冒険者達の午後 急3-5
0:『冒険者達の午後 0章』
:
ガロ:(M)それは、産まれるように。構築されていくように、情景を書き起こした。
レーヴェ:「うーーん。読めねえ。なんて書いてあるんだ」
ガロ:「おお。フランス語じゃねえなこりゃ…。英語でもねえし…」
レーヴェ:「おお、なんかの図鑑だ」
ガロ:(M)ひび割れたビル。騒がしさを常に持つ住民。リンゴを売るおばさん。荷車を押すおっちゃん。街を駆け回る子供。
レーヴェ:「ーーーすげえ…こんな高い建物、見たことねえぞ…!」
ガロ:「おいレーヴェ!これなんだ、なんでこんな外真っ暗なんだ!」
レーヴェ:「おいマジか!太陽がねえ…!なんでだ…!?」
ガロ:「この動物も、どれもこれも見た事ねえ…。」
レーヴェ:「ああ。でも。世界のどこかには居るんだろ。」
ガロ:(M)見覚えがある。ただ、自分とはどこか縁遠い場所の様に感じる。
レーヴェ:「ほえ〜。ゲバブ…。なんだそりゃ」
ガロ:「…レーヴェ。もっと大きくなって、金も、力も、全部手に入ったら。二人で見に行こうな。」
レーヴェ:「当然だ。この世に生まれたからには、この世の全部を知りたい、見て、聞いて、この体で体験したい。」
ガロ:「そうだ、空を見に行こう。自由に、鳥と同じ景色を見たい!」
レーヴェ:「だっははは!いいなそれ、一度生まれたんだ。自分のしたい事しないと勿体無い。人生短いんだし」
ガロ:「…あ!いい事思いついた!」
レーヴェ:「お?なんだなんだ。」
ガロ:「えーっと。確か…この辺に…あった!」
0:ガロは分厚い本を二つ取り出した
レーヴェ:「おお。伝送書じゃねえか。予備の」
ガロ:「外には「冒険家」ってのが居たらしい」
レーヴェ:「…ほお。つまりこれ、伝記代わりにしようってか!」
ガロ:「そうだ!こっちが俺ので、そっちがレーヴェの!」
レーヴェ:「よしよし、じゃあ忘れねえように名前書いとこう」
ガロ:「おっ。いいな…!」
レーヴェ:「カキコカキコ…。よし!みろガロ!」
ガロ:「…レーヴェンシュタイン…冒険譚…」
レーヴェ:「どうだ!それっぽいだろ!」
ガロ:「めちゃくちゃいいじゃねえか!!俺も!俺もやる!ガロンドール、冒険譚…っと」
レーヴェ:「ははは、外に行ったら、この本の中、パンッパンに出来るくらい冒険しような」
ガロ:「あ、じゃあさじゃあさ、勝負しないか」
レーヴェ:「勝負?」
ガロ:「俺と、レーヴェ!どっちが沢山面白い景色を見たか!外の景色で、面白い景色を沢山見た方が勝ちだ!」
レーヴェ:「だっははは!それめっちゃいいな!あ、でもよ。俺とお前で見たい景色がぶつかったらどうする」
ガロ:「ぶつかる?そんな事あるか?」
レーヴェ:「例えば俺が火山の噴火を見たいけど、ガロは綺麗な山を見たいってなった時。とか?」
ガロ:「あー。うーん。それこそ勝負だろ!見たい景色は勝ち取ったもん勝ちだ!」
レーヴェ:「よーし、じゃあそん時は恨みっこ無しだ」
ガロ:「ああ、約束な。」
レーヴェ:「おうっ。約束だ!」
ガロ:(M)今は遠い。掠れた昔の記憶。
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0:繝ヲ繝シ繧ッ繝ェ繝?ラ隧ヲ陦悟ョ滄ィ年
:
ユージン:「ーーーーこの10年こそ。報われる筈だ。」
0:ユージンは海を見つめている
ユージン:「これでいいんだろ。なあ。アキノさん」
0:場面転換
0:アンディール地区
ベルディ:「ーーー以上が、生け捕りした害獣の生態調査結果です」
カリオス:「内臓器は一切無し。どころか、脳や血液すら無いと。中身の無い、入れ物みたいなものか。」
ベルディ:「はい。捕食された人間がどのようになったかも全くの不明です。」
カリオス:「…。結局、害獣については分からず終いか。」
ベルディ:「はい。」
カリオス:「まったく。頭が痛くなるな」
ベルディ:「いつまで続くのでしょうか。こんな地獄が」
カリオス:「いつまでもさ。俺達人類が勝利する日まで。進み続けるしかない。」
ベルディ:「…。先遣部隊より伝送です。」
カリオス:「…そうか。もう1ヶ月か。」
ベルディ:「はい。北北西、リドル地区へかけて害獣の出現報告多数。」
カリオス:「数は」
ベルディ:「凡そ100体との事です」
カリオス:「…多いな。今すぐ迎撃兵に掃討命令を出す。生活区域、及び内地への避難指示を」
ベルディ:「了解しました。」
カリオス:「…さて。人類の悪足掻き、トコトンしぶとく在って見せようじゃないか。」
0:繝ヲ繝シ繧ッ繝ェ繝?ラ隧ヲ陦悟ョ滄ィ年
0:ノーザンブリア
0:サオーレ地区
レーヴェ:「くかー。くかー。」
ガロ:「…」
0:街の警報音がなる
カリオス:『北北西。北北西からリドル地区へかけて害獣の出現を確認した。
ガロ:「…っ…。なんだ。まだ寝付いたばっかだってのに…」
レーヴェ:「…ふぁ〜。なんだなんだあ。うるせえなあ。」
カリオス:『迎撃兵は総員、直ちに戦闘準備を整えろ。繰り返す』
ガロ:「レーヴェ、掃討戦だ。」
レーヴェ:「そうか。そういやもうそんな時期か。早いな」
ガロ:「ああ、本当にな」
レーヴェ:「ああ〜。まだ眠い」
ガロ:「…。早く行こう。レーヴェ」
レーヴェ:「…」
ガロ:「仲間が。死んじまう前に。」
レーヴェ:「…はいよ。」
:
ユージン:(M)ノーザンブリア隔離島。フランス、ドイツ、イギリスに囲まれた北海の孤島。
ベルディ:「カリオスさん…っ。」
カリオス:「…なんだ…。」
ベルディ:「左翼は全滅…っ。最前線ももう限界です…っ。前線を引き下げましょう…っ。撤退を…!」
カリオス:「何人死んだ」
ベルディ:「40人以上は…」
カリオス:「…っ。」
ユージン:(M)その島には。異形の怪物が跋扈している。その怪物は人ではなく、確認されている動物ではない。ただひたすらに人を喰らう獣。
ベルディ:「カリオスさん…っ。このままじゃあ、前線が壊滅します…っ。撤退指示を…!」
カリオス:「駄目だ…っ。リドル地区を放棄する訳にはいかない…!」
ベルディ:「建物はまた立てればいい…っ。人の命には変えられません…!」
カリオス:「既に大陸の3分の1が生活不能領域になってるんだ…!!これ以上害獣に生活区域を奪われたら、それこそ全人類が滅亡する…!」
ベルディ:「ですが…っ。」
ユージン:(M)月に一度。島の「外」から来ると言われる異形の怪物。周期的に現れる怪物を。島の住人は「害獣」と呼んだ。
レーヴェ:「Steins・BORROW…ッ…!」
ガロ:「GRID・BORROW…!」
ユージン:(M)異形の怪物を前に。島の住民の彼らもまた異形の力を使い祓い続ける。
レーヴェ:「NEO・BURST!」
ガロ:「FURU・BURSTッッ!!」
ユージン:(M)島を襲う害獣に対抗するべく、島の住民は戦闘適正のあるものから「迎撃兵」としてその命を散らす。戦闘適正の無いものは「生活員」として島の生活水準を維持する為、各々が尽力する
ガロ:「大丈夫か!お前ら!」
レーヴェ:「おーおー。ワンサカ出やがる」
ガロ:「ったく。先遣部隊は何してんだよ」
レーヴェ:「アイツらが宛になった試しがあるかよ。」
ガロ:「…。」
0:ガロは森の向こう側を見た
レーヴェ:「おい、ガロ。何よそ見してんだよ」
ガロ:「アソコで死んでるの。ミーアか」
レーヴェ:「…。」
ガロ:「…いや。今は駄目だ。やられた分。やり返さねえと。…アイツらに申し訳ない。」
レーヴェ:「…。おう。」
ガロ:「絶対、ぶっ殺してやるからな…っ。」
0:場面転換
0:最後衛
ベルディ:「先遣部隊より報告です、レーヴェンシュタインとガロンドールが前線へ到着したそうです…っ。」
カリオス:「やっと着いたか、あの悪ガキども…!アイツらが来たということは、右翼は片付いたんだな…!」
ベルディ:「の、様です…っ。どうしますか」
カリオス:「当然、追い返す…っ。一匹残らず掃討しろ…!」
ベルディ:「了解です…っ。」
ユージン:(M)閉鎖されたノーザンブリアでは、月に一度。島の命運をかけた戦争が恒常的に行われる。それがノーザンブリアに住む彼らの日常であり、受容するべき当然だった。
0:数時間後
0:息を切らす二人
カリオス:『報告。害獣の殲滅を確認した。迎撃兵の皆は生活区に戻って療養してくれ。お疲れ様だった。』
レーヴェ:「…はあ…。」
ガロ:「…何体殺した。俺23」
レーヴェ:「俺26」
ガロ:「ふざけんな、嘘ついてるだろ。」
レーヴェ:「ついてねえよ。」
0:2人は辺りを見渡した
ガロ:「残りは…居ねえな。」
レーヴェ:「今月もやっと終わりか」
ガロ:「年々増えてねえか」
レーヴェ:「そうかあ?数えてるほど余裕ない」
ガロ:「自分の戦績は覚えてんのになあ。」
レーヴェ:「うるせえ。帰ろう、腹減った」
ガロ:「おう。」
0:二人は硝煙が舞う街を歩く
レーヴェ:「…なあ。ガロ」
ガロ:「なんだよ?」
レーヴェ:「こんなこと。いつまで続けるんだ。俺らは」
ガロ:「…。分かんねえ…。でも、いつまでもじゃない。きっと。」
レーヴェ:「大陸の外に出ればやめられるじゃん」
ガロ:「外には害獣がウヨウヨしてるだろ…。」
レーヴェ:「でも俺ら2人なら行けるじゃん」
ガロ:「残された皆はどうなるんだ。俺達は良くても。他の皆はきっと、もっと酷い目にあう。」
レーヴェ:「俺はーーー」
ユージン:「やあ。レーヴェ、ガロンドール」
ガロ:「ユージン。久しぶり」
レーヴェ:「また来たのか、ヤブ医者。」
ユージン:「失礼だな。…それにしても。」
0:ユージンは辺りを見渡した
ユージン:「今月も随分と派手に暴れたな。今日は何人死んだんだ」
レーヴェ:「知らねえ。数えてる暇もねえよ。」
ユージン:「まあ。それはそうか。」
0:3人は歩きながら話す
ガロ:「そういや、なんでユージンは掃討戦に参加しねえんだ」
ユージン:「僕は皆のバイタルチェックの為に居るからね。そもそも戦うのは向いてない。君たち二人の足でまといにしかならないよ」
レーヴェ:「怖いだけだろ」
ユージン:「はは、さすがに慣れたよ。けど。やっぱり、何回も顔を合わせた人が当然のように死んでいくのには慣れないね」
ガロ:「…まあ。そりゃそうだ。」
レーヴェ:「…」
ユージン:「相変わらず二人は優秀だね。カリオスから聞いているよ。」
レーヴェ:「俺らだけ強くても駄目らしい」
ユージン:「…」
レーヴェ:「ユージンは。大陸の外の話、知ってるか」
ガロ:「…」
ユージン:「…大陸の外?」
レーヴェ:「海の向こう側には、色んな景色があるらしい。」
ユージン:「…。御伽噺だろう。年々生活区域を縮小してるノーザンブリアで、その外は害獣の住処だ。ここが人類の最終防衛ラインだよ。きっと、そんなに都合のいい物は無い」
レーヴェ:「……へ。これだから嫌いだ、大人は」
ユージン:「悪いね、凝り固まった大人で。」
0:3人は目的地に到着する
レーヴェ:「…帰ってきた、な。」
ガロ:「ああ。今日も生き残った」
ユージン:「…。それじゃあ。僕は皆の様子を見てくるよ。君たちの適正は十分。僕の診断は必要なさそうだ。そう願うよ」
レーヴェ:「おお?そうか。まあ、さんきゅな。」
ユージン:「やめてくれ、礼だなんて。僕がやらなきゃいけないことだからね。」
0:モニターが光る
ガロ:「…お?伝送だ。」
レーヴェ:「誰だよ。いい加減ゆっくりさせてくれ。」
ガロ:「…うげ。カリオスからだ」
レーヴェ:「うげええ。」
ユージン:「もう出立かい。忙しいね、最強兄弟は」
レーヴェ:「嫌味かよやぶ医者。」
ユージン:「まさか。ごめんね。苦労をかけてばかりだ」
ガロ:「なんでお前が謝るんだよ。これは俺らの問題だ」
ユージン:「…そうだね。これは。君達の問題だ。」
0:場面転換
0:アンディール地区
ベルディ:「…また殺し、ですか」
カリオス:「ああ。」
ベルディ:「最近妙に多いですね。生活区域内での強盗殺人」
カリオス:「人が密集すれば何かしらは起こる。だが、害獣で手一杯だと言うのに。好き放題する輩の気持ちは理解出来んな…」
ベルディ:「迎撃兵はほぼ全員今回の掃討戦で疲弊しきっています。誰も取り締まれないですよ」
カリオス:「…仕方が無い。あいつらを呼べ」
0:時間経過
ガロ:「ーーー生活区域の」
レーヴェ:「憲兵だぁ…??」
ベルディ:「ああ。最近、生活員の間で人為的殺人が横行している。どれも食料や生活必需品をめぐっての強盗殺人だが」
カリオス:「この不況で、生活も安定しない。害獣に対する恐怖も常に着いて回るこの大陸だ。彼らだけを責めることは出来ないだろう」
レーヴェ:「はあ。いやでもそれ生活員の問題だろ?」
カリオス:「力ある迎撃兵が生活員を取り締まるしかないだろう。生活拠点の治安維持は、我々迎撃兵にとっても掃討戦へ向けて大きな勝利要因だ。引いては全人類の拠点維持のため、だな」
ガロ:「ええ。だからってなんて俺ら2人?」
ベルディ:「今回の掃討戦でまともに動ける迎撃兵がお前らしか居ないんだ。仕方が無い」
カリオス:「それに。悔しいがお前達はノーザンブリアの英雄だ。迎撃兵の中でも最強格の二人が取り締まれば、それだけで抑止力になるだろう。」
レーヴェ:「んおお〜…」
ガロ:「まあ、それがみんなの為になるならやるけどよ。」
レーヴェ:「ええ。やんのお?」
ガロ:「しょうがないだろお。その代わり!配給!増やしてくれよ!まじで!」
カリオス:「努力はしよう。」
0:場面転換
0:トリスタ地区
レーヴェ:「なぁんで引き受けたんだよ。こんな面倒事。」
ガロ:「カリオスが言った通りだ、生活員が居なきゃ、俺達迎撃兵だってまともに生きていくのも難しいしな。」
レーヴェ:「はあ…。生活員のケツを俺らが拭くのね。洒落くせえ…」
ガロ:「しょうがないだろ。自由の為に、やるしかないんだ。」
レーヴェ:「変なところで真面目だねえ、ウチの弟は」
0:場面転換
0:時間経過
ベルディ:(M)ウォンバット兄弟が憲兵になってから、内地の犯罪報告数は劇的に減少した。
レーヴェ:「…おい。お前」
ベルディ:(M)しかしながら多少手荒な取り締まりに苦情が入ることもしばしば。
レーヴェ:「財布盗んだろ。返せ」
ガロ:(M)生活区域での犯罪は、思っていたより遥かに横行していた。
レーヴェ:「あーあー、身の上話には興味がねえ」
ガロ:(M)迎撃兵は普段、前線。海により近い僻地で暮らす。生活区域の内情を、まるで俺達は知らなかった。
レーヴェ:「三日肉が食えてない?贅沢がしたかったあ?」
ガロ:(M)俺達が命をかけて「人生」を守る為に戦ってる間。こいつらは「贅沢」を守る為に戦ってる。
レーヴェ:「いや、まあ…言いたい事は分かるけどよ…」
ガロ:「おい。」
レーヴェ:「あ〜あ。」
ガロ:「生活が苦しいのは全員一緒だろ。嫌いなものくらい我慢しろ。傷んだ野菜だって火を通せば食える、肉だって1ヶ月食えたら良い方だ…!」
ガロ:(M)害獣の掃討戦が長引けば、2ヶ月ぶっ通しで戦い続ける事だってざらにある。そんな中、食料は当然尽きる。死んだ仲間の肉を食べた事がある。泥水を啜るのなんか当然だ。
ガロ:「お前らが自由に過ごせてる時間は、俺の仲間が、死に物狂いで稼いだ1ヶ月なんだぞ…!」
レーヴェ:(M)心底、退屈な仕事だ。
0:時間経過
0:アンディール地区
ベルディ:「先遣部隊から報告です…!南西、ララビオ地区にかけて害獣の出現報告が…!」
カリオス:「なに…!?予定より一週間は速いじゃないか…!」
ベルディ:「ですが、確かに…っ。」
カリオス:(M)まだ先月の被害を引きずっている…っ。迎撃兵も半数が治療に専念中だと言うのに…!
ベルディ:「カリオスさん…!すぐに掃討命令を…!」
カリオス:「わかってる…!」
0:場面転換
0:トリスタ地区
レーヴェ:「盗みが4件。殺しが1件。強姦が3件。」
ガロ:「やってられねえよ…。あいつら全然言う事聞かねえし…」
レーヴェ:「うーん。」
カリオス:『南西。ララビオ地区にかけて害獣の出現を確認した。迎撃兵は直ちに戦闘準備を整えて前線へ迎え。繰り返す』
ガロ:「は…?」
レーヴェ:「おい、早くねえか」
ガロ:「早いどころじゃねえし、ララビオ地区っつったら、馬使ってもここからえーっと、4日はかかるぞ…!」
レーヴェ:「…行くか?ガロ」
ガロ:「そりゃ行くしかないだろ…っ。」
レーヴェ:「OK。」
ガロ:(M)遠くから。悲鳴が聞こえた
レーヴェ:「…!」
ガロ:(M)目に映るのは。火。
レーヴェ:「おい、ガロ。」
ガロ:「放火…!?なんでこんな時に…!!」
レーヴェ:「…こんな時だから、じゃねえか」
ガロ:「…」
レーヴェ:「掃討戦は迎撃兵がこぞって前線に行く。つまり憲兵の業務を放棄する瞬間だ。」
ガロ:「そこを見計らって…?計画犯だって事か…!?」
レーヴェ:「多分」
ガロ:「…ふ、ざけんな…!」
レーヴェ:「とりあえずカリオスに伝送おくるか。」
ガロ:「ああ、頼む…っ。」
0:場面転換
0:アンディール地区
カリオス:「…トリスタ地区で…放火…?」
ベルディ:「…はい。たった今、レーヴェンシュタインとガロンドールから。」
カリオス:「…っ…何をしてるんだ、こんな時に…!」
ベルディ:「…恐らく。憲兵として二人が取り締まり続けたフラストレーションが爆発したんでしょう。」
カリオス:「…は…?」
ベルディ:「そうでなければ。掃討命令を出した瞬間に放火なんて有り得ません…っ。」
カリオス:「…。」
ベルディ:「…くそ…っ。」
カリオス:「…駄目だ、刻一刻と害獣の侵攻は進んでいる…っ。内地の統治は二人に任せるしかない…!ただでさえ今は前線の人員が不足しているんだ…っ。」
ベルディ:「了解です…っ。その様に伝送を飛ばし…。」
カリオス:「…なんだ。どうした」
ベルディ:「…北東先遣部隊から。伝送です。」
カリオス:「…何の、だ」
ベルディ:「北東からサオーレ地区にかけて。害獣の出現報告が…」
カリオス:「ーーーは…?」
0:場面転換
0:トリスタ地区
ガロ:「ーーー内地は放火。南西と北東から害獣の出現報告…」
レーヴェ:「…」
ガロ:「どうしろってんだよ…!こんなもん…!!」
レーヴェ:(M)嗚呼。
ガロ:「前線だって人数不足のはずだ…!俺らが間に合わないだけで、何人の仲間が死ぬと思ってんだよ…!」
レーヴェ:(M)此処は。
ガロ:「ふざけんなよ、内地の馬鹿野郎が…!」
レーヴェ:(M)自由から程遠い。
ガロ:「とにかくまずは火をーーー」
レーヴェ:「ガロ」
ガロ:「なんだ…!」
レーヴェ:「こいつら。殺すか?」
ガロ:「ーーー…」
レーヴェ:「お前に任せる。」
ガロ:「レーヴェ…お前」
レーヴェ:「これには。反吐が出るほど興味が無い。」
ガロ:「…」
レーヴェ:「…。どうする。ガロ」
ガロ:「…何言ってんだお前…?そうこうしてる間に俺らの仲間が死んでんだぞ…?それを、興味が無いって言ったのかお前」
レーヴェ:「いや、困るしそりゃ悲しいよ。」
ガロ:「…はあ…?」
レーヴェ:「…え…?」
ガロ:「あ〜もう。いや、今はいい。目の前の事を考えよう」
レーヴェ:「分かった。で、どうする。殺すか」
ガロ:「…駄目だ。ここまで派手に内地で争いが起きてるなら、いずれもっと大きな争いになる可能性もある。今生活員に危害を加えたら、迎撃兵と生活員に亀裂が産まれるかもしれない」
レーヴェ:「そんな難しい話かね。昔とは随分変わったな。」
ガロ:「もう餓鬼で居ていい筈がねえだろ…!」
レーヴェ:「切り捨てるもんも選べねえなら望む結果もついて来ねえぞ」
ガロ:「人の命を天秤にかけてるんじゃねえよ…!命に価値を付けんな…!」
レーヴェ:「あっそ。じゃあ、二手に別れるか。」
ガロ:「…だな。今回の前線はかなり厳しい動員数になるだろうが。どっちが行く。」
レーヴェ:「面白そうなのは前線だなあ。何よりサオーレ、俺らのマイハウスも心配だし。トリスタからも割と近い」
ガロ:「いいのか?北東戦線の動員数は南西やりもずっと少ない。マジできついと思うぞ、今回は。」
レーヴェ:「いいよ。それに、多分憲兵の仕事は俺よりガロの方が向いてる。から、任せた!」
ガロ:「…分かった。」
レーヴェ:「よし。」
ガロ:「…死ぬなよ、レーヴェ」
レーヴェ:「死なねえよ。そんじゃな、ガロ」
0:レーヴェは走り去った
ガロ:「…。」
0:場面転換
0:アンディール地区
カリオス:「そうか、北東戦線にはレーヴェが向かったか…!」
ベルディ:「ですが、北東の動員数はレーヴェンシュタインを含め32人…既にその半数程度が死亡している状況です…っ。ガロが内地に残っているとなると…」
カリオス:「…俺も出る。」
ベルディ:「カリオスさんはいけません…!司令塔が崩れれば、それこそノーザンブリアは再起不能です…!」
カリオス:「俺の後継なんか、いくらでも現れる…!サオーレ地区、ララビオ地区の二つが落とされれば、そのまま中央区にまで侵攻を許す事になる…!」
ベルディ:「…っ。でしたらせめて。内地へ向かってください。ガロと入れ替わりで、レーヴェンシュタイン、ガロの二人を北東戦線へ上げましょう。」
カリオス:「…。若い芽ばかりに負担を押し付けるのは心苦しいが…。」
ベルディ:「失礼ながら、勝機があるのはそちらかと」
カリオス:「本当に失礼だな。だが、俺とガロ。どちらが前線に出て頼もしいかなんて明白だ。命の賭け時だな、ベルディ」
ベルディ:「はい…っ。」
カリオス:(M)正念場だ。ここで負けたら。人類が滅亡する。必ず。勝利の狼煙を上げさせてみせる…っ。
ベルディ:(M)死臭。幾度と戦場で香った匂い。人が死ぬ間際に出す。海の匂い。
カリオス:「…」
ベルディ:(M)…やめろ。悪い予感を立てるな。
カリオス:「さて、行こう、ベルディ」
ベルディ:「…カリオスさん。少しだけ。いいですか」
カリオス:「…なんだ?」
ベルディ:「…もしも。ですよ。」
カリオス:「ああ。」
ベルディ:「もしも、害獣を全て駆除して。その後。カリオスさんはどうするつもりですか。」
カリオス:「…。それは…なってみないと分からないな。」
ベルディ:「…じゃあ仮に。レーヴェがよく言う様に、ノーザンブリアの外があったら。どうしますか」
カリオス:「ーーー…」
ベルディ:「…カリオスさん…?」
カリオス:「有り得ない。」
ベルディ:「…」
カリオス:「ノーザンブリアの外なんかが。あるはずが無い。あったとしても、害獣の巣窟だ。ここより遥かに地獄がある」
ベルディ:「…そう、ですか」
カリオス:「そうでも思わないと。やってられないだろう。これで外では普通に人が暮らしている、だなんて事があってみろ。きっと俺は世界を恨む」
ベルディ:「…はい。私もきっと。そうなります」
0:場面転換
0:北東戦線
0:サオーレ地区
:
レーヴェ:(M)結構。呆気なかった。
レーヴェ:(M)数が押し寄せて。あっという間に腹に穴が空いた。
レーヴェ:(M)痛い。死ぬか。これ。死ぬな。
レーヴェ:(M)ーーーああ。
レーヴェ:(M)此処で。死ぬのか。
ユージン:「…なんだ。もう駄目かい。レーヴェ」
レーヴェ:「…ああ…?」
ユージン:「死に際だ。ここが最も座標に近い場所だ。もう。もういい加減に。終わらせてくれ。」
レーヴェ:「…」
ユージン:「君なら至れる。いいや、君にしか至れない。頼む。もう、これで最後にしてくれ。」
レーヴェ:(M)なんでヤブ医者が。前線にいる。
ユージン:「ごめん。ごめん。」
レーヴェ:(M)なんで俺に謝る
ユージン:「ごめんよ。」
レーヴェ:(M)あれ。
ユージン:「…皆。今回も。ダメかもしれない。」
レーヴェ:(M)夜だ。
ユージン:「…また。この10年を繰り返すのか。」
レーヴェ:(M)カチッと。何かがハマる音がした。
:
ユージン:(M)第497536回。ユークリッド試行実験報告書
ユージン:(M)試行加圧による内地の不況から内戦が勃発。ケースCとして処理。
ユージン:(M)南西戦線は壊滅。そのまま内地へと残穢が侵攻を開始。
:
ガロ:「…は…?」
カリオス:「…すまない。駄目だった。」
ベルディ:「…」
ガロ:「ダメだったとかじゃ、ねえだろ。なんでお前らが内地に来てんだ。南西戦線行けよ。」
カリオス:「北東戦線にお前を向かわせる方が勝機があると思った。」
ガロ:「知らねえって。結果南西は潰れてトリスタまで害獣が来てんじゃねえか…!」
ベルディ:「すまない…。私の提案だ」
ガロ:「…」
ベルディ:「…まさか。害獣が先月の倍以上も出現しているとは思わなかった。」
ガロ:「ふざけんな。北東にはレーヴェが居るんだ。どう考えたって南西の方が手薄だろうが!」
ベルディ:「…すまない。返す言葉もない」
カリオス:「俺の失態だ。トリスタを最終防衛ラインにする。ここで害獣の侵攻は止める」
ガロ:「…」
カリオス:「俺の責任だ。俺がケツを拭く。」
ガロ:「なんの為に?」
カリオス:「…どういう意味だ」
ガロ:「もうこうなったら、生活員だって要らないだろ。残された生活区域と人口が釣り合ってない。これじゃあまた内地でのいざこざが増えるだけだ」
カリオス:「…」
ガロ:「なあ。なんで一番安全な場所でぬくぬく過ごしてるだけのコイツらの為に、俺の仲間が死ななきゃいけねんだ」
ベルディ:「言うな、ガロンドール…。」
ガロ:「お前らが指示したんだろうが!!内地を守るのが人類の為になるって!!人の命が掛かってんだぞ…!」
ベルディ:「結果なんか誰も分かるわけないだろ…!!出現源も、生態系も分からない敵を前に、私達はその時できる精一杯を尽くした…!あの時こうしてれば、ああしてればと叫んで何になる!!」
ガロ:「…」
カリオス:「…さっき言った通りだ。この選択をした事は全て、俺に非がある。だから俺は命をかけて戦う。」
ガロ:「くそが…」
カリオス:「後のことは。その時考えるしかない。今は、生き延びることだけを考えよう」
ガロ:「くそが…ッ…!!」
:
0:場面転換
0:サオーレ地区
レーヴェ:「…。で。お前はなんでここに居るんだよ。」
ユージン:「…」
レーヴェ:「ヤブ医者。」
ユージン:「…驚いたよ。まさかあれ程の残穢…。ああ、害獣と呼んでいるんだったか。あれらをたったの2時間で還らせるなんて。」
レーヴェ:「…」
ユージン:「良かった。これなら。あの人も納得してくれる。君は、外に出られそうだ。レーヴェ」
レーヴェ:「…は?」
ユージン:「あとは。蠱毒がどうなるか、だ」
:
ユージン:(M)北東制圧から一時間後。トリアナに侵攻した残穢の排除を試みる。生活員と名付けられた座標は全滅。迎撃兵と名付けられた有力候補もその大半が死亡
カリオス:「はぁ…はぁ…っ。」
ガロ:「おい!ボサっとすんなカリオス!!」
カリオス:(M)トリスタは壊滅。再起は不能。迎撃兵の応援も無いという事は。…言うまでもないか。
ガロ:「カリオス!!」
カリオス:(M)よくやったさ。いつ切れてもおかしくない糸を、何度手繰り寄せた事か。
ガロ:「くそ…!間に合わねえ…っ。てめぇぇええ!責任取るって言ったんだろうが!シャキッとしやがれ!!」
カリオス:(M)人類は。ここで潰える。
ベルディ:「カリオスさん…!!」
0:ベルディはカリオスを押し飛ばした
カリオス:「ーーっ…!」
ガロ:「…!」
ベルディ:「生きてください。カリオスさん」
カリオス:「ベルディ、待て、俺は…!!」
0:ベルディの首が食いちぎられる
ガロ:「ーーーー…てめぇぇぇえええええッ!」
ユージン:(M)ラストランに残ったのは3人。
:
0:崩壊したトリスタ地区
0:息を荒らげる2人
ガロ:「…」
カリオス:「…生き残ったのは。俺達だけか。」
ガロ:「…。後のことは。後で考えるって言ったな」
カリオス:「…」
ガロ:「どうすんだ。もう。後がねえぞ。」
カリオス:「…。ああ。何も。無いな。」
ガロ:「…クソが。」
ユージン:(M)以上を以て。
0:空が割れる
ガロ:(M)視界に入ったのは。ひび割れた空。
ユージン:(M)ユークリッド試行実験を終了する。
ガロ:(M)空と、太陽が粉々に砕けて。
カリオス:「ーーーー…」
ガロ:(M)辺りはただ一面に広がる果てしない暗闇と、小さく光る太陽があった。
カリオス:「…なんだ。これは」
ガロ:「…まさか」
カリオス:「…なんだ。何か知ってるのか?」
ガロ:「外には。辺り一面が黒で覆われる。そんな空があるって。本に書いてあった」
カリオス:「…外…?何を言ってるんだ。ここはノーザンブリアで…」
ガロ:「知るかよ…どういうことだ。」
レーヴェ:「おぉ〜!お前ら!生きてたか!」
ガロ:「…!」
カリオス:「レーヴェ…!?お前、生きてたのか…!」
レーヴェ:「おお、ラッキーだな。ははは。」
カリオス:「やっぱりとんだ化け物だな…お前らは…」
レーヴェ:「ははは、そんな事よりだ、見ろよガロ!」
ガロ:「…なにを」
レーヴェ:「あの無数に広がる星ってやつがあって」
ガロ:(M)ずっと。ずっと違和感はあった。
レーヴェ:「辺りは一面の黒!」
ガロ:(M)仲間が死んでも。ノーザンブリアが大変な事になっても。レーヴェの目はいつも、退屈そうだった。
レーヴェ:「そんであのちっちゃい太陽が月!」
ガロ:(M)唯一目を輝かせるのが、外の話をしている時。
レーヴェ:「つまりこれが」
ガロ:(M)そして。今も
0:レーヴェの目は輝いている
レーヴェ:「ーーーーーー夜だ!」
ガロ:「…」
カリオス:「夜…?」
レーヴェ:「だっははははは!最っっ高に綺麗だなあ…!本で見るよりもずっと…!ずっとだ…!!」
ガロ:「…皆は。サオーレはどうなってた」
レーヴェ:「え?」
ガロ:「サオーレに行ったろ。俺達の故郷はどうなったんだよ。」
レーヴェ:「…ああ。」
0:レーヴェの目は光を失った
レーヴェ:「皆死んでたよ」
ガロ:「ーーーーッ…!」
0:ガロはレーヴェの胸ぐらを掴んだ
ガロ:「な…に考えてんだよ…っ…!」
レーヴェ:「何って。」
ガロ:「状況分かってんのかよ、なんだってそんな楽しそうに出来るんだお前は…!!」
レーヴェ:「なんでって!分かるだろ!もう害獣は居ない!いくらでも外に行ける!この足で!」
ガロ:「はあ…?」
レーヴェ:「自由なんだ!俺たちは…!」
カリオス:「…レーヴェ…お前は…」
ガロ:「ふざけんじゃねえ…ッ…!!」
レーヴェ:「…」
ガロ:「仲間が死んだ…!人も、街も…ガロも…っ!死んじまったんだぞ…!!」
レーヴェ:「…。」
ガロ:「その手前、自由がどうだって、喜べるわけがねえだろ!!だから何考えてんだって聞いてんだよ俺は!!」
レーヴェ:「…」
ガロ:「…何とか言えよ…!」
レーヴェ:「…さっきさ。ユージンと会ったんだ。」
ガロ:「…ユージン…?アイツがなんだ」
レーヴェ:「アイツが。全部話してくれた」
0:回想
0:2時間前
0:サオーレ地区
ユージン:「ーーー異能協会」
レーヴェ:「…んん?」
ユージン:「僕が所属する故郷の名前だ」
レーヴェ:「なんだそれ。」
ユージン:「人の可能性を試す場所だ。僕達は影で、誰かの分身なんだよ。ノーザンブリアは、限りなく広い世界のほんの一部。小さな、米粒より小さな島なんだよ。」
レーヴェ:「…」
ユージン:「そこで僕達は、有用な種を集めた。座標の核心に至る素質を。人の可能性を見る為に。この島で幾度となく君達を繰り返し監視した。君達が座標の核心に至るまで。今回初めて、レーヴェとガロがそれに至った。」
レーヴェ:「…」
ユージン:「この空も。害獣も。ここの歴史も、僕ですらも。作り物だ。全てが偽りで、世界から隠蔽された仮想空間での試行実験なんだよ。」
レーヴェ:「…」
ユージン:「僕はその見届け役。君達の可能性を見た。ノーザンブリアでの実験はこれで終わり。僕が死ねば、ね。」
レーヴェ:「…」
ユージン:「ガッカリしたかい。それとも信じられないかい。」
レーヴェ:「ーーー…」
0:レーヴェは静かに涙を流している
レーヴェ:「良かった。」
ユージン:「…」
レーヴェ:「こんなちっぽけな場所の。ちっぽけな戦場が、世界の全部じゃなくて。本当に良かった」
ユージン:「…やっぱり。君はどうかしてる。」
レーヴェ:「この前話した時は否定してたけどさ。あるんだろ。外には。色んなものが。人が。文化が」
ユージン:「…あるよ。けどね。それも偽りだ」
レーヴェ:「本物か偽物かだなんてどうでもいいんだよ。ただ、そこにある景色が見たい。俺の目に映れば、それでいい。」
ユージン:(M)ーーーああ。
レーヴェ:「だから。本当に良かった」
ユージン:(M)彼は。「空っぽ」だ。
レーヴェ:「ここまで俺を導いてくれて、ありがとう。ユージン…!」
ユージン:(M)固執するものが何も無い。得たいものも、守るものも、何も無い。ただそこにある「何か」を追い続けるだけの、自由のそのものだ。
レーヴェ:「…。」
ユージン:「…君が強い理由が分かったよ」
レーヴェ:「え?」
ユージン:「…君達がここに至るまで。何百回。何千回という試行があった。僕はその度、君達がいうところの害獣を使って可能性を試し続けた。」
レーヴェ:「あれお前の仕業だったのか。すげえな」
ユージン:「…何も凄くない。僕は途中で、折れた。君たちを殺し続けるのに。疲れてしまった。罪を感じてしまった。」
レーヴェ:「…」
ユージン:「早く終わってくれって。思ってしまったんだ」
レーヴェ:「自己中だな〜。お前」
ユージン:「…そうだろ。僕もそう思う。きっと今この話を聞いてるのがレーヴェじゃなかったら、僕はとっくに殺されてる」
レーヴェ:「だろうな。良かったな。俺で」
ユージン:「…いいや。裁かれたかった。僕のしたことについて。ただ怒って欲しかった。それが僕のしてきた事に対する、唯一の免罪だった。」
レーヴェ:「俺がお前の罪を理解しないからか?別にいいじゃん。」
ユージン:「…さっきも言った。僕は誰かの影だ。僕も作り物で、さっきまで君たちに対して抱いていた罪悪感も。全てが偽りだ。」
レーヴェ:「…。またお前。面倒臭い嘘つくなあ。」
ユージン:「…はは。変なところで鋭い。…そうさ。僕は、認めたくなかった。何度も顔を合わせた君たちを、僕の手で殺す。この罪悪感を、覚悟を。偽りだと認めたくなかった。」
0:ユージンは空を仰いだ
ユージン:「だけど。誰も僕を叱ってくれないんじゃあ。まるで僕だけが、そう思っているみたいじゃないか。」
レーヴェ:「ま。俺にはどうでもいい事だよ。」
ユージン:「けれど。君じゃなければ、きっと僕は殺せない。」
レーヴェ:「もういいよ。大体わかった。俺は早く。夜が見たい。」
ユージン:「ーーーはは。だから君は強いんだよ。レーヴェ」
レーヴェ:「…。」
ユージン:「数時間もすれば。レーヴェ以外はノーザンブリアでの記憶を失うだろう。あの地の可能性を見出したのは、僕を殺したのは君だ。後の彼らは可能性の残穢でしかない。」
レーヴェ:「…そうか。」
ユージン:「また。いつかの巡りで会えるといいね。」
レーヴェ:「もう喋んな。」
ユージン:「…」
レーヴェ:「お前の気持ちはよく分かった。ちゃんと殺すから。もうやめとけ。」
ユージン:「…は、は。」
0:ユージンは膝を着いた
ユージン:「ーーーありがとう。」
0:回想終了
0:トリスタ跡地
カリオス:「…そんな、話が…どんなおとぎ話だ…」
レーヴェ:「でも!実際に空は暗い!夜空だ!」
ガロ:「…俺達が生きた世界は。全部嘘だったってのか。」
レーヴェ:「みたいだな。」
ガロ:「なんで。そんな現実、受け入れられるんだよ…!」
レーヴェ:「…」
ガロ:「俺達は今まで、何を守って戦ってきたんだよ…!!」
レーヴェ:「…。お前は今まで守る為に戦ってたんだろうけどよ。俺は違うよ、ずっと。ずっと前。お前と外の話をした時から」
0:レーヴェはガロの目を見た
レーヴェ:「進む為に戦ってたんだ。」
ガロ:「ーー…」
カリオス:「…馬鹿げている…。」
レーヴェ:「なんでだよ。」
カリオス:「生きている意味が。無くなった。」
レーヴェ:「ええ。」
カリオス:「後も、先も。たった今無くなった。あれだけ必死になったのに。何も。誰も守れてなかったんだろ。俺達は」
ガロ:「…」
カリオス:「俺達が。死んで行った仲間達が。馬鹿みたいじゃないか…っ」
ガロ:「カリオス…」
カリオス:「…っ…。」
レーヴェ:「ガロ。」
ガロ:「…」
レーヴェ:「早く海の向こうに行こう。高いビルも、見た事ない生き物も、ケバブも、何もかもがある。」
ガロ:(M)昔話したこと。ノーザンブリアの。外の話
レーヴェ:「俺達がずっと夢見た世界が、スグそこにある」
ガロ:(M)毎日仲間が死んで、ただ餓鬼で居られなくなって。その内どうでもよくなってきた、俺達の夢
レーヴェ:「狭い部屋の中じゃ見られなかった景色だ」
ガロ:(M)レーヴェだけは。何も変わってなかった。レーヴェだけが、ずっと夢を見てた。
カリオス:「…あと数時間もすれば。俺とガロの記憶は無くなる。そう言ったな」
レーヴェ:「…?おう。確かに言ってた」
:
カリオス:(M)全て無駄だった
ベルディ:「もしも、害獣を全て駆除して。その後。カリオスさんはどうするつもりですか。」
カリオス:(M)あの日々が。偽り以外の何者でもなかった。
ベルディ:「…じゃあ仮に。ノーザンブリアの外があったら。どうしますか」
カリオス:(M)この暗闇を携えた空こそ、あの日々が偽りである証拠に他ならない。
ベルディ:「…はい。私もきっと。そうなります」
カリオス:(M)俺はそれを。許容出来ない。
レーヴェ:「…」
カリオス:「ーーーすまない。二人とも」
0:カリオスは自分の胸に手を当てた
カリオス:「俺は今。この矛先をどこに向ければいいか分からない。」
レーヴェ:「…」
ガロ:「…カリオス…お前…」
カリオス:「俺達が命をかけてきた日々を否定する真実が海の向こう側にある。仲間の死を、俺の全てを否定するあの景色が。心底憎い。この感情が消えて無くなるのも、耐え難い。」
ガロ:「カリオス…!」
カリオス:「俺は、この世界の全部に…」
ガロ:「やめろよ、おい…!!」
カリオス:「ガッカリした…っ。」
ガロ:「カリオス!!!」
カリオス:「mode」
レーヴェ:「…馬鹿野郎が。」
カリオス:【ーーーUROBOROS】
0:カリオスはその姿を変えた
レーヴェ:「…俺はノーザンブリアを出る。沢山の景色を見る。」
ガロ:「…」
レーヴェ:「お前がどう生きるかは。お前が決めろ」
カリオス:『頼むから。死んでくれ。頼む。』
レーヴェ:「見たい景色がぶつかったら。その時は俺を殺せ。俺もお前を殺す。約束だ。」
ガロ:「おい、レーヴェ…」
レーヴェ:「その為の力が、俺達にはある。俺達の力は。未来を犠牲に、今を貫く力だ。」
カリオス:『全部。全部全部全部全部全部全部全部全部全部』
レーヴェ:「俺達は」
0:レーヴェは拳に力を入れる
レーヴェ:「ーーー誰よりも自由だ。」
カリオス:『ブッッ壊れろッッッ!』
:
ユージン:(M)1990年。
ユージン:(M)無人の孤島。ノーザンブリア隔離島にて震度8の地震を検知。
ユージン:(M)震源地が割れるまでに2分。中央政府観測室が異常性の関与を認めるまで6分。
ユージン:(M)ノーザンブリアの面積の8割が割れ、海に沈んだ。ノーザンブリアから程なく近い北海隣国も甚大な被害を受けた。
:
ガロ:(M)最後に覚えているのは、その街並みが刹那にして崩壊する光景。それは、死ぬように。終わらせるように、その情景は、消しゴムで掻き消された。
0:1990年 4月 ノーザンブリア隔離島
ガロ:(M)目を覚ますと。辺りは一面砂煙で覆われていた。そこには、一人の男の姿があった。
レーヴェ:「…。おはよう。ガロ」
ガロ:「…誰だ…?あんた」
レーヴェ:「…。」
0:レーヴェは少し俯き指を指した
レーヴェ:「俺はレーヴェンシュタイン。冒険家だ。」
ガロ:「…レーヴェン…シュタイン」
レーヴェ:「訳あってノーザンブリアの景色を見てたんだ。長い。長い間。」
ガロ:(M)何か。聞いたことがある気がする。
レーヴェ:「お前が何も覚えてなくても。きっといつか、そうする。」
ガロ:(M)喉をつっかえては、朧気になって消えていく。
0:レーヴェはガロに冒険譚を渡した
レーヴェ:「俺はノーザンブリアから出る。お前も沢山楽しめよ。」
ガロ:(M)次第に頭が真っ白になって。また、気を失った。
レーヴェ:「…。さて。」
0:レーヴェはガロを既にみていない
レーヴェ:「行くか。」
:
ジャイロ:(M)1991年 12月
ガロ:「じゃあ。行ってくる」
ジャイロ:(M)フランス。リベール市。上空840m
ガロ:「ーーー定義転換」
レーヴェ:(M)きっと、ずっと夢ばっか見てた俺にとって。あの時のガロは。俺の中での、善悪の指標になってた気がする。
ガロ:「脱兎」
レーヴェ:(M)夢と現実の区別を付けるべき指標だった。けど、あの日から。その指標が壊れた。それが俺は、嬉しかった。けど。今も昔もお前はずっと自分を含む「周り」の自由を求めてる。俺にはそれがずっと理解出来ないけど。それを証明しに。それを押しつけに。やっとこっち側にーーー
レーヴェ:「ーーー来たな。」
ガロ:「おう。」
レーヴェ:「冒険は。楽しいか、ガロ」
ガロ:「ああ。めちゃくちゃ楽しいよ。レーヴェ」
0:二人は構える
ガロ:「だから。勝つよ。」
レーヴェ:「ああ。俺もそうする。」
ガロ:「ーーー俺は。ガロンドール・ウォンバット。冒険家だ。」
レーヴェ:「レーヴェンシュタイン・ウォンバット。冒険家だ。」
0:一瞬の静寂
ガロ:「FANBLE」
レーヴェ:「ACT」
0:二人は互いに接近する
ガロ:「レーヴェェェエエッ!!」
レーヴェ:「ガロォォォオオッッ!!」
0:互いを殴った
ガロ:「ぶごッ…!」
レーヴェ:「がは…ッッ!」
0:船内
ジャイロ:「ガロは…!」
フェリス:「あそこ、戦ってる…!」
モルポ:「遠い!!めちゃくちゃちっちゃくなってんじゃねえか…!」
0:上空
レーヴェ:「ぉぉおおおおッ!」
ガロ:「REXXッッ!」
0:蹴り上げる
レーヴェ:「ッッがぁ…!」
ガロ:「DRED・BURSTッッ!」
レーヴェ:「ごぼォッ…!!」
ガロ:「bound・BURSTッッ!」
レーヴェ:「か、はは…!完全に勘が戻ったかぁ!ガロぉ!!」
ガロ:「定義反転」
レーヴェ:「back・hand…ッッ!」
ガロ:「強制返済」
0:衝撃が走る
レーヴェ:「ごぼォッ…!」
ガロ:「ぉぉぉおおおおらッッ!!」
レーヴェ:「どぉぉおらぁあああッッ!!」
0:二人は殴り合う
レーヴェ:「grip…ッ!」
0:頭を掴まれる
ガロ:「んぎっ!」
レーヴェ:「hammerッッ!!」
0:吹き飛ばされる
ガロ:「うおぉぉおおおお!?」
レーヴェ:「そぉら追撃ィ…!」
ガロ:「く、そ…ッ!」
レーヴェ:「そぉぉぉおおおおらッッ!」
0:殴られた
ガロ:「ぶごッッ…!!」
レーヴェ:「Steins・BORROW…!」
ガロ:「GRID・BORROW…ッ!」
レーヴェ:「NEO・BURSTッッ!!」
ガロ:「FURU・BURSTッッ!」
0:拳がぶつかり合い、辺りは激しく揺れる
レーヴェ:「ONELimitォ…!」
ガロ:「420GRIDォ…!!」
0:次いで2激目
レーヴェ:「BURSTッッ!」
ガロ:「BURSTォォツ!!」
0:拳が再びぶつかる
ガロ:「…ッ…!」
レーヴェ:「ははは!まだ身体が馴染んでねえか!」
ガロ:「言ってる間に馴染む…!」
0:二人は激しく殴り合いながら話す
ガロ:「ごめんな!!全部忘れちまってて!!」
レーヴェ:「謝んなよ!!お前のせいじゃない!」
ガロ:「でもやっぱりお前はおかしい!」
レーヴェ:「おかしいかどうかは勝ったやつが決める!」
ガロ:「勝つ為にそう思ってるんだよ!」
レーヴェ:「ごぶッッ…!」
0:ガロ追撃しながら話す
ガロ:「俺は今でも仲間が大切だ!!俺の自由は、一人じゃ退屈なんだ!」
0:追撃の手を止めない
ガロ:「レーヴェの進み方は、誰も着いて来れない!!お前はあれだ!!早すぎる!!」
0:追撃の手を止めない
ガロ:「それは強さじゃねえ!!捨て身なだけだ!!」
レーヴェ:「ぶごッ…!こんのぉ…ッ!」
ガロ:「だぁああらッッ!」
0:再び激しく殴り合いながら喋る
レーヴェ:「守るものの為に見たい景色も見れないんじゃあたまったもんじゃねえ!そりゃ俺にとって不自由だ!!」
ガロ:「見たい景色を見る為に仲間が居る!!」
レーヴェ:「結果お前はグランに負けただろうが!!」
0:殴る
ガロ:「ごほッッ…!」
0:レーヴェは追撃の手を止めない
レーヴェ:「でも正直、勝ち負けなんざどうでもいいんだ!!こうしてまた、お前と見たい景色について、ド直球、ど真剣に語れる!!それが嬉しい!!」
0:追撃の手をとめない
レーヴェ:「信じてたよ!!お前がまたこっち側に来るって!マルセイユでアガットから話を聞いた時は興奮した!!」
0:追撃の手をとめない
レーヴェ:「今はもう!!誰も俺達を止めねえ!俺たちを止められるのは、俺たちだけだ!!こんな幸せなことあるか!?」
0:拳を止めた
ガロ:「ーーッ…無い…!!」
レーヴェ:「ははは、最高だぜ、ガロぉ…!」
ガロ:「GRID・BORROW」
レーヴェ:「Steins・BORROW」
0:同時に拳を放った
ガロ:「FURULimit・BURSTッッッ!!」
レーヴェ:「METEOR・BURSTッッ!」
0:船内
モルポ:「おいおいおい…!なんだあれ…!!世界終わんのか…!?」
フェリス:「ちょっとこれ、揺れやばくないか!?」
カラス:(M)アイツらの異常性は文字通り一撃必殺。一発貰っただけで致命傷は避けられねえ戦いだろうに。よくやるぜ…。どの道、長期戦にはならねえ。一瞬をかいくぐった方が勝つ…!
ヴァン:「おい、なんか落ちてくるぞ…!!」
ジャイロ:「決着がつきやがったか…!?」
モルポ:「言ってる場合かーい!伏せろ伏せろ!!」
0:人間が墜落する
フェリス:「うわああっ!」
モルポ:「ぎゃあああー!」
ヴァン:「うおおお!?」
カラス:「どっちだ…!!」
ジャイロ:「…っ。ガロ…!」
0:辺りは砂煙で覆われている
レーヴェ:(M)ノーザンブリアを出てから一年。
レーヴェ:(M)世界の大体を見渡した。
レーヴェ:(M)また、人生に「当然」が帰ってきた。
レーヴェ:(M)そんな時だ。グランと出会ったのは。
0:回想
グランシオラ:「君が。ノーザンブリア異変の発端。レーヴェンシュタインか。」
レーヴェ:「そうだけど。誰だお前?」
グランシオラ:「私はグランシオラ・ルルカブル。グランシャリノというギルドを運営していてね」
レーヴェ:「グラタンノッポ?」
グランシオラ:「何でも構わないよ。長らく探した。FBIですら名前までしか探れなかった、突如出現した正体不明の異常体。」
レーヴェ:「随分な肩書きじゃねえかよい」
グランシオラ:「君の目を。知っている。」
レーヴェ:「はいぃ?」
グランシオラ:「酷く退屈しているだろう。いいや、退屈に怯えている。私の知る目よりも遥かに厄介だ。」
レーヴェ:「…」
グランシオラ:「君は空っぽだね。まるで、底の抜けた箱のように。詰めても詰めても抜け落ちる。それは夢や希望かな。どれもこれも。君の期待を超えるものはなく、緩やかに沈んでいく。ははは、強欲、傲慢の塊みたいな男だな。君は」
レーヴェ:「…。お前。名前なんて言った。もっかい聞かせてくれ」
グランシオラ:「いいとも。私は、グランシオラ・ルルカブルだ。」
レーヴェ:「長ぇな。グランでいいか」
グランシオラ:「…。好きに呼んでおくれ」
レーヴェ:「それで。お前は俺に何を見せてくれるんだ。」
グランシオラ:「…ふはは、話が早くて好きだ。私はね。とある夢を見ているんだ。」
レーヴェ:「ああ。そういうのは大好きだ」
グランシオラ:「けれど、私の夢には敵が多すぎる。」
レーヴェ:「どのくらい」
グランシオラ:「全世界。」
レーヴェ:「…は、ははは。」
グランシオラ:「世界の在り方のその全てを。変えてしまいたいんだ。」
レーヴェ:「もういい。」
グランシオラ:「おや。」
レーヴェ:「やっぱり見たい景色は。自分の手で掴み取らなきゃな。」
グランシオラ:「ははは。やはり、話の分かる。」
レーヴェ:「ただ断っておくけど。」
グランシオラ:「構わない。君が自身から折れる、もしくは退屈に感じた時は私の許諾無く身を離れる事を許可しよう」
レーヴェ:「あぁ〜ん。話の分かる」
グランシオラ:「改めて。」
0:グランシオラは手を差し出した
グランシオラ:「私はグランシオラ・ルルカブル。元中央政府職員だ」
レーヴェ:「俺はレーヴェンシュタイン・ウォンバット」
0:手を握った
レーヴェ:「冒険家だ。」
グランシオラ:「ーーー約束しよう。君が降りるその日まで。君を楽しませ続けてみせる」
0:回想終了
レーヴェ:(M)ああ。グラン。俺は今。最高に幸せだ。
モルポ:「な、なんだ…!どっちも出てこねえぞおい…!」
ジャイロ:「…ガロ!!生きてんだろ!さっさと出てこい!」
フェリス:「ガロ!!」
モルポ:「が、ガロンドールくん!?」
ヴァン:「ちっ。返事くらいしやがれ…!」
カラス:「…。」
0:砂煙から人が出てくる
レーヴェ:「ーーーふう…。気持ちいいなあ。おい。」
カラス:「ーーーッ…!?」
ジャイロ:「…!」
モルポ:「うおぎゃあああ!?」
ヴァン:「クソが…!」
フェリス:「応戦しないで!!絶対に!!これ以上、誰も死なないで…!」
モルポ:「そうは言ってもよお…!」
フェリス:「信じるんだろ…!ガロを…!」
ヴァン:「…。」
レーヴェ:「なんだ?お前らはやらねえのか?」
ジャイロ:「生憎。俺らの出る幕じゃねえんだ。」
カラス:「その内ぶった斬ってやるよ」
フェリス:「Switch・guardian…!」
0:盾が展開される
モルポ:「おお…!これ、安心するでごわす…!」
ヴァン:「分かるぜえ、その気持ち…っ。」
レーヴェ:「…もう終わりか?ガロ」
ガロ:(M)俺は弱いから。
モルポ:「た、立ってくれよガロンドール…!まじで…!!」
ガロ:(M)目の前の事に必死になってばっかだ。
ヴァン:「ガロンドール…!さっさと立て…!いやまじで!」
ガロ:(M)そりゃそうだ。こんだけの人数を巻き込んでる。必死にならなきゃ行けねえし、やらなきゃ行けねえ事がまだ山積みだ。
フェリス:「ガロ…!」
ガロ:(M)嗚呼…久しぶりに、空を見た。
カラス:「ガロ!!シャキッとしやがれ!」
ガロ:(M)ーーー夜だ。
ジャイロ:「ガロォ!!」
ガロ:(M)カチッと。何かがハマる音がした
レーヴェ:「…はは。」
ガロ:「定義収束ーーーー」
カラス:「…!」
ガロ:「ーー天上天下。」
0:ガロの身体は発熱し、蒸気が吹き荒れる
レーヴェ:「昼寝か、ガロ」
ガロ:「ああ。」
0:砂煙からガロが出てくる
ガロ:「夜空が、綺麗だったもんでよ。」
ジャイロ:「…!てめぇ、ビビらせやがって…!!」
モルポ:「ホントだよっ。まじ心臓に悪いなアイツ…!」
カラス:「は、今更だろうが。」
フェリス:「は、はは…っ。そりゃそうだ。あの馬鹿だもん」
ガロ:「わりぃ。でも、俺まだまだ行ける」
ジャイロ:「じゃなきゃ困るってんだ…!」
ヴァン:(M)座標がどんどん深くなってやがる。いや。元々深かったのか。どういう原理だ、ありゃ。不自然な埋まり方をしてやがる
ガロ:「やっと。スッキリした。完全に勘が戻ったよ。」
レーヴェ:「だろうなあ。」
ガロ:「第2ラウンドだ。レーヴェ」
レーヴェ:「ああ、何度でも来い…!」
ガロ:「FANBLE…ッ…!」
カラス:(M)さっきより更に速い…!
レーヴェ:「ACT。」
ヴァン:(M)レーヴェンシュタインも負けてねえ。アイツも相当俺らの相手で消耗してる筈だ。いや、してねえとムカつく。これで完全に五分か。五分であってくれ。ムカつく
ガロ:「ぉぉおおおおッ!」
レーヴェ:「らぁぁあああッ!」
0:殴り合う
ガロ:「そぉおいッ!」(殴る)
レーヴェ:「ッ…!ぉおおラッ!」(蹴る)
ガロ:「…ッ…!」
0:ガロは蹴りを受け止める
レーヴェ:「もう一丁ォ!」(蹴り上げる)
ガロ:「ッッとぉらぁあああ!」
0:レーヴェの足を蹴りあげ上空へ跳ねる
レーヴェ:「upper・glitchッッ!」
ガロ:「120GRID・LUSHッッ!」
0:ガロの攻撃が貫通する
レーヴェ:「ぶごッッ…!!」
ガロ:(M)もう一発
レーヴェ:「定義収束」
ガロ:「ーー!」
レーヴェ:「唯我独尊ン…ッ!」
0:レーヴェの身体は激しく発熱する
レーヴェ:「そぉらッ!」
ガロ:「ッ…!」
レーヴェ:「どぉオラオラオラオラオラオラオラオラッッ!」
ガロ:(M)上空に押し上げられる。けど、捌けない速度じゃない。さっきよりも、よく見える
モルポ:「ぉおお!?捌いてる!?のか!?見えねえ!」
ヴァン:「おい、腕二本か本当にあれ」
カラス:「どうだろうな。5本になっててもおかしくねえ」
フェリス:「5本じゃ採算合わないでしょ」
ジャイロ:「まじそれな。」
0:上空へ登る二人
レーヴェ:「410GRIDッ!」
ガロ:「425GRID」
レーヴェ:「LUSHPONGッッ!」
ガロ:「BACHLUSH」
0:攻撃を捌く
レーヴェ:「よく見えてる…!流石だ、ガロ…!」
ガロ:(M)アイネス。俺、今。お前の為に戦ってない。きっとお前は初めからそうしろって言うんだろうけど
レーヴェ:「ぉぉおらッッ!」
ガロ:(M)今はただ
レーヴェ:「そぉおらッ!」
ガロ:(M)レーヴェに勝ちたい。
レーヴェ:「ッははは…!」
ガロ:「ーーー。」
レーヴェ:「820GRIDォ…!LUSHPONGッッ!」
0:超連打
ガロ:(M)ーーー嗚呼
レーヴェ:「ーーー。」
0:無数の攻撃を目視している。
ガロ:(M)気持ちいい程、全部見える。
:
ジャイロ:「あいつ、とうとう人間やめたか、おい。」
フェリス:「やめてるね。あれは…」
ヴァン:「ありゃナンバーズクラスの兄弟喧嘩だ、俺らの出る幕じゃねえわナ。」
カラス:「らしいな。」
モルポ:「すげえぞ!そうだ!そのままやっちまえ!ガロンドール!!」
ジャイロ:(M)オーダーの時とは違う。今あいつと一緒に戦う事自体、足でまといにしかならねえ。何も出来ねえのが悔しいところだが…。はは、まあ。しゃあねえわな。
:
0:二人は船内を爆走しながら攻防を繰り広げる
ガロ:(M)右
0:ガロは連打を避け続ける
レーヴェ:「ッッ!」
ガロ:(M)左
レーヴェ:「ーーっ。」
ガロ:(M)下
レーヴェ:「…ッ!」
ガロ:(M)左
レーヴェ:「ッッ!!」
ガロ:(M)左
レーヴェ:「ーーっ…!」
ガロ:(M)右
レーヴェ:「ッッ!」
0:ガロはレーヴェの拳を止めた。
ガロ:「…正面。」
レーヴェ:(M)左
ガロ:「ーーーー」
0:ガロは拳を振りかざした
レーヴェ:(M)いいや違う。全部だ
ガロ:「んんんんッッ…!」
レーヴェ:「ごぶォッッ!」
0:ガロの拳がレーヴェの顔に当たり、レーヴェは方舟まで落ちる
レーヴェ:「ーーーげぶぼぉッ!」
0:レーヴェ墜落
ジャイロ:「うおお!?」
フェリス:「うわあっ!」
モルポ:「おんぎゃああっ。」
ヴァン:「おいおい…!こっちまで巻き込む気かよ…!」
ジャイロ:「巻き込まれても文句はねえだろ、こんなもんっ。」
ヴァン:「カラス。何が起こったか見えたか」
カラス:「一発入ったらしい。いや、多分だけどな…」
モルポ:「って事は、勝ったか!?」
ジャイロ:「おいフラグ立てんなモッコリ…!」
0:上空から下を眺めるガロ
ガロ:「…。」
0:瓦礫から姿を現す
レーヴェ:「ーーーーーふぅ…。」
ジャイロ:「い!?」
ヴァン:「マジか…っ。」
モルポ:「いやあああっ!出たああっ!」
カラス:「っ…。」
フェリス:「皆、下がって…!guardianの範囲から一歩も出ないでよ、まじで…!」
レーヴェ:「…。強いな。お前らのリーダーは」
ジャイロ:「…!」
カラス:「…」
0:二人は声を同時にあげた
ジャイロ:「あたぼーよ。」
カラス:「当然だろうが」
レーヴェ:「はは。いいね。いい仲間だ」
ガロ:「…。」
レーヴェ:「いい冒険してんな、羨ましいぜ」
0:レーヴェは髪をかきあげた。
レーヴェ:「最終ラウンドだ…!ガロ…!!」
ガロ:「…おう!!」
レーヴェ:(M)いい加減ストックも尽きてきた。お前もここ一週間借りっぱなし。
ガロ:(M)決着は、今付ける…!
レーヴェ:(M)よなァ…!ガロぉ…ッ!
ガロ:(M)全部だ。
レーヴェ:(M)全部出し切る
0:二人は同時に言葉を放つ
ガロ:『定義収束』
レーヴェ:『定義収束』
0:天候がまた乱れる
ガロ:『ーーー天上天下』
レーヴェ:『ーーー唯我独尊』
0:二人の身体は発熱し、血管が浮き上がる
レーヴェ:「ははは…!アガッてるかァ!」
ガロ:「最高潮だ…!」
0:二人は同時に攻撃を開始する
レーヴェ:「ガロぉぉおおおおッッ!」
ガロ:「レーヴェぇぇえええッッ!」
0:拳がぶつかる
レーヴェ:「ーーッッ!」
ガロ:「ーーッ。ぉぉーーー」
0:ガロの拳はすり抜け
ガロ:「ぉぉおおおおッ!」
0:レーヴェの眼前に迫る
レーヴェ:「んッとォ…っ!」
0:レーヴェはそれを避け蹴る
レーヴェ:「ほぉれッ!」
0:その足を掴み
ガロ:「んんッ…!」
レーヴェ:「おぉっと…!?」
0:投げる
ガロ:「んんんぉぉおッッ!」
0:レーヴェは空高く投げられる
レーヴェ:「うぉおおお!?」
0:ガロは空を殴り追撃する
ガロ:「よっ…!」
0:レーヴェも空を殴り迎撃
レーヴェ:「ははッ…!よっ、とぉ…ッ!」
0:ガロが蹴る
ガロ:「そぉぉおおれッッ!」
0:が、その足を殴る
レーヴェ:「ぉおおッ!」
0:足が弾かれる
ガロ:「ぐッ…!ッ…!だぁああ!」
0:腹を殴る
レーヴェ:「ぶごォ…ッッ!」
ガロ:「もういっちょ…!!」
0:レーヴェの素早い反撃
レーヴェ:「そぉいッ!」
0:腹を殴られる
ガロ:「ゲボォッ…!!」
レーヴェ:「ドッッしゃああ!」(殴る)
ガロ:「ぶごッ…!こん、の…ッッ!」
0:ガロは急旋回し、空を殴った
ガロ:「どぉおおおおら!!」
レーヴェ:「そぉぉぉおおおれッッ!」
0:拳がぶつかる
ガロ:「ッッ…!ぁぁあ…!」
レーヴェ:「ッッ…!ぉぉお…!」
0:二人、超至近距離超連打
ガロ:「ぉオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッッ!」
レーヴェ:「ぉぉオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッッ!」
0:僅かの溜め
ガロ:「ぉぉぉぉおおおおおラッッ!!」
レーヴェ:「そぉぉおおおおおらッッ!!」
0:最後に強く拳がぶつかる
ガロ:「ぐぅああッ…!」
レーヴェ:「ぉがァア…!」
0:拳から血が吹き出す
レーヴェ:「ッッはは…!限界近いかぁ!!ガロゥ!」
0:殴るが止める
ガロ:「ッとぉ…!ジリ貧はお互い様だろ、レーヴェ!!」
0:蹴るが止める
レーヴェ:「ッたぁ!はは、そりゃそうだァ…!」
0:再び超連打
ガロ:「ぉぉぉおオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッッ!」
レーヴェ:「ぉぉおおオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッッ!」
ガロ:「FURU・BURSTッッ!!」
0:大きく殴るが、緊急回避
レーヴェ:「Shift・BURST…!」
ガロ:「くそ…!」
レーヴェ:「はは…!あっぶねえな…!」
0:追撃
ガロ:「Shift・BUR(バーーー
レーヴェ:「ぉおおおおおラッッ!」
0:殴られる
ガロ:「ぶごォッ…!」
レーヴェ:「はは!いいの入ったなァ!そのままァ、ぶッッ飛べ!!!」
0:拳を振り抜く
ガロ:「ぶゥぉおおおああああッ!」
0:ガロは吹っ飛び、方舟を貫く
ガロ:「がががッ…!がは…っ!」
0:500mを速攻移動し、ガロに追いつく
レーヴェ:「よお…!まだ終わってねえだろ、逃げんなよ…!」
0:頭を掴む
ガロ:「んがッ…!」
レーヴェ:「よっこら、せいッッ!」
0:膝蹴りを入れるが、止める
ガロ:「ぅうお…!やったな…っ。こんにゃろ…!」
レーヴェ:「はは、まじか…!」
ガロ:「ぉぉおおおおおらッッ!」
0:顔を殴る
レーヴェ:「ごぶェッ!」
ガロ:「まだまだまだまだまだッッ!」
0:連打
レーヴェ:「がは…ッ!」
ガロ:「そぉおおおおおれッッ!」
0:殴り飛ばす
レーヴェ:「ごぶぅぅぅああああッ!?」
0:レーヴェも船を貫き、吹っ飛ぶ
レーヴェ:「ぶごごごッ…!ごはッ…!」
0:500mを速攻移動し、レーヴェに追いつく
ガロ:「よお…っ!逃げんなって言ったの誰だよ…!」
レーヴェ:「ナマいいやがって…!」
ガロ:「そぉおおおらッ!」
レーヴェ:「ぉおおおおらッッ!」
0:右拳がぶつかり合う
ガロ:「どぉぉおおっせい!」
レーヴェ:「だぁああああッ!」
0:左拳もぶつかり合い、そのまま押し合い
ガロ:「ッッぅぅぅおおおおおおおお!!」
レーヴェ:「ッッぅぅぅおおおおおおおお!!」
0:二人はそのまま地面に墜落するが、ガロ優勢
ガロ:「だぁぁぁああ…ッッ!」
レーヴェ:「ッははは…!冒険は楽しいか、ガロ!!」
ガロ:「ああ…!レーヴェが魅了される理由がよく分かる…!!」
レーヴェ:「そりゃ何よりでェッ!!」
0:レーヴェはガロを蹴りあげた
ガロ:「ごぼォ…ッ!!」
0:レーヴェはガロの頭を掴み、上空へ飛んだ
レーヴェ:「Shift・BURSTッッ!」
ガロ:「ぉぉおおおお!?」
0:二人は雲を突き抜ける
レーヴェ:「どうだガロ!!雲の上だ!!見た事あるか!俺はある!」
ガロ:「ああ!俺は、ない…!めちゃくちゃ綺麗だ…っ!」
0:ガロはレーヴェの脇腹を殴った
レーヴェ:「ごぶッ…!」
ガロ:「っとぉ…!」
レーヴェ:「ッだぁ…!」
0:二人は姿勢を保ったまま重力に従い落下している
ガロ:「はあ…はあ…っ。」
レーヴェ:「はあ…はぁ…。」
ガロ:「…っだっははははは!」
レーヴェ:「だっはははははは!」
ガロ:「見ろよレーヴェ!街も、人も、全部。こんなにちっせえ…!鳥みてえに、空まで来た…!」
レーヴェ:「しがらみのない自由は最高だろ」
ガロ:「ああ。でも。繋がりは大事だ。」
レーヴェ:「はは、それも分かる」
ガロ:「ああ、俺もレーヴェの言い分は分かる。」
0:二人は構えた
ガロ:「ありがとな。レーヴェ」
レーヴェ:「なんの礼だよ。」
ガロ:「レーヴェが居なかったら、きっとあのまま、狭い島の中で死んでいくだけだった。」
レーヴェ:「ああ。だろうな。」
ガロ:「レーヴェが俺を外に連れ出してくれた。色んな話を聞かせてくれた。そんで今の俺がある。今の仲間がいる。」
レーヴェ:「ははは、俺がしたくてやった事だ。知ったこっちゃねえ」
ガロ:「…。レーヴェはあの時から、本当に。何も変わらない。馬鹿で、向こう見ずで、自分勝手で。誰より自由な俺の兄貴だ。だから、いつかこうやって衝突するのは、あの約束した時から決まってたんだと思う。」
レーヴェ:「忘れてた奴がよく言うぜ」
ガロ:「だから。約束を忘れずに居てくれて。あの時。俺に冒険譚をくれて。ありがとう。」
レーヴェ:「…」
ガロ:「でも。レーヴェはやっぱり。自分勝手過ぎるから。ぶっ飛ばすよ」
レーヴェ:「そうそう。そんな小難しい話じゃねえ。互いに気に食わねえものがあるからぶっ飛ばす。ただそんだけなんだよなあ。」
ガロ:「あの時は、俺が弱かったから叶わなかった。仲間も、何もかも。俺の周りにあるものは、何も失わない…!その為に俺の力がある…!誰にも邪魔させねえ」
レーヴェ:「おう。」
ガロ:「俺達は、誰よりも自由だからだ…!」
レーヴェ:「ーーーグランが作る世界の果てを見る。」
ガロ:「仲間達と、もっと、皆が楽しい景色を見る。」
レーヴェ:「その世界にゃあ興味がねえ」
ガロ:「おれも無い。だから」
0:二人は同時に口を開いた
レーヴェ:「止めてみろよ!!」
ガロ:「進んでやるよ…!!」
レーヴェ:(M)これだから、やめらんねえ…!
0:二人は拳を力強く握った
ガロ:「GRID・BORROWッッ…!」
レーヴェ:「Steins・BORROWッッ!」
0:雲が歪む
ガロ:「FURUッッ!」
レーヴェ:「FURULimitッッ!」
0:同時に拳が放たれた
ガロ:「バァァァストォォオオオオッッ!!!」
レーヴェ:「バァァァァストォォオオッ!!!」
0:大爆発が上空で起こり、雲を吹き飛ぶ
0:ノアの方舟 甲板
ヴァン:「うぉおっとぉ…!?」
フェリス:「うわわわわっ!?」
モルポ:「ぎぃぃやぁああああっ!」
ヴァン:「勘弁しろやマジで…!」
モルポ:「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!」
フェリス:「guardian耐えられるか…!!?船ごと沈んだら流石にきついぞ…!」
ジャイロ:(M)体感にして、40秒。実際の時間はもっと短かっただろう。体験したことの無い衝撃に身を投げ打たれた。
カラス:(M)あれを見た誰もが、同じ感想を覚えるだろう。「核兵器でも見た気分だ」と。
ジャイロ:「…ナマクラ」
カラス:「…ああ。地響きも止んだ。決着が着いたらしい。」
ジャイロ:「…。」
カラス:「…。」
モルポ:「おいお前ら…!何そんなにしんみりしてんだよ…!いきなり静かになるしよ…!これガロンドール死んでねえだろうな…!?」
フェリス:「ちょちょい、滅多のこと言うもんじゃないよ…っ。」
ジャイロ:「死んでねえよ。アイツは」
カラス:「殺したって死なねえからな。」
ヴァン:「…おい?なんかまた降ってくるぞ?」
フェリス:「ん。んーー。おーー。ほんとだ…!」
モルポ:「ガロンドールか…!?」
カラス:「…アロハ」
ジャイロ:「…ああ。」
モルポ:「やべえ、落ちてくる…!落ちてくる落ちてくるって…!!」
フェリス:「えーっと!?どうすればいいの!?」
ヴァン:「知るか!空から女の子が降ってくる例しか知らん!」
モルポ:「言ってる場合かっ!」
0:人影が二つ方舟に落ちる
モルポ:「うひぃ!!」
フェリス:「っ…!落ちてきた、けど…」
0:辺りは砂煙が充満している
ヴァン:「おい、ガロンドール…!生きてるか!」
レーヴェ:(M)初めて。誰かと、何かを賭けた戦いをした。
モルポ:「ガロンドール!!返事しろー!」
レーヴェ:(M)俺は空っぽだから強いって。あいつはそう言ったのに
フェリス:「ガローっ!頼む!頼む頼む!」
カラス:「…っ。」
ジャイロ:「ガロ…っ。」
0:砂煙から人が出てくる
カラス:「…っ!」
ガロ:「…っ。はあ、はぁ…っ!」
レーヴェ:(M)____あいつ。やっぱりヤブ医者だ。
0:ガロは拳を握った
ガロ:「ーーーーーしゃあッッ…!」
モルポ:「ぉ…ぉおぉ…」
ジャイロ:「ガ…っ。」
0:全員が同時に喋った
ジャイロ:「がろぉぉおおっ!」
カラス:「ガロ…!」
モルポ:「がろんどーーーーるぅうっ。」
フェリス:「がろぉおっ。」
ヴァン:「ははは。こりゃたまげた…」
ガロ:「は、はは。。」
0:ガロはピースサインをした
ガロ:「俺らの勝ちっ。」
ジャイロ:「ったくお前はぁ…!つくづく期待を裏切らない男だぜ…!」
モルポ:「よくやったぁあっ!感動したっっ!」
フェリス:「いや、もう、本当に、今回ばっかりはもう駄目かと思った…!」
ガロ:「いや、フェリスが皆を守ってくれてたからだ、ありがとなっ。」
フェリス:「私のことはもうどうでもいいよぉぉっ。」
ヴァン:「本当にあんな怪物に勝っちまうとはナ…。流石にマジビビりまくりだわ」
カラス:「ガロ!」
ガロ:「お…?」
0:カラスは手を向けている
ジャイロ:「…はは。好きな、それ。」
0:ジャイロも手を向けた
ガロ:「…ひひひ。おう…!」
0:三人はハイタッチした
ジャイロ:「リベンジマッチ達成だな…!」
カラス:「よく帰った。ガロ…!」
ガロ:「だっは、はは…っ。おう…っ。ただい、ま…」
0:ガロはその場に崩れるが、カラスが支える
カラス:「っとぉ。流石に堪えたか」
ガロ:「は、はは。んだ、正直、今すぐにでも倒れたいくらいだ」
フェリス:「そりゃそうだよ…あんな規模で戦ってちゃあ…アメコミかと思ったもんね…。ナンバーズクラスってのは伊達じゃないや」
モルポ:「いやあ〜ね。俺はね。分かってたよ。ギルド試験の日から、お前はいつか大物になるって」
ヴァン:「よく言うワ」
ガロ:「どう、だろうな。もうあんな戦い方できる自信ねえけど。取り敢えず今回勝てたから良し、だ…!」
フェリス:「うんうん。あるよね、その時ゾーンに入ったみたいな。うんうん。私もさっきそうだった。二度とできる気がしない」
カラス:「なんだ、もう出来ないのか」
フェリス:「うーん。分かんない。二人の回復自体が全部勘でやった事で、たまったま上手くいったけど。安定して使えるかはちゃんと試さないと分からないかな。」
ヴァン:「ンマー、他人の体に影響を与える異常性は、脳への干渉が一番ネックだからな。モデルケースもすくねえし、そう易々と使っていいもんでもねえだろ。」
ジャイロ:「マジか…どうする、ガロ。お前は一旦下降りててもいいが」
ガロ:「嫌だ。ノエルのとこ、行くぞ」
カラス:「手当くらいはしたかったが。お前それ、ほっとけば確実に死ぬぞ」
ガロ:「今ノエルの所に行けないなら死んだ方がマシだね」
カラス:「はは、そういうだろうと思った」
0:カラスはガロを担いだ
カラス:「それじゃあ。向かうか」
ヴァン:「だな。向こうさんはノエルが何とかしてくれてると信じたいが…」
フェリス:「あの黒いモヤの中身がどんなか分かったもんじゃないしね。いや、到着したら終わってましたが一番いいんだけども」
カラス:「そんな悠長なこと言ってらんねえだろ。」
ヴァン:「ああ、そういやあいつ。レーヴェンシュタインはどうすんだ。多分死んではいねえだろ、あれ。」
カラス:「ああ。気を失ってるだけだろうな。」
ヴァン:「ンマー、こりゃ流石に判断を委ねる。殺すか?」
ガロ:「殺さない。」
ヴァン:「即答。けど、それがいいって言うならそうするさ。結果は勝ったやつが押し付けるものだからな。カラス」
カラス:「なんで俺を見る。」
ヴァン:「お前が言ってたんじゃん」
ジャイロ:「言ってる場合か、時間も惜しい。行くぞ、お前ら!」
カラス:「おう。いよいよ、本当に最後だな」
ヴァン:「ああ。ラスボス前が一番きついってこれまじ」
フェリス:「ホントだよ。ほれ、モルポも。行くよ」
モルポ:「うぉぉ。いよいよ最後か…っ。マジ長かった…っ。」
ジャイロ:「…頼むから無事で居てくれよ、お嬢…!」
ガロ:(M)…。
0:ガロは気絶したレーヴェを見ている
ガロ:(M)まだ、グランシオラをぶっ飛ばしてねえ。助けなきゃいけない仲間もいる。俺が見たい景色は、もうちょっと先にあるんだ。
レーヴェ:「…」
ガロ:(M)お前に勝ったからには。お前の分も、ちゃんと勝ちたい。勝ち取りたい。だからーーー
ガロ:「ーーー行ってくるよ。レーヴェ」
:
0:全員が船内へ向かった
:
レーヴェ:「……あーーー…畜生。」
0:レーヴェは空を眺めている
レーヴェ:「勝ちたかったなあ。悔しい。」
0:空は黒く染まっている
レーヴェ:「…でも。楽しかったあ。」
0:夜空
レーヴェ:「……行ってこい、ガロ。」




