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異能力者達の夜明け  作者: ゆーろ
監視者達の午後
26/28

監視者達の午後 起×Ⅱ 「オーシャンズ・ハイ後編」

監視者達の午後 起×Ⅱ-後編-

0:<オーシャンズ・ハイ-後編->



0:登場人物


アルル:女。アルル・クロフォード。中央政府監察局。 特務国際監察課。三等監察官。


シーカー:男。シーカー・グレイスマン。中央政府監察局。特務国際監察課。準一等監察官。


バイオレット:女。中央政府情報局。特務国際監察課。管理官。※チャンを兼役。


セノ:男。セノ・アキラ。中央政府監査課。特務監査。※林檎を兼役


バニー:男。バニー・ドレットパーカー。通称暴君坊。※店主を兼役。※バタップを兼役


外郭:女。外郭がいかく。クマのぬいぐるみを被った女。詳細不明


リットン:女。リットン・アンクス。考察屋リットン店主。


ガロ:男。ガロンドール・ウォンバット。※男を兼役



0:場面転換

0:ブルーストリート


セノ:(M)1991年。12月26日。


外郭:「はーーーい皆さん!!こんにちは!!こんばんは!!」


セノ:(M)場所。バグテリア法外特区


外郭:「デラやべーグランプリ会場はこちらです!」


セノ:(M)この無法地帯で行われる、無礼で無作法な遊戯


外郭:「開始まで1時間を切りました!割り込み参戦も絶賛受付中ですヨ!」


セノ:(M)それこそが。力自慢が集まるこの大会、デラやべーグランプリ!


0:賑やかな会場


アルル:「おぉ〜…。人が沢山いますね…」


シーカー:「はあ…。なんで俺がこんな所に…。やっぱお前あれだろ。俺の事舐めてんだろ。何だってこんな人の多い所に…」


アルル:「バイオレットさんとバタップさんは忙しいそうなので…」


シーカー:「俺だって忙しいわ!舐めんな!」


男:「おーーい君達!参加者だろ、整列は向こうだぞっ。」


アルル:「あ、はいっ。ありがとうございますっ。」


シーカー:「おい、ばか…!」


アルル:「え…?」


男:「はい、整列料、1800ドルな」


アルル:「えええ!?」


シーカー:「あぁもう…こうなるに決まってら…。新人、何度も言うがよ、ここはバグテリアだ。詐欺でも何でもおいでませなんだよ。少しは気ぃ張れ、馬鹿野郎」


0:シーカーは男に札束を渡した


男:「お、へへ。毎度、賢いなあんた。」


シーカー:「ったく。余計な経費使わせんな…。バイオレットに怒られるのは俺なんだよ…」


アルル:「すみません…」


外郭:「さぁエントリー!249番!250番!参加者の皆様は御手元の整列番号を手に間抜け面でお待ちください!」


リットン:「おや。監察課の御一行じゃないか。」


アルル:「あ、リットンさん!お疲れ様ですっ。」


リットン:「やあやあやあ、整列は向こうだよ」


シーカー:「もうその下りやったよ。お前だな、ウチのアホに余計なこと教えたのは…」


リットン:「いやあ、私は頼まれたから教えただけだよ。まったくもって優しいだけ」


シーカー:「よく言うぜ守銭奴…」


アルル:「いやあ…こんなに参加者が居るんですね…。もっとこう、10人前後かと…」


リットン:「合法的に人殴れて金貰えるならここの住民はこぞって集まるさ。バグテリアってそーゆーところ。」


シーカー:「ブルーストリート近辺だけでこの人数だ。バグテリア全体での大会とか銘打ちだしたら、そりゃ参加者は40倍以上になる。そうなったら俺はいよいよごめんだ、死ぬには惜しすぎる」


アルル:「ごくり。」


男:「ほーーらほら!整列はこっちだよ!並んで並んで!」


シーカー:(M)あーもう。うるさい。人混みは嫌いだってのに…バイオレットはとにかく…バタップの野郎…。なーーにが


シーカー:(バタップのモノマネ)「え?トーナメント?やーーだよやだやだァ。勝手にやってろぉ。最も、力づくで引っ張って行けるなら好きにすりゃいいけどな。」


シーカー:(M)だ!執行官なんだから大人しく監察官の言うこと聞けや…。辺境部署をいい事に好き勝手しやがってからに…。ああ、もしかして俺って威厳ないのかもしれない…


バニー:「おお。ここか。整列は」


シーカー:(M)凹む俺の鼓膜に突き刺さるのは、地鳴りにも近いほど、悪寒を帯びた声色。緑色のパーカーを深く被り、桃色の髪を靡かせる長身の男。


バニー:「さんきゅーな。教えてくれて」


シーカー:(M)どうしてあの男がここにいる。


男:「い、いやいやいや…ずびばぜん、金取ろうとして…いや、へへ、ほんとずびばぜんねえ…」


シーカー:(M)レッドストリートの悪魔。バニー・ドレッドパーカー…!


バニー:「おう。カツアゲはやめとけよ。よっこらせ、通るぞ」


シーカー:(M)そいつが列に割り込むと、誰も突っかかることなく道を開けた。そりゃあそうだ、そうに決まってる


アルル:「…え?」


シーカー:「おいおいおい…!なんでアイツがここに…!」


アルル:「ちょっと!そこの人!」


バニー:「あ?俺か?」


アルル:「そうですっ。順番抜かしはダメですっ。ちゃんと後ろから並んでくださいっ。」


バニー:「ああ…?」


シーカー:「ちょちょちょちょーーい!新人!頼むからそいつにだけは突っかかるな!まじで!」


アルル:「なんでですか。私達だって並んでるじゃないですか」


シーカー:「そうだけどそうじゃないっ。初め教えただろ!?この街で喧嘩を売っちゃいけねえ奴らをっ。バラエティの連中、ヘッド、最後がこいつ…暴君坊だ…!」


アルル:「暴君坊…。えっ。この人が!?」


シーカー:「そーーだよっ。異常体でもなんでもないっ。ただの人間にして、異常体側が逃げ出す脳筋兵器だっ。」


リットン:「あれ。バニーじゃないか。本当に来たんだね」


バニー:「おお。アイツが来るって言ったのはお前だろーが。ていうかお前も来てたのか」


リットン:「んな事より。この列は向こうが最後尾らしいよ。割り込むなら金を払うべきだ」


シーカー:(M)あ。終わった。


バニー:「ん…?ああ、ここじゃねえのか。そゆことか。」


0:バニーは列を離れた


バニー:「悪ぃな。」


アルル:「いえ。」


シーカー:「…え?」


0:バニーはその場を去る


シーカー:「…ぇえぇえ…?」


アルル:「話せば分かってくれる人なんですね」


リットン:「まあ、馬鹿なだけな彼は馬鹿なだけで倫理観的にはギリまともだからね。馬鹿なだけで」


シーカー:「ちょっと待て新人」


アルル:「はい?」


シーカー:「この大会、降りよう。ダメだ。アイツが居たら試合どころじゃねえ、まじ死ぬぞ…!」


アルル:「嫌ですよ?」


シーカー:「頼むわ!まじで!お前は暴君坊のやばさを知らねえからそんな間抜け面が出来るだよっ。この間抜けっ。」


リットン:「まあまあ。君も先輩なら根性見せなよ。今更ビビってたってしょうがないじゃない。バニーとなんてその辺ほっつき歩るきゃ遭遇するんだし」


シーカー:「ブルーストリートでは初めて見たっつーの…っ。」


外郭:「はいはいはい、それでは次の方!こちらへどうぞ〜っ。」


シーカー:(M)クマのぬいぐるみを被った中国人が手招きしている。


アルル:「あ、はい…!」


外郭:「おやおや。これは、中央政府の方々。こんな俗物的な催しに参加されるとは、意外ですね」


アルル:(M)くっそぉ〜分かるっ。馬鹿にされてるっ。


外郭:「それではまず、そこの貴方からクジを引いてください」


シーカー:「俺か。分かった。」


0:シーカーは箱の中からクジを引いた


シーカー:「…。142番だ。」


外郭:「はいッ!142番!お名前は?」


シーカー:「シーカー・グレイスマンだ。」


外郭:「いいお名前っ!142番、シーカー・グレイスマン殿、エントリーッ。それでは次の方!」


アルル:「はい。」


0:箱の中からクジを引いた


アルル:「243番。」


外郭:「はいはい、お名前は?」


アルル:「アルル・クロフォードです。」


外郭:「はいッ。243番、アルル・クロフォードちゃん、エントリーっ。エントリーを締め切るまで、控え室でお待ちくださいっ。それでは次の方っ。」


0:二人は列から外れた


アルル:「シーカーさん…。あいつ、私たちのこと馬鹿にしてましたよ…許せねえですよコレ…」


シーカー:「そりゃ馬鹿にされるだろうよ。バグテリアに俺ら中央政府の末端だ。象の大群に警察が乗り込むようなもんだっつーの。」


アルル:「ぐぬぬ。」


リットン:「あら、終わったのかい?」


アルル:「はい。すごく不快です。」


リットン:「バグテリアに居たらそんな事ばっかりだよ、きっと。それじゃあ、私は私で稼ぎに行ってくるよ。またね〜。」


アルル:「はい、お疲れ様ですっ。」


リットン:「はぁ〜いっ。賭け金はこっちに持ってきてね〜っ。」


シーカー:「考察屋の仕事が賭博予想かよ。」


アルル:「あれも違法ですよね」


シーカー:「今は目を瞑っとけ。こんなしょぼい事にまで目を付けてたら人生5週出来ちまうぞ。ほれ、控え室が…」


0:シーカーの見つめる先で自販機が宙を待っている


シーカー:「…んん?」


アルル:「なんで自販機が空飛んでるんですか…?」


シーカー:「暴君坊だ…。暴君坊が暴れてるんだ…」


アルル:「え?さっきの人が…?」


0:場面転換

0:整列から少し離れた場所


セノ:「やあやあやあやあ、まったく。君は会う度にすぐ暴力だ。酷いねえ。あれじゃ自販機が可哀想だ」


バニー:「うるせえ…ッ!やっぱ来てやがったなセノてめぇ、次バグテリアに来たら殺すって言ったはずだぜ…!」


セノ:「へへ、来ちゃった」


バニー:「来ちゃったじゃねえよ、帰れコラ」


セノ:「いいじゃない。僕もこれからちょっと忙しくなる予定でね。」


リットン:「おいおいなんの騒ぎ…セノ!?」


セノ:「やあ〜リットンっ。久しぶり、元気かい?」


リットン:「元気は元気だけど…」


バニー:「うるせえうるせえッ。テメェ、まじで何しにきやがったんだ。」


セノ:「今日はデラやべーグランプリでしょお。いいネーミングセンスだよねえ、僕好きなんだあ。確か今回が12回目だけど、これの熱心なファンでね。毎度見に来てるんだ」


バニー:「そうか。お前も出場するんだろうな」


セノ:「ああ、そうさ。今回はいつもより面白いものが見れると思って」


バニー:「ははっ。リットンの言う通りだったなァ。いいかっ!お前は絶対にぶっ殺す!なぜなら気に食わねえからだ!」


セノ:「リットン…。君、僕を裏切ったね」


リットン:「金がある方に付く。これ基本」


セノ:「はは、いいよ別に。どの道ちょっかいかけようと思ってたしね」


バニー:「お前のそういうところが嫌いだ!!なんなら今ぶっ殺したっていいんだぜ…!」


セノ:「もう少し待ちなって、闘牛か君は」


バニー:「バニーだ!」


セノ:「知ってるよ!」


バニー:「殺すぞ!」


セノ:「殺さないで!」


リットン:「ほれほれ、バニー。早く列に戻らないと。エントリーし損ねるよ」


バニー:「やっべ。おいセノ!逃げんなよ!まじで!殺してやるからな!」


セノ:「こっわ。」


0:バニーは列に戻って行った


リットン:「…。君が来るって事は、必ず何かあるんだろうね。次は何が目的なんだい」


セノ:「そんな目を向けられちゃヤだよ。今回は本当に観覧しに来ただけだ。新生が二人、来てるんだろう。」


リットン:「…。」


セノ:「色々面白くなってきたろ。僕はね、楽しくて楽しくて仕方がない。ギルドに、特務国際監察課。ドイツに諸々。僕の知らない事だらけで、ワクワクが止まらないんだ。いいよねえ、知らないことがあるっていうのは、嬉しいことだ。」


リットン:「相変わらず何を見てるのか分からない奴だ。気持ち悪」


セノ:「はい、悪口ぃ。それじゃ。僕もこの辺りでお暇するよ。またねえ。」


0:セノはその場を去った


リットン:「…。」


0:場面転換

0:会場内


外郭:「はーーーい皆さン!お立ち会いッ。それではッッ!只今を持って、デラやべーグランプリを開始しますッッ!戦闘においてのルールは一切ありませんっ。相手を殺すか、リタイアすれば決着っ!以上でス!」


アルル:(M)始まった…っ。なんなんだこのルール。それを当然のように受け止めてるのもどうかしてる…。


シーカー:「ああ、割に合わねえ。特別休暇を申し立てるぜ…」


外郭:「司会、進行は私!外郭が行わせて頂きまスっ。お前ラーーっ。最強の称号が欲しいかーっ。」


男:「おおおおぅっ。」


セノ:「おおおおぅ。」


バニー:「死ねえええっ。」


リットン:「死ね…?」


外郭:「金が欲しいかーーっ。」


男:「おおおおおおっ。」


セノ:「おおおおおぅ。」


バニー:「死ねえええっ。」


リットン:「オオオオオオオオッ!!!!」


アルル:「うるさっ。」


外郭:「それではッ!これよりッ!デラやべーグランプリを開催しマスッッ!ではでは、整列番号、1番、912番の方ッ!闘技場にお越しくださいッ!」


セノ:(M)かくしてっ。デラやべーグランプリが開催されたっ。刺殺、銃殺、撲殺、殴殺、毒殺、絞殺、圧殺、扼殺、轢殺、何でもありっ。一対一以外のルールは全てアリ!


外郭:「第9試合ッッ!開始!」


セノ:(M)勿論、異常性の使用だってありに決まってるっ。トーナメントが進む度、会場はヒビ割れ、血が飛び交い、その都度歓声が湧きあがるっ。


外郭:「第25試合っっ!開始!」


セノ:(M)これぞ!バグテリアでしか見られない、近代のコロッセオなり!


外郭:「ーーー南っ!自称、中国拳法の達人っ。チャン・リーファンっ。」


チャン:「皆サン!サンチュ食べてますか!」


男:「食べてるぞーーっ!」


セノ:「ひゅーひゅーっ!やっちまえ!」


シーカー:「サンチュは韓国では?」


外郭:「現在門下生募集中だそうでス!果たして集まるのか!続いて北から来たるはーーー」


アルル:「…。」


0:アルルはゲートをくぐった


外郭:「バグテリアに現れた超新星っ。中央政府のワンワンワンっ。アルル・クロフォードちゃんですっ。」


アルル:「誰がワンワンだ…っ。」


男:「出たぞ、中央政府のボンボンだ!」


セノ:「せいほーーお!ほーお!」


リットン:「掛け金跳ね上がっておりますっ。オッズ126.8倍!」


男:「おう!記念で賭けとくよ!」


シーカー:「どんだけ負け馬なんじゃい。怪我しねえうちに戻ってこいよお、新人」


0:会場


アルル:「…」


チャン:「ラッキーな展開だと思うニダ。チミみたいなメスガキが相手でヨ」


アルル:「ノーザンブリア北東で幼い男女12名を殺害して現行犯逮捕された。」


チャン:「あン?」


アルル:「1983年だ。8年。8年もの間、脱獄してからここで暮らしてたのか。」


チャン:「おーーい、なんだぁこのガキゃあ。人様のこと随分調べてるヨ!もしかしてアチシのフアン?」


アルル:「人を殺しておいて、ヘラヘラしているのが許されると思ってるのか」


チャン:「…なんだぁ?こいつぅ。」


外郭:「…」


0:観客席


シーカー:「おいおいおい、なんだその宣言は…。余計な刺激すんなよマジで…」


セノ:「はは、面白いね、彼女」


リットン:「うーん。まあ、変わってはいるよね」


0:会場


アルル:「チャン・リーファン。殺人、脱走の罪で、強制連行する。」


チャン:「はははっ。まじでいるのカヨ!こういうの頭沸いてるの!」


外郭:「さぁー盛り上がって参りましタ!第32試合、チャン・リーファンVSアルル・クロフォード!」


アルル:「中央政府立。特務国際監察課。アルル・クロフォードだ。」


チャン:「イヨーーーっ!かっこいイヨーーッ!」


セノ:「名乗れよ!空気読めないなー!」


男:「無粋でいいぞーっ!」


外郭:「果たして女神はどちらに微笑むのかっ。いざ、死合開始ッッ!」


0:時間経過


シーカー:(M)随分息巻いて始まったトーナメントは、呆気なく結果が見え始めた。


チャン:「松竹梅ッッ!」


0:殴った


アルル:「ーーごほっ…!」


シーカー:(M)分かりきっていたことだが、ここは手配書がばら撒かれる程の凶悪犯揃いの街。そんな中、異常性も無い、武才も無いひよっこ一人立っていられるはずもなく。


チャン:「ミャンマーー!」


外郭:「おーーっと…ッ。アルル・クロフォードっ!試合開始から21分にしてダウン!よく粘ったという所でしょうカ!」


アルル:「…はぁ…はぁ…っ。」


シーカー:(M)その結果に、意外性の欠片も無かった。誰もが当然の結果と息を飲んだ。ただ唯一、意外だったのは。


アルル:「ーーーー…まだ…まだ…っ!」


外郭:「オーーーットぉ!まだ立つゥ!まだ立つ立つゥ!これが負け犬根性かぁあ!?」


セノ:「ははははっ。凄いやっ。ただの監察官、それも、見たところ才能のひとつもない、根性だけであそこまで立ってられるかい普通!」


リットン:「さあさーーっ。掛け直すなら今だよっ。オッズは112.4倍!」


シーカー:(M)試合時間は、誰もが想像するよりも遥かに伸びた


チャン:「アルゼンチンっっ。」


0:蹴った


アルル:「がは…ッ。…おえっ…。」


チャン:「はあ、はあ。腰痛。チミ、いい加減にしないと死ぬヨ…」


アルル:「死んだ方が、ましだ…っ。」


外郭:「まだ立つゥーー!」


チャン:「なんっっ、ダこいつ…。キョンシーか何かか…!?」


リットン:「オッズ98.4倍!」


シーカー:(M)30分。40分。50分。1時間と時間は伸び


アルル:「うおおおお…っ!」


リットン:「51.7倍!」


シーカー:(M)リンチとも言えるその参上は、いつの間にか確実に試合へと成り上がっていた。


チャン:「クソ、くそくそ…!なんだってんだこいつ…!」


アルル:「はあ…はあ…っ。なんだ、もう終わりか…!」


セノ:「おーーい!チャンちゃん!ちゃんと急所狙ってんのかいチャンチャンコ!」


チャン:「うるさいニダ!」


外郭:「予想外の展開にっ!観客席は壮絶!この試合、一体ドーなる!?」


チャン:(M)おかしい…!しっかり急所を狙ってる…!コイツ、身を守る事にだけ異様に長けてやがる…!


バニー:「すげえガッツだな。いいじゃねえか。」


リットン:「賭け直しを締切るよーっ。最終オッズは、チャン・リーファンが1.9倍!」


アルル:「次は、私からだぞ…!お前ぇ…!」


リットン:「アルル・クロフォード!9.5倍!」


シーカー:「まじかよぉ…。さっきまでチンピラに絡まれて泣きじゃくってた癖に」


チャン:「こ、の…ッ!クソガキゃぁああっ!」


0:腹を蹴った


アルル:「うぐっ…っ。」


外郭:「良い一発がみぞおちに入ったーーーッ!」


チャン:(M)即殺…!1080°回し蹴りだ…!骨と一緒に心も折れてーーー


アルル:「もう、逃がさないぞ…!」


チャン:(M)折れてない…!?


外郭:「オォーーーーッッ!捨て身の足取り!しかしそのつま先は確かに脇腹にめり込んでいるっ!痛い痛いー!」


0:観客席


リットン:「ひーーーっ。痛そぉ〜っ、ぶるっと来る…!」


セノ:「はははは!ナイスガッツの賜物!いいねいいねえ、僕好きだなあ、彼女」


リットン:「なあ暴君坊!予想出来たかこんなのっ。ぼろ儲けだ!いや、彼女がここまま勝てばの話だけれど!」


バニー:「あーー、こりゃあ」


シーカー:「おいおいおい、マジで…」


0:会場


アルル:「うお…ッッ!」


チャン:「おわわ、わわっ!?」


外郭:「脇腹を犠牲にしたまま!タックル!押し込む気だーッ!」


0:観客席


シーカー:「まじで勝っちまうんじゃね…!?」


バニー:「まじで勝っちまうじゃねえか?」


0:会場


チャン:「こんの…!ボッコボコにしたろ…!チミのどこにその余力が残ってるニダ!?」


アルル:「私は、しぶといのだけが…取り柄なんだ…っ!」


外郭:「押している!確実に押している!度重なる連打にてチャン・リーファンの余力も残りわずか!これは耐えられないかぁー?!」


アルル:「あと…!」


チャン:「ワ…」


アルル:「ニダは朝鮮だろうがーーーっ!」


チャン:「ニダァ…っ!」


0:チャンは場外へ叩きつけられる


アルル:「はあ…はあ…っ。」


0:観客席は一瞬静寂に包まれる


外郭:「チャン・リーファン…場外…!」


リットン:「お…!」


外郭:「勝者…!アルル・クロフォード!!」


0:観客席


リットン:「おおおおおおお!?」


セノ:「うおおおおおおっ!」


シーカー:「まじでやっちまうかよ、ガッツ…!」


0:会場


アルル:「はあ、はあ…!やった…!」


チャン:「…まじか…負けた…。まじか…」


アルル:「…」


チャン:(M)ーーー思えば。いつから間違えたのか。最初は、たったひとつの過ちだった。幼子が好きだった。いや、性的な意味でなく。私は、そうーーー


シーカー:「浸りすぎーーっ!」


0:ビンタした


チャン:「こべんっ…!」


シーカー:「ったく。犯罪者が一丁前に浸ってんじゃねよ。」


アルル:「シーカーさん…!」


シーカー:「おお、流石に重症じゃねえか。無茶すんな新人こら」


アルル:「はは、すみません、無茶するしか取り柄がなくて…」


シーカー:「あーもういいよ、ほれ、手ぇ貸せ。」


アルル:「ありがとう、ございます…っ。」


0:アルルは立ち上がった


チャン:「…待ってくれ、チミ」


アルル:「…はい?」


チャン:「私を逮捕するんじゃあ無かったのか」


アルル:「…。」


シーカー:「ほっとけ。」


アルル:「…。この街の法では、貴方を裁くことは愚か、犯罪者にする事すら出来ない。」


チャン:「…」


アルル:「罪を犯してもいいってことは。罪が許されることもないんだ。それは、とても辛い事ですよ。」


チャン:「チミは…」


アルル:「貴方はこれから、許される場所もなく、ここで生きる限り、ただ只管にその業を背負って生きていくんだ。」


0:アルルはチャンの胸ぐらを掴んだ


アルル:「ざまぁーーーみろっ…!」


チャン:「…」


アルル:「…だから、いつかその日が来たら、ちゃんと。償わせますよ。」


シーカー:「人の肩借りといて何カッコつけてんだよ」


アルル:「痛っ。すみません」


0:二人は控え室に戻った


チャン:「……。浸りすぎ、かぁ…。」


0:場面転換

0:控え室


シーカー:「ちゃんと骨折れてんじゃねえか」


アルル:「おかしいな…。体だけは丈夫に作ってもらったんですけど…」


シーカー:「次の試合は棄権でいいな」


アルル:「いえっ。出ます…!」


シーカー:「…あ、の、な。後遺症どころじゃねえ。チャンなんたらがたまたま異常体じゃ無かったから良かったもんを。次は死ぬぞ、死ぬ死ぬ。そうなったら迷惑かかるのは誰だ?俺らだ。始末書に追われる。いいから棄権しろ。」


アルル:「…はい、分かってます、それでも、お願いします…っ。」


シーカー:「…はあ。なんだってそこまでお人好しなんだお前は。この街に来てから1ヶ月だろ。そんなに愛着湧いたか?」


アルル:「…。若い子が薬物売買をしているを見たからです」


シーカー:「…そんだけか?だったら尚更納得いかん、良い行いが正しい事とは限らねえんだよ。まじでーーー」


アルル:「目の前で、あんなに小さな子が。違法行為をしていたんです。薬物には覚醒作用があります。そこから派生する薬物乱用による暴力被害ですら、ここじゃ、YESになってしまう。…それを変えられるかもしれない一手が、目の前にあるんですよ。」


シーカー:「…」


アルル:「この街だからとか、そういうのは関係なく。手の届く範囲の人の助けになりたい。その為に私は中央に入ったんです。ここが地獄でも、天国でも。私は同じことをします…っ。それが、このスーツに袖を通している意味なんです…っ。」


シーカー:「…はあ…。本当に、今どきまだ居るんだなあ、こういう正義感バカが…」


0:ドアが開いた


外郭:「あー、お疲れ様デス。どうですか?彼女の様態は」


シーカー:「見りゃわかる。超重症だ。」


外郭:「うむむ。思わぬ波乱返しに会場も大盛り上がりでして。出来れば棄権は御遠慮頂きたいのですが、どうされまス?」


シーカー:「あーー。」


アルル:「出ます…!」


外郭:「…。一応とは言えども。あなた方は中央政府の職員。私共としても腫れ物を扱う気持ちデス。この街にいる以上は当然、こういう場になれば命の保証は無いも同然ですが。本当に宜しいですか?」


シーカー:「いいよ。準一等監察官権限で許可する。」


アルル:「シーカーさん…!」


シーカー:「ただし、死んでも知らねえからな。本当に」


アルル:「はい…っ。ありがとうございます…!」


外郭:「ぬはは。結構結構、我々としては催しが盛り上がればそれで良いので。ああ、次はシーカーさん。貴方の出場でスので、会場にお越しください」


シーカー:「あーあー、ついに俺かよ…」


アルル:「あの、シーカーさんっ。無理はしないでくださいね」


シーカー:「どの口がだ。安心しろ、俺は世界で一番」


0:シーカーはネクタイを緩めた


シーカー:「無理をしない男だ」


0:シーカーは控え室を去った


アルル:「……かっこよくは…ないな…?」


0:場面転換

0:会場


外郭:「はいはいっ!お待たせ致しましたーっ!第42試合!開演でございマス!」


セノ:「お、やっとかい。」


リットン:「アルルちゃんは棄権しなかったみたいだね。」


セノ:「まじで?ひゅー、あがるねぇ。」


男:「おいおい、来たぞ…」


セノ:「ん。ああ、そうか。次は彼か」


0:会場


外郭:「南!先程熱い展開を見せてくれた特務国際監察課よりもう一人の刺客!シーカー・グレイスマン!」


シーカー:「…ああ、どうも…」


0:観客席


リットン:「あ、そういやアルルちゃんもだけど、シーカーくんとか。一応中央職員だよね。君、知り合いだったりする?」


セノ:「うーん、縁なくあまり絡んだことは無いけれど、有名だよ。間違いなく面白い芽の1人ではある。」


リットン:「ふーん。教えてくれたり?」


セノ:「しないねえ。君に渡したらどこに漏れるか分かったもんじゃない」


リットン:「はは、だよね〜」


0:会場


外郭:「続いて!北!ついにこの男がデラやべーグランプリに乱入ッ!暴君坊の異名を欲しいままに今日も暴れ回るか、その男こそ、レッドストリートの悪魔ことーー」


シーカー:「…おいおい…まじか…」


外郭:「バニー・ドレッドパーカー!!」


バニー:「おお。会場こっちか」


0:観客席


リットン:(M)会場は、嫌という程静まり返っていた。理由は単純。盛り上がる必要性すらないからだ。


セノ:「はは、大人気ないったらない。」


リットン:(M)バグテリアにおいて、そいつと相対することは、死に直結すると言われるほどの男。彼は異常体では無い。その畏怖が示すものは至極単純


0:会場


バニー:「よっ…こらせ。」


外郭:「バニー・ドレッドパーカーッ!早速会場のコンクリートパネルを壁紙のように引き剥がした!!」


0:観客席


リットン:(M)圧倒的な、怪力。


0:会場


バニー:「お前もどうせ武器使うんだろ」


シーカー:「…まあ。流石にそのつもりだったが…」


バニー:「じゃあ、俺も…」


0:バニーは遠投の構えをした


シーカー:「…!」


バニー:「武器使うぞ…ッッ!」


0:バニーはコンクリートパネルを投げた


シーカー:「…」


外郭:「おおーっ!?早速の威嚇か!?手に取った重さ820キロのコンクリートをフリスビーの様に投げ飛ばす!それはスポンサーパネルへ突き刺さった!投資頂いた皆様!すみませんすみません!」


シーカー:「…」


バニー:「外しちまった。案外ビビらねえんだな」


シーカー:「…え。あ、俺生きてる?」


外郭:「シーカー・グレイスマン!半分気を失っていただけだったッ!」


シーカー:「後輩にいいとこ見せようとした途端これだ、つくづく、持ってないねえ。」


バニー:「外郭、さっさと始めろや」


外郭:「はいなッ!それでは、バニー・ドレッドパーカーVSシーカー・グレイスマンのーー」


シーカー:「たんま。」


外郭:「お…?」


バニー:「あ?」


シーカー:「棄権する。」


外郭:「棄権!棄権宣言です!前代未聞!試合開始前のリタイア!しかし観客席からのブーイングは一切無し!それが指し示すのは「文句無しの棄権」に他ならない!暴君坊を前に逃げ出す事を誰が責めるだろうかっ。否、断じて否っ!誰もが言うでしょう!その敗走は正しいと!」


シーカー:「悪ぃなあ」


バニー:「あ?別に構わねえが。」


シーカー:「いいや。お前に言ったんじゃない。」


バニー:「何だこの野郎」


0:観客席


セノ:「まあ、そりゃそうだ。」


リットン:「うん。満場一致だね。これで監察課のカードは一枚減っちゃったわけだけども。こればっかりは運が無かったねえ」


セノ:「いやあ、さっきのアルルちゃんがバニーと戦う事になるよりはずっと運がいいんじゃないかな」


リットン:「確かに。」


アルル:「…っとと、あれ、もう始まっちゃいました…?」


リットン:「これまたいい所に。棄権したよ、彼。」


アルル:「え?」


リットン:「相手は世界有数の化け物。仕方がないねえ。」


アルル:「シーカーさん…!」


0:アルルは観客席の先頭へ走った


アルル:「いない…っ。シーカーさん…!」


シーカー:「あー。残念。もう観客席までしっぽ撒いて逃げてら」


アルル:「あ…!」


シーカー:「お前が頑張ったところすまねえが、言った通り無茶せず帰ってきたよ」


アルル:「…」


シーカー:「…。流石に怒った?」


アルル:「よかったです…っ。怪我がなくて…!」


シーカー:「う゛」


リットン:「うわあ〜。ああいうのが一番きついんだよなあ」


セノ:「無自覚ってのがまた」


アルル:「ワンチャン死にかけて棄権したのかと思いましたっ。よかったぁ〜、無事で…っ。気に病まないでください、もとより私が付き合わせてるんですし…っ。」


シーカー:「う゛ぅ゛」


リットン:「あの目、見てよ。キラッキラ。」


セノ:「ね。凄いね。」


チャン:(M)その後、シーカーは二日仕事を休んだ


0:時間経過

0:会場


外郭:「さてさて、残す試合も残り僅かッ。南に立つはーーーー」


0:控え室


アルル:「第一トーナメント、なんとか勝ち進めましたけど…。」


シーカー:「ああ。俺と違って。」


アルル:「もういいですってば…」


シーカー:「…で。問題は次の試合だ。」


アルル:「第一トーナメントは一対一でしたけど、第2トーナメントからはペア同士での対決になるんですよね。なんか、こう、気の合う人だといいな…」


シーカー:「呑気か。ペアは連番で決まるそうだ。お前、エントリー番号、いくつだって言った?」


アルル:「えっと、243番です」


シーカー:「243、243…。お。こいつか…!」


アルル:「えっ。誰ですか誰ですかっ。」


シーカー:「こりゃラッキーだな、多分だが、順調に勝ち進めるぞ。なんせ、ギルドの連中だ」


アルル:「ギルドの…!バグテリアにもギルドってあるんですか…!?」


シーカー:「いいや、バグテリアのギルド支部はとっくの昔に撤退した、こいつは、噂のリベールからだな。」


アルル:「リベールと言えばギルドの本拠地ですけど。噂って。何かあったんですか?」


シーカー:「なんだお前、知らないのか。新聞読めよ」


アルル:「すみません…」


0:場面転換

0:観客席


リットン:「…匿名Sくん。これも君の差し金かい。」


0:会場


外郭:「さあ〜オーディエンス!今回も湧かせてくれるのか!!現在フランスにて話題沸騰中の超新星っ。」


リットン:(M)良くか悪くか。私が最も注目する新生二人が、ここに並んだ。


外郭:「ガロンドール・ウォンバット!!」


ガロ:「おいおい、もう夕方じゃねえか…っ。間に合わなくなる…!」


外郭:「続いて、彼とタッグを組み、トーナメントを進めるのは、第一トーナメントで波乱のどんでん返しを見せつけた彼女!アルル・クロフォード!」


アルル:「アルル・クロフォードですっ。よろしくお願いします…っ。」


ガロ:「あ、おう、よろしくな。」


リットン:(M)リベールで起こった激動の中で、彼が今ここに来た事はきっと偶然じゃない。


外郭:「相対する北チームッ。一人目のイカレチンポは、第一トーナメントは全戦不戦勝、暴君坊、バニー・ドレッドパーカー!」


バニー:「…」


外郭:「彼と共に手を取り戦うのは…!ドリームカードッ!バグテリアに突如現れては消えてゆく、問題過多の風雲児ッ。」


リットン:(M)そして、私が最も厄介視する、面倒事の塊の様な二人。


外郭:「セノ・アキラーーーッ!」


セノ:「やあやあ!どうもどうも!」


リットン:(M)こんな一戦、賭けずには居られないだろ…っ。


外郭:「カードは出揃いましたッ!南チーム。ガロンドール・ウォンバット。アルル・クロフォード!」


ガロ:「アルルって言ったな」


アルル:「あ、はい」


ガロ:「一回戦見てたよ、すげーカッコよかった。」


アルル:「あ、ども。」


ガロ:「これから暫く、よろしくな」


アルル:「はいっ。」


外郭:「北チーム!バニー・ドレッドパーカーッ。セノ・アキラ!この四名が記念すべき第2トーナメント一発目となります!」


セノ:「いやあ〜、まさか君と一緒に誰かを虐めることになるとは思わなかったな。」


バニー:「ふざけんな外郭コラァ!!なんで俺がこいつとペアなんだ!!ぶっ殺すぞ!」


外郭:「クレームは女神までどうぞ!」


セノ:「にしたって、挨拶したかった二人とまとめて会えて、しかも一戦交えられるだなんて。やっぱり僕、持ってるなあ。信じられるかいバニー。これ一回目だよ」


バニー:「何の話だこら。死ね。絶対ぶっ殺してやるからな」


セノ:「僕を嫌い過ぎだ。傷ついて死ぬ」


バニー:「死ね」


外郭:「それでは…ッ!両チーム!構え…!!」


セノ:(M)誰の差し金か。幸か不幸か、知らないことが山ずみだ。


外郭:「第2トーナメント、タッグバトル!開始ィッ!」


セノ:(M)いい手土産が出来そうだよ。阿久間さん。


0:観客席


シーカー:「ま、じか…。早速の御相手が暴君坊っつー…沸いてんのかこれ…」


リットン:「あははっ。賭け金!賭け金が跳ね上がってる!!」


シーカー:「新人っ!棄権しろ!死ぬぞお前!」


0:会場


ガロ:「おい、お前の知り合いなんか叫んでるぞ」


アルル:「え、あ。ホントだっ。」


0:アルルはピースした


アルル:「頑張りますっ。」


0:観客席


シーカー:「だぁーーーっ!こんの難聴がっ。」


リットン:「そりゃあ、この盛り上がりじゃあしょうがないさ。それにしちゃあ、セノは相変わらず嫌われてるみたいだけど」


シーカー:「そうだ、そもそも本庁の人間がなんでバグテリアなんかにいやがる。俺らはとにかく、規則違反だろうが…!」


リットン:「あ、やっぱりここに入るのって禁足なの?」


シーカー:「そりゃな。入れば命の保証無し、どんな闇が眠ってるとも知らねえ場所だ。ギルド、本庁の人間、暴君坊…。いきなりとんでもねえモン見せてくれやがる…」


リットン:(M)…なるほど。匿名Sくんが言ってたのはそういう事か。君はもう、中央政府での立場を失ってもいい。そういう状況なんだな?セノ


0:場面転換

0:会場


外郭:「試合開始から2分、両チーム、身動き取らず、睨み合いのみが続いておりますッ。それの指し示す意味とは…!」


ガロ:「FANBLE」


0:ガロの血管は盛り上がり発熱する


アルル:「あっつ…!」


ガロ:「もう時間もねえんだ、悪ぃがサクッと終わらせてもらうぞ」


アルル:(M)異常性…!第一トーナメントじゃ見れなかったけど…


セノ:「はは、来るよ、バニー。」


バニー:「黙れ死ね。」


セノ:「酷くない?」


ガロ:「そぉーーー…れッッ」


外郭:「踏み込んだーーっ!コンクリートが易々と抉れる程の踏み込み!」


セノ:「は…っや…!」


ガロ:「そぉぉおおらッ!」


バニー:「ふんッッ!」


0:バニーはチョップをかました


ガロ:「がはっ…!」


外郭:「特攻破れたりーーッ!暴君坊の無慈悲チョップにガロンドール・ウォンバットッ!地面に叩きつけられたーッ。」


ガロ:「ごほっ。けほっ…。んだぁこいつ…!」


バニー:「びっくりさせやがって、ゴキブリみてぇな奴だな」


アルル:(M)今の捉えるのか…暴君坊、噂以上の天然怪物だ…!


ガロ:「12GRID」


バニー:「おお、なんだ。まだやるか?」


ガロ:「QuickクイックBURSTバーストッッ!」


0:腹を殴った


バニー:「痛ッッ…てぇなぁ、おい…!」


ガロ:「まじか…倒れもしねえのかよ…!」


外郭:「しかし何のそのッ。第一トーナメントで見せたその怪力も暴君坊の前では雛鳥かぁー!?」


アルル:「まずい…っ。退け、ガロンドール…!」


バニー:「次ぁ俺の番だなあ、チビ」


外郭:「こ、これはーーッ。超・至近距離ッ!拳の撃ち合いか!?」


ガロ:「52GRID」


バニー:「右ィ」


ガロ:「QuickクイックBURSTバーストッッ!」


バニー:「ストレーーーートッッ!」


0:ガロは吹き飛んだ


ガロ:「ーーーごはんっ…!」


アルル:「ガロンドール…!」


外郭:「力勝負は暴君棒に軍配が上がったッ!吹き飛ばされるガロンドール!これはそのまま場外コースかぁ?」


ガロ:「FANBLE…ッ!」


0:ガロは地面を殴った


ガロ:「ッッととととぉ…!危ねぇ…!ギリセーフっ。」


外郭:「危うく場外は間逃れた!咄嗟の判断に救われたゾ!」


ガロ:「こんなやべーのがゴロゴロいんのか。」


アルル:「大丈夫かっ。ガロンドールっ。」


ガロ:「おう。」


セノ:「はは、バニーの脳筋パンチまともに食らって大丈夫って。暴君坊の異名は返上かな?」


バニー:「黙れ。元から受け取ったつもりもねえ。」


ガロ:「トリガーワード使ったとも思えねえ。ありゃなんの異常性だ。」


アルル:「あいつはただの人間だよ、脳筋なだけの」


ガロ:「…まじで?」


アルル:「うん。そうだよ」


ガロ:「はぁ〜、通りで。おい、そこのパーカー」


バニー:「あ?」


ガロ:「お前は異常体じゃねえからもういい。そっちのお前」


セノ:「はいはい、僕です」


ガロ:「お前は異常体か」


セノ:「いいや。違うよ?」


ガロ:「どっちも人間かよ。」


セノ:「あら、お眼鏡に叶わなかったかな」


ガロ:「ああ。俺がここに来たのは異常体と戦う為だ。だからもういい、お前ら棄権してくれ」


アルル:「…え?」


セノ:「…」


バニー:「…。」


外郭:「こ、これはぁーー!?まさかの棄権を薦めるという行為ッ!あまつさえ、暴君坊とセノ・アキラっ。バグテリアの問題児二人を前にその発言、それ程の自信があるのか、はたまた只の世間知らずかっ。」


0:観客席


シーカー:「どういうつもりだぁ、あいつ…?終わってんのか、頭とかが…」


リットン:(M)何か目的があってここに来たのか。異常体を戦うことって言ってたけど。そんなイカレた戦闘狂じゃないと思うし。


0:会場


バニー:「ふざけんな。お前らぶっ飛ばさねえとコイツを殺せねえだろ」


セノ:「僕を殺す為に僕と共闘するという。ぶふぉ。なんとも皮肉」


バニー:「お前マジで1回死んどくかコラ」


アルル:「ちょっと何言ってるのさ、そんな申し出飲んでくれるわけないだろ…っ。」


ガロ:「だってマジで時間の無駄なんだもん」


バニー:「舐めてんなあ。舐められてんなあ、こりゃ。いいさ、時間が勿体ねえなら秒で終わらせてやるよ」


セノ:「はは、いいじゃない」


バニー:「あ?」


セノ:「3分だ。君たちが僕ら相手に3分持ち堪えられたなら、棄権してあげるよ」


アルル:「え?」


バニー:「何勝手なこと言ってんだテメェこら。」


セノ:「いいだろ?それとも何か?超新星2人軽々と落とせない程落ちぶれたってのかい。君ともあろう男が」


バニー:「そんな安い挑発にゃあ乗らねえよ。殺すぞてめえ」


セノ:「挑発には乗らないのに怒りはするのか」


バニー:「…だがまあ、俺もそれでいいぜ。長ったらしいのは好きじゃねえ。何より、お前と一緒に仲良しこよしなんざ1秒でも早く終わらせたい」


セノ:「おお、そこか。思わぬ罵倒」


外郭:「ここに来てルール変更ッッ!3分間のデスマッチとなりましたッ。」


ガロ:「さんきゅな。」


セノ:「いいってことさ。」


アルル:「えええ??」


ガロ:「そういうことだ、いいよな。アルル」


アルル:「えっと、まあ。いっか。うんっ。大丈夫」


バニー:「外郭。測定しろや。3分きっちりで終わらせてやる。」


外郭:「かしこまりましタっ。くれぐれも、終わらせられるなどという噛ませ臭い結末にならない事を希望しますっ。」


0:バニーは大股を開き臨戦態勢に入る


バニー:「わざわざコイツと手ぇ組んでまで相手するんだ。ちったあマシであってくれよ」


0:セノはポケットから手を抜かない


セノ:「ひりつくねぇ。刹那の輝きってのは」


0:ガロは拳を叩いた


ガロ:「っしゃ!!時間もねえ!さっさとカタつけちまおうっ。」


0:アルルも構える


アルル:「お手柔らかに、とは行かないだろうけど。了解っ。」


外郭:「それでは両者同意の上、ルールを変更致します!3分間、セノバニーチームの猛攻を耐えれば南チームの勝ち!両者構え。…3分間のデスマッチ…開始ッ!」


セノ:「さーて、それじゃあ…」


バニー:「ーーーウォォオオオオッ!」


セノ:「ああもう。連携もへったくれも無い」


外郭:「おぉお!?開始早々、全力ダッシュ!」


0:時間経過

0:ファミレス


リットン:(アナウンサー)今回取材班は一ヶ月前に行われたデラやべーグランプリについて、夢のドリームマッチと言われた試合の見聞録を集めに、とあるファミレスへ来た。


シーカー:「え?あ、はい。確かに、あの試合を間近で見てましたよ。」


リットン:(M)彼は匿名Gくん。その日、試合を見たという彼の口から、あの日の衝撃的な出来事を口にしてくれた。


0:シーカーはステーキを切りながら話している


シーカー:「いやねえ、あの日何を一番驚いたって、普通人間って、走る時どっちかの足を先に出すじゃないですか」


バニー:『そぉぉぉぉぉおおおいッッ!』


シーカー:「カートゥーンとかでよく見る、足がぐるぐるになる奴。あるでしょう?あれって本当にあるんだなって。」


0:現代


バニー:「スーーパーーーッ!タッッックル…!!」


0:ガロにタックルしたが受け止めた


ガロ:「ッッぅぅぅぉおおおおお…!」


バニー:「ぉぉおおお…!」


外郭:「バニー・ドレッドパーカーの猛突進を受け止めるガロンドール!これは激しい「力」のせめぎ合いだ!」


シーカー:『その男二人がこう、両腕を互いに掴みあって押し問答してるんですよ』


0:匿名Gは身振り手振りで説明する


シーカー:『そしたらね、地面が、こう。ぐにゃんって曲がったんです。コンクリートですよ?豆腐かって話ですわ』


セノ:「はは、それじゃあ、僕も…!」


アルル:「…!来ますか…!」


セノ:「そりゃあ」


0:セノは袖からナイフを取り出した


セノ:「イクでしょ!」


アルル:「ーーっと。やっぱりなに隠し持ってましたか」


セノ:「おや。バレてたか」


外郭:「アルル・クロフォード!咄嗟にセノ・アキラのナイフを捌いたッ。そして両腕に付けているのは…!」


0:2人は押し合いになりながら話す


セノ:「トンファー、かい。今どき珍しい」


アルル:「相手を制圧するのに殺傷能力はいりません。」


セノ:「はは、こりゃいい。」


シーカー:『これまた、魔法かと思ったんす。』


セノ:「ぃよっ…!」


0:セノは腕を伸ばした


アルル:「ぅぶっ…!?」


シーカー:『そいつが腕を伸ばしたら、もう新人…。いや、アルルさんの喉元に手が伸びてたんです』


セノ:「どっっーーせい…!」


アルル:「がはっ…!」


シーカー:『次の瞬間にはもうアルルさんは地面に倒れてたんですよ。』


セノ:「はは、コツン、と。ね。」


アルル:(M)合気…!流石に本庁職員…っ。一筋縄じゃ行かせてくれないか…っ。


外郭:「試合開始から1分40秒!既にセノバニーチームが優勢か!?」


バニー:「この…ッ」


0:バニーはガロを持ち上げた


ガロ:「うお…!?」


バニー:「チビ助がァーーーーッ!」


0:そのまま空高くほおり投げる


ガロ:「うおおおおおおお!?」


セノ:「ひょお、人間投擲っ。久しぶりに見たなあ」


外郭:「ガロンドール・ウォンバット!空高く舞い上がったーッ!さながら人類初の空中飛行を彷彿とさせるっ。その高さ、40、いや50mは超えている!」


ガロ:(M)おいおい、アイツ本当にただの人間かよ。下手すりゃグランシャリノの連中よりよっぽど


外郭:「2分経過!」


セノ:「格好つけちゃったんだ、さっさと決めさせてもらう、よ…っ!」


0:ナイフを投げるがアルルに弾かれる


アルル:「させませんっ。」


セノ:「邪魔してくれるぅ。じゃあ耐えてくれ、そらそらそらそら」


0:ナイフぶん回し。捌ききれない


アルル:「う…!かはっ…!」


ガロ:(M)上空か…。よし。試してみよう


セノ:「おお。まだなにかする気かい」


ガロ:「56GRID」


0:ガロは空へ向き直った


ガロ:「QuickクイックBURSTバーストッッ!」


外郭:「空を殴ったーーっ!?そして物凄い速度で加速ッッ!いや、これはもう、落下しているッッ!」


バニー:「いいじゃねえか。拳で語る感じがよ。他の奴らよりよっぽど。」


セノ:「僕への当てつけかい」


バニー:「よく分かってんじゃねえか」


ガロ:「ぉぉぉおおおおお!!」


外郭:「あんな速度で落ちてきたら…着地できないよ!出来ないよー!ガロンドールっ。」


バニー:「ああ、真っ向から捩じ伏せるのは嫌いじゃねえ」


ガロ:「145GRID」


バニー:「右ィ。」


ガロ:「QuickクイックBURSTバーストッッ!」


バニー:「ちょっとマジ本気ストレートッッ!」


0:二人の拳は強く撃ち合う


セノ:「ひい。」


ガロ:「ーーーガァッ…!」


バニー:「グォオッ…!」


外郭:「なんという、爆風かぁー!?ここはバグテリアの一等地、ブルーストリートッ!しかし目の前のこの惨状を、戦地と呼ばずなんと表現しようッ!」


0:観客席


シーカー:「おおおおいおいおいっ。観客席にまで被害はねえだろうな…!」


リットン:「まっったくだ…!怪我まではとにかく死ぬのは勘弁だぞ…!」


シーカー:「つーか新人共は持ち堪えるだけでいいんだろうがっ。なんでムキになってんだよっ。」


リットン:「知らないよっ。そういう性分なんじゃないか!?気が知れないねまったくっ。」


0:会場


外郭:「残す時間ッ!一分!セノバニーチーム!仕留め切れるかッ!」


バニー:「ーーーぉぉおおおおらぁああっ!」


外郭:「舞い上がる砂煙から先に現れたのはやはりこの男!バニー・ドレッドパーカーっ。」


ガロ:「ぉぉおおおおおおっ!」


外郭:「負けじとガロンドールも走り出すッ!」


セノ:「じゃあ僕も後ろからこんにちは。」


ガロ:「は?てめえ、いつの間に…っ。」


セノ:「アルルちゃんばっかりだったからね、今最もアツい男とも遊びたい」


バニー:「てめえセノッ!横取りすんなァっ!」


セノ:「原始人か君は」


ガロ:「FANBLEファンブルッ!」


セノ:(M)出た。身体強化系か?運動神経全般が飛躍的に向上する。座標はどこに繋がってるのかしら


ガロ:「そぉぉおおらッ!」


バニー:「おお、こっちに来るか。分かってんなお前」


ガロ:「うるせえ怪力お化け!」


0:ガロはバニーの胸に足を着いた


バニー:「お?」


ガロ:「どっ…せーーーイッ!」


バニー:「うおお!?」


外郭:「ガロンドール!暴君坊を折り返し地点として利用したッ!なんという過激な発想!」


ガロ:「22GRID」


セノ:「人間投擲に人間魚雷、面白い座標だね」


ガロ:「QuickクイックBURSTバーストッッ!」


セノ:「あっ。ぶない」


0:セノはひらりとみをかわした


ガロ:(M)まじかっ。よけるかこれっ。


バニー:「おい、てめえ」


ガロ:「…!」


外郭:「速い!これは速い!つい先程までリングの右端にいた男が!刹那、左端へ!」


バニー:「人様踏み台にィ」


0:顔を掴んだ


ガロ:「ごぶっ」


バニー:「してんじゃあねえぞッッ!」


ガロ:(M)やべえっ。場外に押し付けられる…!


0:観客席


シーカー:「やべえ…!なんかもう全然ついていけて無いけども…!なんか凄くてピンチだということは分かる…!」


リットン:「あそこまで力をつけてたのか、ガロンドール・ウォンバット。こりゃあ、誰かの入れ知恵があったな」


チャン:「…。まだ終わってなかったニダか」


シーカー:「あ?誰かと思えば。さっきのエセ中国人じゃねえか」


リットン:「ああ、一回戦負けの。そーだよ、今架橋だ。ここを耐え抜けば彼らの勝ちって状況。賭場も大盛り上がりさ」


チャン:「…」


0:チャンは観客席の先頭へ立った


チャン:(M)小さな頃から、何も出来ない自分が嫌いだった。だから嘘をついた。できる自分を演じた。もう一人の自分を。架空の自分を演じた。自分に浸って、自分にだけ浸って、自分よりあらゆる面で弱い人間を虐めるのに没頭した。それは地位でも名誉でも力でも何でも良かった。最終的に行き着いたのが、子供だった。


0:会場


アルル:「ごほっ…。」


0:観客席


チャン:(M)なんっっと…。醜いことだろうか。産まれたばかりの幼児に手を上げる。その動機こそ、自分より弱い存在をいたぶる為。幼児と何ら変わりなく、体ばかりが育ったのが私だ。その事にすら目を背け、あまつさえ自分を快楽殺人犯のように偽った。


0:会場


アルル:(M)痛い…痛い…!さっきの試合の傷もあるけど…何よりセノ・アキラ…!ふざけてるように見えるけど、ちゃんと強い…!


0:観客席


チャン:(M)そんな私よりも弱かったお前が、本音だけで私をねじ伏せてしまったんだ。あまつさえ、罪を償わせるとまで言ったんだ。


0:会場


アルル:(M)立て…!立て…!!ガロンドールはまだ戦ってる…!立て…!


0:観客席


チャン:(M)自分にすら逃げ道を閉ざした、どこまでも軽薄で愚かな私を、償わせるんだろう。口だけじゃないと言ってくれ。立ってくれ…!


シーカー:「おいおい、あいつ突っ立ったまま動かなくなっちまったぞ」


0:チャンは拳を握った


チャン:「立てーーーっ!アルル・クロフォードっっ!!」


シーカー:「うわっ。びっくりしたっ。流暢な英語だこと!」


0:会場


アルル:「…!」


外郭:「残り30秒!このまま落ちてしまうか、ガロンドール・ウォンバット!」


セノ:「おやおや」


アルル:(M)ーーー対・異常体執行術


セノ:「遅れて登場、超新星」


アルル:(M)物理運動は一定の方向にしか動かない。法則に逆らえば、その動きは反動へ変わる。名の通り諸刃の剣


バニー:「おぉおおおおおッ!」


アルル:「逆手さかて流泉りゅうせんッ!」


0:トンファーで右腕を殴った


バニー:「うおっ…!?」


アルル:「痛っったい…!けど、我慢…!」


バニー:「ほぉ…!」


外郭:「アルル・クロフォード!叩きつける右腕を押し付けたッ!これは反動が怖い!」


0:観客席


シーカー:「うおおお…!やるじゃねえか新人…!」


チャン:「…。」


0:チャンは静かに拳を握った

0:場面転換。会場


ガロ:「助かった…!さんきゅーっ。」


セノ:「間一髪のところ悪いね。まだ僕がいる」


0:ナイフを振るが避ける


ガロ:「っと…!んにゃろ…!」


アルル:「まだだよ、ガロンドール!」


ガロ:「お?」


アルル:「もう1回だ。私を踏み台にしてくれ」


セノ:「おお。」


ガロ:「へへ、了解」


アルル:「ーーーっしゃ!来い!」


ガロ:「FANBLEっ。」


0:ガロはアルルの腹の上に乗った


アルル:「行け…っ!」


ガロ:「人間魚雷っ!」


0:腹をけった


アルル:「がはっ…!」


セノ:「正式名称かいっ。ああ、向こう行っちゃった」


ガロ:「ぉぉおおおおっ!」


バニー:「おお…!速ぇ。」


ガロ:「お前だけでも場外にして勝ちてえ…!」


バニー:「はは、いいぜ、やってみろ…!」


外郭:「超至近距離空中戦ッ!これは、どちらに軍配が上がる!?」


ガロ:「160GRID」


バニー:「100%」


ガロ:「QuickクイックBURSTバーストッ!」


バニー:「ジャブッッ!」


0:ガロはバニーの拳をかわす


ガロ:「ぉぉぉおおおおおおっ!」


0:顔に拳が当たる


バニー:「ごっ…!」


ガロ:「らぁあああああッッ!」


バニー:「げぼばーーっ!」


0:バニーは吹き飛ぶ


外郭:「咄嗟の拳勝負は僅差でガロンドールに軍配が上がったッ。天下無敵の暴君坊、そのまま場外か!?」


ガロ:「しゃ…!やっとまともに食らいやがった…!」


バニー:「んんんんんんッ!」


0:バニーは地面を掴んだ


ガロ:「お、おいおい…っ。」


アルル:「まじか…っ。」


バニー:「ん゛ふぅ…。危ねぇピリッと来たぜ。」


セノ:「場外ならず、残念だったね」


ガロ:「これでも駄目かよ…!」


アルル:「けほっ。ごほっ。くそ…!まだまだ!二回でダメなら3回やるだけだ…!」


ガロ:「おう!」


バニー:「はははははっ!いい度胸だ!!第二ラウンドだボケェっ!」


外郭:「そこまでッッ!3分間経過につき、南チームっ。アルル・クロフォード、ガロンドール・ウォンバットチームの勝利ッ!」


ガロ:「…」


アルル:「や、やった…っ。」


0:観客席


シーカー:「お、おいおい…!」


リットン:「超新星、耐えるか…!」


チャン:「…っ。」


シーカー:「よくやったああああっ。すげえぞ新人!これは1ヶ月後くらいまでは語り継いでやる!」


リットン:「凄えリアルな数字きた」


0:チャンは黙って観客席を後にする


シーカー:「あ?もう行くのかお前」


チャン:「…ああ。労う資格すらないよ」


シーカー:「…。浸りすぎだっつーの。」


チャン:「は、まったくだ。」


0:会場


バニー:「ち。いい所だったが。約束だ、仕方がねえ」


セノ:「だねえ。まさかあそこまで苦戦させて貰えるだなんて思わなかった」


ガロ:「冗談じゃねえ。これがマジもんの殺し合いなら、多分勝てなかった。とくにそっちのお前」


セノ:「はい?」


ガロ:「まるで本気じゃなかったろ」


アルル:「確かに。本庁職員があの程度で治まってくれるほど生ぬるいとは思えません。それに、今更ですが。何故本庁の方がバグテリアに居るんですか」


セノ:「まあまあ、ここに来たのは散歩。それに、僕が本気出したって君らに力じゃかないっこないからね。これは本当だよ?」


バニー:「うるせえ、死ね」


0:殴るがかわす


セノ:「あっぶな!何すんだよ急に!」


バニー:「ここに来たのはお前をぶちのめす為だからな。ここで負けちまっちゃあお前をぶっ飛ばすことも出来ねえ。だから今殺すことにした」


セノ:「じゃあ初めから出る必要なんてないじゃない…」


バニー:「ん。ああ、確かに。そういや…そうだったな!!」


セノ:「あぶねえっての!君のパンチ!2トントラックが突っ込んでくるようなもんなんだからな!」


バニー:「いいだろ、お前を殺す為の拳だ」


セノ:「怖い!」


ガロ:「何やってんだあいつら」


アルル:「さあ…」


セノ:「よっ…こらせ。」


0:セノはバニーを軽く躱しアルル達へ近付いた


セノ:「良かったよ、記念に君らと戦えて。ハッピーハッピーハッピーだ。」


ガロ:「おう。」


アルル:「どうも…」


バニー:「おいセノっ。てめえ無視すんな!」


セノ:「あー、もう。彼らに伝えたいことがあるんだ、それが終わったら僕をぶっ飛ばすなりなんなりしていいから、ちょっとだけ待ってよ、ね?」


バニー:「絶対だな?絶対だな??」


セノ:「うん」


バニー:「よし。待つ」


アルル:(M)待つんだ


セノ:「んん。改めて。僕はセノ・アキラだ。よろしく」


0:セノはガロ達に握手した


ガロ:「おお。」


アルル:「はい。よろしくお願いします」


セノ:「君らの活躍は大いに聞き及んでいる。アルルちゃんはまだこれから、と言ったところだろうけれど。特にガロンドールくん」


ガロ:「俺ぇ?」


セノ:「ああ、なんでも今、リベールは大変なことになっているらしいじゃないか」


アルル:「…?」


ガロ:「…やっぱアスカのダチなら知ってんだな」


セノ:「アスカ…?あー、彼か。ああ、うん。よく分からないけど、多分そういう事。本庁もグランシャリノに対する警戒の目は持っていたけれど。ついぞその真の目的は暴け無かったわけだ。不甲斐なくて済まないね」


ガロ:「いいよ別に。アスカ達とアイネスは無事なのか?」


セノ:「多分無事だと思うよ。死亡報告は無かったしね」


ガロ:「そうか。ならいいや」


セノ:「そんでね、本庁はグランシャリノの一件には、「今は」これ以上介入しない事にした」


ガロ:「…そうか」


セノ:「どれだけの脅威が待っているか分からないしね。だから残念だけど、君達のお仲間を助けるには至れない。これもまた、すまないね」


ガロ:「…。それも知ってんだな」


セノ:「バグテリアの連中はグランシャリノと抜け駆けしているらしいけれど。ドイツ政府は君達へ随分と期待しているそうだ。まあ、関係ないけれど、頑張りなよ」


アルル:(M)なんの話しをしてるんだろうか


セノ:「アルルちゃん」


アルル:「あ、はい」


セノ:「君もいいガッツだった。これから来る激動に、このバグテリアはその渦中に物理的な意味で晒される事だろう。君達は今後、まだ見ぬ結末の分岐に大きく関わっている。と、僕はそう思う」


アルル:「は、はあ…」


セノ:「今から僕は中央政府から離れる事になるだろうから、きっとこれが中央政府職員として話す最後の機会になるだろうけれど。会えてよかった」


アルル:「中央政府、辞めちゃうんですか?」


セノ:「うん。まあ、クビに近いだろうけど。そこはどうでもいい。面白いタネが溢れている。幸せな事だ。」


アルル:(M)その人は。不気味な人だった


セノ:「いや本当に。会えてよかったよ。噂通り、良い芽だった。」


アルル:(M)見ている先は、私達とはどこか違うんだ、と。そう思わされる口振りに。無関心な困惑を残す事しか出来なかった


セノ:「ただ、ガロンドールくん。」


ガロ:「あ?」


セノ:「君は少し、焦っているね。」


アルル:(M)その人の目の奥にあるのは、ただひたすらの黒。光を一切通さないそれは、何処を見つめているか、知る由もないんだろうな、と。そう思った


セノ:「堕ちかねないよ。彼みたいに」


ガロ:「…。」


バニー:「おい。長ぇよ。いつまで話してんだ。」


セノ:「…は。そうだね。これ以上はお節介だ。いい縁だったよ、超新星の二人」


アルル:「…はい。お疲れ様です。」


バニー:「ったく。そんじゃあ、場所だけ移すか」


セノ:「あ。僕この後予定あるんだよね」


バニー:「は?」


セノ:「いやほんと。超大事なビッグイベントが現在進行形で動いてるんだ。本庁に帰らないと」


バニー:「…」


セノ:「と!言うわけでドロン!」


バニー:「騙しやがったな…。」


セノ:「そいじゃあ、またね〜!」


バニー:「待ちやがれ、セノォオオオオオ!」


0:二人はその場から消えた


アルル:「なんだったんだ…。あの人たち」


ガロ:「…」


アルル:「でも、やったねっ。なんとか勝ち進めたっ。」


ガロ:「…ああ。」


0:場面転換

0:観客席


シーカー:「…ふう。流石にヒヤヒヤしたぜ…」


リットン:「だねえ。問題児達も去ったみたいだし。こりゃもう、見所は超新星達だけかな。」


シーカー:「まさかあの新人がこんな舞台で期待の星になるたァ夢にも思わなかったわ。」


リットン:「誰もがそう思ったから、期待の星なんだろ」


シーカー:「は、まったくだね」


0:場面転換


リットン:(M)その後、第二試合、第三試合と進み、第42試合にて第2トーナメントは終了し、超新星ペアは最終的トーナメントまで生き残る結果となった。


アルル:(M)試合が進む度に、ガロンドールの強さに打ちのめされた。羨ましくも思った。けど、この人は。どこか寂しそうな顔をしている。


0:控え室


ガロ:「ーーーなるほどなあ。それであのでけえ壁通る為にこんな大会出てると」


アルル:「そうなんだよ、高過ぎない?」


ガロ:「ああ、壁も金も高すぎるわな」


アルル:「ねー。でもまあ、しょうがないよね」


ガロ:「まあ、お前がそう思うならそうなんだろうな。」


アルル:「君さ、冒険家なんだって?」


ガロ:「ああ、そうだ。」


アルル:「へえーっ。いいないいな、ギルドでも冒険家って出来るんだ。じゃああれっ。冒険譚とかないの!?」


ガロ:「ああ。あるぞ。って言っても、今は手元にないけど」


アルル:「はは、忘れてきたのか」


ガロ:「いや。置いてきた。」


アルル:「なんでさ、バグテリアなんて冒険にピッタリじゃん」


ガロ:「今はそれどころじゃねえんだ。」


アルル:「うーーん。そっか…?でも、いいね。楽しそ」


ガロ:「…そんないいもんじゃねえよ、冒険」


アルル:「え。そうなの」


ガロ:「…。何が起こっても自己責任だ。別れも、失うものも、全部。俺の力不足で良い方向にも悪い方向にも転がっちまう。」


アルル:(M)やっぱり。寂しそうだ。冒険家だなんて、楽しくて、ワイワイしてて、こう。もっと楽しい感じをイメージしてた。実際、ガロンドールからもそういう人間なんだな、と言う感覚が伝わる。でも


ガロ:「楽しいのも辛いのも全部ひっくるめて冒険だけど。異常体がそれをするってのは、そんな綺麗なもんばっか見てるだけじゃ済まされねえって。つい最近痛感した。」


アルル:(M)どこか、無理をしているように感じる。


ガロ:「ってまあ、どうでもいいか」


アルル:「…。その。さっきセノさんが言ってたリベールでの一件、関わりあったりする?あ、いや。嫌なら言わなくていいんだけどさ」


ガロ:「…。仲間とさ。離れ離れになっちまったんだ」


アルル:「…」


ガロ:「俺が馬鹿で弱いから、誰一人守れなかった。だから、今は修行中なんだ。」


アルル:「え゛。修行の一環でバグテリアに…?」


ガロ:「ああ、そうだ」


アルル:「んーー。そっ、かぁ…。いや、ごめん。無責任に聞いちゃった。なにも気の利いた言葉掛けられないけど…」


ガロ:「いいよ別に。全部俺がどうにかすりゃいいんだから。」


アルル:「…?」


ガロ:「あー。なんか暗い話になっちまったけど。とりあえず、今の俺にゃあ冒険譚書く資格がねえんだっ。そんだけ」


アルル:「…そんなの、誰が決めたのさ?」


ガロ:「…。俺だ」


アルル:「…。えっと。本当に。これは本当にただの勘だから悪い様に捉えないで欲しいんだけど。ガロンドール。それ、本当に思ってる?」


ガロ:「…何がだよ」


アルル:「いや、その。冒険譚書く資格ないって」


ガロ:「…。本当だ。仲間ひとり救えないで、何が冒険だって話だ」


アルル:「…。そっか。」


ガロ:「ああ。そうだ」


アルル:「まあ、君が言うなら、そうなんだろうね」


0:控え室の扉が開く


外郭:「ガロンドールさん、アルルさん、居まスカ?」


ガロ:「ああ、いる」


アルル:「はいっ。」


外郭:「よかった、これより最終トーナメントを開始します。最終トーナメントは再び一対一の形式に戻りますので、控え室の移動をお願いしまス」


アルル:「え、あ。そうなんですか」


ガロ:「分かった。」


0:ガロは椅子から立った


アルル:「…。ありがとう、ガロンドール。君が居なきゃ、ここまで来れなかった」


ガロ:「…ああ。」


アルル:「最終トーナメントでぶつかっても、恨みっこナシだからね」


ガロ:「分かってる。」


0:ガロは部屋から出た


外郭:「………喧嘩しまシタ?」


アルル:「いや、はは、喧嘩はしてないんですけどね…」


0:場面転換

0:ブルーストリート

0:特務国際監察課


バタップ:「おう。ああ、そうか。そうかそうか。」


0:バタップは誰かと通話している


バタップ:「ほほーう。おーけぃ。分かった。はいよ。」


バイオレット:「…」


0:何かの記事を読んでいる


バイオレット:(M)リベール占領。グランシャリノが動き出したか。それも、大きく。


0:バイオレットは珈琲を飲む


バイオレット:(M)中央政府はこの件については黙り。リベールを引き合いに、暫くの睨めっこを貫くつもりだな。ビットマン。相変わらず臆病な男だ。ガルシアさんとは大違いだな。


バタップ:「いち、にい、さん、しー。」


0:バタップはソファに寝転び時計を眺めている


バタップ:「アイツら。全然帰ってこねえな?」


バイオレット:「…。」


バタップ:「心配とかしねえの?一応は仲間だろうよ」


バイオレット:「黙れ。たまたま同じ配属になっただけで、私とあいつらは違う。お前とだってそうだ。バタップ」


バタップ:「ああ、そう。よっこらせ。」


0:バタップはソファから起き上がる


バイオレット:「何処に行く。」


バタップ:「散歩」


バイオレット:「許可しない。ナンバーズ以外の異常体は単独行動を認めていない」


バタップ:「規律違反かぁ?」


バイオレット:「規律違反だ」


バタップ:「じゃあお前が着いてこいよ。さもねえと一人で行っちまうぜ」


バイオレット:「私が中央に報告するだけだ」


バタップ:「こんな辺境部署に執行官派遣するわけねえだろ。それも俺を殺せる奴う。ナンバーズクラス含め、ステージ4以上の執行官を派遣する始末になるってのは。アンタの株が下がるってもんじゃねえか?バイオレット」


バイオレット:「…。いつもは黙って孤立行動するだろう。何を今更」


バタップ:「なんとなく。」


バイオレット:「…。はあ。5分待て」


バタップ:「はいよお。」


バイオレット:「まったく。どうして私が…」


0:バイオレットはブツブツ文句をたれながら着替える


バタップ:(M)バニーも退けるか。こりゃいよいよ当たり。まさかあの放蕩野郎以外にも居たとは思わなかった。


0:バタップは袖を捲る


バタップ:(M)軽く拝んでおくかね。ノーザンブリアの残党


0:場面転換

0:デラやべーグランプリ会場

0:観客席


リットン:「さあさーーーっ!最終トーナメント!賭場も大変盛り上がっております!今が買い時!」


シーカー:「もうすっかり夜になっちまったが、人が引く気配は一向にねえな」


リットン:「まあねえ、ご存知の通りバグテリアは夜がアツい。かきいれ時さ」


シーカー:「あーあー。また何も仕事してないってバイオレットにドヤされるんだろうなあ…」


リットン:「はは、彼女が勝てば顔もたつだろ」


シーカー:「さあ…どうだかな。」


外郭:『会場の皆様!大変お待たせしまシタ!最終トーナメントに生き残ったメンバーは合計36名!錚々たるメンツが生き残りましタ!準備が整うまでもう少々お待ちくださいマセ!』


リットン:「おっと、いよいよだ…」


シーカー:「外郭に錚々たるメンツと言わせるたあ、いつの間にか手の届かぬ人間になっちまったもんでえ」


リットン:「常套句だろ」


シーカー:「分かってんだよ。」


リットン:「でも彼女、アルルちゃん。本当に大丈夫かい?第2トーナメント残りの試合でもかーなーり無茶してたろ」


シーカー:「身体張るのだけは得意なんだと。」


リットン:「よくそこまでするね。見知らぬ薬売りの少女の為に。」


シーカー:「あいつぁお人好しを超えた馬鹿なんだわ。アイツが特務国際監察課に来た理由、知ってるか?」


リットン:「いや。知らないけど。凡その検討は着くよね。どうせ誰かの為にが原動力でしょ?」


シーカー:「さすが考察屋。元はと言えば、アイツの代わりに来るはずだった監察官が居たんだよ。」


リットン:「肩代わりか。これまた。因みにその監察官の名前は?」


シーカー:「アレジ・ロンドン」


リットン:「ほ、へ〜…。奇妙な因縁」


シーカー:「なんだ、知ってんのか…?」


リットン:「うん。まあ、伝手聞き程度だけど。最近よく聞く名前だからさ。なんでも異常体の為に上に逆らってる最中とか何とか。なに?彼とアルルちゃん、知り合いなの?」


シーカー:「ところがどっこい、知り合いどころか話したことも無いんだと。」


リットン:「へ?」


シーカー:「ただ、アレジ・ロンドンの話は本庁じゃあ有名みたいでな。友人の異常体の為に中央に入庁して、挙句局長に声荒らげて反抗する、とか。」


リットン:「ほほー。その素行の悪さから特務監察課に異動させられるはずだったが。その肩代わりでアルルちゃんがここに来たと?」


シーカー:「んだ。信じられるか?話した事も目も合わせたこともない奴の為に自ら出世コース外れるなんて。」


リットン:「信じらんない。本当に」


シーカー:「だろうが。その信じらんないを、信じられないくらい実行しちまう馬鹿なんだよ、あいつは。俺だって止めはしたが、ここまで来たらテコでも動かねえよ、あのお人好しは」


リットン:「納得した、うん。なんか。私とは非常に違う人種だということを納得した」


シーカー:「あ。因みにこれオフレコでお願いできる?」


リットン:「やだよ〜ん」


シーカー:「ああ、愚痴癖が…守秘義務すら守れねえ俺にねえよなあ…存在価値…」


外郭:『長らくお待たせ致しましタ!これより!最終トーナメントを開始致します!』


シーカー:「さぁて、どこまで続くかねえ、そのお人好しが」


リットン:「卑屈だなあ〜きみ」


シーカー:「はい…卑屈です…」


外郭:『記念すべき最終トーナメント第一試合はーーッ。これまた奇妙な因縁かッ!先程まで手を合わせ、勝利を分かちあった二人!』


リットン:「…おっ…とぉ…」


シーカー:「…盛り上げる為なら何でもするかい、嫌らしい真似するねえ」


リットン:「ああ、賭場が荒れるぞお」


外郭:『西ッ!アルル・クロフォード!!』


アルル:「…。」


外郭:『東ッ!ガロンドール・ウォンバットッ!』


ガロ:「…よお。早い再会だったな。アルル」


アルル:「…。そうだね。」


外郭:『もはやそこに言葉は不要かッ。静かに歩み寄る二人の目にはこう見えます!「いつでも行けるぞ」とッ!』


シーカー:「見えねえよ」


外郭:『片や中央政府から来たる波乱の超新星っ!片やギルドから現れた激動の超新星っ!その結末が今ッ!ここに刻まれるッッ!』


ガロ:「…。」


アルル:「…ガロンドール・ウォンバット」


ガロ:「なんだ」


アルル:「貴方に現在確認できる罪状は無く、私が戦う権利は無いけど。今日一日貴方と共にここまで来て、凄く好きだなと思った」


ガロ:「…?」


アルル:「少なくとも私は、友達だとすら思ってる。そんな君が、あんなに辛そうな顔をしてたんだ。それだけでもう、私が君と戦う理由には十分だ」


0:アルルはトンファーを構えた


アルル:「特務国際監察課。アルル・クロフォード。君の言う本音が何処にあるのか、勝手ながら見極めさせてもらうよ」


ガロ:「…うるせーよ。」


外郭:『両者構えッ!』


ガロ:「何が本音かは、俺が決める。」


外郭:『最終トーナメント。第一試合ッ!開始ィッ!!』


0:観客席


リットン:「始まった…!」


シーカー:「頼むからこれ以上面倒事にはならないでくれよ…!」


0:会場


ガロ:「……FANBLE。」


アルル:(M)来る…!身体能力を大幅に強化する異常性…!私なんかでどこまで太刀打ちできるか…!


ガロ:「………」


0:静寂。何も起こらない


アルル:「…。……?」


外郭:『おっとぉ?試合は始まっているが、両者向かい合ったまま!これは、両者威嚇の体勢か!?』


0:観客席


シーカー:「なんだあ?ポケ〜っとしやがって。」


リットン:「まあ、睨み合いっていう雰囲気じなないけど。柄にもなく読み合いとか…?」


シーカー:「いや、単純に情が湧いてる可能性もある。甘ちゃんだからな」


リットン:「うーーん。そんな感じはしなかったけどなあ…」


0:会場


ガロ:「…」


0:ガロは自分の手のひらを見つめている


アルル:(M)違う…。睨み合いとか、情とか、そういうのじゃない。


ガロ:「……。まじか…」


アルル:(M)なんとなく。そう思った。理由も、確証も無い。なんとなく。ガロンドールの顔を見て、そう思った


ガロ:「……勘弁してくれよ…おい…」


アルル:(M)ガロンドールは、使わないんじゃあない


ガロ:「何してんだ…っ。こんな時に…っ…」


アルル:(M)使えなくなったんだ、異常性が…っ。


外郭:「おお…??おおお??構えるアルル・クロフォードに対し、ガロンドール・ウォンバット!とてもじゃないが戦う姿勢とは思えない!戦意喪失か!?」


アルル:「…ガロンドール…。」


ガロ:「…やめだ。」


アルル:「……は?」


0:ガロは肩を下ろした


アルル:「何言ってるんだ。」


ガロ:「だから、やめだ。」


外郭:「やめ…?そう聞こえましたが!?これは、棄権宣言かぁ!?」


アルル:(M)その目を知ってる。諦めた人の目。自分に、これ以上なく失望した人間の目。


ガロ:「…」


アルル:(M)マオさんも、同じ目をしていた。私なんかが手を伸ばしても、どうしようも無い事だらけだ。嫌になる。


ガロ:「…ッ…っ。」


アルル:(M)だって、ガロンドールは私よりも、ずっと。ずっとずっと強いから。そんなガロンドールに。私みたいな弱い人間が手伝えることなんかあるのかな。


0:アルルは自分の手を見ている


アルル:(M)まだ会って少ししか経ってない。けど、私はガロンドールの事がすごく好きだ。何より、私の手の届く範囲にいる。けど、この手を差し出していいのかが。分からない。


アルル:(M)だって、私なんかに、君が体験した全てに心から頷くことはきっとできないだろうし。してはいけないだろうし。ガロンドールはそれを求めてないだろうから。


0:回想

0:3日前 南エリア近郊にて


ジャッカル:「この状況見りゃわかる。アンタは妹を助けてくれた」


アルル:(M)ジャッカルさん。結局私は、貴方を助ける為にこんな遠回りしかできません。貴方の大切な妹。マオさんも、不安にさせてばっかりです。


ジャッカル:「一銭にもならねえ俺らを助けるなんざ、この街で生きていくには余りにも馬鹿みてぇな行為だ。」


アルル:(M)弱いですか。私は


ジャッカル:「けどな、アンタの行動は確かに。」


アルル:(M)弱かったら、手を差し伸べちゃダメですか。


ジャッカル:「俺を救ったぜ」


アルル:(M)…それでも。


0:回想場面転換

0:昨日 喫茶コクリコにて


ルーベン:「大丈夫。アルルちゃん。君の行いで救われる人間はいる。必ず、どこかに、君のその手を取りたがる人間は居る。」


アルル:(M)…それでも私は。約束したんだ…!


ルーベン:「君は、正しいよ。」


0:回想終了

0:アルルは拳を握った


アルル:(M)私の手の届く範囲の事には、胸を張っていたい。干渉されたくないよね、ごめんね。でも、君が悪いんだぞ。


ガロ:「…っ。」


アルル:(M)君が、私の手の届く範囲に居るのが悪い。


0:アルルはネクタイをしめる


アルル:「…ガロンドール。」


ガロ:「…」


アルル:「ひとつ、訂正させてほしい」


0:アルルは武装を解除した


外郭:「んん!?続いてアルル・クロフォードもまさかの武装解除ォ!?一体何が始まるんです!?」


アルル:「見極めるものなんて、なかった」


ガロ:「…は…?」


アルル:「今の君じゃ、戦う必要すらない。それは私にとってもそうだし。ガロンドールにとってもそうだ。」


ガロ:「…何言ってんだ。お前」


アルル:「…」


0:アルルはガロに近づいた


ガロ:「…」


アルル:「ふんっ。」


0:アルルはガロを殴った


ガロ:「……。」


アルル:「戦意喪失かっ。ガロンドール・ウォンバット!仲間の為にここまで来たんだろ!異常性が使えないくらいで終わりかっ。ふざけんなよ…!」


ガロ:「…っ。」


外郭:「異常性が使えなくなった…!?確かに今そう聞こえました!これはっ。なんというハプニング!?」


アルル:「黙ったな。図星だな。そうなんだな…っ。」


0:アルルはガロの胸ぐらを掴んだ


アルル:「仲間なんて大層な呼び方して、所詮君にとってその程度か…っ。」


ガロ:「な…。んだお前。」


アルル:「応えろよ。そんなもんなのか。だったらそこ退けよ。私はここで、何がなんでも勝ち進まなきゃいけない理由があるんだ。君にはもうそれが無いなら、ここに立っている意味なんかないだろ」


ガロ:「…」


外郭:「んんん…?試合開始から突如始まったのは…痴話喧嘩かぁ〜??」


0:観客席


リットン:「な、にやってんだあいつら…」


シーカー:「…。こりゃあ、またやってんじゃねえかなあ。お人好し」


リットン:「へ?あれが?」


シーカー:「真正面からぶつかることしか出来ねぇ奴だからなあ。ある意味、ああいうバカ同士じゃあそれが一番なのかもしれねえが」


0:会場


ガロ:「お前に何がわかんだよ」


アルル:「分からないさ!君のことなんか、ついさっき会ったばかりで、ちょっと一緒に戦っただけの人間だからなっ。」


ガロ:「だったら偉そうに…っ。」


0:ガロは胸ぐらを掴む手を振りほどいた


ガロ:「俺に、指図すんじゃねえっ!」


0:アルルを殴った


アルル:「ぶはっ…!」


0:ガロは肩で息をしている。


ガロ:「…。」


アルル:「は、は。ぶったな。」


ガロ:「お前から先に殴ってきたんだ」


アルル:「こんにゃろ…!」


0:アルルも殴り返す


ガロ:「がっ…!痛くも痒くもねえ…よっ!」


0:殴り返す


アルル:「おえっ…!こ、っちだって、痛くもない…っ。だからさっさと降りてくれっ。」


0:殴り返す


ガロ:「がはっ…。だから、お前に指図される謂れはねえんだっつーの!」


0:殴り返す


アルル:「ぶふッ。だって、そうだろ…!仲間を守る為の修行でここに来たんだ…っ。それで?異常性ひとつ使えなくなったから戦う気なくなったってか…!…っ。冗談じゃない…っ!」


0:殴り返す


ガロ:「けほっ…。だって、だってそうじゃねえか…!頭も悪い、家事もできない、知恵も知識も、何もない俺がアイツらに返せることなんて、この力だけだった!お前はただの人間だから分かんねえだろっ。」


0:殴った胸ぐらを掴んだ


アルル:「ごっほ…っ。」


ガロ:「次から次へと意味わかんねえ奴らが出てきて、俺の仲間をひっぺがして、力が無いとか、知恵がないとか、覚悟が無いとか、散々言われて…っ。その上異常性まで使えなくなっちまったら…!…〜〜〜っ…。じゃあ俺はどうやってアイツらを助けりゃいいんだよ!!それで凹んで何がわりいんだ!」


0:アルルを殴り飛ばした


アルル:「かは…っっ…!」


ガロ:「……。」


アルル:「…。」


外郭:「こ、これは…?ただの殴り合いです、ただの殴り合いにて決着か…?」


0:ガロは長い間、考えた。

0:その後口を開く


ガロ:「…林…檎ぉ…」


外郭:「林檎…?」


ガロ:「どっかで見てんだろ!!!なあ、笑えるだろ!!この通りだ、今の俺がここでやれる事はなくなった!!次の訓練だ…!異常性を取り戻す方法を教えてくれ…!」


0:静寂


ガロ:「……なあ…おい…。」


0:観客席


シーカー:「なんだ何だ…さっきまでとは様子が随分とちげえが…おかしくなっちまったか…?」


リットン:「……。セノから、聞いたことがある」


シーカー:「あ?」


リットン:「特定の条件で異常体になった人間は、極度のストレス状態に陥る事で、異常性に纏わる「目的意識」に思考を奪われる、って。」


シーカー:「目的意識…?」


リットン:「異常性は特定の決定意思に紐づいた能力である事が多いようで、それは突発的な衝動に近いものだけれど、それは本人が抱える間違いない正当な感情のはずだ。」


シーカー:「…つまり、ガロンドールは今、なんかの地雷踏んじまってる最中ってことか?」


リットン:「多分、それを踏んだのは2人。アルルちゃんと、セノだ。」


シーカー:「…」


リットン:「あれを見て、君はどう思う。」


シーカー:「…ああ。ありゃあ、誰がどう見ても」


0:シーカーは腕を組んだ


シーカー:「ーー生き急いでやがる」


リットン:「…私も、同じ感想だ」


0:場面転換

0:会場


ガロ:(M)林檎も居ねえのか…?じゃあ、本当に、本当にどうすりゃいい。今から飛行機使って、リベールまで何時間だ。そもそも飛行機出てんのか、というかリベールに行ったところで俺、何ができるんだ…。


アルル:「……けほっ…。」


0:アルルは立ち上がった


アルル:「私にも、助けたい人がいる。」


ガロ:「…」


アルル:「でも。私は、ただの。人間だ」


ガロ:「……は…?」


アルル:「力も無い、頭だって、全然良くない。知識も無い、常識も無いって、よく言われる…っ。」


ガロ:「…誰もお前の話なんてーーー」


アルル:「じゃあ…!私には何も出来ないのか…っ。私がやろうとしてる事も全部、無駄だって言うのか…っ。」


ガロ:「…」


アルル:「そんなの、私が誰にも認めさせない…っ。諦めの悪さだけは、筋金入りなんだ。力が無くたって、頭が悪くたって、誰かを守れなくたって…!私は、私のしたいと思った事をする…!」


0:アルルはガロに近づいた


ガロ:「…」


アルル:「はあ…はあ…っ。」


0:観客席


シーカー:「産まれたての子鹿みてえな足取りじゃねえか、ついにガタが来やがったか…っ。もう体ボロボロだなアイツ…っ。」


リットン:「だろうね。打撲、出血は勿論、骨折も数箇所。並の監察官が立ってること自体不思議だ」


シーカー:「なんだって、人間、自分の体にそこまでムチ打てるかねえ…」


0:会場


ガロ:「…やったさ…やりたい事やって、そのせいで、仲間を巻き込んじまったんだ。俺が馬鹿だから、力がないから…っ。仲間を取り戻すことも…」


アルル:「〜〜…っ。」


0:アルルは力なくガロを殴った


アルル:「仲間の為に冒険をしてるのか、お前は…っ。」


ガロ:「ーーー…!」


アルル:「冒険がしたくて、やりたい事やって、君のやりたい事に付き添ってくれる人達が、居て…、それで初めて、仲間になったんじゃないのか…!」


ガロ:「…」


アルル:「だったら、自分だけが全てを背負うなんてのは、その仲間に失礼だ…っ!」


0:アルルは息絶えだえ


アルル:「私達は、一人じゃ何も出来ないから、出来ないところは、仲間が、友達が、縁のある人達が、補ってくれる…っ。それが、本当に信じるって、事じゃないのか…っ。数えろよ、今の君は、信じられる仲間が、君の冒険を、一緒に歩んでくれる仲間が、何人いるんだ…!」


ガロ:「…!」


アルル:「その人達と一緒に、自分が歩んだその道中を、君の、冒険譚を描きたいんだろ…っ。」


アルル:(M)届いてくれ、ガロンドール…っ。


アルル:「そう言ってくれる仲間が、居るんだろ…っ。だったら、君一人何も出来なくたって、きっと皆が助けてくれる…!」


アルル:(M)君は、いい人だ…!私なんかとは比べ物にならないほど、沢山のものを背負って、きっと君は今、ここに居る…っ。


アルル:「それとも、そんな事すらしてくれないって、君一人が頑張らなくちゃって、君がそう決めつけるのか」


アルル:(M)勝手だけど、私は、ガロンドール・ウォンバッドとアルル・クロフォードを重ねてる…っ。本当に勝手だ。だからこそ、折れないでくれ…!


ガロ:「…っ。」


アルル:「どうなんだよ…っ。言ってみろ…!」


0:アルルは最後に目一杯殴った


ガロ:「……。」


アルル:「はあ…っ。はあ…。」


ガロ:「…違う。」


アルル:「…」


ガロ:「違う…っ。」


アルル:「…は。」


ガロ:「…っ…。」


0:ガロは頭を下げた


ガロ:「ありがとう…っ。」


アルル:「……」


ガロ:「色んな事に振り回されて、何も見えてなかった。正直、足取りが重かった。こんな思いするくらいならとか、思っちまってた。…でも。こんな顔で冒険したら。約束が違うもんな、エド」


アルル:「は、は。誰、それ」


ガロ:「俺の大切な仲間だ。お陰様で…今ならちゃんと、皆に言えるよ。」


0:ガロは頭を上げた


ガロ:「俺のわがままに付き合ってくれって。」


アルル:「…へへ。いいね。」


ガロ:「ああ。でも、やっぱり俺の冒険は。皆が居てこそだ。だから今は早く。」


0:ガロは自分の拳を見つめた


ガロ:「…。皆に会いたい…っ。」


0:ガロは外郭を指さした


ガロ:「クマの」


外郭:「え?私デスカ?」


ガロ:「棄権するよ」


外郭:「…。一応、理由を聞いても?」


ガロ:「もう。ここに居る意味が無くなったっ。」


外郭:「…そうですか。まあ、これもリアリティ。ここで止めるのは野暮というものでしょう。」


ガロ:「おう。あと、こいつ。なるべく早く手当してやってくれ」


外郭:「はい。そのつもりです。」


アルル:(M)よかった。ああ、もう、足腰、立たないや…。ごめんね。ちょっと遠回りになっちゃうけど。必ず。ヘッドは私が、なんとかする、から…


ガロ:「アルル」


アルル:「……へ…?」


ガロ:「ここから見えるあの高ぇ壁。通りたいんだよな。」


アルル:「…えっと…。うん…」


ガロ:「よし。」


アルル:「ちょ、ちょっと、何する気さ…」


0:ガロは準備運動をしている


ガロ:「あの壁、壊す」


アルル:「………ん?」


0:観客席


チャン:「ざわ!ざわざわざわざわざわ!ザワワ!ザワワ!」


リットン:(M)ンオー。観客席の前方がざわついた。


シーカー:「なんだ?なんか言ったか?やけにザワついてるぞ」


リットン:「いや、なんか。壁を壊す、とか何とか」


シーカー:「壁ぇ?」


0:会場


外郭:「ちょ、ちょいちょい。何言ってマンガな」


ガロ:「安心しろ、なるべく被害の無いようにはする」


外郭:「いや、そういう問題でなく。確かに君の異常性は暴君坊やに引けを取らない素晴らしいものデスガ、流石にそこまでの威力は…というか、異常性、使えないのでは?」


ガロ:「いや。行ける。頭がスッキリしてる。歯車が、ピシッとハマった気分だ」


アルル:「…」


ガロ:「お前は信じないか、アルル」


アルル:「…はは、じゃあ。信じてみる。」


ガロ:「よっしゃ…!」


0:ガロは自分の胸に手を当てた


ガロ:「ーーーーLimitリミットBORROWボロウ


外郭:「アッツゥーーイ!アツイ!なんじゃこりゃ!」


ガロ:「ーーーっし。充電、完了。」


外郭:「異常性使えてる…!?っちゅーか、ちょっと待ってクダサイ、本当にやる気ですか…!?なにかのマジックでも…?」


ガロ:「おーーーーーーい!そこのお前らぁ!!!」


0:観客席


シーカー:「…お?なんだ。あいつ、こっちに向かってなんか叫んでる」


リットン:「ね。」


0:会場


ガロ:「今からそこ吹っ飛ぶから!!今すぐ避難するように!」


0:観客席


リットン:(M)理解不能。突拍子も無い。信憑性も無い。その言葉の意味を理解する事は全くもって叶わなかった。しかし、その男の瞳には、本当にやっちゃう感が出ていた。


0:会場


ガロ:「GRIDグリッドBORROWボロウ


0:観客席


リットン:(M)何か、と言われれば。そう。本能が。第六感は脳を伝い、脳は電気信号を身体へ送り命令した。「逃げろ」と。次の瞬間には、そう


0:全員がまじダッシュで逃げる


シーカー:「…!」


リットン:「…っ。」


チャン:「…!」


外郭:「…!」


リットン:(M)声を掛けられた人間達だけじゃない。その会場の誰もが、その場から離れ始めていた。


ガロ:「だっははは!さんきゅーな!お前ら!」


アルル:(M)その男が、天に向かって拳を振るった


ガロ:「FURUフルッッ!」


アルル:(M)次の瞬間。私の脳裏に過ぎったのは


0:ガロは大きく身体を捻り拳を突き上げた


ガロ:「ーーーBURSTバーストッッッ!!!」


アルル:(M)核爆発をも彷彿とさせる。爆風


チャン:「うおおおおおお!?」


リットン:「うぎゃあああああっ!」


シーカー:「うぉおおおおおお!?」


外郭:「ぬぉぉおおおおお!!」


アルル:「…っ…!」


リットン:「やばいやばいやばい!これマジで死ぬ!何かに捕まらないと吹っ飛ばされる!」


シーカー:「おいどけ!俺だけはこの中の誰よりも生き汚いぞ!!」


外郭:「なんだぁあああこりゃああ!?」


シーカー:「あ!躓いた!!誰だこんなところにバナナの皮置いたやつ!!なんたらカートじゃねえんだぞ!」


リットン:「言ってる場合か!」


バタップ:「ーーーーprocess1(プロセスワン)」


シーカー:「ほぇ!?」


アルル:(M)体感にして、40秒。体験した事も無いような爆風に身を投げ打たれた。その場にあった砂もコンクリートの破片も全て空高く打ち上げられ…


外郭:「お、おぉおお…おおお…?」


チャン:「なんだあれ、まじでやべえだろあんなのやばいこれやばい…っ、」


リットン:「はぁ…はぁ…!生き残った…!?」


チャン:「さっきの監察官!巻き込まれたんじゃないか!?」


リットン:「え、まじ!?」


バタップ:「ーーっと。おお。随分ド派手に暴れなさる」


0:バタップの腕に抱えられるシーカー


シーカー:「あれ、俺。生きてる…?」


リットン:「よく死ぬな君は」


バタップ:「こりゃあ。決まりか。」


シーカー:「あ!てめぇバタップ…!今更何しに来たってんだよ…!助けてくれてありがとネ!!」


バタップ:「いいさ別に。それより…」


外郭:「…おぉおーっと…!?皆さン!空を!空をご覧下さい!!」


リットン:「空ぁ…?」


シーカー:「空がなんだってん…だぁ…!?」


アルル:(M)空が示す光景は、片方は雨雲を、片方は晴天をあらわにするほど、綺麗に。天が二つに割れていた。


バタップ:「ほお〜。相変わらず健在かい。」


リットン:「とんっっ…でもねえ…っ。」


シーカー:「冗談じゃねえ…。こりゃあ、暴君坊以上じゃねえか…っ」


外郭:「お…お…おおお!?」


リットン:「おいおい、次はなん…Dar」


シーカー:「か、壁に…ヘッドの根城に…」


アルル:(M)かっこいいなあ、ガロは。力もあって。仲間も居て。やるべき事をやり通す力がある。私よりも、ガロが居た方が、きっと沢山の人を救えるんだろうなあ。


0:同時に口を開いた


リットン:「穴空いちゃってるゥーー!」


シーカー:「穴空いちゃってんねぇーーっ!」


外郭:「穴空いとるやないかーーーいっ!」


アルル:(M)ああ…いいなあ……。


0:場面転換

0:会場の外


バイオレット:「…な…なんだあれは…」


0:壁の穴を呆然と見ている


バイオレット:「冗談じゃない…!あれが、人の手の所業か…!」


0:場面転換

0:会場


ガロ:「だっははっ。よしっ。負傷者ゼロだなっ」


アルル:「壁の向こう側の人達はどうだろうな…」


ガロ:「いや〜まあ、大丈夫だろっ。ここの奴ら皆強いし。それに、俺はお前と違って誰も彼もに気を使えるほど器用じゃねえんだっ。」


アルル:「…すっかり元気になったね…」


ガロ:「おうっ。お陰様だ…っ。」


0:ガロは再び頭を下げた


ガロ:「繰り返しになるけどよ。本当に。ありがとう」


アルル:「いいってば」


ガロ:「いーーーやっ。俺の気が済まんっ。受け取ってくれっ。」


アルル:「…。ふへ、じゃあ。どういたしまして。」


ガロ:「改めて、俺はガロンドール・ウォンバットっ。冒険家だ!」


アルル:「なんで名前まで」


ガロ:「言ってなかったなと思ってよ。ああ、今度から俺のことはガロでいいよ。」


アルル:「…ふふん。じゃあ、私も」


0:アルルは足プルプルで立った


アルル:「特務国際監察課。アルル・クロフォードだっ。アルでいいよ、よろしく。ガロ。」


ガロ:「ああ、よろしくな、アル」


アルル:「もう、行くんだろ?」


ガロ:「んだ。ここで優勝するのが俺のやりたい事じゃねえし。バグテリアにはまた冒険で来るよ。正規ギルドになったら堂々と入れるしな」


アルル:「はは、じゃあ。次会う時こそ、ギルドメンバーと中央職員として、だね。」


ガロ:「ああっ。それまで死ぬなよ」


アルル:「そっちこそ。」


ガロ:「だははっ。死んだら死んだでしゃあーねえなっ。」


アルル:「はは、そうだ。そのとーりだ。私全然死にたくないけど」


ガロ:「俺も」


0:二人は軽く笑いあった


アルル:「…ああ、もう、限界っぽい…。ありがとう、であってるのか分からないけど。ありがとう、ガロ」


ガロ:「それこそ、こちらこそだ。」


アルル:「君の仲間にも、よろしく…言っといて…ね」


0:アルルは力無く倒れた


ガロ:「おっとっと。」


0:ガロはアルルを支えた


ガロ:「…。」


0:ガロは最後に深く頭を下げた


シーカー:「おぉーーいっ。新人っ!」


バタップ:「生きてるかあ?」


ガロ:「あ」


シーカー:「あーっ。おまっ。それっ。死んでねえだろうなっ。なんか最後に頭下げてたシッ。」


ガロ:「いや死んでねーよ。ただ気を失ってるだけだ。お前、アルの仲間か?」


シーカー:「仲間ぁ?そんな臭いもんじゃねえよ、ただの偉大なる先輩だ。」


ガロ:「そうか。じゃあ、アルの事頼むわ」


0:ガロは優しくアルルを地面に置いた


シーカー:「はあ…!?おいおい、どこ行く気だよ」


ガロ:「リベール。」


シーカー:「フランスかーい。」


バタップ:「バグテリアからは基本外行きの交通機関は出てねえぞ」


ガロ:「まあー。多分大丈夫じゃねえかな?」


シーカー:「なんだその楽観は」


バタップ:「はは、よく似てる」


ガロ:「おーーい林檎!居るか?」


シーカー:「出たリンゴ。さっきも呼んでたけど。果物好きなの?」


ガロ:「んーにゃ。俺の師匠だ。けど、居ねえのかな?まあ、そうなりゃ走っていけばいいか」


林檎:「走って着くわけないだろ馬鹿。」


ガロ:「お!」


林檎:「SCRAMBLEスクランブル


バタップ:「…!」


シーカー:「うひょエア!?どっから出てきた!?」


ガロ:「やーっぱり居たか!なんでさっき無視したんだよ」


林檎:「んー。いやまあ。居たと言えば居たけど。焦ったよ、君があんなんになっちゃうもんだから。」


ガロ:「いやあ、悪ぃな。だははっ。」


林檎:「…。でも、その調子ならもう大丈夫そうだ」


ガロ:「…おう。お前にも、なんか色々と迷惑かけたな。」


林檎:「いいさ別に。元よりお節介のつもりで来てるんだから。」


シーカー:「ん。おい。お前。そのフルフェイス。まさか」


リットン:「あーーーっ!赤い林檎だっ。A級ギルドのっ!なんでこんな所に!」


外郭:「ムム!?赤い林檎!?」


林檎:「あーあーあー。」


ガロ:「なんか面倒くさそうだな。帰るか?」


林檎:「元よりそのつもりで呼んだんでしょうが。ほら、行くよ。」


ガロ:「だははっ。おう!」


シーカー:「まさか赤い林檎とこんな至近距離で出会っちまうとは…やべえぜバグテリア…」


バタップ:「…おい。お前」


ガロ:「あ?なんだよ」


バタップ:「レーヴェンシュタインに。宜しくな。」


ガロ:「…は?」


シーカー:「なに?何言ってんのお前急に」


バタップ:「俺の古い知り合いだ。多分、お前とも縁がある筈だ。今は覚えてねえだけで」


ガロ:「…」


バタップ:「ンマー。お前の敵は途方もなく大きくて果てしねえが。頑張れや」


ガロ:「言われなくたって。俺に出来ることを精一杯するよ」


バタップ:「そうか。ならいい。」


林檎:「ガロ。そろそろ。」


ガロ:「おう。」


アルル:「…」


ガロ:「またな、アルっ。」


0:ガロは拳を突き出した


林檎:「SCRAMBLEスクランブル


0:場面転換


ガロ:(M)ガロンドール冒険譚。24章。


ガロ:(M)今回足を踏み入れたのは法も秩序もない、文字通り何でもありの街。バグテリア法外特区!


ガロ:(M)住民の8割以上が異常体らしいその街で、デラやべーグランプリなる催しに参加したっ。


ガロ:(M)そこでは面白い奴が沢山いたけど、何より一番ありがたい出会いは


ガロ:(M)特務国際監察課。アルル・クロフォードという人物だったっ。


ガロ:(M)バグテリアで唯一の公的機関である彼女達には、彼女達の物語があるようだが、今回は諸事情により、深くは聞けなかった


ガロ:(M)次は仲間達と一緒に足を踏み入れたいと思うっ。


0:場面転換

0:リベール キャリオンマウンテン


林檎:「ーーーガロ。準備いいかい?」


ガロ:「…。おうっ。万全だ…!」


林檎:「バグテリアでもある程度通用した今の君なら、間違いなくグランシャリノにも対抗できる一人となった筈だ。あとはーーー」


ガロ:「ありがとうっっ。」


林檎:「……普通、こういうのって言葉尻取るもんじゃないと思うんだけども?」


ガロ:「先に言いたかったっ。すまんっ。」


林檎:「はは、別にいいさ。どういたしまして」


ガロ:「改めてになるんだけどよ」


林檎:「なんだい?」


ガロ:「やっぱどう考えても、俺一人じゃ無理だっ。だから、俺が知る中で一番強いお前に頼むっ。グランシャリノをぶっ飛ばすまでの間、力貸してくれ」


林檎:「…はは、本当に。吹っ切れたみたいだね」


ガロ:「おう。」


林檎:「…勿論。初めからそのつもりで君に接触している訳だしね。」


ガロ:「っしゃ…!ありがとう!」


林檎:「いいってば、しつこい男は嫌われるよ」


ガロ:「いやあ〜単純にお前が一緒に来てくれるのが嬉しくってよ」


林檎:「あうぅ。」


ガロ:「それじゃあ、行こうぜ、アレジ」


林檎:「…!」


ガロ:「お。どうした?」


林檎:「…いいや。なんでも。行こっか、ガロ。」


ガロ:(M)…行ってるくよ、アル。こっちはこっちでまだやらなきゃ行けないことが沢山ある。けど、お互い頑張ろう。俺達にできる事、精一杯やろう。


0:ガロは空に拳を掲げた


ガロ:「頑張れよ、アルっ。」


0:場面転換

0:バグテリア

0:ブルーストリート


セノ:(M)かくして。バグテリア。ブルーストリートにて開催されたデラやべーグランプリは幕を閉じる。


バイオレット:「お前なあ。」


アルル:「はい…」


バイオレット:「始末書だぞ。始末書。」


シーカー:「まあまあ、その辺にしといてやれよ。俺が許可したんだ」


アルル:「シーカーさん…」


バイオレット:「じゃあお前が始末書を書くか。シーカー」


シーカー:「新人の独断行動だ。許せねえよ。」


アルル:「シーカーさん…」


バタップ:「それで、これからどうすんだ。」


セノ:(M)デラやべーグランプリで起こった、ガロンドール・ウォンバットの手によるショーケースの破壊。


バタップ:「あのアホがヘッドの縄張りに風穴開けたんだ。」


セノ:(M)長年、互いが互いを牽制し合う形で独自の経済発展を遂げたバグテリアに置いて、その速報は各地域ヘッドのパワーバランス崩壊の兆しとなった。


バイオレット:「本当に厄介な事をしてくれた。今はリベールでも、中央本庁でも同時多発的に面倒が続いてる。」


アルル:「…すみません。」


セノ:(M)そう。そうして今思えばこそ。この瞬間こそが、大きな歯車が動き出したの時なのかもしれない。


アルル:「…でも。私は、誓ったんです。マオさんがかまた、必ず笑って過ごせる日々を作るって。生きてもいいやって思えるように。」


シーカー:「甘ちゃんが」


アルル:「その為には。ヘッドとの衝突は避けて通れない道なんです。」


バタップ:「それが何百、何千人を巻き込む混乱を産んだとしてもか」


アルル:「…はい。誰かが不幸になった上にある安寧なんて間違ってる。私の手の届く範囲の人達だけでも救いたい。」


バイオレット:「誰もお前にそれを望んでいない」


アルル:「余計お世話だって。お節介だって言われても…!私は私に出来ることをする…。生き方は、決めたんです。後は、自分に出来ることを精一杯します。」


シーカー:「…」


アルル:「それが。私がこの制服に袖を通している意味なんです」


セノ:(M)バグテリア。それは自由と無秩序の街。


バイオレット:「…勝手にしろ」


アルル:「…!」


バイオレット:「私は付き合わないからな」


アルル:「…はい…!ありがとうございます…っ。」


セノ:(M)彼らは。この激動にどう連なるか。


アルル:「…次は。私の番だ。」


セノ:(M)その日。異能力者達は夜を見る。


アルル:「頑張ってね。ガロ」


セノ:(M)オーシャンズ・ハイに。乾杯


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