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異能力者達の夜明け  作者: ゆーろ
冒険者達の午後
2/28

『冒険者達の午後』序×1

0:冒険者達の午後 序×1


ーーーーー「上陸」ーーーーー



0:登場キャラ


ガロ:男。ガロンドール・ウォンバット。冒険家


ジャイロ:男。ジャイロ・バニングス。賞金稼ぎ


ノエル:女。ノエル・ベルメット。A級ギルド所属。元探偵。「店員」を兼役


アスカ:男。ユノランページ・アスカ。中央政府監察局準一等監察官。「男」を兼役


ガーフィール:女。メルトリィ・ガーフィール。中央政府執行部。「女」を兼役



ジャイロ:(M)人類の原罪は、林檎を食べた事だと言う。


ガロ:「おお。」


ジャイロ:(M)この世は腐っていると、彼は言った。


ガロ:「おおおおっ…。」


ジャイロ:(M)だから、どうやら彼らは。世界にナイフを突き立てたらしい


ガロ:「おおおおおおおおおおっ!!」


ジャイロ:(M)それは。感情であり、人間性である。


ガロ:「来たなぁーーーっ。フランスっ!りべーるぅぅううっ!」


ジャイロ:(M)端的に言うのなら、それが林檎だった。


0:『冒険者達の午後』


0:フランス リベール市


0:賑やかな街の真ん中で大きく息を吸うガロ


女:「よってらっしゃいーっ。リベール特産のブリューゲルだよっ。今ならお買い得だっ。」


男:「はいはーい、どいたどいたーっ。」


女:「ちょっと、そんな急いで道渡らんでおくれよ」


男:「うるせーっ。」


ガロ:「はぁー。賑やかな街だ。見渡す限り、人。人。人。肉の匂い、ガソリン臭い道路っ。いやぁーーっ。いい街だっ。」


男:「おーい。そこの兄ちゃん。道のど真ん中で突っ立ってんじゃねえぞー」


ガロ:「おお、わりぃわりぃ。」


男:「ったく。チンたらしてんじゃねえよ」


ガロ:「あ、おい。あんた」


男:「なんだよ。おれぁ忙しいんだ」


ガロ:「なぁにそんな大荷物抱えてイソイソしてんだ」


男:「あぁ!?この荷物はグランシャリノ商会の…。って、そりゃあ今はいいんだよ。で、なんだ?用があんならさっさと言いな」


ガロ:「おう、ギルド本部ってのは、どっちに行けばあるんだ?」


男:「なんだ、あんたギルドの人かっ。そうならそうと言ってくれりゃあ…」


ガロ:「いやいや、まだだよ。今からなるんだ。」


男:「なるってーと…。宛があんのかい?」


ガロ:「宛だぁ?」


男:「ああ。入るギルドは決めてんのかよ。推薦状とかよぉっ。」


ガロ:「ねーよ。そんなもん。ギルドメンバーにさえなっちまえば入国審査も楽になるってんで、免許?っての取りに来たんだ」


男:「なんだ、商売目的のギルド希望者かよ。しっしっ。」


ガロ:「ちげーよぉ。商売できるほど頭良くないしな、おれ」


男:「じゃあなにが目的でギルドに用があるってんだ」


ガロ:「俺、冒険家なんだ。」


0:場面転換


0:同時刻


0:フランス リベール市 裏路地


ジャイロ:(M)1991年。1月11日


ノエル:「はぁ…っ!はぁ…!」


ジャイロ:(M)ここは、世界一貿易が盛んな街。フランス。リベール市。


0:裏路地を走る女


ノエル:「はっ…はぁ…っ。はぁ…っ。」


ジャイロ:(M)異国の文化を積極的に取り入れ、様々な発展を遂げたリベールだが。中でも最も有名なのは。大陸支援団体。通称、ギルドの総本山である事


ノエル:「くそっ…。まだ追ってくる…っ。鬱陶しいなぁ…っ。」


ジャイロ:(M)この街では、日々様々なものが群雄割拠している。


ノエル:「はぁ…っ。はぁ…っ!…一旦、引くしか無いか…っ。あー、もう…!折角しっぽを掴んだと思ったのに…っ。」


ジャイロ:(M)今日もまた、とある人は苦悩し、とある人は喜び、とある人は人を助け、はたまた人を陥れる。人間達の物語が、この世界には無数にある。


ノエル:「くそくそっ…!いつか絶対、ケツの穴にグルメスパイザーぶち込んでやるからな…っ!グランシャリノぉ…っ!」


0:場面転換


0:フランス リベール ギルド本部


0:困り果てる受付嬢と、胡散臭いアロハシャツの男


ジャイロ:(M)時間は少し遡る。そして俺もまた、悩める子羊の一人だ。


女:「あのぉ…。」


ジャイロ:「だーからぁ。俺ァもう言ったよな?二回も、なぁ?このギルド支部で手配されてる異常体の情報をよこせって言ったんだよ。これでもう3回目だがぁ」


女:「ですので、ギルド支部ではギルドメンバーにのみ、中央政府からの執行手配者の情報開示が認められていますと、先程も…」


ジャイロ:「前までは無所属のニートでも手配書くばられてたぜ、おい」


女:「先月より中央より委託条件が変更しまして…。」


ジャイロ:「じゃあ街中で貼り付けてある手配書の連中を引っ張ってくりゃあ言い訳だな、チリンチリン」


女:「それは、大変有難いのですが…」


ジャイロ:「はい。で、す、がぁ???」


女:「その場合は、完全ボランティアという扱いになるので、手配金の贈与は行われない手筈となります。」


ジャイロ:「ふざけんじゃあねえよぉ〜っ!じゃあ俺はどうすりゃあいいんだァ!?食いっぱぐれて死ねってのかぁ〜〜??」


女:「ギルドへの加盟を推奨します」


ジャイロ:「いつもてめぇらはそう言うが、ツテも宛も資格もない、俺みたいなボンクラを拾うところでもあるってかぁ?そもそも加盟って面倒くさい手続きだらけじゃねえのかよ。えぇ?」


女:「新規加盟の場合ですと、まずギルド試験を受けて頂く必要があります。」


ジャイロ:「おぉ。そんで。その後だよ。」


女:「…。まずは正規ギルドでなく、準ギルドに加盟した後、功績を残した方に、正式なギルドメンバーとしての資格が与えられます」


ジャイロ:「ほらなァ〜っ!くそめんどくせぇっ。大陸支援団体だなんだと言いながら、結局どっかの大型ギルドがお山の大将気取って仕切ってんだろぉ!?えぇ!?」


女:「私の方でそう言われましても…」


ジャイロ:「かァァ。嫌いだねえ、権威とか、派閥とか、そういうのぉー。嫌いだねえ。俺は。」


女:「左様でございますか…。でしたら、部外者の方はお引き取り願います…」


ジャイロ:「かぁ〜〜っ!世間は冷たくていけねえ。いけねえよお。」


女:「あの、これ以上しつこくされるようでしたら警備員を呼びますが」


ジャイロ:「いけねえ、いけねえよ嬢ちゃん。手荒な真似はスマートじゃなくていけねえ。」


女:「お引き取り願います」


ジャイロ:「わかったよぉ、そんなチンピラを見る目で俺を見るな。傷ついちまう。名誉が」


女:「お引き取り願います!!」


0:ギルドの外


ジャイロ:(M)紹介が送れたが、俺はジャイロ・バンニングス。しがない「賞金稼ぎ」をやっている。だが、さっき見てもらった通り、俺の食いぶちはたった今破綻した。これからどうやって生活するか。俺の今後の人生においていちばん重要なのは、今日の晩飯だ。


0:財布の中身を確認している


ジャイロ:「ひぃ、ふぅ、みぃ…。ヨォ…」


0:凹


ジャイロ:(M)所持金。23フラン。食パンが一斤と、ビールが3本。煙草が4箱。イチゴジャムひと瓶。1ヶ月生活する目測はギリギリ経つが、これからどうしたもんかぁなぁ…


男:「それじゃあ、俺はこの辺で」


ガロ:「ありがとなぁーおっさん!わざわざ丁寧にっ!」


男:「おう。あんたらギルドあっての俺らだっ。これからの活躍に期待してるぞーっ。」


ガロ:「任せとけーーーーっ!」


ジャイロ:(M)なんだァァ?この田舎っぺ。声でけぇな。声がな


ガロ:「ぉおぉ…っ。」


0:ガロはギルド本部の建物を輝く目で眺めている


ガロ:「でけーっ!建物、たけーっ!よし、さっそく…っ!」


ジャイロ:(M)おいおい、田舎っぺの癖にギルドメンバーかよ。アイツ殺して加盟証奪っちまうかぁ?


0:扉が勢いよく開く


ガロ:「俺はガロンドール・ウォンバットっっ!ギルドの資格を取りに来たっっ!」


0:ギルド内が静寂になる


ジャイロ:(M)うわ。田舎っぺのど素人の変なやつだ。興味ねえ。さて、金目のものでも探してくるか


女:「あのぉ…。受付はこちらですぅ…」


ガロ:「おっ、そっちかっ。」


0:ズカズカと歩いている


女:「今日は変な人が多いなぁ…」


ガロ:「ん?なんか言ったか?」


女:「いえ、こほん。それで、本日はどのような目的でギルドへ?」


ガロ:「ああ。さっきも言ったけど。ギルドの加盟証ってのが欲しいんだよ。」


女:「加盟証ですか、念の為お聞きしますが、紛失などによる再発行、などでは無く、ですか?」


ガロ:「おう。まだギルドに入ってねえ。」


女:「左様でございますか。新規加盟希望の方でしたら、まずギルド試験を受けて頂く必要があります。」


ガロ:「試験があんのか…。」


女:「はい。その後、準ギルドに加盟し、その後、正規ギルドを設立、若しくは加入の何れかで、正式な加盟証を発行できます」


ガロ:「おいおい待て待て、分かんねえぞ。なんだ準ギルドって」


女:「こちらに資料がありますので、こちらをご覧になって、説明を聞いてください」


ガロ:「おう。うわっ、字ちっせーなぁ」


女:「まず、ギルドには2種類ございます。」


ガロ:「この、正規ギルドと、準ギルドってやつな。さっき言ってた」


女:「はい。準ギルドは、個人でも、チームを組んで頂いても、既にある準ギルドに加盟いただいても構いません。準ギルドの方々は各自治体に置ける支援活動を行い、実績を残して頂く。そういうギルド見習いの総称を「準ギルド」と呼びます」


ガロ:「はぁー。なるほど。で、支援内容ってなんだよ」


女:「各国のギルド支部に、周辺住民から依頼が毎日の様に飛んできます。依頼内容は様々で、迷子犬の捜索、老人介護から、要人の護衛など、多岐にわたります」


ガロ:「んまー、つまるところ便利屋ってことだろ」


女:「その認識で問題ございません。」


ガロ:「で、問題はここだよ。ここ」


0:書類の文言を指さした


ガロ:「準ギルドの活動領域は、"試験を合格した自治体に限る"って。なんだこれ」


女:「はい。こちらは文章のままでして、準ギルドの方々には、試験合格通知を受け渡した自治体で、支援実績を残す必要があります。その自治体にあるギルドから、実績を認められ、初めて正式にギルドの一員になる。というものですね。」


ガロ:「えぇっ。困るよそれ。おれ、色んな国に行くために加盟証が欲しいのに」


女:「でしたら、準ギルドで実績を残していただく他ございませんが…」


ガロ:「嫌だね、俺は冒険家だ。ひとつの地域に長居してられるほど人生長くねえんだよ」


女:「左様でございますか、でしたらギルドへの加盟はお勧めしかねます…」


ガロ:「えぇー。頼むよーっ。そこをなんとかしてくれよぉーっ。」


女:「ギルドの加盟証がなくても、入国審査さえ通れば問題なく入国は出来るはずですが…」


ガロ:「そりゃあ、「外国人が入っても問題ない国」の話だろーよ。戦争中、よからんことを考えてるよーな国には入れねえじゃねえか」


女:「よくお調べですね…」


ガロ:「冒険家だからな」


女:(小さく)「だったらギルドの事も少しは調べとけよ…」


ガロ:「なんか言ったか?」


女:「いえ。確かに、有名所ですと、バグテリア法外特区、ドイツ。この2カ国は入国制限が厳しいものとされていますね。それと、アメリカの一部。中央政府本庁も、ですが。」


ガロ:「そーなんだよ。でも加盟証があれば入れるんだろ?」


女:「はい。中央憲法第8条に記されている通り、如何なる理由があった場合でも、ギルド加盟証を持つ人間の入国規制は設けられないものとする、と言うのが中央政府からの指示ですから。その中央の入庁だけ例外なのが納得いかないところですが」


ガロ:「じゃあやっぱ欲しいよなぁ。冒険家として入国できませんでしたー、ここは空白ですーってんじゃ笑い話にもならねえ。」


女:「如何なさいますか…?」


ガロ:「んー。大体でいいんだけどよ。その、準ギルドから、正式なギルドメンバーになるまで、ざっくりどのくらい期間かかるんだ?」


女:「実例を上げて申し上げますと、速い方で1ヶ月。遅い方ですと、20年間以上準ギルドのまま活動されている方もいます」


ガロ:「ピンキリだなぁ。なんだ、20年って」


女:「準ギルドは準ギルドで、正式なギルドメンバーでは無いからこその特権というものがある様です。準ギルドのギルド名は公には公開されませんからね」


ガロ:「ははぁーん。悪い匂いがするな」


女:「そちらについては、発言は差し控えさせていただきます」


ガロ:「まあ、なんでもいいよ。分かった、それがルールならしゃあねえ。」


女:「では、ギルド試験に申請される、ということでよろしいですか?」


ガロ:「おう。」


女:「ありがとうございます。それでは、こちらの申請書に記入をお願いします。」


ガロ:「わかった。…って、試験って期間があんのかよ」


女:「はい。年に一度だけ、ギルド試験志願者の方々が一同に集う形で開催しております。」


ガロ:「えーっとぉ…。次は…。2ヶ月後ぉ!?」


女:「それでも早い方ですよ、年に1度ですから」


ガロ:「まじかよぉ…。まぁ。しゃあねえか。リベール探索でもするよ」


0:ガロは書類を書き進めている


0:場面転換


0:フランス リベール市 キャニオン街 裏路地


アスカ:「…。ああ。こちらアスカ。聞こえるか」


0:誰かと通話している


アスカ:「分かってる。確かに観測室が言う情報ではリベールであってるんだろ。」


0:深く帽子を被り、コートを身にまとっている男は缶コーヒーを飲み干した


アスカ:「まったく。最近の異常体人口増加率は洒落にならないな。ああ、了解した。後でな」


0:通信を切ると、いそいそと別の番号へ連絡をする


アスカ:「…。お疲れ様です、ビットマン局長。ネロとの連絡が取れました。双方、配置についた上で任務に当たります。…はい、まずはガーフィールの馬鹿を見つけるのが先ですけど…。はは、了解しました。でも局長こそ、あまり溜め込みすぎないで頂きたい。ええ、はい。…はい。」


0:ネクタイきゅっ


アスカ:「中央政府監察局。準一等監察官。ユノランページ・アスカ。フランス。リベール市にて確認された二体の異常体の調査任務を続行。以上、命令を遵守します。」


0:ネクタイきゅきゅっ


アスカ:「…はい。それでは、また後ほど」


0:アスカは携帯を懐にしまった


アスカ:「さ、て。まずはガーフィールとの合流が先だな。あのバカ、どこをほっつき歩いてやがる…っ。」


0:場面転換


0:フランス リベール市 キャニオン駅前


ガロ:「なんとか申請は終わったけど。2ヶ月、どーすっかなぁ。フランス冒険譚は加盟証貰ってから優雅にする予定だったんだが…。」


0:不貞腐れた様子で歩いているガロ


ガロ:「いい匂いだ…。金もねえし。いやまじで、どーすっかなぁ。」


店員:「食い逃げだぁーーっ!」


ガロ:「お?」


ジャイロ:「このバカがっ!食われる方が悪いんだろっ!」


ガロ:「おお。」


店員:「そこの兄ちゃんっ!そいつ止めておくれ!」


ジャイロ:「げっ。あいつ、さっきの田舎っぺ!」


ガロ:「今の俺は腹が減ってるやつの気持ちが分かる」


ジャイロ:「案外話のわかるやつだなっ」


店員:「あいつらグルだよーっ!誰かーっ!あいつら捕まえとくれーっ!」


ガロ:「は?」


ジャイロ:「え?いやぁ、こいつは別に…」


0:脳みそ高速回転


ジャイロ:(M)いやーしばし待てよ。普通に考えてこいつを囮にすりゃあ俺の逃げられる確率は二倍にならんか?二兎追うものは一兎も得ず、ってやつだぁなぁ?悪ぃな田舎っぺ。俺の人生はまだまだ序章なんだ


ガロ:「ちょっと待て、俺は―――」


ジャイロ:「おーいお前!ぼさっとしてんなっ!早く逃げるぞっ!」


ガロ:「はぁ?」


店員:「早く捕まえてーっ!」


女:「なになに?」


男:「食い逃げらしいぞ!捕まえろ!」


女:「嘘でしょ!ここがギルドの総本山だって分かってやってるのっ!」


ガロ:「いや、本当に俺はこいつとは無関係なんだって!」


ジャイロ:「ぼさってとしてんなっ!俺とお前は、死ぬまで同じ鍋で飯食おうって誓い合った仲だろぉん!?お前だけ捕まるだなんて許さないぜ俺はっ」


ガロ:「ふざけんなっ。お前だけ食べたんだろっ」


男:「お前らー!食い逃げ犯を捕まえろっ!」


女:「リベールから出ていけーっ」


店員:「ごみかすかすかすかすーっ!」


0:沢山追いかけてきた


ガロ:「おいおいおい、まじかよ!」


ジャイロ:「だははっ!旅は道連れってやつだ!誰か知らんが、俺の為に犠牲になってくれ」


ガロ:「くそっ、冗談じゃねえ。俺の冒険譚の1ページ目が脱獄からなんてごめんだっ!」


男:「おい!車だせ車!」


女:「みんなー!こっちです!こっち!」


店員:「かすかすかすっ!」


0:二人は逃げた


ジャイロ:「うおおおおおおっ!」


ガロ:「うおおおおおおっ!」


女:「えっ。速っ。」


男:「なんだあいつらっ。人間の足かよっ」


ジャイロ:「なんだお前!意外と動けるんだなっ。」


ガロ:「うるせぇよっ!てめぇ早く捕まれ!」


ジャイロ:「俺は嫌だ!お前が捕まってくれた方が俺の都合がいいし、俺の名誉が傷つかないっ!」


ガロ:「なんだこいつ!!」


店員:「この、かす…!はぁ…っ!か、す…!はぁ…っ!かッ…。はや、なんなの、あいつら…」


女:「とんでもない脚力…。サイみたいだったわね。」


男:「あ…!」


女:「なに、どうしたの?」


男:「おれ、あいつどこかで見たことあると思ってたんだ」


店員:「なんだい、あんたも仲間なのかい」


男:「いや違うけど、あの田舎っぺっぽい方は知らねえけど、アロハシャツの方。あれ、ジャイロ・バニングスだ…!」


店員:「へァッ!?」


女:「ジャイロ…?誰それ」


男:「ここいらじゃ知らない方が珍しいぜ。あいつは、ケチで名高い「異能狩り」だよ…!!」


0:場面転換


0:リベール市 どこかの路地


0:フラフラになりながらも走っている2人


ガロ:「はあ…っ!はあ…っ!」


ジャイロ:「…はっ…!はっ…!おえっ…!」


ガロ:「おまっ…!はやっ…!あいつらにっ…!謝って…!おえっ!」


ジャイロ:「うるせっ…!お前が…っ!づがまれっ…!」


ガロ:「ふざけっ…!な…ッ!おえええっ」


ジャイロ:(M)なんなんだよ、途中で振り切れると思ったのに、なんなんだこいつ、囮にするどころか、これじゃあ仲良くリベールマラソンツアーじゃねえか…っ


0:二人は倒れた


ガロ:「おえっ!おえええっ!」


ジャイロ:「おえええっ!ぼえっ!ヴぉえっ!」


ガロ:「はぁ…っはぁ…っ…。もう、走れ、ない…。走ら、ない…」


ジャイロ:「はぁ…っ。はぁ…っ。」


ガロ:「…ぷッ…!だはははっ!」


ジャイロ:「…。なんだ、頭、おかしくなったか…。酸欠でぇ…」


ガロ:「いやぁーーっ。こういうトラブルとか、アクシデントがあるから、冒険とか旅ってのは、やめらんねえな」


ジャイロ:「…?」


ガロ:「お前のせいで全力疾走させられたし、汗びっしょりだし、疲れたし。でも、汗が風でひんやりしてくる感覚も、走り終わって太ももが震えてる感覚も、薄暗い部屋に居ちゃあ、体験できないもんだぁ。」


ジャイロ:(M)俺は思った。素でおかしいんだな、と。


ガロ:「で、お前。なんで食い逃げなんてしたんだよ。見た感じそこまで貧乏ってわけでもねーだろ」


ジャイロ:「訳あって職を失っちまってな。所持金はここぞ、という時に使うと決めてんだ」


ガロ:「だははっ。あのタイミングはここぞっ。とこじゃなかったと」


ジャイロ:「そーだ。あの飯屋、振る舞いだけは一丁前のくせしやがるのにくそ不味いし麺は伸びてるし、何より店員がブスだ。」


ガロ:「だははははっ!お前面白いなぁー」


ジャイロ:「だから俺は言ったんだぜ?店に入る前に、ここの飯が不味かったら、俺は消えちまう。って」


ガロ:「だひゃひゃひゃっ!消えてるっ!確かに確かにっ!消えてるわっ!店内からっ!」


ジャイロ:「だろーぅ?ちゃぁんと筋の通した話をしてるにも関わらず、あのブス。俺を食い逃げ呼ばわりしやがって。傷ついちまうぜ、名誉が」


ガロ:「あぁー、因みに、職失ったって言ってたけど、なにやってたんだ?かなり運動神経いいし、やっぱあれか、大工とか」


ジャイロ:「おー。聞いちまうかぁ〜?この俺の話を〜?」


ガロ:「いや、別に嫌ならいい」


ジャイロ:「聞いて驚け田舎っぺ!俺は、かの有名な「賞金稼ぎ」。ついたあだ名は、「異能狩り」ッ。その男の名を…!ジャイロ・バニングスだっ!」


ガロ:「しょ。」


ジャイロ:「しょ」


ガロ:「賞金稼ぎィーー!?」


ジャイロ:「そーだっ!やべーだろっ!」


ガロ:「なんなんだ、それは」


ジャイロ:「…。まあ、お前みたいな田舎っぺにゃあ理解が及ばないのも想定の範囲内だ。」


0:ジャイロは座り込んだ


ジャイロ:「俺は中央から指名手配されている異常体を捕らえて、中央に身柄を売っぱらってんだよ。」


ガロ:「中央から金ふんだくってんのか!?」


ジャイロ:「言い方が悪ぃな。傷ついちまうぜ。名誉。ちゃんと手配料金に則って報酬を頂戴してんだ。ギルドを通してな」


ガロ:「ああ、たしかに。ギルドに沢山指名手配書があった!あれか!」


ジャイロ:「そう、あれだっ。それなのにギルドのやつら、今までの俺の実績を忘れて、手配金を配らないだのなんだの…」


ガロ:「ってことはお前!ギルドメンバーなのかっ!」


ジャイロ:「いいや違うっ!俺は完全孤立の一匹狼ッ。誰にも従わず、誰にも隷属せず、誰にも縛られない、それが俺だ」


ガロ:「なぁんだよー。俺、ギルドに入りてえんだ。お前がギルドメンバーならなんかいい事あるかと思ったのに」


ジャイロ:「やめとけやめとけ、ギルドなんてな、大陸支援団体なんて大層な名前が付いちゃあいるが、その実、覇権を握る大型ギルドが好き勝手やってるってもっぱら噂だ。」


ガロ:「そうなのか。」


ジャイロ:「そうだ。どれも表に悪評は出てこねえが、裏の世界を生きてきた俺にはそういう表に出ない「死んだ情報」ってのが回ってくるもんだ」


ガロ:「おおおっ。かっけーなっ。その言い回しっ。無駄になっ。」


ジャイロ:「そうだろう。男に生まれたなら、カッコつけて生きなきゃしょうがねえ。そうだろ?」


ガロ:「いや、そりゃ好きにすりゃあいいんじゃねえか」


ジャイロ:「ギリギリで話が合わねえな。だがまあ、ギルドだの中央だの色々めんどくせえのよ」


ガロ:「へけ。本当に世界には色々あんだな。広いな、世界」


ジャイロ:「そうだろそうだろ。お前もギルドに入りたいってんだったら、今後色々見聞きするだろ。楽しみにしときな」


ガロ:「…よしっ。決めた!」


ジャイロ:「お?何をだ」


ガロ:「ジャイロ。お前、俺と一緒に旅しよう」


ジャイロ:「…あ?」


ガロ:「名乗りが遅れたが、俺の名前は」


0:ガロは立ち上がった


ガロ:「ガロンドール・ウォンバット。冒険家だ。」


ジャイロ:「このご時世に冒険家、ねえ。」


ガロ:「ああ。この世に産まれたからには、この世の全部を知りたい!この世界を自分の目で見て、体感する。そんで、いつかその全部を、この日記に書き記すんだ!」


0:ガロは分厚い手帳を見せびらかした


ガロ:「冒険には仲間が付き物だろっ。だからお前、仲間になれ」


ジャイロ:「はは。面白れえ。」


ガロ:「だろ!じゃあ…」


ジャイロ:「だが、俺向きじゃあねえなぁ。俺は冒険にロマンを感じられるほど綺麗じゃねえのよぉ。」


ガロ:「…」


ジャイロ:「誘いはありがてえが、ギルドに入ったらきっと沢山仲間ができるさ。まあ、せいぜい頑張れよ。未来の大冒険家、ガロンドール」


0:立ち去ろうとするジャイロの首根っこを掴んだ


ガロ:「嫌だ!!!」


ジャイロ:「いっ…てぇな!なにすんだよ!」


ガロ:「俺はお前を連れていくと決めた。」


ジャイロ:「何言ってんだよ!今決めたんだろ!」


ガロ:「今だ!」


ジャイロ:「急すぎんだろ!横暴すぎんだろ!離せこのやろう!」


ガロ:「嫌だ!!」


ジャイロ:「あーもう、ったく!」


0:ガロの掴む手を左手で触れた


ジャイロ:「Adsorptionアドソープション


ガロ:「お…?」


0:すぐ様右手でガロの右肩に触れた


ジャイロ:「Refundリファンド…っ!」


ガロ:「いっ…て!」


ジャイロ:「っと。おいたがすぎるぜ、冒険家」


ガロ:(M)っ…!なんだ?何かに捕まれた…!?


ジャイロ:「そんじゃあなぁ〜っ!また縁がありゃあ会おう!」


0:ジャイロは走り去った


ガロ:「あ!おい、待てよ!ジャイローーっ!マジックまで使えるなんて聞いてねえぞーっ!」


0:既にジャイロの姿はない


ガロ:「あいつ!!絶対に逃がさん!!ジャイローーーー!!」


0:ガロも走り去った


0:場面転換


0:キャニオン駅前 飯屋


ガーフィール:「あむあむあむっ。」


店員:「まったく。とんだ災難だったよ。ジャイロかジャイコか知らないけど、さっさとこの街からいなくなって欲しいもんだね。」


0:物凄い勢いで飯を食い荒らす女


ガーフィール:「あむあむあむあむっ」


店員:「ああ、そうだった…。この暴食女もいるんだった…」


ガーフィール:「おう!おあいあん!やっおあえっえいあおあお!」(おう!おかみさん!やっと帰ってきたかよ!)


店員:「なんて言ってるか分かりゃしないよ!」


0:皿を置いた


ガーフィール:「おああい!(おかわり!)」


店員:「もう無いよ!あんたとさっきのボンクラが殆ど食い散らかしちまったからね!」


ガーフィール:「ぇぇぇぇ。」


店員:「さあ、さっさと会計してくんなっ。今日はもう店じまいだよっ。」


ガーフィール:「ごくんっ。わかったよぉ。」


0:席を立った


店員:「えーっと、お会計が…」


ガーフィール:「…。」


店員:「あんた。その顔」


ガーフィール:「いや。違うくて」


店員:「まさか!!金持ってないってんじゃないだろうね!?」


ガーフィール:「いや!?違うんだよおかみさん!ちゃんと払う!払うんだけど!」


店員:「だけど…?」


ガーフィール:「もうちょっと…待って…」


0:首根っこを掴んだ


店員:「あのボンクラに続いてアンタにまで食い逃げられちゃあ大赤字だよっ。来なっ。食い逃げ犯としてギルドに引き渡すよっ。」


ガーフィール:「ぃゃぁぁぁ。」


店員:「ほらっ!さっさと来なっ!」


0:一人の男が慌てた様子で店内に入ってくる


アスカ:「ガーフィール!」


ガーフィール:「あー!アスカさん!どこ行ってたんたよーっ!危うくギルドまで持ってかれちゃうところだったんだぞっ!」


店員:「誰だいあんた」


アスカ:「…。これは、どういう状況だ。ガーフィール。」


ガーフィール:「…あ。…怒ってる…。」


アスカ:「この馬鹿野郎!!」


ガーフィール:「いったーー!アスカさんが殴った!虐待だ!」


アスカ:「うるさい!ご婦人、私の連れがご迷惑をお掛けした様で申し訳ない」


店員:「いいのよ。金さえ払ってくれりゃあね」


0:アスカは乱暴に札束を渡した


アスカ:「こいつは大食らいだからな。これで足りるだろうか」


店員:「ぉお…!足りる、というか、お釣りが返ってくるよ、ちょっと待ってなね」


アスカ:「いいや、迷惑料だと思って頂きたい。」


店員:「あら…。なんだか話のわかるお兄さんね」


アスカ:「あと、領収書だけ切っておいてくれ」


店員:「はいよ、名前は?」


アスカ:「中央政府。監察局二課で」


店員:「はいはい、中央政府、監察局…に…カッ…!あんた!中央政府の人かい!」


アスカ:「ああ、申し訳ないな、公人がこんな醜態を晒して」


0:頬を引っ張っている


ガーフィール:「いででで。いたいよう、アスカさぁん。」


店員:「って言うことは、そこのお嬢ちゃんも中央政府の…?」


アスカ:「執行官だ。」


店員:「ひぃっ!異常体!バグって事かい!?」


アスカ:「っ…」


ガーフィール:「…。」


店員:「…!あ、えっと、ごめんなさいね、つい…。私達に害はないって分かってても…」


アスカ:「いえ。それが当然とも言える世間の目です。甘んじて受け入れますよ。我々は」


ガーフィール:「…。」


アスカ:「…。邪魔したな、行くぞ。ガーフィール」


ガーフィール:「ああ。」


0:場面転換


0:外


アスカ:「…。」


ガーフィール:「…。アスカさん」


アスカ:「なんだ」


ガーフィール:「なんで私よりアスカさんが怒ってるんだよ」


アスカ:「…。腐っても同じ任務を共にするパートナーだからな。バグだなんて蔑称で呼ばれる事に腹が立って何が悪い」


ガーフィール:「それじゃあ、私が怒る気無くしちゃうよぉ」


アスカ:「そうか。じゃあ何よりだな。お前に暴れられちゃあたまらん。」


ガーフィール:「にへへ」


アスカ:「まあ、それはそれとして、だ。」


ガーフィール:「ぁ」


アスカ:「お前。何回も言ってるよな…。単独行動はやめろって。言ったよな…?何回も、何回も何回も、なぁ…?」


ガーフィール:「ごめんよぉ!ごめんよぉ!美味しそうな匂いがしたんだよぉ!ごめんよぉ!」


アスカ:「…。もういい、目標地点は近い。散策を開始する。これ以降は、くれぐれも単独行動はしないように」


ガーフィール:「あい了解!」


アスカ:「よし。俺とガーフィールは常に半径600m圏内に居る状態を保ち、リベール市を散策する。任務内容は知っての通りだが、」


0:書類を開いた


アスカ:「捜索者二名。「異能狩り」ジャイロ・バニングス。の顔写真だ」


ガーフィール:「うん」


アスカ:「そして、こっちは顔写真がなく、名前も不明。異常性も不明の三拍子。」


ガーフィール:「えっ。観測室はなにしてんの」


アスカ:「異例の事態だ。だが、近くで「近代兵器に近しい何か」を目撃したとの情報はあった。異常体の関与があると考えるのが自然だろう」


ガーフィール:「うーん…。うん!わかった!」


アスカ:「よし。異常体容疑人を発見次第作戦開始。ステージ調査、並びに捕獲を命じる。以上、命令を遵守しろ」


ガーフィール:「了解!命令を遵守する!」


0:場面転換


0:フランス リベール市 トルポット街


ガロ:「うおおおおおお!ジャイローーーー!どこ行ったーーーーっ!」


0:全力疾走するガロ


ガロ:「でてこーーーいっ!」


ジャイロ:(M)ここは、世界一貿易が盛んな街。フランス。リベール市。


0:裏路地を走る女


ノエル:「はっ…はぁ…っ。はぁ…っ。」


ジャイロ:(M)異国の文化を積極的に取り入れ、様々な発展を遂げたリベールだが。中でも最も有名なのは。大陸支援団体。通称、ギルドの総本山である事


ノエル:「くそっ…。まだ追ってくる…っ。鬱陶しいなぁ…っ。」


ジャイロ:(M)この街では、日々様々なものが群雄割拠している。


ガロ:「おおおぉおおい!ジャイローーっ!どこ行ったんだよーーっ!」


ジャイロ:(M)正しく、人を成す街


ノエル:「はぁ…っ。はぁ…っ!…一旦、引くしか無いか…っ。あー、もう…!折角しっぽを掴んだと思ったのに…っ。」


ジャイロ:(M)今日もまた、とある人は苦悩し、とある人は喜び、とある人は人を助け、はたまた人を陥れる。人間達の物語が、この世界には無数にある。


ノエル:「くそくそっ…!いつか絶対、ケツの穴にグルメスパイザーぶち込んでやるからな…っ!グランシャリノぉ…っ!」


ガロ:「ジャイローーー!どこにいんだよーー!」


0:曲がり角でガチ恋距離


ノエル:「―――え?」


ガロ:「でてこ…ーーーあ?」


ジャイロ:(M)もちろん、この路地裏にも


0:鈍い音が裏路地に響き、二人はしりもちを着いた


ガロ:「いっ…て」


ノエル:「いったあああああい!」


ガロ:「大きい声出すなよ」


ノエル:「ちょっと!なんでいきなり出てくんだよ!てゆーか誰だお前っ!グランシャリノの追ってかっ!」


ガロ:「あー?グラタンノッポ?」


ノエル:「違うなこれ多分!くそっ、どーしてくれんだこれ!絶対たんこぶになる!」


ガロ:「知らねえよ。俺だって痛かった」


ノエル:「むきーっ!女の子だから!痛みに弱いの!」


ガロ:「分かったから、どけよ。おれ人探してんだ」


ノエル:「むきむききーーっ!ぶつかっておいてごめんの一つも無いのか!」


ガロ:「なんだようるせえな、お前だってぶつかっただろ。」


ノエル:「わかってるよ!!でも!なんで!ひ弱な!私から!謝らなきゃいけないんだ!!」


ガロ:「はいはい、悪かった悪かった。これでいいか。俺急いでんだよ」


ノエル:「急いでるって…!そっち行くなお前!」


ガロ:「あ?なんでだよ!」


ノエル:「親切で言ってやってんだよっ!」


ガロ:「はぁ!?」


ノエル:「そっちは……っ。〜〜もう!いいから、こっち来い!!」


ガロ:「おい!なにすんだよ!」


ノエル:「いいから来い!」


0:場面転換


0:キャリオン街 空き地


ジャイロ:「よっこらせっ!着地ぃ。」


0:ジャイロは服の砂埃を祓った


ジャイロ:「ったく。やっと巻いたか。とんだ方向音痴だなあいつ」


アスカ:「へえ。気になるな。」


ジャイロ:「…」


アスカ:「誰を巻いたって?」


ジャイロ:「おいおい、今日はやけに新しい出会いが多いな。転機か?」


0:ジャイロはアスカから距離をとった


ジャイロ:「で。誰だお前」


アスカ:「中央政府監察局。ユノランページ・アスカだ。無駄話は好きじゃない。「異能狩り」だな。」


ジャイロ:(M)中央…。いい加減目ェ付けられるとは思っていたが。来ちまったかぁ、この日が。もうリベールにゃあ居られねえか。まあ、賞金稼ぎも廃業、ここいらが潮時か


0:ジャイロは警戒を解かないまま歩み寄った


ジャイロ:「…。こりゃあ、お初に。中央政府の人に話しかけられるなんざ光栄だ。」


アスカ:「無駄話は好きじゃないと言ったぞ、俺は。」


ジャイロ:「生憎だが、人違いのようだ。「異能狩り」はここいらでも随分と有名だからな。同姓同名、顔も瓜二つの俺はよく間違われるんだよ」


アスカ:「そうか。それは災難だな」


ジャイロ:「ああ、全くだよ。だから―――」


0:ジャイロはシャツの内ポケットからナイフを取り出した


ジャイロ:「見逃してくれよなァーーッ!」


アスカ:「同姓同名に、顔も同じで、身体能力まで「異能狩り」と同等と来たら―――」


0:アスカはジャイロの後ろに回った


アスカ:「そういう異常性だ、という認識になるしかないな。」


ジャイロ:(M)後ろに…!?こいつ、人間の身体能力じゃねえだろぉ…っ!


アスカ:(M)対・異常体執行術。無手勝流編。その一


ジャイロ:「この、ハンサムくんがよぉぉっ!」


アスカ:(M)相手が異常性を使う前に。


ジャイロ:「Adsorpti(アドソープシ――

アスカ:(M)叩く…っ。

0:ジャイロは地面に叩きつけられた

ジャイロ:「ごぼっはぁ…っ!!」


アスカ:「…。「異能狩り」ジャイロ・バニングス。異常性の使用意志を確認。公務執行妨害とし、穏便な捕縛は不可能と判断する。」


ジャイロ:(M)いでぇ…!骨盤が歪んじまう…!下手な異常体より凶悪!俺の異常性との相性も最悪…っ!


アスカ:「…以上、第一監察報告を終わる」


ジャイロ:(M)だが、まあ。幾度とあった「試練」だよ、なぁァ。ジャイロ・バニングスぅ…っ!だがしかし、今回ばかりは


0:アスカは手袋をはめた


アスカ:「さて。」


ジャイロ:「ちっ…!面倒なのに捕まっちまったァ…!」


アスカ:「ユノランページ・アスカ。只今より。執行任務を開始する。」


ジャイロ:「勝てると思うかよぉ…!人間がァ…!異常体にィ…!!」


アスカ:「そうでなくちゃあ、"中央政府"は名乗れないだろう。」


0:場面転換


0:リベール市 河原


ノエル:「だから!お前本当に危なかったんだぞっ!」


ガロ:「お前って言うな!」


ノエル:「ああ、ごめん…。いやでも!本当に世間知らずもいいところだ君は!」


ガロ:「おう。なんか…。すまん。まさかあの先が悪党のアジトだなんて思わなくてよ」


ノエル:「ったく。」


ガロ:「でもよ。ちょっとワクワクしちまうよなっ。アジトとかなっ。そう思わねえ?」


ノエル:「思わない!」


ガロ:「そうかぁー。」


ノエル:「はぁー。本当にムカつく、おでこ痛いし」


ガロ:「だから謝ってんじゃんよ」


ノエル:「誠意が足りない、誠意が」


ガロ:「ていうか、それどころじゃねえんだって、俺、人探してんだ」


ノエル:「ひとさがし…?」


ガロ:「そうだ。」


ノエル:「見たところ余所者っぽいけど。なんの目的があって人探ししてんの?」


ガロ:「なんでそんな疑うんだよ」


ノエル:「このご時世だからね。それに、私は元探偵だ。職業病なんだよ」


ガロ:「た、」


ノエル:「た、?」


ガロ:「探偵だーーーっ!すげーっ!本物初めて見たっ!あれか!ホームズか!」


ノエル:「違う!元だって言ってるだろっ。私の事はいいんだよ、人探しの話」


ガロ:「ん、ああ、ジャイロっていうやつを探してんだ。」


ノエル:「ジャイロ…?ジャイロって言うと、あの「異能狩り」の事か」


ガロ:「なんだ、知ってんのか?有名人だなーあいつ」


ノエル:「まあ、リベールじゃあちょっとした名物みたいなものだからね。それで、悪名高い「異能狩り」と、君。なんの関係があるのさ」


ガロ:「俺。冒険家なんだ。で、あいつを旅仲間にするって決めた」


ノエル:「……。」


0:ノエル、頭が痛いという顔


ノエル:「…。なんというか。今どき珍しいタイプの変人だな、君」


ガロ:「そうかぁ?」


ノエル:「でも。それなら急いだ方がいいかもね」


ガロ:「そうだろぉー。一刻も早く仲間にしねえと。鉄は熱いうちに叩くんだよ」


ノエル:「そうじゃなくて。「異能狩り」は多分、今日中に中央政府に捕えられる」


ガロ:「…え!?まじで!?」


ノエル:「まじで」


ガロ:「中央政府っていうと、あれだよな?この世の、一番偉い奴らだよな?」


ノエル:「偉いって言うか、まあ。うん」


ガロ:「そいつらに捕まったら…。ジャイロは…。どうなっちまうんだ?」


ノエル:「中央政府の管轄下で飼い殺しにされるのが鉄則だ。異常体なんてそんなものだよ」


ガロ:「異常体…。って…なんだ…」


ノエル:「…マジで言ってんの?」


ガロ:「まじだ」


ノエル:「冒険家の癖に世間知らずだな…。世間知らずだから冒険家を名乗ってるのか…?」


ガロ:「なんだよ。その目は」


ノエル:「異常体ってのは、えーっと。簡単に言うと、超能力者みたいな奴らのことだよ。で、異常体が扱う異常性、と呼ばれるものが、超能力。みたいな感じ。大体わかる?」


ガロ:「ちょ」


ノエル:「ちょ」


ガロ:「超能力者ぅぅーーっ!?すげーなぁ!?かっけーなぁ!火吹けたりすんのか!空飛べたりとか!」


ノエル:「する奴もいるだろうけど…。本題はそこじゃない」


ガロ:「これ以上の本題がどこにあんだよ!」


ノエル:「異常体は、世間からは歩く生物兵器と恐れられてるんだ。もちろん、私も怖い。」


ガロ:「なんでだよ!かっけーじゃんか!」


ノエル:「かっこいいかは人の主観として、それが世間の目。で、その異常体達による犯罪を取り締まる、武力による最高権力。それが中央政府。分かった?」


ガロ:「おう、おう。なんとなく」


ノエル:「つまり、異常体のジャイロ・バニングスは中央政府に目をつけられてるって話だ。まあ、中央政府の所属でもギルドの一員でもない異常体が、野良の異常体を捕らえて回ってるんだから当然っちゃ当然だろうけど」


ガロ:「まてまてまてまぇ!」


ノエル:「なんだよ!」


ガロ:「じゃ、じゃあ、なんだ。ジャイロは、異常体、つまり超能力者で、賞金首で、食い逃げ犯なのか!?」


ノエル:「食い逃げ犯…?は知らないけど、そうだよ。リベールではそういう噂が結構立ってた。今朝、中央政府の人間がリベール市内を徘徊していたのも近隣住民からの報告で聞いてるし」


ガロ:「すげー!探偵っぽいなお前」


ノエル:「お前って言うな。」


ガロ:「ああ、わり。名前教えてくれよ」


ノエル:「私はノエル。ノエル・ベルメットだ。」


ガロ:「そうか。俺はガロンドール・ウォンバット。親切に教えてくれてありがとうな、ノエル。お前結構いいやつだな」


ノエル:「…。いいか。これは親切でもなんでもなく、ただただ君みたいな無知なやつを見てると私の腹の虫が収まらないから教えやっただけだ。」


ガロ:「怖ぇよ…。」


ノエル:「ぺっ」


ガロ:「あ!ていうか!それがマジならこんな所でモタモタしてる場合じゃねえ!ジャイロを探さねえと!」


ノエル:「そうだね」


ガロ:「わりい!ありがとなノエル!そんじゃー!」


ノエル:「そっち、さっき戻ってきた道だろ」


ガロ:「あれ。じゃあ、どっちだ。」


ノエル:「冒険家のくせに方向音痴なのか…」


ガロ:「こんな建物がある場所なんて初めてなんだよ。俺、スラム出身だから」


ノエル:「…」


ガロ:「えーっと、来た道がこっちで、戻った道もこっちだから…。こっちか!」


ノエル:「君一人で見つけられるのか」


ガロ:「わかんねーけど、俺、あいつ仲間にしたいんだよーっ。だから急がねーとっ」


ノエル:「はぁ…。世間知らず、土地勘もない、田舎っぺ。そんな君が人探しなんて、一生かけても無理だよ」


ガロ:「そんなもんやってみねえと分かんねえだろーが!なんなんだお前っ!」


ノエル:「ガロンドール・ウォンバット」


ガロ:「なんだよ」


ノエル:「私は、元探偵だ。人探しならこれ以上の適任はいない」


ガロ:「おう?」


ノエル:「手伝ってあげるよ、「異能狩り」の捜索」


ガロ:「え…!?まじで…!!」


ノエル:「その変わり、条件がある」


ガロ:「おう!なんだ!」


ノエル:「約半年間。私の用心棒になって」


ガロ:「…お?」


0:場面転換


0:キャリオン街 ビル群


0:上空から落ちてくるジャイロ


ジャイロ:「――――がはっ…!」


0:ボロボロ


ジャイロ:(M)くそ…!いてぇ…!骨、折れてねえだろうなぁこれ…!あのハンサム野郎…っ。好き勝手殴りやがって…!


0:何とか立ち上がる


ジャイロ:「くそ…っ。とりあえず、ここから離れねえと…っ。」


アスカ:「そうつれないこと言うなよ」


ジャイロ:「…っ!てっ…めぇ…!しつけぇんだよぉ!」


0:殴るが、受け止められる


アスカ:「…。喧嘩慣れはしている様だが、訓練された兵士には敵わないだ、ろ…っ!」


0:殴った


ジャイロ:「げぼぉっ…!」


アスカ:「それと、も…!」


0:蹴った


ジャイロ:「がはっ…!」


アスカ:「お前が今まで戦ってきたゴロツキと同じよう、にっ!」


0:殴った


ジャイロ:「びゃっ…!」


アスカ:「俺が見えたか!」


0:殴った。壁に叩きつけられるジャイロ


ジャイロ:「ごぼぉっ…!おえっ…。かはっ…!」


アスカ:「リベールは綺麗な街だが、路地裏にもなるとどうしても薄汚いな。」


ジャイロ:「悠長なこと言ってやがるなぁ、おい。」


アスカ:「後ろは壁。前には俺。どうする。もう少し逃げてみたりするか。それとも、大人しく投降してくれるか。」


ジャイロ:「中央の犬なんざ、真っ平御免だ…っ!」


0:殴ろうと拳を振りかざした


アスカ:(M)右手の大振り。もう体力も残っていないじゃないか。あまりいたぶる趣味はないんだが…。


0:ジャイロの拳を受け止め、蹴った


アスカ:「お前が抵抗するからだぞッ!」


ジャイロ:(M)かかった…ッ!


アスカ:「…!」


0:アスカの蹴りは、ジャイロの左手が受け止めている


ジャイロ:「Adsorptionアドソープション


アスカ:(M)…!まずい、触れる事で発動条件を満たすタイプの異常性か…っ。好き勝手殴らせてくれるもんだから油断した…!


ジャイロ:「持ってきたなァ…!最高の一発ゥ…ッ!」


アスカ:(M)異常性分類はなんだ…!くそっ。とにかく足を…!


0:足をジャイロの左手から振りほどいた


アスカ:「―――離せっ。」


ジャイロ:「ああ、離すよ。もう要らねえ。」


アスカ:(M)掴んだ足が本命じゃない…!?何が目的だ…!


ジャイロ:「必要なのは、辛みだよ。ピリッと。辛い。」


0:ジャイロは右手をアスカの顔に向けた


アスカ:(M)右手…?さっき大振りしたのはわざとか…?発動条件は、「左手」で触れて、「右手」でもう一度触れる事か…!?


ジャイロ:(M)流石中央政府準一等監察官。もう凡その検討を付けてやがる。だが、気づいた所で…ッ!


アスカ:(M)受け身を…ッ!


ジャイロ:「おそぉおいっ!」


0:右手をアスカの顔に押し付けた


アスカ:「むごっ…!」


ジャイロ:「Refundリファンド…ッッ!」


0:アスカは地面に叩きつけられた


アスカ:「―――っ。ごぼぉっ…!!」


ジャイロ:「はぁ…っ。はぁ…。どうだぁ。てめぇの、一発。痛てぇだろ。そんなもん、人様に向けてんじゃねぇぞぉお。タコ。」


アスカ:(M)これは…っ。靴の、感触。こいつが履いているサンダルではない、俺が履いているのと同じ、革靴の感触が…っ。俺の顔にあった…っ。威力も、訓練された監察官の蹴り一発に相当する。見えたな。


ジャイロ:「くそ…。体中がいてぇ。相性が悪ぃよ」


アスカ:「けほっ…。お前の、異常性は。左手で物理運動を記憶し、右手で再現する。という所だな。」


ジャイロ:「流石だよ。大概化け物だ」


アスカ:「…っ。どっちが、だ…っ。」


ジャイロ:「まだやるかよ、ハンサムくん」


0:立ち上がった


アスカ:「お前の異常性は、もう監察した。十分だ。」


ジャイロ:「俺を諦めるには、か?」


アスカ:「お前を処分するには、だ。」


0:場面転換


0:キャリオン街 駅前


0:走る二人


ガロ:「そーそー!で、ギルドに入る為にここに来たんだよっ。」


ノエル:「はぁ…っ!はぁ…っ!早い…!」


ガロ:「つーかそれどころじゃね!おせぇよ…!で、キャリオン街ってとこにジャイロが居るってのは、まじなんだろーなっ」


ノエル:「確証はないけど、君が、言っていた、街路なら、順当に行けば、キャリオン街が、一番妥当、だ…っ。中央政府職員の、目撃情報も、キャリオン街で、ある…っ。」


ガロ:「わかった…!飛ばすぞ!ノエル!」


ノエル:「いや、もっ。むりっ。」


ガロ:「あぁ〜もうっ。捕まれっ。」


ノエル:「えっ」


ガロ:「飛ばすぞっ。待ってろジャイロ〜っ!」


ノエル:「ぇぇええええっ!はやぁ〜っ」


0:場面転換


0:キャリオン街 路地裏


ジャイロ:「ぉおおらぁっ!」


アスカ:「っ…。こ、のぉ…!」


ジャイロ:「もらったァ。Adsorptionアドソープション


アスカ:(M)くそっ。動きが鈍ってる…っ。顎に喰らったせいか…!?


ジャイロ:「Refundリファンド!」


アスカ:「がはっ…!」


ジャイロ:「悪ぃが好き勝手居させてもらう!異能狩りがただの人間にやられたってんじゃあ傷ついちまうからなぁ、名誉が、なぁ…!」


0:アスカは腕時計を見た


アスカ:「…。いいや。守られるよ、名誉は」


ジャイロ:「あ?」


アスカ:「12時12分。相変わらず、こういう時だけは時間を守るやつだよ」


ジャイロ:「なにが―――」


ガーフィール:「Pressionプレシオンッ!」


ジャイロ:「ぉおおぼっ…!?」


0:ジャイロはその場から弾かれた


ジャイロ:「がはっ…!?なんだなんだぁ次はァ…!!」


ガーフィール:「アスカさん!大丈夫!?」


アスカ:「ああ、問題、無い。」


ガーフィール:「問題大ありだろっ。ごめんよ、私が来るの遅かったから」


アスカ:「いいや、情報共有から到着時間までぴったりだ。ありがとう」


ジャイロ:(M)あの制服…ッ!執行官か…っ。やっぱり連れてきやがるよなぁ、そりゃあ、なぁ…!今のはなんの異常性だ…。押し潰されたような感覚だったが…


ガーフィール:「お前。」


ジャイロ:「なんだよ、ナイスぼいーん」


ガーフィール:「アスカさんを殴ったな。」


ジャイロ:「冗談じゃない。殴られたのは俺で、そいつを殴ったのも実質そいつだ」


ガーフィール:「…。いーんだよね。アスカさん。あいつ、殺しても」


ジャイロ:(M)ったく。なんつー迫力だよ。流石執行官。ハンサムくんも伊達じゃなかった。やっぱりプロだってかぁ?


アスカ:「生け捕りが好ましいな、いけるか?」


ガーフィール:「分かんないよ。けど、やってはみるさ」


ジャイロ:「来やがれよォ、ナイス悩殺バディぼいーんッ!」


ガロ:「ちょっと待ったァァアアアアアア!!」


アスカ:「…!?」


ガーフィール:「…。誰だあいつ」


ジャイロ:「お前、何しにきやがった!」


ガロ:「そいつは俺の仲間!!にする予定のやつだ!!連れてくな!」


ノエル:「はあ…。はあ…。あ、どうも…。」


アスカ:「…。悪いが、民間人は介入しないでくれ。こいつは異常体だ」


ガロ:「だからなんだ!!」


アスカ:「…。」


ガロ:「ったく。せっかく綺麗な街を凸凹にしやがって。」


ジャイロ:「なんだよ、急に決めた決心でぇ。まだ俺を誘ってくれんのかよ」


ガロ:「そうだ。」


ジャイロ:「そうかぁ、そりゃどうも。でも状況見りゃわかるだろ。運が良くてもリベールからは出ていく事になる。暫くは逃亡生活だなぁこりゃあ。」


ガロ:「なんでだよ。お前悪いことしてねえだろ。」


ジャイロ:「いやぁ、結構してるぜ。こう見えて。見たまんまかっ。だははっ」


ガロ:「そうか。俺の仲間になれよ」


ジャイロ:「断る。俺は自由な男だ」


ガロ:「冒険は自由だぞ」


ガーフィール:「アスカさん」


アスカ:「…。一旦待機だ」


ガーフィール:「了解」


ジャイロ:「だからぁ。俺はいま、中央のハンサムくんに追われてんの。よくて逃亡生活、悪くて飼い殺し。冒険とか言ってる場合じゃねぇの。」


ガロ:「そうか。じゃああいつらぶっ飛ばせばいいんだな」


アスカ:「…」


ジャイロ:「お前…。正気じゃねえとは思ってたが…。」


ガロ:「約束しろよ。俺があいつらぶっ飛ばしたら、お前。仲間になれ」


ジャイロ:「ったく。なぁんでそんなにご執心かねぇ。」


ガロ:「気に入ったからだ。」


ジャイロ:「そこまでしても何も返さないぞ、俺は」


ガロ:「いいさ。旅は道連れだろ。どの道、お前は仲間にするって決めてるから。こいつらはぶっ飛ばす」


ジャイロ:「はぁ〜。逃亡生活、旅費二倍だな」


アスカ:「…。ガーフィール。民間人の方は俺が対応する。」


ガーフィール:「アスカさんは下がっておきなよ」


アスカ:「民間人は巻き込めない」


ガーフィール:「…。分かった。」


ガロ:「ただ、俺は嘘つけないから正直に言うぞ、ジャイロ」


ジャイロ:「…?」


ガロ:「一発だ。一発でこいつらぶっ飛ばせなかったら。全力で逃げる」


ジャイロ:(M)…。こいつ…。まさか…


アスカ:「民間人の被害を最小限に「異能狩り」を捕らえろッ!ガーフィール!」


ガーフィール:「わかった!」


ガロ:「…。」


0:ガロは拳を握った


ガロ:「GRID・BORROWグリッド・ボロウ


アスカ:(M)…トリガーワード…!?


ガーフィール:「…!」


アスカ:「ガーフィール!警戒を解くな!」


ジャイロ:(M)その男が拳を空に向かって振るった。


ガロ:「Full・Burstフル・バーストッ!!!」


0:ガロが拳を振るうと、爆風が込み上げた


ジャイロ:(M)それと同時に、核爆発でも起きたかのような暴風がリベールを攫った


ノエル:「うわわわわ!?」


ジャイロ:「うおおおっ!?」


アスカ:「…っ!?」


ガーフィール:「アスカさん!」


ノエル:「と、飛ばされる…っ!!なんだこの爆風…!?あいつ、異常体だったのかよぉ!?」


アスカ:「巻き込まれるぞ!何かに捕まれ!」


ガーフィール:「私よりアスカさんの方がやばいでしょ…っ。Pressionプレシオン…ッ!」


アスカ:「…っっ!」


ジャイロ:「おい!そこの女ァ!なんでもいい!建物に捕まっとけぇ!」


ノエル:「わか、ってる…っ!」


アスカ:(M)完全に見落としていた…っ!リベールに生息する異常体の内、もう一人はお前だったのか…っ!


0:


ジャイロ:(M)体感にして、40秒。実際の時間はもっと短かっただろう。体験したことの無い衝撃に身を投げ打たれた。


ノエル:「…こほっ…。やっ、と。収まった…?」


ジャイロ:「…ああ、みたいだなぁ…。」


ノエル:「それにしても、なんなんだ、あいつの異常性…!ふざけてる…!」


ジャイロ:「あぁあ、まったくだ…。」


ノエル:「…っ!??嘘でしょ…!?」


ジャイロ:「あ?どうした、嬢ちゃん」


ノエル:「…そ、空が…」


ジャイロ:「空が…?……。おいおい…まじか…。」


ガロ:「…っ。一発。終わり…っ。」


ジャイロ:(M)近くにあったはずのゴミ箱や標識、車から電柱まで、ありとあらゆる置物は全て空高く打ち上げられ、見渡す限りで、空き地は広さを増していた。


ガロ:「ほれ。ジャイロ。あいつらぶっ飛ばしたぞ。仲間になれ」


ジャイロ:「文字通り、だな。」


0:瓦礫からアスカが出てくる


アスカ:「…っ!ガーフィール!生きてるか…っ!」


ガーフィール:「は、はい…。ラッキー…。」


ジャイロ:(M)そいつが放った拳ひとつで、雲が割れ。片方の空は雨空になり、もう片方の空は青空が広がっていた。


アスカ:「…。お前…。名前は…」


ガロ:「あ?なんだよ急に」


アスカ:「答えろ!!」


ガロ:「なんなんだよ、もう…」


ジャイロ:(M)どういう原理かは知らねえ。類を見ないタイプの異常性。ただ、一発。こいつが「一発。」と。そういった理由がわかった。こいつが、「天」に向かって拳を振り上げた理由もよォく分かった。


ガロ:「俺はガロンドール・ウォンバット。冒険家だ。」


ジャイロ:(M)こいつは、拳ひとつで。国を終わらせる事が出来る異常体だ。


ノエル:「…」


アスカ:「…。まったく、ふとした瞬間にとんでも異常体が出てきやがる…っ。」


ガーフィール:「アスカさん。どうする、正直、あんなのナンバーズクラスの案件だよ」


アスカ:「ガロンドール・ウォンバットを、ステージ5と推定。最悪、ステージ6までの拡大を…」


ノエル:「ちょっと待ってください!」


アスカ:「…なんだ。」


ノエル:「あ、すみません。私、ノエル・ベルメットと言います」


アスカ:「…。彼らの連れか?」


ノエル:「連れ、と言いますか…。付き添いと言いますか」


アスカ:「…。それで、なんだ。」


ノエル:「彼らを執行手配する前に、ひとつだけ。」


アスカ:「…」


ノエル:「彼らは、ギルド加盟希望者です」


ジャイロ:「彼らって…」


アスカ:「だからなんだ。いくら大陸支援団体と言えど、所詮は希望者だろう。中央が身柄を引き取る」


ノエル:「中央政府と大陸支援団体の協定に、ギルド加盟、若しくは加盟候補者を含む異常体の執行権利を与えない。という条例があったはずです」


ガロ:「おい、ノエル?なんの話ししてんだ」


ノエル:「ちょっと黙ってて。」


アスカ:「異常体の権利の話にもつれ込むか。じゃあ言わせてもらうが、ギルド加盟候補者が法的問題を冒した場合、今回だと公務執行妨害、暴行罪、殺人未遂罪、器物損壊罪に当たるが、この場合、ギルド支部職員。若しくはギルド加盟証明書を所持している人間が監督している場合に限り権利分与を認めるものとしている。それとも、君はギルド職員なのか?」


ガロ:「すげえな…。あんなのペラペラと…」


0:紙切れを見せた


アスカ:「…。」


ノエル:「私はA級ギルド。グランシャリノの加盟者です。」


ジャイロ:「…!」


ガロ:「えー!あいつギルドメンバーだったのかよおっ」


ノエル:「これでもまだ彼らの身柄を引き取る。いいえ、強制連行すると言うのなら、まずはギルド本部へ話を通すのが筋かと思いますが。」


アスカ:「…。やけに懇切丁寧。法に詳しい道案内じゃないか。ノエル・ベルメット」


ノエル:「一応、元探偵ですので。法学への知見は広いつもりです」


ジャイロ:(M)グランシャリノ。元、探偵。ベルメット。…。なるほど、あのお嬢。中々に深々としたものを孕んでやがるなぁ〜?


アスカ:「…。分かった。一旦、彼らの件は中央に持ちかえる。ただ、今の件で公務執行妨害と器物破損の罪はある。どの道、中央支部までは連行させてもらう」


ノエル:「それは…。はい。仕方がありません」


アスカ:「そういう訳だ。ガーフィール。彼らの身柄を拘束しろ」


ガーフィール:「わかった」


ガロ:「あ?おい!何すんだよっ。離せっ。」


ガーフィール:「大人しくしなって、せっかくアスカさんが優しさ見せてくれたんだから」


ガロ:「優しさ…?」


ジャイロ:「んまー。ステージ5相当の異常体を執行手配したってだけで随分な評価だろうからなぁ。そこら辺のクソ中央職員なら揉み消されてしょっぴかれてるさ」


ガロ:「なんだよ。良い奴なのかあいつ」


ガーフィール:「…。」


ジャイロ:「羨ましいか?」


0:ガーフィールは拘束しながら話を続ける


ガーフィール:「別に。私はアスカさんと働けてるから幸せだ。お前らみたいにギルドに逃げ込む異常体は何人も見てきた。」


ガロ:「なんだよ。お前も超能力者なのかよっ。仲間になれ」


ジャイロ:「ならねえだろ。」


ガーフィール:「どの道、あと2ヶ月の猶予が付いただけだ。異常体の人生は、どうせすぐに割れる」


ガロ:「なんだよ。暗いやつだな。2ヶ月ってのは、なんだ?」


ジャイロ:「次のギルド試験の事だろうよ。」


ガロ:「あー。俺が受けるやつ。」


アスカ:「お前達がギルドの加盟候補者である、という立場はその2ヶ月後消失する。その間に誰かを殺したりでもしたら、また俺達がお前らを捕まえに来る。簡単に言うとそういう事だ。」


ガロ:「殺さねえよ。冒険家だぞおれ」


ガーフィール:「ただの人間だったやつが、次の日には超常で人を殺す世の中だよ。力っていうのはそういうものだ。」


ジャイロ:「さっすが。執行官が言うと違うねぇ」


ガロ:「…ん?ちょっと待てよ、じゃあ俺らは2ヶ月後捕まんのか?」


ジャイロ:「はは。どうする。まじで逃亡生活でもするか。」


ガロ:「まあ、冒険に変わりはねえからな」


ノエル:「二人が捕まるのは、2ヶ月後、ギルド試験に落ちたら。の場合だよ。」


ガロ:「…つまり?」


アスカ:「お前達の身柄は今、中央政府とギルドに半分ずつ権利がある、と言うような状態だ。だから下手に俺達中央がお前らをしょっぴく訳にもいかないし、かと言ってギルドがお前らを守る事も出来ない。」


ノエル:「まあ、要するにギルド試験に受かるしかないってことだよ」


ジャイロ:「だとよ。都合良かったな。田舎っぺ」


ガロ:「おー。よく分からねえけど。どの道俺は初めからギルドに入るつもりでリベールに来てるしな。何でもいいよ、こいつ逃がしてくれんなら」


アスカ:「…。そうか。とりあえず、罪は罪。署までは同行願うが。宜しいか?」


ガロ:「えぇ〜。」


ガーフィール:「文句言うなお前」


ジャイロ:「従っておこう。どの道、中央法で俺らを裁くことは出来ねえよ。よくて民事。悪けりゃ刑事だな。」


ガロ:「つまり、最悪捕まるって事じゃねぇかっ。」


ノエル:「安心しなよ。今回の件はギルド加入候補者である下調べをしないで彼らの執行処分に取り掛かった中央に非がある。現罪状で最も重い殺人未遂罪は成立しないさ、正当防衛の領域だよ。だって君。骨、折れてるだろ。「異能狩り」。」


ジャイロ:「…。んー。」


ノエル:「な?」


ジャイロ:「あー。いてててっ。いてぇっ。いてぇぇぇっ。折れちまってるなぁ〜これっ。いや、折れていなくても少なくともヒビは入ってる〜っ」


アスカ:「まあ、なんでもいいよ。俺だって意地でやってる訳じゃない。ガーフィール。」


ガーフィール:「うん。さあ、立って。ふたりとも」


ガロ:「くそ!拘束されちゃあ捕まった気分だーっ。」


ガーフィール:「異常体は同意同行の場合も拘束する権利が認められてるんだよ」


ガロ:「わかんねーって難しい話は」


ジャイロ:「…」


ノエル:「…」


0:ジャイロとノエルはすれ違いざまに小耳を打つ


ジャイロ:「どうすんだ。ガロンドールは知らねえが、俺はギルド試験の申し込み申請なんてしてねえぞ。」


ノエル:「任せてください。グランシャリノのギルドメンバーですから。多少の融通は効かせます。」


ジャイロ:「はっ。助かるねぇ」


アスカ:「ノエル・ベルメット」


ノエル:「はい」


アスカ:「君も、身元保証人として同行願うが、いいか。」


ノエル:「勿論です」


0:


ガロ:(M)ガロンドール冒険譚。一章。


ガロ:(M)ギルドに入る為に立ち寄ったリベールで、仲間を見つけた。


ガロ:(M)中央政府、異常体、異常性、様々な世界の一端を知れた一日であり、自分がどれだけ狭い世界を見ていたのかを痛感した一日となった。


ガロ:(M)その日の晩飯は、取調室で食べたカツ丼だった。これが、リベールで初めて口にした食べ物になるとは夢にも思わなかった。


ガロ:(M)1991年。1月11日より


0:フランス リベール 中央支部署


ジャイロ:「ふわぁ〜。疲れたぁ。」


ガロ:「いやぁ。美味かったなぁ、カツ丼」


ジャイロ:「日本の食べ物らしい。今度は本場が食いてえもんだ」


ガロ:「おおっ。そんじゃあ行こうぜっ。絶対に!な!」


アスカ:「取り調べ、ご苦労さま。」


ガロ:「おー!ハンサム!」


アスカ:「ユノランページ・アスカだ。アスカでいい」


ガロ:「そうか。どうしたんだよ、アスカ」


アスカ:「いや。ただの出所祝い…というか、留置所とまりだったのが驚きだ。ノエル・ベルメット、弁護士の伝手まであるとは。脱帽だよ」


ジャイロ:「まぁ。見たとこのただの人間。戦闘経験もなし、そんな女がA級ギルドにいる理由なんざ、そういう「裏回し」が得意なやつだって他に線はねえわな」


アスカ:「まあ、詳しい事は詮索しないさ。調べでは俺達がリベール入りする前から君のギルド申請は確認されたようだ。すまなかった、ジャイロ・バニングス」


ジャイロ:「あー、うん。いいってことよ。俺も悪かったな」


ジャイロ:(M)申請日時までいじってやがんのか。抜かりねーなぁ。ノエル・ベルメット


ガロ:「で、もう俺達ここから出ていいんだよな?」


アスカ:「ああ。この後ノエル・ベルメットが手続きだけ済ませて戻る。その後、彼女と同行してリベールに戻ってくれ」


ガロ:「おっけー。そんじゃ、世話になったな。アスカ」


ジャイロ:「またなぁ。」


アスカ:「ああ、ガロンドール・ウォンバット。最後にちょっといいか」


ガロ:「あ?なんだよ。」


ジャイロ:「あー。邪魔っぽいな。外すよ」


アスカ:「悪いな。」


ジャイロ:「あいよぉん。」


0:ジャイロ退室


アスカ:「…。ガロンドール・ウォンバット。君の異常性ステージは推定、どれだけ低く見積っても5だ。」


ガロ:「それってーと、どんくらいやばいんだ」


アスカ:「国がひとつ、君の手で潰せる。という事だ。」


ガロ:「へぇ。まあ、そんな事しねえけど」


アスカ:「それは取り調べで君と数日話してよく分かった。」


ガロ:「おう。ありがとな。」


アスカ:「ただ、問題なのは。君はステージ5の異常体だ。中央政府は何としてでも我がものにしようと君を欲しがる。様々な裏回しが入るかもしれない」


ガロ:「なんだぁそれ」


アスカ:「単純に言うと、2ヶ月後来るギルド試験。君達には恐らく、とてつもない試練が用意される」


ガロ:「ほー。試練、ねぇ。」


アスカ:「君たちが俺達中央政府が捕えられる様に動く、という事だ。」


ガロ:「はっ。試練だかなんだか知らねえけどな。俺は冒険家だぞ。難航極まる旅ほど面白いものはねえだろ」


アスカ:「…」


ガロ:「そんじゃあ、世話になったな、アスカ。あ!そうだ、お前も良い奴だし一緒に旅しないか?」


アスカ:「あ…。いや、ありがたい話だが、辞めておこう。俺には向かない」


ガロ:「そっかぁ。楽しいのに。まあ。本当に嫌だって感じが伝わるし。いいよ」


アスカ:「…はは。そうか、ポーカーフェイスは得意なつもりだったが、凄いな。第六感、と言うやつだ」


ガロ:「よく分からんが。まぁ!また会おうな!」


アスカ:「…。ああ、次はギルドメンバーと、中央政府職員として会えることを祈っているよ」


ガロ:「おう!またなーーっ。」


0:ガロ、退室


ガーフィール:「…。アスカさん」


アスカ:「ああ、ガーフィール。お疲れ」


ガーフィール:「よかったんですか。ジャイロ・バニングスの件。見逃して」


アスカ:「んー。なんだそれは」


ガーフィール:「ギルド申請の日時の話ですよ。記録は新しいもの順なのに、唐突に古い申請書記録が残ってる。明らかに不正してるって誰が見てもわかる。こんなの検察に報告すれば…」


アスカ:「ガーフィール」


ガーフィール:「ん」


アスカ:「彼らを見て、実際に話して、彼らが無作為に人々に危害を加えるような連中に思えたか」


ガーフィール:「うーん。ガロンドールは思わなかったけど。ジャイロはピンキリ」


アスカ:「はは。そうだな。でも、大丈夫だ。2ヶ月あれば、人は変われる。きっとジャイロ・バニングスにとっても、ガロンドール・ウォンバットとの出会いは、いい起点になる」


ガーフィール:「ビットマンの旦那に似てきたね」


アスカ:「受けた恩は誰かに返さないとな。それに、なんだか。いいじゃないか」


ガーフィール:「なにが?」


アスカ:「現実の厳しさを知らないからこそ、壁に向かって突っ走るあの無謀さ。俺は好きだな」


ガーフィール:「アスカさん、オヤジ臭いよ」


アスカ:「うるさい。さて、俺達は俺達の仕事に戻ろう」


ガーフィール:「りょーかいっ。」


0:外で盗み聞くジャイロ


ジャイロ:「…」


ジャイロ:(M)なるほど、なぁ。え?このジャイロがちゃんとご丁寧に席を外すと思ったのか?そんな訳がねえだろ。聞き耳だよ。


0:ジャイロは逆立ちになった


ジャイロ:(M)しかしまぁ、中央がギルド試験に横槍入れてくるってのは十分有り得る話だ。それにあのハンサムくん。めちゃくちゃ粋な真似するじゃん。ちょっと泣きそうです。わたし。


0:逆立ちを辞めた


ジャイロ:「人は変われる、かぁ〜ぁ。似合わんねえ。俺にゃあ」


ガロ:「あ!いた!何してんだよジャイロ」


ジャイロ:「いやぁ。別にぃ。で、リベール市内に戻ったらどうするんだ?」


ガロ:「えーっと。留置所で7日。一週間経っちまったから、残りが…大体50日か」


ジャイロ:「それまでどーすんだよ」


ガロ:「そーだなぁ。適当に旅しようぜ。リベール」


ジャイロ:「そうかぁ。」


ガロ:「あ!ていうか!ちゃんと仲間になるんだな!お前!」


ジャイロ:「嫌だね」


ガロ:「はぁ!?」


ジャイロ:「いいか、ガロ。俺はな、自由を愛する男だ。自分以外の誰にも、自分を支配されちゃあいけねえのさ。しかもそれが、自分を助けて貰った恩義を果たすためときちゃあ話にもならねえ」


ガロ:「なんだよ。めんどくせぇな」


ジャイロ:「だから。俺は俺の意思で、お前について行くと決めた。」


ガロ:「お」


ジャイロ:「まあ、どの道2ヶ月後ギルド入れなきゃ仲良く豚箱行きだ。旅は道連れって言うしな」


ガロ:「いいねえ。話がわかる」


ノエル:「あ、いたー。」


ガロ:「おーっ。ノエルー!さんきゅなーっ!」


ノエル:「いい。歩きながら話すよ。ほら。立って」


ガロ:「お、おう。」


ジャイロ:「本当にすげえな、あんた。流石A級ギルドだ」


ノエル:「別に。私は私の目的があって君たちを助けただけだから、お礼を言われる筋合いはない」


0:ヒソヒソ


ジャイロ:「なあガロ、こいつはなんだ?ツンか?デレか?」


ガロ:「いやー。別にあんな事本気で言ってる風には感じないけどな」


ジャイロ:「じゃあツンのデレか」


ノエル:「話聞けお前ら。」


ガロ:「おう」


ジャイロ:「はい」


ノエル:「中央から提示された君たち二人を無実釈放するにあたっての条件はふたつ。」


ガロ:「おう」


ジャイロ:「はい」


ノエル:「ひとつ。私、ノエル・ベルメットが特別監督役として、ギルド加盟まで行動を共にすること」


ガロ:「おお、別にいいじゃんな?俺こいつ好きだし」


ジャイロ:「ああ。花が大事だからな。花が」


ノエル:「で。二つ目。ギルド試験の実施日を、今日の12時にする事。」


ジャイロ:「…。はぁ!?」


ガロ:「え?今が11時だから…。バス使って…。え!?間に合うのか!?遅れてもいいのか!?」


ノエル:「ギルド試験の遅刻は辞退を意味するよ。」


ガロ:「はぁぁぁ!?」


ジャイロ:「早速一手打って来やがったな。それを呑まなきゃあ、なんだかんだと罪を擦り付けて二ヶ月は豚箱に入れてたわけか」


ノエル:「うん。ギルドにも連絡して、何とか通してもらった。ギルド本部としても、中央にこういう形で異常体の権利分与が行われるのは本望じゃないからって。精一杯譲歩して、今日の12時」


ガロ:「え。じゃあ、歩いてる場合じゃねえじゃん。」


ジャイロ:「だなぁ。ったく。中央連中め。やらしい真似してくれる」


ノエル:「あ、私は走れないからおぶって。」


ガロ:「任せろ!!」


ジャイロ:「従順だな。」


ガーフィール:(M)1991年。1月18日


ガロ:「よっと。おら!急げよジャイロ!」


ガーフィール:(M)ここは、世界一貿易が盛んな街。フランス。リベール市。


ジャイロ:「お前なぁ…!こちとら一応怪我人だぞ…!」


ガーフィール:(M)異国の文化を積極的に取り入れ、様々な発展を遂げたリベールだが。中でも最も有名なのは。大陸支援団体。通称、ギルドの総本山である事



アスカ:「こちらアスカ。リベールでの監察任務は終了した。首尾はどうだ。」


ガーフィール:(M)この街では、日々様々なものが群雄割拠している。


アスカ:「…。そうか。よかった、想定よりスローペースだな。ああ、直ぐにパリに移動する。」


ガーフィール:(M)今日もまた、とある人は苦悩し、とある人は喜び、とある人は人を助け、はたまた人を陥れる。人間達の物語が、この世界には無数にある。


アスカ:「命は大事にしろよ、ネロ」


ガーフィール:(M)かく言う彼らも、迷える子羊の一人である


ガロ:「うおおおおおおっ!」


ジャイロ:「だぁああああっ!内蔵飛んでく!飛んでく!!」


ノエル:「おい!もっと丁寧にもて!女の子だぞっ!」


ガロ:「行くぞぉおっ!ギルド試験!ぶっ飛ばーーーーすっっ!!」


ガーフィール:(M)ギルド試験締切まで。残り54分13秒。


0:冒険者達の午後 序×1


ーーーーー「上陸」ーーーーー



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