それでは。失礼します」


0:インカムを切った。


ジェバンニ:「ーーー。お気をつけて。行ってらっしゃいませ。お嬢様。」


0:場面転換

0:車内


マーレ:「っ……!間に合うか…!?」


ロイド:「追っ手が来てる!」


ジュリイ:「轢いてはいけませんわよ!」


マーレ:「わかっ、てる……!ここままドア開けて走れ!」


ロイド:「ああ!ありがとう!」


ジュリイ:「ありがとうございますわ!」


0:二人はドアを開けた


マーレ:「若。」


ロイド:「…。なんだ、マーレ」


マーレ:「かっこよくなったね」


ロイド:「…へっ。そりゃどうも。」


0:二人はそのまま空港へ向かう


マーレ:「……。はぁ。流石に。ちょっと、疲れた。ボス、大丈夫かなぁ。」


0:場面転換

0:空港内部

0:人混みの中を走る二人


ノエル:(アナウンス)現在、空港近辺で暴力事件が確認されています。お帰りの方、お近くの方はお気をつけ下さい


ロイド:「…っ。すみません、通ります……!」


ジュリイ:「凄い人混みですわね…っ。」


ロイド:「くそ!電話が繋がらない!」


ジュリイ:「誰にかけてるんですの!?」


ロイド:「ガロ達だ!空港に着いたって!」


ジュリイ:「留守電でも残せばよろしくってよ!」


ロイド:「お前は天才だジュリイ!こちらロイド!空港に到着した!」


エストック:「待て!」


ロイド:「…っ。」


0:エストックは息を切らしている


エストック:「随分。好き放題やってくれたな。」


ロイド:「……。で。ジュリイのかーちゃんも。やっとこさお出ましだ。」


ジュリイ:「……。お母様」


エストック:「…。あまり。迷惑をかけるな。ジュリイ」


0:場面転換

0:空港中央口近年


ルーファス:「全員!空港内へ迎え!お嬢様とロイドが空港入りした!何がなんでも捕まえろ!」


ジェバンニ:「随分。お急ぎの様ですね。ルーファスさん」


ルーファス:「ジェバンニ!お前、こんな所で油売ってたのかっ。まぁいい、お前も空港にーーー」


ジェバンニ:「ルーファスさんは。」


ルーファス:「あ……?」


ジェバンニ:「お嬢様が。我儘を言ったことを。聞いたことがありますか」


ルーファス:「何の話だ」


ジェバンニ:「もう。お嬢様は。私達の知らない所で。新しい自分というのを、見つけたようです。過去の自分を払拭するように。良くか悪くか。前へ踏み出したそうです。」


ルーファス:「……。」


ジェバンニ:「きっとそれが。大人になる、という事なんでしょうね。」


ルーファス:「……。お前。タバコは辞めたんじゃなかったのか」


ジェバンニ:「…。ええ。禁煙、失敗ですね」


ルーファス:「はっ。どうだ。8年振りの煙草は」


ジェバンニ:「ああ。枷が。外れたような気分だ。ルーファス」


ルーファス:「……。全警護官へ。全員そのまま会長の元へ迎え。僕は。少し、野暮用ができた」


ジェバンニ:「……。」


ルーファス:「一本。くれよ」


ジェバンニ:「どうぞ」


0:二人は煙草を吸い、煙を吐いた


ルーファス:「久しぶりだな。二人とも、傷だらけなのは」


ジェバンニ:「ああ。そうだな。」


ルーファス:「やっぱり。傷だらけの君が好きだな。僕は」


ジェバンニ:「そうかよ。」


ルーファス:「退けよ、ジェバンニ」


ジェバンニ:「嫌だね。」


ルーファス:「僕には旦那様の意思を全うする責任がある。お前もそうだろ」


ジェバンニ:「旦那様の意思に。お嬢様は関係ない。それは俺もそうだ。」


ルーファス:「頼むよ。僕もこう見えて必死なんだ。どういう心変わりだ」


ジェバンニ:「……。惚れた女が。我儘を言ったんだ。それ以上の理由は無い」


ルーファス:「ああ。そうか。それは」


0:二人は煙草を捨てた


ルーファス:「しょうがないな」


0:二人は殴りあった


ジェバンニ:「ごふっ……!」


ルーファス:「がはっ……!」


0:二人はそのまま戦闘を開始する


ジェバンニ:「デスクワークばかりで鈍ってるかと思ったが、案外そうでも無いんだなルーファス!」


ルーファス:「お前はお守りばっかりでナマ効いちまってんじゃないかジェバンニ!」


ジェバンニ:(M)お嬢様。私に出来る事は。これだけです。貴方の手を無理やり取ることは、やはりできません。貴方を見送る事も、出来ません。これが、私なりの、心ばかりの応援だと。そう思って頂ければ幸いです。


ルーファス:「うおおおおあああああ!」


ジェバンニ:「はぁああああああああ!」


0:鈍音が空港近辺を揺らした


0:場面転換

0:空港中央口


ノエル:「二人とも空港に入ったって!あと、エストック会長とも会ったって!」


ジャイロ:「そうか。そんじゃあ、俺らがわざわざ邪魔することもねえだろ。」


ガロ:「おう!後はあいつらがやる事だっ。」


カラス:「そんじゃあ、精々ここでこいつらの足止めが関の山か」


ノエル:「だな。ひぃ、ふぅ、みぃ。何人いるんだこれ」


ジャイロ:「さっきのルーファスとかいう男の仕業だろうな。警護官の指揮系統もあいつが取ってたみてぇだしよ。」


ノエル:「私とガロはもう動けないからなー!」


ジャイロ:「お前は少し働けよ」


カラス:「なんだ。しんどいなら休んでていいぞ。俺が全員やる」


ジャイロ:「てめぇが休んでろやヒヨコ侍」


ガロ:「よーーし!俺も戦う!」


ジャイロ:「はぁ?お前動けねえっつったろ」


ガロ:「いや。なんか行ける気がする」


カラス:「よく分からんが、やるならさっさとしろ。あの数を殺さずに、は。流石にきついぞ」


ジャイロ:「きついんじゃねえか」


ガロ:「おうっ。ノエル、ちょっと肩貸してくれ」


ノエル:「え。こうか?」


ガロ:「そうそう、腹に力入れねえとな」


ノエル:「わからん。その理論は」


0:ガロは自分の両手を付き合わせ、沿うように肩を伸ばした


ガロ:「ーーーLimitリミットBORROWボロウ


ジャイロ:「……!」


ガロ:「Boostブーストッ。」


ノエル:「え!?あっつ!あっつ!!お前!体!暑すぎる!ちょっと火傷したわっ。」


ガロ:「おぉ〜!動ける動ける!はは!」


ノエル:「は!?動けるのか!?」


ガロ:「おう。今ならもう一発あのどデカい異常性使える気がする」


ノエル:「まじかよ〜!一日一回だっつってたのに!大出血セールじゃん!」


ガロ:「だははは!ぴーすぴーす」


カラス:「おいアロハ。こりゃあ。あの水女の時と同じ雰囲気を感じるが」


ジャイロ:(M)定義転換……!?そんな「あ、そういえば〜」みたいな感じで覚えていい代物じゃねえぞてめえ!


ガロ:「さぁ〜お前ら!絶対にロイドとジュリイの邪魔させんなよ!」


ジャイロ:「ったく。お前は。ようわからんが。敵じゃなくても良かったよ、ほんと」


カラス:「さて。じゃあ、俺は300人やるから。残った50人前後山分けしていいぞ」


ガロ:「俺が300人だ!」


ジャイロ:「俺だろうが!」


ノエル:「なんでもいいけど!早くやっちまえ!」


ガロ:「おう!」


ジャイロ:「はいよぉっ。」


カラス:「ああ。」


0:場面転換

0:空港内部


ジュリイ:「……っ。お母様!」


エストック:「なんだ。」


ジュリイ:「私。ロイド・フォーキンスとお付き合いしてますの。」


エストック:「認めた覚えは無いな」


ジュリイ:「何を言われても、私はこのまま行きます。そう、決めたんです。」


エストック:「……」


ロイド:「エストックさん!!」


エストック:「…」


ロイド:「俺!絶対に、ジュリイの事幸せにするんで!!娘さんを、俺にください!!」


エストック:「……。どの男も。そう言う仕来りでもあるのか。」


ロイド:「…っ。在り来りな言葉かも知れませんけどっ。でも!ジュリイには、絶対に後悔させません!今はまだ未熟かもしれませんけど、俺と付き合ってよかったって、そう心から言ってみせる男になります!」


エストック:「……。」


ジュリイ:「お願いします、お母様。この場で認めると言えないことは重々承知ですっ。お母様にも立場がありますっ。ですので、このまま行かせてください」


エストック:「…。」


0:回想


エストック:(M)旦那が。死んだ。国外の取引先で起こった不慮の事故。その瞬間から私の幸せは。余りにも呆気なく、音を立てて崩れ落ちた。残ったものは、旦那が築き上げた遺産の数々。娘はまだ3歳だ。誰が跡を継ぐ。旦那が残した物を守りたい気持ちと、手離して楽になってしまいたい気持ちが、乖離した。全てが敵に見えた。枕を濡らしても。蹲っても。時の流れは止まってくれない。もはや誰に頼ることも無い。誰かに依存するから。誰かに身を擲つから、手放された時、不幸になるんだ。例えそれが、親であろうと。


ジュリイ:「お母様」


エストック:「私は今忙しい。ジェバンニはどうした。」


ジュリイ:「あの人は、いい人なんですけど、少し、怖くて」


エストック:「我儘を言うな。世間が皆お前に優しい訳じゃない。ジェバンニはお前のボディガードで、執事じゃない。分かったら自分のやるべきことをやりなさい」


ジュリイ:「……はい。」


エストック:(M)旦那が死んでからの経営難は、悪化の一途を辿っていた。ジュリイには、ウルカレットを継がせる。その為の準備もしてきた。私と同じ二の舞を踏ませるわけはにはいかない。私が母親ならば。たったそれだけの贖罪も全うできず。向こうで旦那にどう声を掛ける。


ジュリイ:「お母様、見てください。テスト、満点でしたの」


エストック:(M)テストで満点を取ったからなんだ。社会に放り出されればテストの点数だけでは計りきれない苦難の嵐だ。人を助けたからなんだ。善意だけでは生き残れない世の中だ。紅茶を淹れれるようになったからなんだ。友達ができたからなんだ。先生に褒められたからなんだ。


ジュリイ:「お母様…。今日、学校で似顔絵を、描いたんです。よかったら…。見てください」


エストック:(M)ーーー似顔絵を書いたからなんだ……っ。どれもこれも、全て失ってしまうかもしれない。無駄な期待はするな。無駄な希望は持つな。最後に残るのは、自分と。自分が築き上げた全てだけだ。次第に、私は娘の顔を見れなくなった。いいや。見なくなった。笑うと。旦那に似ているんだ。目を背けるように。遠ざけるように。私は距離を取った。私は母親である前に。ウルカレットの会長なんだ。私が、折れてはいけないんだ。私だけは。あの子の為にも。


ジュリイ:「お母様。私。ロイド・フォーキンスと交際しておりますの。」


エストック:(M)そんな申し出。到底。認められるはずもなかった。


0:回想終了

0:空港内部


ジュリイ:「お母様。私の。最初で、最後のわがままです。私を、一人で歩かせてください」


エストック:(M)ああ。いつの間にか。


ジュリイ:「お願いします。」


エストック:(M)こんなに。大きくなっていたのか。


マーレ:(アナウンス)21時32分発。イタリア行きの便が間もなく離陸します。お乗りのお客様はフロントへお越しくださいませ。


ロイド:「ジュリイ、時間が無い、急ごう」


ジュリイ:「……。はい。」


ロイド:「……」


エストック:「ジュリイ」


ジュリイ:「…。はい」


エストック:「似顔絵、嬉しかったよ。」


ジュリイ:「ーーー…」


0:場面転換

0:空港西口近辺


ジェバンニ:「……。」


ルーファス:「21時32分…。リミットか。」


ジェバンニ:「ああ。そうだな。」


0:離陸する飛行機を眺めるジェバンニ


ジェバンニ:「お嬢様を不幸にしたら。マジで殺しに行くからな。ロイド・フォーキンス。」


ルーファス:「……はぁ。ご執心だこと。」


エストック:「全職員へ連絡。ジュリイとロイド・フォーキンスが先程の便で出立した。ここまで協力してくれたのにすまない。明日以降の捜索体系は。ギルド、中央へも願いを出さない事を宣言する」


ルーファス:「…会長」


エストック:「まずは負傷者を集め、応急処置に当たってくれ。以上」


0:通信が終わる

0:場面転換

0:森林近辺


アンドン:「は、はは。流石、俺の息子だ。イタリア土産、楽しみにしてるわ」


0:場面転換

0:空港中央口外れ


マーレ:「……。ナイス。ロイド」


0:場面転換

0:空港中央口


ガロ:「あれ、皆どっか行ったぞ」


ジャイロ:「多分。作戦成功って具合だろう」


ノエル:「まじかーーー!よくやったぁああ!ロイド!ジュリイ!」


カラス:「ったく、とんだ依頼だったぜ。まじで」


ガロ:「だははっ。疲れたなぁー。」


ジャイロ:「ああ、まったくだ。」


エストック:「君たち」


ノエル:「うひゃあ!」


ジャイロ「か、かかか、会長ぉ!」


カラス:「お前は初対面だろ」


ガロ:「あー!お前がジュリイのかーちゃんかっ。」


ノエル:「ちょ、ちょっと。ガロさん」


ガロ:「お前ひでぇぞっ。ジュリイの人生はあいつもんだろ。ジュリイはお前のモノじゃないっ。」


ジャイロ:「ガロぉーー!やめてくれーー!」


エストック:「……。は。いいや。まったく。君の言う通りだよ」


ノエル:「へ」


ジャイロ:「へ」


カラス:「ほお」


エストック:「……。少し遅めの反抗期、というやつかもな。私もまた、ただの母親だったみたいだ。」


ガロ:「おう。多分、そういうことだっ。」


ジェバンニ:「会長、ご無事ですか」


ルーファス:「お前ら……!」


ノエル:「あーー!どうもどうも、この度は……」


エストック:「負傷者は?」


ジェバンニ:「軽傷者は280名ほどです。重症、死亡者は。0です。」


エストック:「…。そうか。ルーファス。ジェバンニ。職員を下がらせろ。」


ルーファス:「なっ。本気ですか!?お嬢様とロイドはまだしも、こいつらは……!」


エストック:「別に構わないだろう。親子喧嘩に巻き込んだ、私達も大概だ。遅かれ早かれ、こういう時が来ていたような気もする。何より、重症者が居ないというだけでも、彼らを責める道理も無いだろう。彼らだってボロボロだ。」


ルーファス:「ですが……!」


エストック:「ありがとうな、ルーファス。それでもね。私は彼らを責められない。だから、これはただの我儘だ。」


ルーファス:「……」


エストック:「駄目かい」


ルーファス:「卑怯ですね。であればこそ。僕から言える事などありませんよ。」


エストック:「ありがとう。」


ルーファス:「全職員へ。手隙のものから撤収しろ。壊してしまった公共物に関しては後日請求書を送って貰うよう手配するように」


ノエル:「うおおほっ。うおおほっ。」


ジャイロ:「いい話だなああああっ。」


ガロ:「だははっ。よく分かんねーけど、良い奴じゃん。あのおばさん」


カラス:「ああ。見かけによらず良い女だ」


ルーファス:「いいかお前ら。今回は会長のご好意でお咎めなしだが、本来であればギルドから除名されてもおかしくないレベルの愚行だぞ。弁えておけ」


ガロ:「わぁーったわぁーった」


エストック:「それじゃあな、準ギルドの君たち。」


ノエル:「あ、あの!」


エストック:「なんだい」


ノエル:「娘さんは!きっと、貴方みたいなお母さんに産んでもらえて!幸せだったと思いますっ。」


エストック:「気休めか、ありがとう。でもねーー」


ノエル:「だって。あの子は、どこにいる時でも、身を隠していいても、自分のフルネームを名乗っていました。自分の名前に、誇りを持ってると、そう言ってました!」


エストック:「……。そうか。」


ジェバンニ:「行きますか、会長」


エストック:「ああ。ありがとう、君達。また縁があれば、依頼させてもらうよ」


ガロ:「ええええまじで!」


ジャイロ:「えーーーまじすかああ!」


カラス:「まじか」


エストック:「その時は、もうトラブルは起こさないでくれよ」


ノエル:「は、はい!必ず!」


ジャイロ:「いい人だァァァァおわあああんっ」


ガロ:「だっはは!またなーーー!」


0:3人はその場を立ち去った


ジャイロ:「……ふぅ。終わったかぁ」


ガロ:「おう。」


ノエル:「そんじゃ、私達も帰りますか?」


カラス:「そりゃいいが。もう終電ないだろう」


マーレ:「だったら私たちと帰ればいい」


ガロ:「おお!マーレ!」


ジャイロ:「お前もお疲れ様、随分ボロボロだな」


マーレ:「まあね。このあと迎えの車が来る。それに乗って行け」


ノエル:「まじすかあああ!助かる!」


カラス:「走っても良かったが」


ノエル:「余計なこと言うな!」


マーレ:「いいよな、ボス」


アンドン:「わっははは!いいに決まってるだろっ。ダメな理由があるかっ。」


ガロ:「おーっ。おっさんも無事だったかぁー!よかったあ!」


カラス:「本当にタフだな」


アンドン:「流石に腰に来たが、何のこれしきよ。さあまずは……!」


0:アンドンとマーレは頭を下げた


アンドン:「今回は愚息のワガママに付き合ってくれた事、感謝する!!」


マーレ:「ありがとう」


ガロ:「いいよいいよ、だってこれ依頼だし」


ジャイロ:「まあ、半分俺らの我儘も入ってたしな」


ノエル:「お前らのせいでな」


アンドン:「わはははっ。無論、しっかり報酬金は支払う!文句なし!百点満点の以来達成だった!」


マーレ:「なーいす」


ガロ:「おぉー!っしゃーー!」


ノエル:「金だ金ーー!」


ジャイロ:「風俗キャバクラおっパブガルバ!」


カラス:「新しい袴が欲しい」


ガロ:「肉ーー!」


マーレ:「もしもし。ああ。もうか。分かった。」


ガロ:「おん。どうしたマーレ」


マーレ:「車が着いたよ。さあ、乗って」


ガロ:「おっ。来たか〜!いやぁ〜悪ぃなぁ」


ノエル:「送迎付きか〜!そういうの!そういうの求めてたんだよ!」


ジャイロ:「お前走って帰れよ」


カラス:「てめぇが走れ」


0:はしゃぐ4人を遠目で見るマーレ


マーレ:「……」


アンドン:「どうした。曇った顔をしてるな」


マーレ:「…。ガロンドール・ウォンバット。何処かで聞いた名前だと思ったんだ。」


アンドン:「あ?」


マーレ:「あいつの異常性を見てハッキリと分かった。」


アンドン:「ああ、捜査局時代の。よく覚えてるわ。最も、あんなとんでもない異常性を持っていながら準ギルドってんがおかしい話だ。因みにどこの誰さんよ」


マーレ:「レーヴェンシュタインの弟だな。」


アンドン:「ほぉ〜。こりゃまた。なんかタネのある奴らだとは思うが。因みに他で俺に因縁ある奴いた?」


マーレ:「いや、全員ない。」


アンドン:「ならいいやっ。さあ、帰ろう、マーレ。」


マーレ:「……。ああ。」


0:場面転換

0:車中


ジェバンニ:「……」


ルーファス:「腕、痛いだろう。運転変わろうか。」


ジェバンニ:「結構だ。お前の方が絶対痛い」


ルーファス:「痛くないし」


ジェバンニ:「痛いし」


ルーファス:「どっちでもいいよ。にしても、面倒なことしてくれたな、ジェバンニ。どう責任とってくれんだ」


エストック:「面倒なこと?」


ルーファス:「そうなんです。こいつ、僕がお嬢様を追うのを止めやがって」


ジェバンニ:「お前、チクるな」


エストック:「はは、そうか。そんな事があったのか。通りで空港内の警護官が異様に少なかったわけだ」


ルーファス:「お嬢様の件は絶対にパパラッチ共が直ぐに取り上げる。ウチが被る風評はかなり大きいものになるが。どう責任取るんだよ。お前」


ジェバンニ:「……。売上を作るしかないだらう」


ルーファス:「お」


エストック:「ほお」


ジェバンニ:「会長。俺も、社員として雇用して頂けませんか。」


エストック:「それは勿論、願ってもない話だが。私自体は君を責めるつもりはないしな。私のボディガードとしてでも構わないんだぞ。」


ジェバンニ:「……。有難いお話ですが」


0:ジェバンニは空を見た


ジェバンニ:「私は。お嬢様のボディガードですので。」


エストック:「……はは。そうか。」


0:場面転換

0:数日後

0:リベール


ガロ:(M)ガロンドール冒険譚!9章!金持ち財団とギャングの男女による駆け落ちを手伝った!カーチェイスしたり、車で空飛んだり、仲間と喧嘩したりで、色々大変だったけど。楽しかったから総じてヨシ!


ジャイロ:「ほいでまあ、なんやかんやあれど。結局いつもの日常に戻ってくるわけね」


ガロ:「でもほら、これで暫くは結構贅沢できるだろ。肉だ肉!」


カラス:「いい加減刀を研ぎてえな」


ジャイロ:「本当にナマクラになるんじゃねえか?」


カラス:「錆にするぞカス」


ノエル:「はいはい喧嘩しない。おはよーございますー。」


受付:「あ、皆さん!ちょうどいい所に!」


ノエル:「おぉ、なになに」


受付:「アホレンジャー様宛に沢山の手紙が届いておりますっ。どうぞ、こちらです」


ガロ:「手紙?」


ジャイロ:「おいおい!これ、ロイドからじゃねえか!」


ガロ:「まじで!?」


受付:「はい。みたいですねっ。」


カラス:「ほお。この時代に文通。分かってるねえ」


ジャイロ:「お前はいい加減携帯のひとつくらい持てよ」


カラス:「断る」


ガロ:「で!で!なんて書いてあるんだよ!」


ノエル:「向こうで元気でやってるって、あと。ありがとうって8回くらい書いてる」


ガロ:「だっはは!そうかー!なら良かった!」


カラス:「まあ、こっちとしても。相当な依頼料貰ってるからな。願ったり叶ったりだ。」


ジャイロ:「おお、手紙落としたぞ、ノエル」


ノエル:「あぁごめん。なんかやけに多くて。」


ジャイロ:「……」


0:ジャイロは固まった


ノエル:「……?ジャイロ?」


ジャイロ:「おいおいおいおい。これ。」


ガロ:「ん。次はなんだよ」


ノエル:「げえ!!?」


ジャイロ:「だよなあ!?やっぱこれ、そうだよなあ!?」


カラス:「ん。請求書……?なんのだ」


ガロ:「えーと。先日のギルド支援活動における器物損壊に対し、上記額面を請求します。支払わない場合、裁判を……えぇ!?」


受付:「は、ははは。」


ノエル:「なんてもの寄越しやがる…!」


受付:「そう言われましても…」


ジャイロ:「これ、待て!転送だ!」


ノエル:「どこからだ!」


ジャイロ:「……。ウルカレット財団。エストック・ウルカレット。から、だ。」


ノエル:「あのやろぉおおおおお!あんなにあっさり許すとか、やっぱ変だなって思ってたけど!やっぱそういう裏があったのかぁああ!」


ガロ:「だっはははは!ウケるなぁー!」


ジャイロ:「ウケねえだろ!!ウケねえよぼけ!!」


カラス:「なんかあれか。こういう落ちの付け方をする運命なんだな」


ノエル:「ふざけんなよまじでええええっ!」


0:場面転換

0:イタリア

0:どこともしれない場所


ロイド:「……。今日、めちゃくちゃいい天気だな」


ジュリイ:「そうでございますわね?」


ロイド:「……。今日、何食った?」


ジュリイ:「お昼は一緒に食べましたわよ」


ロイド:「ああ、そうか。」


0:沈黙


ロイド:「親父も、マーレも。元気かな。あとガロ達」


ジュリイ:「なんでそんなついでなんですの。」


ロイド:「いや〜。字余りが」


ジュリイ:「元気だって、一昨日手紙が帰ってきたじゃないですか」


ロイド:「ああ、そっか。」


ジュリイ:「そうですわ」


0:沈黙


ロイド:「今日。天気悪いな」


ジュリイ:「さっきと言っていることが違いましてよ。急にこんな所まで散歩しようだなんて。いつかを思い出しますわね。本題は如何しまして?」


ロイド:「んーーー。」


ジュリイ:「……っ!お!おお、男らしくないですわっ!。それでも、こうっ、ギャングの息子ですのっ。」


ロイド:「わかったよ!わかってるよっ。うっさいなぁーもう!」


0:ロイドは手汗を拭いた


ロイド:「ジュリイっ。」


ジュリイ:「は、はいっ。」


ロイド:「いつかさ。俺が、もっと、逞しい男になったら、絶対にっ。お前を幸せにするって約束するから……」


ジュリイ:「はい」


0:ロイドは大きく息を吸った


ロイド:「俺と!!結婚してくだひゃい!!」


ジュリイ:「……。なんで噛むんですの。そういう所で」


ロイド:「うるせえなぁ!見逃せよ!空気読んでさあ!こういう性分なの!」


ジュリイ:「ふふ。ええ。そういう所が、好きなんです」


ロイド:「おっふ」


0:ジュリイはロイドの手を取った


ジュリイ:「こちらこそ。これからも末永く、よろしくお願い申し上げます。」


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