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異能力者達の夜明け  作者: ゆーろ
冒険者達の午後
PR
15/28

冒険者達の午後 急1

冒険者達の午後 急×1

0:ーーーー「バイバイアオハル」ーーーー


0:登場人物


ガロ:男。ガロンドール・ウォンバット。冒険家。準ギルド「アホレンジャー」リーダー


カラス:男。カラス。侍。準ギルド「アホレンジャー」


ヴァン:男。ヴァン・ハンドレット。アーヘン高等学院生


林檎:男。本名アレジ・ロンドン。A級ギルド「赤い林檎」リーダー。


フェリス:女。フェリス・ローレンス。A級ギルド「禄戀会」構成員


ジャイロ:男。ジャイロ・バニングス。元賞金稼ぎ。現在無所属


ノエル:女。ノエル・ベルメット。元探偵。現在無所属


アガット:女。アガット・スロンファー。A級ギルド「グランシャリノ」雇われ用心棒


グランシオラ:女。グランシオラ・ルルカブル。A級ギルド「グランシャリノ」総督。


オーダー:女。オーダー・アルバーナ。元ナンバーズ。A級ギルド「グランシャリノ」協力者


レーヴェ:男。レーヴェンシュタイン・ウォンバット。A級ギルド「グランシャリノ」協力者


ポルジッコ:男。ポルジッコ・レオン。バラエティ構成員。グランシャリノ協力者


ジャガー:男。ジャガー・ノート。バラエティ構成員。グランシャリノ協力者


0:スポットキャラクター


サーティーン:男。(ジャガーが兼役可)


ヒュウリ:男。(ポルジッコが兼役可)


ラテ:女。(アガットが兼役可)


テオ:男。(カラスが兼役可)


ヘルマン:女。(グランシオラが兼役可)


ニーア:男。(ヴァンが兼役可)


オーウェン:男。(ニーア/ヴァンが兼役可)


ヴルカーン:男。(ニーア/ガロ/ヴァンが兼役可)


オリバー:男。(フェリスが兼役可)


警察:不問。(ガロが兼役推奨)


職員:不問。(カラスが兼役推奨)



0:ーーーー「バイバイアオハル」ーーーー




0:10年前

0:リベール某所


ヴァン:(M)1981年。リベール市にて、有害指定ギルド。無題の解体作戦より


職員:「無題だ!!無題が居たぞ!」


ヘルマン:「何がなんでも逃がすな…!左翼、迂回して制圧しろ…!」


オーウェン:「準ギルド無題。よくもまあ、好き放題暴れてくれる…。ギルドの信用は暫く地の底だな」


職員:「ヘルマンさんっ。機動隊より無題の構成員を捕らたとの報告がっ。」


ヘルマン:「よくやった…!オーウェン、私達も向かうぞ」


オーウェン:「ああ…!」


0:その場に突如人が現れる


オーダー:「ーーーそこで止まれ。」


ヘルマン:「…!」


オーウェン:「おいおいおい、いつの間に出てきやがった…っ。」


職員:「総員構えろ!オーダーだ…!」


ヘルマン:(M)包囲網を抜けたのか…!?いつだ…?先行班からの連絡も無い…!


オーウェン:「…はっ。親玉が自ら出てきてくれるなら話は早い…!」


ヘルマン:「指定有害ギルド。無題主犯。オーダーを確認しました。応援をお願いします」


オーダー:「僕の家族を解放しろ。これは命令だ。」


ヘルマン:「冗談じゃない。お前らをここまで追い詰めるのにどれだけかかったと思ってる」


オーダー:「拒否するんだな」


ヘルマン:「舐めるなよ、クソガキが…!」


オーダー:「ーーー警告はしたぞ。僕は」



職員:「……あれ…?…。」


0:職員は皆首が泣き別れている


ヘルマン:「…ッ…!?なんだ、何をした…っ。」


オーウェン:(M)いつ攻撃した…!?オーダーの異常性か…!?いいや、トリガーワードは聞こえなかった…!超常らしい事は何も起きてなかったぞ…!


ヘルマン:「オーウェン…!構えろ…っ。」


オーウェン:「分かっている…ッ。」


オーダー:「…。」


ヘルマン:(M)頭を狙え…!外したら、まじ終わる…!


オーウェン:「撃て!全弾使っていい!撃て!」


ヘルマン:「うぉぉおお…っ!」


0:銃を乱射する


サーティーン:「削り取れ。」


ジャイロ:「Adsorptionアドソープション


0:弾丸はその場から消え去る


オーウェン:「…!」


ヘルマン:「…次はなんだ…っ…!」


ジャイロ:「おいおいおいおい」


サーティーン:「おいおいおいおい」


オーウェン:「無題の残党か…っ…!」


ジャイロ:「なんだぁぁぁ?こいつら。」


サーティーン:「サツだよォ、サツぅ。ふざけんじゃねえ、嗅ぎつけてくんなワン公こら」


ヘルマン:「アーカイブは!」


オーウェン:「無い…っ。ギルドには未登録だ、偽装加盟だろうな…!」


サーティーン:「俺らの兄弟にぃ」


ジャイロ:「手ぇ出してんじゃねえよ」


0:オーダーは呆れたように近寄った


オーダー:「君達は来なくてよかったのに」


サーティーン:「いやあ、ご老体にはしんどいかなあと」


ジャイロ:「黙って若い芽に任せてロッキングチェアの上で花でも眺めてな、ロリババア」


オーダー:「お前ら晩飯抜きだ」


0:2人は同時に口を開いた


サーティーン:「冗談じゃないですかァ!」


ジャイロ:「冗談じゃないですかァ!」


0:車が来る


警察:「ヘルマンさんっ。オーウェンさんっ。ご無事ですかっ!」


ヘルマン:「…!早いな…!流石、優秀な部下だ…!」


サーティーン:「なんだあ?応援かあ?」


警察:「後は我々が…!」


オーウェン:「すまない、気を付けろよ」


ジャイロ:「ひぃ、ふぅ、みぃ。30人くらいか?」


サーティーン:「冗談だろ、それで捕まえられると思ってんのか?俺らを」


警察:「総員、構え…!射殺しても構わない…!」


オーダー:「お前らはすぐ煽る」


サーティーン:「はは、いいさ。そっちがその気なら」


ジャイロ:「俺らだってそうする。」


0:2人は拳を鳴らしている


サーティーン:「こんなもん、幾度とあった試練だよ。」


0:二人は同時に口を開いた


ジャイロ:「おう、兄弟ブラザー


サーティーン:「なあ、兄弟ブラザー


オーダー:(M)決して。豊かさや、和やかさが隣にあった訳では無い。それが僕達の日常で。生き方だった。


林檎:(M)1983年。初夏


ラテ:「あ〜、暑ぃ。」


ヒュウリ:「本当にまったく、どうなってんだ、夏ってのは。」


ラテ:「日焼け止め持ってない?」


ヒュウリ:「あるわけないだろカス」


ラテ:「はい言い過ぎ。っと」


林檎:(M)フランス。モンペリエ辺境


ジャイロ:「だーかぁらぁ!ありゃ俺の手柄だって言ってんだよ!」


サーティーン:「俺だろうが!俺の方が沢山殺した!」


オーダー:「どっちでもいいだろ。天下の公道でそんな事大声で言うな…」


ラテ:「オーダー!」


オーダー:「ラテ、ヒュウリも。無事だったか、良かったよ。」


ヒュウリ:「勿論だ。」


ラテ:「まあー、ちょちょいのちょい、だよね」


サーティーン:「よお。今回もしぶとく生き残ったようで何よりだ」


ラテ:「なに?死んでた方が良かった?」


ヒュウリ:「暑いのにしょうもない喧嘩しないでくれ」


ジャイロ:「腹減ったな」


サーティーン:「モンペリエ出る前に昼飯食っていくか」


ジャイロ:「おお、いいねえ。キャバクラやってねえのか?」


サーティーン:「やってるわけないだろ、昼だぞ。その辺の女引っ掛けた方が早い」


ジャイロ:「はハー。いいねえ、話がわかる」


ラテ:「本当に気が合うな、あいつら」


ヒュウリ:「ああ。ちょっとキモイな」


0:2人は同時に口を開いた


サーティーン:「はあ!?キモくないですけど!?」


ジャイロ:「ああ!?キモくねえだろうが!」


0:呆


ラテ:「…キモイじゃん」


ヒュウリ:「キモイな」


オーダー:「お前ら女心とか分かるのか?」


サーティーン:「地雷原を歩く力だ」


ジャイロ:「地雷を踏み抜いて尚立っていられる力だ」


サーティーン:「あ?」


ジャイロ:「は?」


ラテ:「はいはい、クソしょーもない痴話喧嘩やめて」


ヒュウリ:「オーダー。次はどこに行くんだ?」


オーダー:「イタリアだ。」


サーティーン:「ほお、ピザか」


ジャイロ:「依頼はぁ?」


オーダー:「要人殺害、いつも通りだよ。」


サーティーン:「了解」


ジャイロ:「はいよ。」


ラテ:「今月は結構忙しいね」


ヒュウリ:「無題の名前も裏で広がってるってことだろ。」


ラテ:「うーん。そろそろ中央にも目を付けられてるだろうし。少し怖いなあ」


オーダー:「ああ、警戒しておくに越したことはない。」


サーティーン:「はっ。なんだなんだ、ビビってんのか」


ジャイロ:「少なくとも俺らが居りゃあ大丈夫だ。ナンバーズもドンと来い、だぜ。」


ヒュウリ:「その自信過剰なところ直した方がいいと思うぞ」


ジャイロ:「うるせえっ。殺すぞっ。」


ラテ:「怖。」


オーダー:「…」


0:オーダーは静かに笑った


サーティーン:「…?オーダー?どうした」


オーダー:「…。いいや、何も。行こうか」


0:同時に


サーティーン:「ああ」


ジャイロ:「了解」


ラテ:「はいな〜」


ヒュウリ:「わかった。」


0:場面転換


ジャイロ:(M)日差しが肌を焼く。心地いい夏。住処は無い。人を殺す為に今日の寝床を転々とする。世間様から見りゃあ、ろくな集団じゃなかったっつーのは重々理解してる。だが、それでいい。ここが俺の居場所で、俺がそれを受け入れている。


ジャイロ:(M)普通とは違う。けど、気の合うダチと騒いで、食って、寝る。それだけで十分だ


ジャイロ:(M)柄にもねえ。一般的を失った俺に与えられた。正真正銘の、家族だった。


サーティーン:「おい、ジャイロ。何してんだ。さっさと行くぞ」


ジャイロ:「おう。」


ヒュウリ:「お、アイスクリームじゃん」


ラテ:「うわ。食べた〜」


オーダー:「後でな」


ジャイロ:(M)群青に包まれた、唯一の夏。


0:時間は現代に戻る

0:ノアの方舟

0:集中治療室


ジャイロ:「……。」


0:目が覚めるジャイロ


ジャイロ:「……あ……」


ノエル:「…おはよう。ジャイロ」


0:ノエルはパイプ椅子に腰掛けてジャイロを見つめている


ジャイロ:「…ノエル…?」


ノエル:「…うん。ノエル・ベルメットだよ。元探偵の。」


ジャイロ:「……っ…!」


0:ジャイロは気付いたように起き上がるも、身体は酷く重い


ジャイロ:「ここは、どこだ…。なんでお前が…」


ノエル:「ここはグランシャリノの本拠地。ノアの方舟の船内で、四日前、瀕死の君が集中治療室に運ばれてきた。」


ジャイロ:「……。そうか…。生きてんのか、俺。」


ノエル:「…」


0:ノエルは拳を握りしめた


ノエル:「どうして来たんだ。」


ジャイロ:「…」


ノエル:「私は。これ以上お前たちを巻き込みたくなくてここに残ったのに。」


ジャイロ:「……こっちが聞きてえよ…。」


ノエル:「…」


ジャイロ:「ガロは、カラスはどうなった。」


ノエル:「…多分。無事だと思う。居場所は割れてないみたいだけどね。」


ジャイロ:「……そうか。」


ノエル:「…取り敢えず。その傷が癒えたら、直ぐにここから逃げろ。その時は協力する」


0:ノエルは立ち上がり、出口へ歩いた


ノエル:「…本当に。これっきりだ。」


0:そのまま集中治療室から出た


ジャイロ:「…」


0:治療室の外


ノエル:「……よかっ…た。」


0:ノエルは天井を眺めている


ノエル:「まあ。ジャイロがそう簡単に死ぬはずないか。はは、そりゃそうだ。」


0:ノエルは拳を握った


ノエル:「……っ…」


0:ノエルは力なく地面に座り込んだ


ノエル:「…っ…生きてて…よかったぁ…っ…。」


0:治療室内

0:ジャイロは呆然と天井を眺めている


ジャイロ:(M)…また。生き残ったのか。今度こそ死んだと思ったんだけどな。しょうもねえ。


ジャイロ:(M)……勘弁してくれ。


オーダー:「おはよう。ジャイロ」


ジャイロ:「……オーダー…?」


オーダー:「丸4日寝通しだったが。一命は取り留めたな、昔から身体は頑丈だ」


ジャイロ:「なんで。俺がここに居る。」


オーダー:「あの状態で生かす為に仕方がなかった」


ジャイロ:「…なんだ?俺を助けたってのか?俺らをここまで追い込んだお前らが…?」


オーダー:「…」


ジャイロ:「…ふざけんな…誰が頼んだ…!」


0:ジャイロは力なくオーダーの胸ぐらを掴んだ


オーダー:「まだ動かない方がいい。」


ジャイロ:「応えろよ…っ。てめぇの都合でこうまでして、またてめぇの都合で生かすのか…!」


オーダー:「…」


ジャイロ:「…もういいと思ったんだ…絶好の場だと思った…分かるだろ。格好つけたがりなんだ、俺は。…あの場で、死なせてくれや…」


オーダー:「…。すまない。」


ジャイロ:「謝るなら…最初からすんじゃねえよ…何もかも…っ。」


オーダー:「…」


ジャイロ:「…なんでグランシャリノとつるんでやがる。」


オーダー:「…」


ジャイロ:「サーティーンがこうなった原因も、結局グランシャリノが関係してんのか。」


オーダー:「…」


ジャイロ:「…また、何も言わねえのか。てめェは」


オーダー:「…すまない。」


ジャイロ:「…もう、いい。」


0:ジャイロは立ち上がった


ジャイロ:「何も話さねえなら、死体以下にもならねえ。」


オーダー:「やめておけ。」


ジャイロ:「指図すんじゃねえよ…ッ!なあ、オーダー。俺があれから、どんな気持ちで過ごしてたか。お前にわかるか…?日々が惰性だよ、人生のオマケだ。」


0:ジャイロは足を引きづりオーダーへ近付いた


ジャイロ:「そんな中でなあ、また、コイツを。サーティーンを使ってもいいと思える野郎とつるみ始めた…!やっとだった…!やっと、あの時みてぇな、記憶にも残らねえ様な平穏が、喉から手が出るほど望んだ日常が帰ってきたんだよ、俺の手のひらに…!!」


オーダー:「…」


ジャイロ:「あの時の事を、お前のせいだと今更恨んじゃいねえ。けどもう、俺に構わないでくれ。干渉しないでくれ。お前の名前を聞いただけで…聞いただけで…よぉ…っ。」


0:ジャイロは力無く膝を着いた


ジャイロ:「…軽薄で卑怯な俺じゃあ…居れなくなっちまう…」


オーダー:「…。」


ジャイロ:「頼むよ。ここで死んでくれ。オーダー」


ヒュウリ:「それは駄目だ、ジャイロ」


ジャイロ:(M)久しぶりに聞いた、兄弟の声


ラテ:「ここで暴れるなら。こっちも手荒に行くしかない」


ジャイロ:(M)そこに在るのは、あの夏の日と。何も変わらない。本当に、あの夏のまま時が止まったんじゃないかと思うくらい、何も変わらねえそいつらが居た。ただ一つ違うのは、見慣れない武器を持ってること。


ヒュウリ:「…久しぶり。ジャイロ」


ラテ:「こんな再会で、ごめん。」


ジャイロ:(M)同時に、何かの糸が切れる音がした。


0:場面転換

0:時間経過


林檎:(M)A級ギルド。グランシャリノによるリベール封鎖から6日。


0:リベールの街は誰一人歩いていない


林檎:(M)リベール住民は、リベール市からの外出の一切を禁じられ、また、外部からの侵入の一切も禁じられた。その文字通りの理不尽なリベール占領に、周辺諸国は迅速に対応に当たった。


林檎:(M)列強国は特例としてリベール市への外資、援助の一切を断ち切り、経済的制裁を加えようとした。しかし、莫大な資金力を有するグランシャリノには直接的な経済打撃を与えることは叶わず、リベール住民のみが日に日に憔悴していく惨状のみが残った。


林檎:(M)中央政府監察官が最後に目撃したと言う、超大型無人飛行異常器。「ノアの方舟」はリベールの上空を支配し、憶測、半径52km圏内の電子機器の動作全てを断ち切る事も確認されている。


林檎:(M)結果、リベールの情報機関、公共交通機関、及び医療機関は完全崩壊。現在で42名もの死亡者が推定されている。


林檎:(M)この有事には中央政府も看過を許さなかった。


ヴルカーン:「…偉くしみったれた雰囲気になっちまってんじゃねえか。」


オリバー:「さあなッ!茶をシバく余裕すら無さそうだッ!見ろヴル、ここに住む人々の顔をッ。怯えている!怯え切ってしまっているッ!」


ヴルカーン:「一応敵地だぞ。少し黙れ」


林檎:(M)中央政府執行部の最高戦力部隊。ナンバーズの派遣を余儀なくされ、リベール奪還、並びにグランシャリノ解体に当たった。


オーダー:「止まれ。」


オリバー:「むむ。」


ヴルカーン:「おいおい、早速か。オーダーさん。」


オリバー:「…。」


オーダー:「久しいね、二人とも。大きくなった」


オリバー:「リシャールさんとの一件の次は、無題。その次はグランシャリノ。貴方は一体。何がしたいんですか」


オーダー:「これには意義がある」


0:オーダーは剣を向けた


オーダー:「ここから先はグランシャリノ領、リベール市だ。それ以上の侵入は薦めない」


オリバー:「…グランシャリノ領。これはまた。大きく出たな。無題の残党…!」


ヴルカーン:「国盗りごっこに付き合ってる暇はない。アンタこそ、その場から早急に退くことを薦める」


オリバー:「残念ながら、手心は加えられない。本当に。残念だ」


オーダー:「ーー警告はしたぞ。」


アガット:「伸びろォ。」


レーヴェ:「Steins・BORROW」


オリバー:「…!ヴル!」


ヴルカーン:「分かっている」


アガット:「ゲイ・ボルグッッ!」


オリバー:「Gravityグラビティッ。」


0:重力に従い槍は地面に張り付いた


レーヴェ:「ONELimit・BURSTッッ!」


ヴルカーン:「STROMシュトローム


0:空間を断裂するが、拳は貫通する


アガット:「はは…!想像以上!身体に直撃すりゃあ即死は避けれねえか!」


レーヴェ:「なんだぁ〜?変なもん殴った気分だな」


オーダー:「…。まあ。流石にナンバーズ。一筋縄では行かせてくれないな」


アガット:「期待以上じゃねえか。実質こいつらを落としちまえば、アストレアでも出張ってこない限りゃあ、わっしらは最強って事だ」


レーヴェ:「あいつらがナンバーズだったのかっ。」


アガット:「なんだ、お前ナンバーズとやるのは初めてか?」


レーヴェ:「ああ、思ってたよりずっと強いのな」


アガット:「はは、わっしも初めて。ありゃすげぇわ」


レーヴェ:「けどまあ、このくらいなら。どうとでもなるわな。」


アガット:「合点。」


0:砂煙の中から出てくる二人


ヴルカーン:「…ちっ。槍の方はとにかく。あっちの男。」


オリバー:「うむ。ナンバーズクラスは確実だな。想像より遥かに、厄介。」


オーダー:「アリアンロードが別件で不在なんだ。気を抜くなよ。」


レーヴェ:「わぁーってる。けどまあ。新人くんも居るんだし。丁度いいんじゃねえか?」


オーダー:「…」


ヴルカーン:「5分だ。五分で仕留めきれなかったら、撤退に移る。」


オリバー:「ああ。それがいい」


ジャイロ:「ーーー削り取れ。」


0:ジャイロは槍を構えた


オリバー:(M)なんだ。新手か。人員不足には縁無しかい。


ヴルカーン:「ほほお、向かってくる。いいさ、返り討ちだ」


オリバー:「…!避けろヴルっ」


ジャイロ:「サーティーンッ…!」


0:鎌を振るったが、二人は避ける


ヴルカーン:(M)空間断裂…いいや。こりゃあ、もっと上位の…


ジャイロ:「…頼むから、そこどいてくれや。」


ヴルカーン:「…。あの異常器」


オリバー:「…ああ。ヴルと似た異常性。空間切断にも近いものか」


レーヴェ:「いやーっ。惜しかったな!後ちょっとだったぞジャイロ!」


ヴルカーン:「はぁ。不可解な物ばっかだ。今ここでやり合うには分が悪ぃか」


オリバー:「…残念ながら。ああ、撤退だ。報告が優先だよ。これは」


林檎:(M)中央政府が送り込んだ二人のナンバーズも、グランシャリノ率いる共謀者に阻まれ、その奪還を断念。ナンバーズの報告を受けた中央政府がとった行動は


ビットマン:「…今は。アレジ・ロンドンの件に集中するべきだ。セノ・アキラの裏切りもある。悔しいが…っ。リベールの住民には暫し耐えてもらう他ない」


林檎:(M)異例の一時的放置措置を計った。


ビットマン:「…くそ…っ。次から次へと…!何が起こっている…!」


林檎:(M)それは大々的に発表こそされなかったものの、リベール占領から役一週間が過ぎた段階で、有効打を打てない現状から、残されたリベール住民がその精神を摩耗するのに、そう時間は必要としなかった。


林檎:(M)その街に、かつてあった賑やかさは欠片も無く。ただ衰退していくその情景を、誰もが静観する他無かった。


林檎:(M)たった6日。時間にして僅か144時間。その瞬きの間に、ギルド総本山の貿易都市と謳われたリベールは、皮肉にもA級ギルド「グランシャリノ」の手により、瞬く間に廃墟の街と化した。



0:時間経過

0:1991年12月25日


グランシオラ:「ーーーそうか。」


0:ノアの方舟。船内


グランシオラ:「中央政府も黙りを決め込むか。異能協会が裏で動いている間に、図らずとも時は重なったということだ。」


アガット:「ああ。あの調子じゃあ、一ヶ月は大丈夫だと思うぜ。ナンバーズが雁首揃えて来たところで、アリアンロードが帰ってきてウチもフルメンバーとくりゃあ何とかなる。」


グランシオラ:「アストレアが出張ってこない限り、だが。中央政府最高戦力をそう易々と売り出しはしないだろう。ナンバーズが二人も来た時点で驚いたさ。ビットマンが判断を誤ったか…。最も、それを退けるのもまた、思わぬ僥倖だったがね。」


アガット:「まあ、異常器の存在がデカイのは間違いねえだろうな。アチラさんからしても未知の領域だ。手を出し兼ねてるのも納得出来る」


グランシオラ:「そういう意味では、迎え入れた彼も十分に活躍してくれているという訳か。はは、いいじゃないか。」


0:グランシオラはデッキから地上を見下ろした


グランシオラ:「時間。場所。運。全てが私を風で煽っている。あとはそれを、丁寧に。そう、丁寧に。手のひらへ収めるだけさ」


0:場面転換

0:ノアの方舟 艦内2階


ジャイロ:「…」


レーヴェ:「よっ。ジャイロ。怪我の具合はどうだ」


ジャイロ:「…集中治療室から出てまだ2日だぜ?フラフラだっつーの。」


レーヴェ:「そっか。そりゃそうだ。」


ジャイロ:「何してきたんだよ。馴れ合うつもりはねえぞ。」


レーヴェ:「そんな釣れねえこと言うなよ。寂しいなおい」


ジャイロ:「…」


レーヴェ:「今日何食った?」


ジャイロ:「…」


レーヴェ:「あー。なんか趣味とかある?」


ジャイロ:「…」


レーヴェ:「明日何食べる?」


ジャイロ:「うるせえなっ。構うんじゃねえっつってんだよ…っ。アンタも大概しつこいな…!」


レーヴェ:「いいじゃん。同じ船に身を置く仲間だろ?」


ジャイロ:「冗談じゃねえ。お前らの事は今すぐにでも殺してやりたいくらいだ。」


レーヴェ:「いいね、その意気込み。」


ジャイロ:「馬鹿にしてんのかてめぇは」


レーヴェ:「お前、オーダーの息子なんだって?」


ジャイロ:「…。あいつから聞いたのか」


レーヴェ:「いや。まあ、うん。なんかそんな事言ってた気がしただけ」


ジャイロ:「…。実の息子じゃねえ。アイツが俺を拾っただけだ。二度と言うなよ、反吐が出る」


レーヴェ:「はは、目ェ覚ましてからずっとその調子だ。あれから、アイツにも会ってねえんだろ?名前、なんつったっけ。緑髪のガキ」


ジャイロ:「…今の俺は、もうノエルとは赤の他人だ。今更会わせる顔もねえよ。」


レーヴェ:「ふぅん。そうか。まあ、これから暫くは仲間なんだ。お前が変な気を起こさねえ限りはな。」


ジャイロ:「…お前。レーヴェンシュタインっつったな。」


レーヴェ:「あ?」


ジャイロ:「ガロの兄貴って、マジか。」


レーヴェ:「おお。案外バレてるもんだな。」


0:レーヴェは袖を捲った


レーヴェ:「ああ、そうだよ。ガロは俺の可愛い弟だ。アイツと仲良くしてやってくれてさんきゅな」


ジャイロ:「…だったら。なんでアイツの敵になるような事しやがる。」


レーヴェ:「お?」


ジャイロ:「可愛い家族だっつーなら。どうしてソイツが苦しむ道に立ちはだかるんだよ。」


レーヴェ:「…ああ〜。重ねてんな?自分とガロを」


ジャイロ:「黙れ。殺すぞ」


レーヴェ:「ああ、怖い。」


ジャイロ:「…」


レーヴェ:「別に。アイツが憎いわけでも、虐めたい訳でもねえよ。ただ、生憎俺は冒険家なんだ。」


0:レーヴェは分厚い本を見せた


レーヴェ:「グラン。ああ、グランシオラは面白い奴だよ。冒険家として見過ごす手はない。だから、ガロとは、お互いに見たい景色がぶつかっちまったってだけだな。」


ジャイロ:「…それだけか…?」


レーヴェ:「なにが」


ジャイロ:「それだけの為に、こんな事しでかしてんのか…?お前ら」


レーヴェ:「いやあ、他の奴らは知らねえけど。俺は、そうだな。自分が楽しいと思った方向に全力で進むだけだっ。自由に勝る生き方はねえ」


ジャイロ:「…狂ってんな。」


レーヴェ:「そうか?何かの為に自分の時間割くだなんて勿体ねえじゃん。短い人生だ、やりたい事だけやって死にてえ」


ジャイロ:「…もういい。引き止めて悪かったな」


レーヴェ:「おう、そんじゃあなあ〜ジャイロ・バニングス。」


0:レーヴェは手を振りその場を去った


ジャイロ:「…。」


0:場面転換

0:ノアの方舟 甲板


アガット:「よかったのか、姉御。無題の残党と異能狩りを会わせちまって」


グランシオラ:「構わないさ。彼の持つ異常器は十分に脅威になり得る。このまま取り込めれば良し。敵対するなら殺して奪ってしまえばいい。その時はオーダーがうるさそうだが、彼らと同様。動かぬ傀儡にしてしまえばいいだけの話だ」


アガット:「えっげっねえなあ。流石のわっしでも引くわ。いやほんとに」


グランシオラ:「こういう性分なのは知っているだろう。それとも何か、今更降りるかい」


アガット:「冗談。アンタが居る所が、わっしの死地だ。」


グランシオラ:「はは、相変わらず臭いね」


アガット:「うるせえやい。」


0:アガットは船内を眺めた


アガット:「まあ、酷だとぁ思うが。わっしも無題解体は一枚噛んでたんだ。今更どうこう言えやしねえわな。」


ジャガー:「そのぉ一枚ってのは、ウチの人口異常体を勝手に持ち出したっちゅー奴かいな。ええ?」


グランシオラ:「やあ、ジャガー。禄戀会の彼女は無事仕留められたかい」


ジャガー:「勿論。と言いたかったけど、残念。途中で気付いてもうたわ。アイツに変に手ぇ出したら、いよいよ禄戀会がマジプッツンしよるからな。ジッコに言って途中で投げ出させたわ、つまり生きとるで。」


グランシオラ:「そうか。まあ、仕方がない。アホレンジャーの一行の消息が分かっただけでも上々か。」


アガット:「とか言ってよぉ、単純に負けそうになったから逃げ帰ってきただけじゃねえの。アンタらバグテリアの連中はイマイチ信用ならねえ」


ジャガー:「まぁた心外な事いいよる。アンタらとは利害が一致しとるから協力するって話をしたはずや。それとも、単純にワイの実力を疑ってるってんなら。ここで暴れてもええで」


アガット:「なんだぁ。やるかよ。表出ろ」


ジャガー:「ここ表やろが」


ポルジッコ:「ジャガー、やめておけ。」


ジャガー:「ああ〜うるさいおっさんが…。元はと言えばお前の話やぞこれ」


ポルジッコ:「独立宣言まで残り1日だ。それまで我慢しろ」


ジャガー:「はいはい、わかってますぅ。ワイはただバラエティとしての威厳をやな…」


ポルジッコ:「グランシオラ」


グランシオラ:「なにかな。」


ポルジッコ:「バグテリアで、ガロンドール・ウォンバットの姿を確認した、との報告があった。近々、奇襲をかけられてもおかしくない」


グランシオラ:「まあ、だろうね。林檎くんが居れば容易だろう。」


アガット:「姉御がその辺抜けてるわけないだろ、舐めんな。」


ポルジッコ:「一応の忠告だ。お前達は何かと裏で好き放題動くからな。テオ・グルーガンの時もそうだったろう」


ジャガー:「ああ〜そうそうっ。ウチから持ち出した人口異常体っ。そや、その話でイチャモンつけたろ思っとったんや」


グランシオラ:「過ぎたことだろう。結果的に、君達の益にも繋がった。こうして私達へ力を貸す形でね。何のリスクも負わずにドイツを出し抜けるのだから、投資だと思ってほしいな」


0:場面転換

0:時間は遡る


林檎:(M)1984年。7月。


林檎:(M)有害指定ギルド「無題」の第二次解体作戦が秘密裏に行われた年。


林檎:(M)それはギルドが現在の複雑な運営体制となり、また、中央政府との関係に亀裂を産んだ年とも言える。


林檎:(M)事の発端は、第二次無題解体作戦から丁度一年前。1983年。7月。テオ・グルーガンという男が、無題に拾われた事に遡る。


テオ:「おい…!離せっ。このガキ…!」


オーダー:「いいから来い。」


テオ:「くそ…!中央政府の人間かっ。それともギルドかよっ。」


オーダー:「どっちかと言えばギルドだ」


テオ:「どっちかと言えばってなんだよ!」


0:とある洞穴

0:カードゲームをしている4人


ラテ:「ワンペア」


ヒュウリ:「ツーペア」


ジャイロ:「ふふふ、雑魚が、消えろ。」


ラテ:「言葉強すぎ」


ジャイロ:「フラッシュだッ…!」


ヒュウリ:「おお。」


ラテ:「そりゃ強気になりますわ」


サーティーン:「…」


ジャイロ:「はははっ、どうだサーティーン。」


サーティーン:「フルハウス」


0:サーティーンはカードを見せた


ジャイロ:「…」


ヒュウリ:「…」


ラテ:「…」


サーティーン:「じゃあ、今晩のパンは俺のものって訳で」


ジャイロ:「まだだ…ッッ…!」


ラテ:「え」


ジャイロ:「俺は、今週の飯全部をベットする…!」


ヒュウリ:「うわ。破産するやつの考え方だ」


ラテ:「流石に降ります」


ヒュウリ:「俺も」


ジャイロ:「ぐふふ、これで1VS1だけど、どうすんだあ〜?逃げんのか、勝負から、ああんこらんッあ〜ん?」


サーティーン:「はは、いいさ。はらぺこあおむし宜しく」


0:2人はカードを引いた


ジャイロ:「…」


サーティーン:「…。今月分の肉料理全部をレイズする」


ジャイロ:「え?」


ラテ:「うげえ」


ヒュウリ:「よくやるわまじで」


サーティーン:「ああン?なんだその弱気な声はよォ〜ん。逃げんの、かぁん?ああン…??」


ジャイロ:「あ、ああ〜…ああいいさ!!やったらあおい!!」


ラテ:「チェンジは?」


0:2人は同時に声を出した


ジャイロ:「無しだ」


サーティーン:「無しだ」


ヒュウリ:「強気だなあ」


ラテ:「今週の飯と今月分の肉料理全てを賭けた健全な勝負っ。手札を!」


ジャイロ:「うおおおお!」


サーティーン:「どりゃああ!」


0:時間経過


オーダー:「ただいま」


ラテ:「あ!おかえり、オーダーっ。」


ヒュウリ:「汗だくじゃないか」


オーダー:「いやあ、今年は暑いね。さすがに参る」


0:奥で挫けているジャイロを見る


オーダー:「…なんでジャイロはあんな隅っこで小さくなってるんだ?」


ラテ:「あー。今週の飯と今月分の肉料理全部持ってかれたんだよね」


オーダー:「また賭けポーカーか、どうせ負けるのに。」


ヒュウリ:「それそれ。」


0:オーダーの麻袋を見る


ラテ:「…?オーダー、そのでかい荷物、なに?」


オーダー:「ん。ああ…」


ジャイロ:「まさかッッ…!飯か…っ!」


ラテ:「はっや。」


ヒュウリ:「飯だとしてもお前食べれないじゃん」


ジャイロ:「うるせえっっ。」


0:麻袋から手が見える


ラテ:「ん…?いや、人だ」


ヒュウリ:「人か。」


ジャイロ:「カニバリズムは趣味じゃねえぞ」


オーダー:「違う違う、よっこらせ」


0:麻袋を降ろした


テオ:「…」


ラテ:「…死んでる?」


ヒュウリ:「次の依頼じゃないか」


オーダー:「うるさいから気絶させただけだ。人をなんだと思ってる」


ラテ:「怪物」


ヒュウリ:「鬼」


ジャイロ:「悪魔」


オーダー:「お前ら飯抜き」


ジャイロ:「そんなあ〜っ。」


ヒュウリ:「だからお前はどの道食べれないんだって」


0:サーティーンが顔を出す


サーティーン:「おお、おかえり、オーダー」


オーダー:「ああ、ただいま。」


0:サーティーンは麻袋から見える男を見た


サーティーン:「……。殺したのか?」


オーダー:「お前らな…」


テオ:「ん…。」


オーダー:「彼はテオ。中央から追われている異常体だ。」


テオ:「…は…!ここは…!」


ラテ:「あ、起きた。」


0:テオは辺りを見渡す


テオ:(M)…ええ〜〜…?どこだここ。洞穴???誰だこの人たち。何してたんだっけ。そう、確か中央から追われてて、一心不乱に逃げてたら仮面を着けた子供が…


オーダー:「おはよう」


テオ:「……。」


0:テオは全速力で端へ逃げた


テオ:「だだだだだだだだ誰だアンタら!!何をするつもりだ!」


サーティーン:「はあ…。また新しいのを連れてきたのか。飽きないな、オーダー」


オーダー:「賭けポーカー中毒の君らに言われたくないな。」


0:オーダーはテオに近付いた


オーダー:「さっきは手荒な真似をしてすまない」


テオ:「ご、ごめんで済んだら要らないでしょ警察…!」


オーダー:「君が騒ぐのが悪い」


テオ:「騒ぐだろ!急に誘拐されたら!」


オーダー:「街中で騒いだら中央の連中がすぐ嗅ぎつける。」


テオ:「中央の連中じゃないのか…。じゃあやっぱりギルドの…」


オーダー:「そうだ。僕達は「無題」。と言っても、そう立派なものじゃない」


ジャイロ:「安心しろよ、ガキ」


サーティーン:「ここは安全だ。」


テオ:「いや。流石に嘘つけって感じなんだけど…」


ラテ:「ちょっと失礼しますねえ〜」


0:ラテはテオの身体に触れた


テオ:「ちょっと!いやんっ。急に触らないでください!」


ラテ:「はいはい黙った黙った。」


0:ラテは目を凝らした


ラテ:「Medicalメディカルcheckチェック


テオ:「え…?それ…」


ラテ:「結構怪我してる。暫くご飯も食べれてなかったでしょ。軽度の脱水症状も。」


ヒュウリ:「今年はとくに暑いからな。まずは水だな」


ラテ:「うん。めいいっぱい」


ヒュウリ:「WaterウォーターINイン


0:ヒュウリの手のひらから大量の水がバケツ1杯に注がれる


テオ:「やっぱり、異常性だよな…」


ラテ:「そーだよ。ここに居るのは、私たち含めて、全員が異常体。そこの物好きな仮面のおばさんが」


オーダー:「…」


ラテ:「…お姉さんが、私達みたいな身寄りの無い人間を集めてんの」


テオ:「お姉さん…?どう見ても子供じゃ…」


ヒュウリ:「オーダーは時を止める異常性を持ってる。ついでに自分の見た目年齢も盛ってる。」


オーダー:「いい度胸してんな」


テオ:「あ、で、でも、ギルドは中央から手配中の異常体は加盟させられないんじゃ…」


ラテ:「そーだよ。だから、私達は皆正式なギルドメンバーじゃない。ただオーダーに拾われてるだけの異常体。つまり犯罪者だよ、犯罪者」


0:ラテは慣れた手つきで治療を施す


テオ:「犯罪者って言った…。」


ヒュウリ:「法律の外でしか生きられないのが俺達だ。さ、飲め。」


0:ヒュウリはバケツを差し出した


テオ:「…」


ヒュウリ:「どうした。飲め。」


ラテ:「あれ、喉乾いてない?症状としてはしっかり脱水なんだけど」


テオ:「いや、カラカラなんですけど。それ、そこの人の手から出た水…ですよね…?」


ヒュウリ:「そうだが」


0:テオはバケツを突き返した


テオ:「遠慮します」


ヒュウリ:「飲んどけ。遠慮するな」


テオ:「いや、本当に遠慮してるとかじゃなくて。結構です」


ヒュウリ:「なんでだ。飲め。」


テオ:「本当に!本当に大丈夫なので!」


ラテ:「はは…。珍しく常識人枠か」


オーダー:「ラテ。暫く彼の面倒をお願いしてもいいかい」


ラテ:「はいな、任せてくだせえ」


オーダー:「ありがとう」


0:オーダーは奥へ向かった


テオ:「ホントおおおにっ。大丈夫なのでっっ。」


0:2人は同時に口を開いた


ジャイロ:「おいコラ餓鬼。」


サーティーン:「おいこら餓鬼」


ラテ:「ああもう…」


テオ:「な、なんデスカ」


ジャイロ:「てめえ、自分がまだ人間だとでも思ってんのか。常識の中で生きようとすんな。」


テオ:「いや、でも…手汗じゃないかこれ実質」


ヒュウリ:「手汗…」


ラテ:「よしよし」


サーティーン:「手汗だったらなんだ。どうせまだ中央から追われて1週間と経ってねえんだろ。」


テオ:「そ、それがなんだ…っ。」


ジャイロ:「その間どうやって暮らしてた」


テオ:「貯金でホテルに…」


サーティーン:「はあ〜甘ちゃんが。俺は頭の悪ぃガキが嫌いだ。あと1ヶ月。いや、お前みたいなボンボンは数日も一人で逃げ出してたら限界が来る。今日食う飯も、雨風凌げる場所も、当たり前に提供されるわけじゃねえ。」


0:ジャイロはしゃがみ込んだ


ジャイロ:「手汗だろうが、泥水だろうが、下水道のクソが混ざった馬鹿臭い水だろうが、喉が乾きゃあ啜るしか無くなる。それが、俺らが生きるって事だ。」


テオ:「…」


ジャイロ:「ヒュウリの異常性だってタダじゃねえ。反動がある。状況をさっさと飲み込め、ついでに水も」


ヒュウリ:「お前らな、いきなり当たってどうするってんだ」


サーティーン:「こういう馬鹿が嫌いなんだワ。自分は常識人です〜っつー顔して、与えられるもの全部に文句しか言えねえワガママなガキが」


ヒュウリ:「コイツだってまだ状況が飲み込めてないだけだ。そう目くじらを立てるもんじゃない」


ジャイロ:「はっ。こういう足並みズレた奴が一人いるでけで、集団ってのは簡単に崩れるもんなんだよ。」


サーティーン:「特に俺らみたいな犯罪者集団はとくに」


テオ:「お前らに、何が分かるんだよ…!」


ジャイロ:「ああ…?」


サーティーン:「ああ?」


テオ:「俺には…俺には、異常体になる前の記憶が無い…っ。気付けば中央から追われてて、逃げなきゃヤバいんだなって事だけ分かって、ひたすら見慣れない街を逃げ続けて、挙句の果てに仮面つけた訳分からんヤツにわけわからん場所に連れてこられた…!」


0:テオは泣き出した


テオ:「ずびッッ!うおおッ。お前らにっ。なにがわがるんだよぉ〜っ。」


ラテ:「あーあ。泣かした」


ヒュウリ:「なーかしたー。」


サーティーン:「…。お前のせいだぞ」


ジャイロ:「なんでだ。共犯だったろ」


テオ:「びえええっ。」


ジャイロ:「あぁ〜もう…すぐ泣きやがる…めんどくせえ…っ。」


サーティーン:「ジャイロ」


ジャイロ:「おう。」


0:二人は外に出た


ジャイロ:「ラテ!ヒュウリ!」


サーティーン:「あとは頼んだ!」


ラテ:「逃げた」


ヒュウリ:「逃げたな」


テオ:「うぐっ。うえっ。びえっ。おえっ。」


ラテ:「あ〜もう、泣かない泣かない。男の子だろ。あいつ、ジャイロと、サーティーンって言うんだけど。素行の悪い問題児なんだ、ごめんね。」


テオ:「うう」


ヒュウリ:「…中央に行ったら、毎日異常体を殺すか、殺されるかの毎日だ。ここでジリ貧してる方がずだとマシだと思うけどな」


テオ:「…」


ヒュウリ:「とりあえず、ちゃんと治療して、食うもん食って寝るべきだ。その後の事はゆっくり考えればいい。」


テオ:「押忍…ずびっ。」


0:時間経過

0:昼飯を食べている3人


ラテ:「へえ。再生の異常性か。随分珍しいね」


テオ:「まあ、自分以外のものしか再生できないけどな」


ラテ:「充分強力じゃん。ね?」


ヒュウリ:「ああ、ラテは身体の悪い所が見れるだけで治療までは出来ないからな。居るだけで助かる」


ラテ:「ねー。」


テオ:「そんな便利なものじゃない、使ってる間は自分の記憶が無くなるんだ。」


ラテ:「えっ。つまり誰かを再生してる間テオは刻一刻と記憶喪失に近付くの」


テオ:「ああ。」


ヒュウリ:「それはリスキーだな。ここに来るまでの記憶が無いのも納得だ。使い所は気を付けないといけない」


テオ:「まだアンタらの仲間になるって決めたわけじゃないぞ…っ。」


ラテ:「はいはい。」


ヒュウリ:「折角仲間になるんだ、俺達の異常性も明かすのがフェアという物だろう。」


テオ:「いやだから決めてないんだって。話聞けよ」


ヒュウリ:「俺は手の平から水を出すだけの異常性。…まあ、手汗だ」


テオ:「あ、いや。さっきは、ごめんなさい。別にそういうともりで言ったわけじゃ…」


ラテ:「まあ、ヒュウリもその気になれば人を簡単に殺せる異常性だよ。水圧は自在。総水量も1日に2tまでと、それなりに安定してる。」


テオ:「はえ…なんと言うか、異常性のすごい凄くないがイマイチ分からないからなんとも言えないけど…」


ラテ:「まあ、ヒュウリが居るだけで水源は確保できるからね。それだけでも凄くない?」


テオ:「それは…すごい。」


0:場面転換

0:森の中


ジャイロ:「ったく。なぁんであんな野郎の面倒まで見なきゃならねえんだ。オーダーも人を見る目がねえな、見る目が」


ラテ:『で、次がジャイロ。赤い髪のほうね。アイツの異常性は特殊で、収束と解放を併せ持つ異常性なんだ。左手で触れた現象を、右手で解放する。まあ、結構チート』


サーティーン:「知らん。アイツの考える事はイマイチ分からんからな。大事なことはいつも喋らねえしよ。」


ヒュウリ:『サーティーン。青髪の色黒のほう。アイツは断絶の異常性を持つ、これまたチートだ。削り取ったもんは跡形もなくどっか行っちまう。その行先はサーティーン自身も知らないんだと』


ジャイロ:「ぶぇえっくしょぉい!」


サーティーン:「はあぁっくしょおい!」


ラテ:『まあ、無題が色んなところに目を付けられて活動していられてるのは、二人が居てこそっていう側面が大きいかな。あの二人は中央相手でも食い下がれるくらい強いよ』


ジャイロ:「…なんでだ。」


サーティーン:「ああ。こんなに暑いのに。」


0:場面転換

0:とある洞穴


ラテ:「で、最後が我らが無題のママンこと、オーダー。あの人は本当にビッグスケールだよ。」


テオ:「ビッグスケール…?」


ヒュウリ:「元ナンバーズだからな。」


テオ:「…え?ええ!?ナンバーズって、ええ!?」


ラテ:「そ、中央政府最高戦力として抜擢されるステージ5の超ヤバい異常体。それが我らがママン。どう?安心でしょ」


テオ:「いやまあ、安心と言えば安心だけど…」


ラテ:「因みにオーダーの異常性は時間を止めるって言う…もう、なんか説明不要のチート」


テオ:「ええ…。」


ヒュウリ:「定期的に俺らを潰そうとギルドとか中央が動くが、オーダーとあの二人がいる限りまず負けないさ。安心していい」


テオ:「ちょっと待ってくれ」


ヒュウリ:「?」


ラテ:「?」


テオ:「いや。えっと、色々突っ込みたい事だらけだけど…なんで俺なんかにそんな事ホイホイ教えるんだよ、俺が裏切ってその情報流すかもしれないだろ」


ヒュウリ:「…ああ〜確かに」


テオ:「え」


ラテ:「それは考えてなかった」


テオ:「考えようよっ。一応は追われてる身なんだろ!?」


ヒュウリ:「でも、お前はもう家族だ」


ラテ:「うん。」


テオ:「え、ええ…。言ったよね…?まだ俺仲間になるって決めたわけじゃないって…」


ラテ:「まあ、この後の事をテオがどうするかは置いといて、少なくとも今はひとつ同じ屋根の下でご飯食べる仲だし」


ヒュウリ:「洞窟だけどな」


ラテ:「うっさい」


ヒュウリ:「でも、お前の異常性は他人の再生なんだろ。記憶が無いって事は、きっと誰かの為にその異常性を使ったんだ。」


ラテ:「それが出来る人間ってだけで、別に裏切られたら裏切られたでしょうがないよね」


ヒュウリ:「んだ。」


テオ:(M)この人たちは…どうかしてる!!!


ヒュウリ:「あ、今日の晩飯どうする」


ラテ:「確かに。お肉の貯蓄切れてたしな。」


テオ:(M)どうして知り合ったばっかの、記憶も無い怪しさ満点の俺なんかにここまで親切にできるんだ。


ヒュウリ:「ジャイロとサーティーン、帰りに肉買ってきてくんないかな」


ラテ:「それは無い。絶対にない」


テオ:(M)僕には出来ない、自分を犠牲に、ましてや自分を含む仲間を担保に人を信じるのは、これ以上なく怖い事だ。


ヒュウリ:「まあ、あいつらだしなぁ」


ラテ:「あいつらだしねえ」


テオ:(M)そんな姿に、素直にカッコイイと。思ってしまった僕も。多分どうかしてる。


0:時間経過

0:夜


オーダー:「…」


0:オーダーは何かの書類を見つめている


オーダー:「…どうするかな…」


ヒュウリ:「オーダー、晩飯だ」


オーダー:「ああ、今行くよ」


0:オーダーは書類を閉まった


オーダー:「テオの調子はどうだ」


ヒュウリ:「体調は随分良くなったと思う。暫く寝通して、さっき目が覚めた」


オーダー:「そうか。」


ヒュウリ:「ラテ、オーダー連れてきたぞ」


ラテ:「来た来た、ねえオーダー。ジャイロ見てない?」


オーダー:「ジャイロ?見てないね」


ラテ:「うーん。どこ行ったんだあいつ」


オーダー:「何かあったのか」


ヒュウリ:「テオと喧嘩してどっか行ったっきりなんだ。サーティーンの姿もない」


オーダー:「あいつら…」


テオ:「あ、お疲れ様、ッす…」


オーダー:「おはよう、体調はどうだ」


テオ:「お陰様で…」


オーダー:「そうか、よかった。生憎、あまり食料の備蓄が無い。タンパク質も取りたいところだったが、今日はパンで我慢してくれ」


テオ:「いや、全然、ご飯が食べれるだけで…。あの…」


オーダー:「なんだ?」


テオ:「すみませんでした…!!匿ってもらったのに、失礼なことばっか言って…!しかも、僕のせいで、二人…どっか行っちゃって…。全部僕のせいです、すんません…っ。」


ラテ:「だから、テオのせいじゃないってば」


テオ:「でも、もしもが…」


ヒュウリ:「ああ〜大丈夫大丈夫、その心配はない。お昼も言ったろ、あの二人ちゃんと強いから」


テオ:「いや、でも、中央だって…」


オーダー:「…。ああ、大丈夫だよ。噂をすれば影、だ。」


テオ:「え…?」


0:2人は猪と鹿を背負っている


ジャイロ:「はあ、はあ…っ。」


サーティーン:「はあ、はあ…」


テオ:(M)よかった…!と同時に、なんでこんな息荒くして泥だらけなんだと言う疑問が流れ込んで来て、なんとも言えない顔をしてしまった


サーティーン:「まだ居たのかクソガキ」


ジャイロ:「なんだあ、その顔は」


テオ:「あ、いや…!」


ラテ:「やっと帰ってきた。」


ヒュウリ:「何してたんだ」


サーティーン:「いや…」


0:2人は同時に喋る


ジャイロ:「なんか散歩してたら猪が襲ってきたからよ、こりゃあ丁度いいと思ってえ?猪肉好きだしな俺、カモだったぜまじで、いやあ〜あっちい〜」


サーティーン:「なんかその辺歩いてたら?鹿がノコノコと歩いてたもんだからよ、喧嘩売ってる目をしてやがったからまじチョベリグ。いやあ〜あっちい〜」


テオ:「…?」


ラテ:「…つまり?」


0:2人は同時に喋る


ジャイロ:「肉食おうぜ!!」


サーティーン:「肉食おうぜ!!」


オーダー:「…はっ。」


ヒュウリ:「なんか、キモイ」


ジャイロ:「はあ!?」


サーティーン:「どこがきめぇんだよコラ表出やがれこの野郎!」


ラテ:「普通にテオの為って言えばいいのに」


ジャイロ:「俺の為だ!!!」


ヒュウリ:「お前食えないじゃん。賭けポーカー負けてんだから」


サーティーン:「ぷっ。」


ジャイロ:「お前が笑ってんじゃねえよコラサーティーン!」


サーティーン:「なんだァやんのかコルルァ!」


テオ:「…はは、ははははっ。」


ジャイロ:「…え?」


サーティーン:「壊れた?」


ジャイロ:「多分」


テオ:「…ホント。かっこいいなあ。」


ジャイロ:「ふ、ふふ。まあね?」


サーティーン:「調子乗んの早すぎだろ」


テオ:「…っ。ジャイロさん、サーティーンさん。」


0:テオは深深と頭を下げた


テオ:「まじ、ありがとうございますッッ!!」


ジャイロ:「…」


サーティーン:「…」


ラテ:「なんで黙る」


ヒュウリ:「ほっとけよ、素直じゃねえんだから。」


ラテ:「はあ〜きも。」


ジャイロ:「キモくねえだろうが!!」


サーティーン:「表出ろお前ら!!」


オーダー:「それはそれとして。」


0:オーダーは二人の頭を掴んだ


オーダー:「会って早々、テオを虐めたそうじゃないか」


ジャイロ:「…いやあ…」


サーティーン:「これには…訳が…」


オーダー:「どんな言い訳だ」


ジャイロ:「…サーティーン」


サーティーン:「…ああ。」


0:二人は走り出した


ジャイロ:「逃げるんだよォ〜!!」


サーティーン:「逃げろジャイロ!風のように!」


ジャイロ:「ぎゅるるんっ。ぎゅるるんっ。」


オーダー:「待てお前ら…!」


テオ:「…え…?えっと、え?」


ラテ:「あーいいよいいよ、いつもの事だし。」


ヒュウリ:「ああ、俺達は晩飯の準備をしよう。急遽肉も調達してくれた事だしな」


ラテ:「テオ、手伝って」


テオ:「…。押忍…!」


0:場面転換

0:時間は現在に戻る

0:ノアの方舟


ジャイロ:「…」


ラテ:「ジャイロ、ジャイローっ。」


ジャイロ:「…!」


ラテ:「聞いてる?」


ジャイロ:「…ああ。聞いてる。なんだ?」


ラテ:「復帰早々無茶したって聞いたから。怪我、大丈夫?」


ジャイロ:「…ああ。大丈夫だ。ありがとな。」


ヒュウリ:「水は飲んどけ、四日間の脱水は無理してでも取り戻した方がいい。」


0:ヒュウリはペットボトルを手渡した


ジャイロ:「…ああ。」


ヒュウリ:「大した治療も出来なくて悪いな」


ジャイロ:「いいさ、これは勲章みたいなもんだからな」


ヒュウリ:「…なんつーか。丸くなったな。老けたし」


ジャイロ:「…そうか?俺からしたら、お前らが昔のまま過ぎんだよ。…ホント、頭抱えるぜ」


ラテ:「…」


ジャイロ:「……。」


0:一人黙るジャイロと、手当する二人


ジャイロ:「…なあ。お前ら」


ラテ:「なに」


ジャイロ:「…もう。俺もここに居ようかな」


ラテ:「…それは勿論、私達は大歓迎だけど。」


ヒュウリ:「でもそれはお前が決めることだ。俺達に聞くことじゃない」


ジャイロ:「……もう。いいんだ。」


ヒュウリ:「…」


ジャイロ:「お前らがまだ居るなら、俺の居場所はもう決まってる。サーティーンだって、俺の手元に居る。あの時と同じように…。」


ラテ:「…うん。」


ジャイロ:「……。あの日、全部捨てた。捨てたと思ったもんが。いきなり目の前に現れたんだ。そりゃあ、手を伸ばしたくもなる。」


0:回想

0:7年前


林檎:(M)西暦1984年。第二次無題解体作戦当日。


オーダー:「…今日は皆に報告がある。」


サーティーン:「ほお、こりゃまた。改まって」


ラテ:「えっ。誰かの誕生日!?」


ジャイロ:「だとしたら俺だな」


ヒュウリ:「お前先週も誕生日って言ってたろ。」


サーティーン:「ジャイロの誕生日は年に8回来るぞ」


ジャイロ:「流石兄弟、よぉく分かってる」


オーダー:「…。まあ、誕生日というか。めでたい日、という解釈も有り得る。テオ」


テオ:「…。押忍っ。」


ジャイロ:「あ…?なんだよ、どうしたクソガキ」


サーティーン:「おねしょ報告か」


テオ:「…。違います!」


0:テオの真剣な表情を受け取る


ジャイロ:「…。そうか。じゃあなんだ?」


テオ:「…今日で。無題を出ようと思います」


ラテ:「…!」


ヒュウリ:「…。なんでだ」


テオ:「…。自分は、ここに来るまでの記憶が無いです。でも、日を経つにつれて失った記憶が戻って来るのが分かるんです」


ラテ:「…」


テオ:「自分は、人の手で作られた異常体でした。」


ヒュウリ:「…人の手で…?」


ラテ:「そんな事、有り得るのか」


オーダー:「バグテリアでは数件報告があるみたいだ。恐らくテオは、バグテリア出身だろう。そして、何者かの手によって、バグテリアの外に放たれた」


ヒュウリ:「放たれたって、まるで分からん。どうしてそれがテオがウチを出ていく理由になる」


テオ:「僕は。無題の居場所を割り出す為の道具でした。」


ヒュウリ:「…」


テオ:「頚髄に発信機が埋め込まれています。正直、もうとっく居場所は割れてるのに、何も動きがないのは。準備段階だからだと思うんです。だから、事が動き出してしまう前に出ていきます。僕がこれ以上ここにいると。皆に迷惑がかかる」


ラテ:「…」


テオ:「僕は。皆に生きていて欲しい。だからーーー」


ジャイロ:「余計な建前使ってんじゃねえよ」


サーティーン:「そんな見え透いた嘘つく程信用ねえか。俺らは」


テオ:「…え…」


オーダー:「…」


ラテ:「え、嘘なの?」


ヒュウリ:「分からん…」


ジャイロ:「お前は元気だけ良いのにすぐサボるからな。大体嘘ついてる時は、右手を後ろに隠す癖がある」


サーティーン:「人の目を見ず、俺らの鼻先見る癖もある」


ジャイロ:「右鼻がピクピクする」


サーティーン:「全部。お前と一緒にいた一年で見た。正真正銘のお前だ。俺はぽっと出の情報より。今までのお前を信じる」


ジャイロ:「その上でもっかい聞くぞ。そんなに信用ねえか。俺らは」


テオ:「…」


オーダー:「…お手上げ、だな。ここから僕が話すよ」


サーティーン:「お前が言わせたのか、オーダーてめぇ」


テオ:「違います…!自分で言うって、僕が言ったんです…!」


オーダー:「…。テオに記憶が無いというのは本当だ。ただ、思い出したわけじゃない。僕が、初めから全て知った上で引き入れた」


ジャイロ:「…あ?」


オーダー:「テオの本来の目的は、無題解体作戦に対してのジョーカー。僕達を雲隠れさせない為の切り札。最初に会った時、テオは僕にすり着くように接してきた。その時は、テオと。恐らくはテオを差し向けた機関の人間の二人でだ」


テオ:「…」


オーダー:「敵なのはすぐに気づいた。だからテオと一緒に居た人間を殺した。どう立回るものかと見てみたら、テオは自分の身を顧みず、僕が首を跳ねた人間を再生させた。自分の記憶と引き換えにだ。」


ラテ:「…まあ。テオならそうするだろうけど」


オーダー:「圧倒的に自分より強い人間の目の前で、記憶を失ってまで、人を救おうとした。こんな優しい子が、いいように使われている。その後記憶を失ったテオを無題に連れてきたのは。僕がテオという人間を信じたからだ。」


テオ:「…っ。」


オーダー:「だが。発信機が埋められている事までは察し切れなかった。これは僕の失態だ。皆、ごめん。僕一人の独断で、皆を危険に晒している。テオにも、余計な心労をかけた。本当にごめん。」


ラテ:「…なんでその事、私達に言わなかったの」


オーダー:「…」


ヒュウリ:「テオを置くことに反対意見が出ると思ったからだろ。アンタは優しいから、全部自分でどうにかしようとする。」


オーダー:「…すまない。」


ジャイロ:「はっ。結局自分でケツ拭けてねえなら世話ねえな」


ラテ:「おいジャイロ」


サーティーン:「まったくだ。かのアストレアにも並ぶと言われるオーダー様がこのザマだしな、所詮は人一人だ。」


ヒュウリ:「おい、空気読め。いい加減にしろ」


ジャイロ:「でぇ?」


0:ジャイロは机に足を置き、サーティーンも同様に机の上で足を組んだ


ジャイロ:「テオ。お前どうしたいの」


サーティーン:「テオ。お前どうしたいんだ」


テオ:「え…?」


サーティーン:「まだ聞いてねえよ。お前の本音。まじでこっから出たいのか」


テオ:「…でも、僕が居たら皆に迷惑がかかるって…」


ジャイロ:「話わかんねえ馬鹿だな。俺らの事は度外視に、お前がどうしたいかを聞いてるんだよ」


テオ:「いや、だから…!こんな重要なこと天秤にかけずに発言できないって…!」


サーティーン:「かけんなっつってんの。言語違うか?クソガキ」


テオ:「無理ですよ!!僕は、皆が、大好きだから…っ。僕が出ていくのが、一番いいんだって、分かってるから…!」


ジャイロ:「うるせーーーーーーよばか」


テオ:「…」


ジャイロ:「お前はここに居たいのか」


サーティーン:「出ていきたいのか。」


ジャイロ:「どっちだ。」


テオ:「…」


0:テオは拳を握った


テオ:「…いいんですか。ワガママ言って」


サーティーン:「いいっつってんだ」


ジャイロ:「ガキはガキらしく言いたいこと言え」


サーティーン:「ここにいる誰一人。お前を迷惑だなんて思わねえよ」


ラテ:「勿論。そんなこと今更聞く?」


ヒュウリ:「野暮だな。」


テオ:「…っ。」


オーダー:(M)皆。本当に優しい子達だ。僕なんかよりも、よっぽど


テオ:「…ここに。居たいです…!」


ジャイロ:「おう。そんで?」


サーティーン:「言うことあるよな」


テオ:「〜〜っ…!」


0:テオは頭を下げた


テオ:「皆さんに迷惑かけちまいますけど!!!何卒、面倒見てやってください!!!」


ジャイロ:「…」


サーティーン:「…」


ラテ:「へへ、よっこらせ」


テオ:「え。なんですか。なんで近付いてくるんですか」


ヒュウリ:「ふぅ〜。よし。」


0:4人はテオの背中を叩いた


テオ:「いっっったぁ!?」


オーダー:「…はは。」


テオ:「え?え?」


0:4人は同時に口を開いた


ジャイロ:「任せとけ」


サーティーン:「任せろ」


ラテ:「任せなさい」


ヒュウリ:「任せろり」



テオ:「…っ…。」



テオ:「ありがとう…っ。皆…!」



林檎:(M)作戦開始 1984年。7月。18時23分。


ジャイロ:「俺はここまでだ。フランスで暫く足止めする。」


サーティーン:「ああ。そっちもかなりの架橋になるだろうが、気ぃ抜くなよ。」


ジャイロ:「はっ。誰が。幾度とあった試練だよ。こんなもん」


サーティーン:「そうだな。なんのこれしき、乗り越えられねえ様じゃあ。傷ついちまうからな。名誉」


ジャイロ:「おお、いいね。それ、気に入った。使うわ」


サーティーン:「取るな。」


ジャイロ:「は、じゃあ全部終わったら返すよ」


サーティーン:「…。なあ、兄弟。」


ジャイロ:「ばァか。言わない覚悟ってもんがあんだろ。あの場に居た全員が、そのつもりで事に挑んでる。」


サーティーン:「…そうか。そうだな。」


ジャイロ:「まあ、運が良けりゃあ。また会おうや」


サーティーン:「…じゃあな。ジャイロ」


ジャイロ:「あばよ。サーティーン。」



林檎:(M)中央政府から監察官42名。執行官が39名。警察機関併せて423名。ギルドから52名。総数556名が第二次無題解体作戦に当たる。



0:肺から息が毀れる


ヒュウリ:「………」


林檎:(M)18時42分。場所を同じくして。ヒュウリ・ダドリー。膵臓破裂。左右肺破裂。左眼破裂。右太腿から断裂。再起不能と判断


ラテ:「…はぁ……はぁ…おえ…ッ。おぇえッ…。」


林檎:(M)18時53分。イタリア アブリア地区にて。ラテ・ウェルダン。全身骨折。右上腕から断裂。右半身に重度の火傷を負い、再起不能と判断。


サーティーン:「……」


グランシオラ:「やあやあやあ。君が、サーティーン・アーガイルくんだ。」


サーティーン:「誰だお前は」


グランシオラ:「私は…。いいや、まだ名乗るには早いか。そう、粋が良いのが残っていたね。君のはいい座標だ。是非欲しい」


サーティーン:「…」


グランシオラ:「イタリア北東戦線の人員配置には、オーダーと言えど誤算だったろう。優秀な探偵の読みとは恐ろしいものだ」


サーティーン:「…」


グランシオラ:「ギルドも介入。中央政府も介入。初めから命を賭けていたにしろ。ここまで為す術なく立ち行かなくなるとは思いもしなかったわけだ。」


サーティーン:「よく喋るな。お前は」


グランシオラ:「…。怒っているのかい?なぜ怒る。君達は、こうなる事を見据えてテオ・グルーガンを手放さなかったんだろう。同胞の死に直面すれば怒り出すのか?それは君達の責任だろ」


サーティーン:「もういいよ。喋んな。」


グランシオラ:「ふむ。君もその重症だ。もう助かりはしないだろうが」


サーティーン:「……。」


グランシオラ:「いいや。やめておいた方がいい。今から君のすることには意味がない。」


サーティーン:「殺す」


グランシオラ:「まあ。普通そうする。私だってそうする。君は間違ってないよ。オーダー・アルバーナだって、そうだった」


サーティーン:「…あ?」


グランシオラ:「はは。異常体じゃない私が何故ここまで前線に上がったか、分かるかい。決して君を侮ってでは無い。上がっているんだよ、気分がね」


サーティーン:「…」


グランシオラ:「ようやく、彼女を手駒に出来る」


林檎:(M)19時21分。イタリア シェフロア山脈近郊にて戦闘報告。サーティーン・アーガイル。全内臓系全裂。下半身断裂。再起不能と判断


テオ:「…サーティーン…さん…。」


林檎:(M)19時30分。場所を同じくして、テオ・グルーガン。下半身断裂。再起不能と判断。


テオ:「……っ…。」


サーティーン:「…テオ」


テオ:「…」


サーティーン:「自分を、責めんなよ。お前は、間違ってない。俺達はただ、生きていただけだ。」


テオ:「…」


サーティーン:「だから。それはやめてくれ。もう、余り意味を見いだせない」


林檎:(M)19時32分。テオ・グルーガンの異常性発動を座標により観測したが、それを皮切りに絶命したと見える。


サーティーン:「……。」


林檎:(M)19時33分。完全復活したサーティーン・アーガイルが再び活動を開始。それから40分間、配置された職員総勢343名を鏖殺。


サーティーン:「…」


オーダー:「…サーティーン。もうやめろ」


サーティーン:「…何を?」


オーダー:「駄目だった。ナンバーズもフルメンバーが出張ってきた。ここまで規模が大きくなるとは思わなかった。私達の、完敗だ」


サーティーン:「…思わなかったって…?それだけで。兄弟の死を受け入れろってか?」


オーダー:「…」


サーティーン:「グランシャリノと取引したんだろ。俺らを化け物みてぇにして生かす代わりに、この事態を終せるって」


オーダー:「…聞いたのか」


サーティーン:「そんな馬鹿げた提案を飲むやつだとは思わなかった」


オーダー:「グランシオラの目的は私の異常性だそうだ。だったら、そう決着を付けるのが最善だと思ったんだよ」


サーティーン:「そうまでして生きたいと思わねえよ。俺らは。」


オーダー:「…っ…。」


サーティーン:「どうせ死ぬなら、お前と同じ心持ちで死にたかったよ。俺は」


オーダー:「…っ…。サーティーン…。そこをどいてくれ…っ。」


サーティーン:「焦ってんだろ。早くしないとラテとヒュウリが死んじまうって。この事態から俺らが手を引かないと、収集がつかねえんだろ」


オーダー:「…そうだ…っ。」


サーティーン:「思っていた事と違った?予想外だった?想定していなかった?想像以上だった?そんなモンは俺らだって同じだった。それでもお前は」


0:サーティーンは地面を蹴った


サーティーン:「また一人で全部決めやがったな…!」


オーダー:「…ごめん」


サーティーン:「俺はこのまま。自分が死ぬまで。手当り次第に人を殺すぞ」


オーダー:「やめてくれ、それにはもう意味が無い…っ。」


サーティーン:「俺にとっては意味がある。アイツらをあのまま、人間として死なせてやるのが、俺の意味だ。」


オーダー:「死んで欲しくないと思うのがそんなに悪いことか…っ…!」


サーティーン:「死ぬ覚悟でテメェに着いて来てたんだだよ俺らは!最初っから、最初からだ…!こんな事してんだ、俺らは犯罪者だ!誰にも生きてる事を望まれてない…!でも、それで良かった。それで良かったんだよ。お前らが、居たから」


オーダー:「なん、だよ…っ。僕だけかよ…っ。皆に生きてて欲しいって、皆とまだ一緒にいたいって思ってたのは…!」


サーティーン:「…」


オーダー:「僕だけかい。この夏を終わらせたくないのは」


サーティーン:「…良かったよ。それが聞けて。」


オーダー:「…っ…」


0:オーダーは拳を握りしめた


オーダー:「そこを。どいてくれ。サーティーン」


サーティーン:「…俺がお前に勝てると思っちまうほど馬鹿じゃない。ヒュウリとラテを助けるなら、俺を殺すことには意味がある。」


オーダー:「…ああ。」


サーティーン:「後悔はない。お前の事を憎んでもない。ただ、もっと頼って欲しかったって。駄々こねてるだけなんだ。」


オーダー:「…っ…。」


サーティーン:「これ以上言葉はねえ。あとはもう。兄弟に任せる。」


オーダー:「ごめん。サーティーン」


サーティーン:「謝るなら、最初からやるんじゃねえよ。」



林檎:(M)20時29分。

オーダー・アルバーナ

サーティーン・アーガイル。

ラテ・ウェルダン。

ヒュウリ・ダドリー。

計4名の遺体失踪が報告されたが、

現場報告から生存は不可能に近いと判断。

無題残党の捜索を含め、22時14分。作戦終了。

こうして無題は表舞台から姿を消した。

元ナンバーズがギルドに潜入し、

6年間にも渡ってギルドの秘匿性を利用し活動し続けた事を中央政府は強く指摘。

ギルドの運営体制には中央政府の見直しが入り、

中央政府とギルドの関係性は悪化の一途を辿った。


0:場面転換

0:フランス リベール


ジャイロ:「…これが。サーティーン、だぁ?」


オーダー:「…そうだよ。」


ジャイロ:「こんな鎌一本が、アイツだって。マジで言ってんのか。遺体は全部行方不明になったんだろ。全員無事なんだろ。なあ、オーダー」


0:ジャイロは鎌を握った


ジャイロ:「………ただ…肌で分かっちまう…。なんの根拠もねえ、証拠にもならねえ、予感が俺に訴えてきやがる。コイツが、俺の親友だって。」


0:ジャイロはオーダーの胸ぐらを掴んだ


ジャイロ:「応えろよ。どうしてこうなった…!俺がフランスで足止めしてる間に、何が起こった…っ!俺は…全力で守った…!はっきり言って死ぬ気だった!!けどどうだ…?蓋を開けりゃあ、イタリアはフランスよりよっぽど動員戦力が多かった…!じゃあ俺は、何を守って戦ってたんだよ…っ…!!」


オーダー:「…状況は絶望的だった。皆が死ぬくらいなら。どんな形でも、生かしたかった。ただ、それだけだった。」


ジャイロ:「…冗談じゃない。」


オーダー:「…」


ジャイロ:「冗談じゃあないぜ、オーダー……!」


オーダー:「…。その鎌は。君に預ける。サーティーンの希望だ」


ジャイロ:「おい。待て。どこ行きやがる」


オーダー:「君は。僕とは来ないだろ」


ジャイロ:「……」


オーダー:「君は、サーティーンと親友だからな。僕でも分かる。君は、絶対にそれを選ばない」


ジャイロ:「ふざけんじゃねえ。何勝手に決め付けてやがる…っ。」


オーダー:「分かるさ。家族だからね」


ジャイロ:「…ああ。そうだな。俺にも分かるよ。お前は、俺達の事なんか信用してない。」


オーダー:「…」


ジャイロ:「全部全部、お前一人で決めやがる。お前だけか?お前だけの人生か?」


オーダー:「…」


ジャイロ:「俺達家族の問題だろうが…!!」


オーダー:「もういい。」


ジャイロ:「ああ…?」


オーダー:「僕が間違ったんだ。ただそれだけの話だよ」


ジャイロ:「それ、だけの話なわけがねえだろうが…!」


オーダー:「もうやめてくれ。」


ジャイロ:「…」


オーダー:「僕じゃあ。君たちを幸せに出来ないどころか。不幸にしかできない」


ジャイロ:「…だから…なんでお前がそんなこと勝手に決めーーーー」


オーダー:「ーーーー「私」はもう、背負いたくなくなった…っっ…!!」


ジャイロ:「…は…?」


オーダー:「失敗続きの人生だよ。あの時も、今回も。…きっと僕には、君達の気持ちを、自分の事のように理解できる日が来ない。」


ジャイロ:「…」


オーダー:「だから。もういいんだ」


ジャイロ:「…弱い奴に気ぃ使うのが疲れるってか」


オーダー:「そうだよ。」


ジャイロ:「…っ…。」


0:ジャイロは拳を握った


ジャイロ:「…これっきりだ。」


オーダー:「…。うん。」


ジャイロ:「…」


オーダー:「じゃあね。ジャイロ」


0:オーダーはその場から去った


ジャイロ:「……」


0:ジャイロは鎌を抱えている


ジャイロ:「…オーダー…」



ジャイロ:「…オーダァァアアアアアアッ!」



0:


ジャイロ:(M)長い。長い月日が経った。今までの事を忘れるように。あの夏を、グシャグシャにかき消すように。異常体を殺し続けた。


ジャイロ:(M)結局。生まれ育ったリベールに戻ってきた。


ジャイロ:(M)それからの事は、あんまり覚えちゃいねえ。ただ、サーティーンは、俺の為には使わねえと決めた。それは、親友の名誉を傷つけちまう。


ジャイロ:(M)全てを諦めた。誰に隷属されることも無い。自由を満喫した。一人で生きるという事を。1ヶ月の食費の安さを知った。シングルベッドの広さを知った。夜中、誰もイビキをかかない静かで快適な睡眠を知った。誰とも話さない一日もあった。口を開けば喉の奥が乾燥して張り付く感覚。いつまでも頭が冴えない午前中。一日が、余りにも長い。


ジャイロ:(M)いや。考えるな。何も考えんな。今までと同じさ。人様から褒められるような人生じゃねえ。悪事が暴かれりゃそれまで。終わりの見え切ってた生活だ。どうせこれから、いつか無題の残党だとバレて追われる。そうなったら…どうすっかな。まあ、まずはリベールを出るか。中央も出張ってきたらどうせ捕まる。前歴からして死刑はま逃れない。…もう何も頑張りたかねえ。真剣になりたくねえ。…そうだな。ああ、死刑台に立つまで精々胡座かいて過ごそう。


ジャイロ:(M)なるがまま。人生のおまけを謳歌した。足が地面にめり込むような重いあの夏の日々も、いつしか輪郭がぼやけてきた。他人の夢みてぇな。次第に、肩は軽くなった。誰も俺に構わねえ。誰も俺に頼らねえ。…そうだよ。これほど、身軽なことは無かったんだ。


ジャイロ:(M)あの時までは


ガロ:「俺は、ガロンドール・ウォンバット!冒険家だっ。」


ジャイロ:(M)頭のおかしい田舎っぺが俺に手を差し伸べるまで


0:現代へ戻る

0:ノアの方舟 医務室


ジャイロ:「もう。今の俺には、今の仲間が居るんだ。そいつらを捨ててもいいって。本気でそう思ってたら。お前らは俺をどう思う。」


ラテ:「……。」


ヒュウリ:「…。」


0:2人は声を揃えた


ラテ:「嘘つけって思う」


ヒュウリ:「嘘つくなって思う」


ジャイロ:「…っ。」


ラテ:「ジャイロは、口は悪いし素行は悪いし、女癖も悪いけど。仲間を。家族を裏切るようなやつじゃない。」


ヒュウリ:「ましてや。もう一回、サーティーンを呼んでもいいと思えるやつだったんだろ。」


ラテ:「だったら、それは嘘だよ。」


ヒュウリ:「怖いだけだろ。また、あの時みたいになるのが」


ジャイロ:「…怖がって。何がわりぃんだよ。」


0:ジャイロは俯いたまま口を零した


ジャイロ:「…なん、なんだよ…。何の連絡も寄越さねえで。オーダーとまだ、お前らだけ、あの時のまま。ずっと過ごしてて…。ポッと俺の前に現れて、あの時のまま、本当に。そのまま。アイツが俺らに何をしたのか、分かってるだろ…。辞めてくれ、もう。閉まったんだ。お前らのことは。二度と出てこないでくれ。良いような、悪いような、訳分からねえ夢を見てる気分だ。ああ、自分でも何を言ってるのか分からなくなってきた…っ。そのくらい俺は今。安心と混乱でどうにかなっちまってんだ」


ラテ:「…」


ジャイロ:「お前らには、俺を置いてった責任がある。俺に一人を強要させた責任がある。だったら、嘘だと気付いても俺を否定すんじゃねえよ…っ。」


ヒュウリ:「じゃあ初めから聞くな。俺は言ったぞ。お前が決めることだ。俺達に聞いて、お前が満足する質問じゃない」


ジャイロ:「…」


ヒュウリ:「止めて欲しいだけか、メンヘラ」


ラテ:「暫く見ない間に随分丸くなったし、情けなくなったね」


ジャイロ:「…っ…。」


ヒュウリ:「昔の強気はどうした」


ジャイロ:「……あの時は。親友が。サーティーンが居た。今は…」


ラテ:「今も居るだろ、そこに」


ジャイロ:「……」


ヒュウリ:「お前は、自分に都合のいい言い訳を並べて、俺達を通して納得したいだけだ。」


ラテ:「違う?」


ジャイロ:「……違う。違うさ」


0:ジャイロは歯を噛んだ


ジャイロ:「だって…それを認めちゃあ…俺は、俺なら、お前らを殺す選択肢を選ぶしかなくなる…っ…。」


ラテ:「…。どうしてそう思ったの」


ジャイロ:「…だってよお。ラテ。お前、触診なんかしなくても怪我してる場所わかるだろ」


ラテ:「…」


ジャイロ:「ヒュウリ。お前、水出せるだろ。なんでペットボトルなんざ寄越しやがる」


ヒュウリ:「…」


ジャイロ:「……お前らもう。異常器になっちまったんだろ。」


ヒュウリ:「…。」


ジャイロ:「ずっと考えてた。見覚えのねえ武器をずっと持ってる。異常器に異常性を移した奴ってのは、その異常器を持ってねえと、植物人間みてぇになっちまうんだろ。」


ヒュウリ:「…そんな事まで知ってたか」


ジャイロ:「答えてくれ。俺の。今後に関わる」


ラテ:「…そうだよ。私達はもう、生きてない。異常器によって生かされてるだけの。玩具みたいなもの。」


ヒュウリ:「…。俺達だけじゃない。オーダーもそうだ。」


ジャイロ:「……そうか。」


ヒュウリ:「…。」


ジャイロ:「……そうかぁ…。」


0:ジャイロは目を手で覆い天井を見た


ジャイロ:「…なんだよ。俺だけ老けちまったみてぇじゃねえか…」


0:医務室の外


ノエル:「……。」


レーヴェ:「やっぱりお仲間が気になるかよ、名探偵」


ノエル:「……いいえ。アイツとはもう。仲間じゃないです。」


レーヴェ:「…ああ、そう。」


ノエル:「…」


0:ノエルはその場を去ろうとした


レーヴェ:「どいつもこいつも。素直じゃないねえ。」


0:レーヴェはノエルに向かって紙を投げた


ノエル:「…っ。なんですか、この紙」


レーヴェ:「まあ。別に。折角なら、弟が並べた最高の冒険と、俺の冒険で張り合いたいからな。そんだけ。じゃあなあ〜」


ノエル:「…?」


0:ノエルは紙を見た


ノエル:「…地下倉庫。B14…?」


0:場面転換

0:ノアの方舟


ジャイロ:(M)……なあ。サーティーン。



ジャイロ:(M)俺は、ダサいかな



ジャイロ:(M)これには。意味があるかな。



ニーア:「……あれ。」



ノエル:「……兄、さん…」


ニーア:「ノエル…?」


0:地下倉庫 B14

0:厳重に拘束されているニーア


ノエル:「兄さん…で…あってる…?」


ニーア:「…ニーア・ベルメット、だけど。」


ノエル:「…っ…!」


0:ノエルはニーアに抱きついた


ニーア:「うわぶっ…!」


ノエル:「兄さん…!兄さん…っ。」


ニーア:「どうしたのさ、ノエル。急に泣きついて」


ノエル:「どうしたじゃ、ないよぉ…っ。私、今までいっぱい、心配して、あの日だって、行かないでって言ったのに…っ。」


ニーア:「…ああ…。ごめん。」


ノエル:「……」


ニーア:「……久しぶり。ノエル」


ノエル:「…うん。兄さん」


ニーア:「こんな格好でごめんね。」


ノエル:「ううん。色々。色々話したいことが。いっぱいあるんだ。本当に、もう。たくさん」


ニーア:「うん。僕もだ。沢山話したいことも。聞きたいこともある。」


ノエル:「…兄さんっ。」


ニーア:「なんだい、ノエル」


ノエル:「おかえり…っ。」


0:ほんの一瞬。考えて、理解するニーア


ニーア:「…。はは。うん、ただいま。」



0:時間経過



ニーア:(M)その日は、唐突に来た。


ニーア:(M)なんてことは無い。他愛もない話をしてくた。


ニーア:(M)変な冒険家と名乗る変人を用心棒にしたこと。気付けばいつの間にかノエルがその仲間になっていたこと。


ニーア:(M)アロハシャツを着た男が女癖が悪くて卑怯で気が合うこと。


ニーア:(M)東洋の剣士がアホ面こいて好き勝手するのに、いざって時は頼りになること。


ニーア:(M)アーヘン高等学院生が自分だけホテルで泊まっていて許せないこと、そのくせ自炊が出来て尚更許せないこと。


ニーア:(M)他にも、今まで見てきた冒険の話を聞かせてくれた。


ニーア:(M)そこはまるで。子供部屋で、今日学校であったことを話してくれる。もっと小さな頃のノエルみたいで。


ニーア:(M)とっても嬉しくて。ほんの少し。寂しかった。



ノエル:「それでね、グリム写本って言うのがあってさ」


ニーア:「うん」


ノエル:「そこでジハンさんっていうすっごーく頭が良い研究家の人がいてね」


ニーア:「へえ、僕より?」


ノエル:「はは、大人気ない」


ニーア:「ごめんごめん、それで」


ノエル:「…うん。それで。オーウェンさんが。色々謎を解くのを手伝ってくれて」


ニーア:「…」


ノエル:「…でも。オーウェンさんは。私達を殺そうとした。私の仲間を、撃った。ジハンさんを、レムさんを。殺した」


ニーア:「…うん。」


ノエル:「オーウェンさんは。ずっと、私達のことを騙してたんだって。」


ニーア:「…」


ノエル:「で。そこからグランシャリノに目をつけられて、今ここで。兄さんと再開した」


ニーア:「…うん。」


ノエル:「…」


ニーア:「ノエル。僕はね」


ノエル:「大丈夫。…もう、分かってる。兄さんの異常性で。この船は動いてる。そうでしょ」


ニーア:「……そうだ。」


ノエル:「……。」


0:ノエルはその場に崩れ落ちた


ノエル:「……兄さんも。もう、この船と接触してないと。人として動けないんだよね。」


ニーア:「…そうだ。」


ノエル:「そっか」



ノエル:「…そっ…かぁ…。」


ニーア:「…」


ノエル:「……ああ。…なんっ…か…っ。全部。どーーでもよくなったかも…っ。」


ニーア:「…」


ノエル:「兄さんは、結局グランシャリノに利用されて、オーウェンさんも、本当に兄さんを裏切って。なんか。なんっっか。全部、馬鹿みたい」


ニーア:「…」


ノエル:「でも。真実を知れたから。もう、どうでもよくなった…。」


ニーア:「…そっか。」


ノエル:「…私もう。頑張れないや」


ニーア:「……。僕の事を助ける為にここまで来てくれたのか?」


ノエル:「そうだよ。」


ニーア:「……。そっかあ。ごめんね、ノエル。色々、嫌な事を見てきたよね。」


ノエル:「うん。もう、それこそ、本当に嫌になった」


ニーア:「じゃあ、ここで僕と。この船が堕ちるまで一緒に居るかい?」


ノエル:「うん。それでいい。兄さんを救えないってわかった今。もう、これ以上グランシオラに歯向かう動機がない」


ニーア:「…なんて声をかければいいか、分からないけど。」


ノエル:「もう何もいらない。お願いだから、もう。このままーーー」


ニーア:「ノエル。君の本当にやりたいことは、ここで僕と死ぬことかい」


ノエル:「…」


ニーア:「もう、異常器になってから。5.6年経つかな。結構な時間、ここで過ごした。正直な話、結構。キツい毎日だった。家畜にでもされた気分だった。」


ノエル:「…」


ニーア:「別に仇を取ってくれだなんて言うつもりは毛頭ない。僕が一番気がかりだったのは、ノエル。君だよ」


ノエル:「…」


ニーア:「こんな状態じゃあ、手紙も書けない。ノエルがどうしてるかって、想像の範囲で気にかけることしか出来なかった。でも、あんなに小さかったノエルが。こんなに大きくなってた」


0:くしゃりと笑った


ニーア:「それが。一番うれしい」


ノエル:「…」


ニーア:「ここに居たいなら、居ていいよ。ずっと一人にしてごめん。僕にできることなら、なんでもする。もっと色んな事を話そう。最近ハマってることとか。流行ってるものとか。好きな人はできたー、とか。ああ、そういうのが居たら一応僕にも付き合う前に紹介して欲しいけど。そうだ、久しぶりにパズルゲームをするのもあい。」


ノエル:「…っ…。」


ニーア:「…でもそれは。ノエルが全部、全部全部諦めて、僕と居るならの話だ。」


ノエル:「……。」


ニーア:「今まで1人で沢山頑張ってきたんだろ。これ以上、僕の口から頑張れだなんて、とてもじゃないけど言えないよ。僕は、ちゃんと妹を溺愛してる自覚があるからね」


ノエル:「…っ…」


ニーア:「だから。ノエルが決めるべきだ。君は今。どうしたい」


ノエル:「…兄さんと。一緒にいたい。…けど、それはもう。不可能だってことを。ちゃんと自覚してる賢い自分もいる。それで、兄さんを。オーウェンさんを。こんな目に合わせたグランシオラを、ぶっ飛ばせって言ってる。怒ってる自分もいる」


ニーア:「…うん。」


ノエル:「でも、一番大きいのは。寂しいって言う自分」


ニーア:「…」


ノエル:「こんな私をさ。仲間だって。最後の最後まで信じてくれる馬鹿が、居るんだ。」


ニーア:「そりゃそうだ。僕の妹だもん」


ノエル:「…っ。その仲間も今、自分と戦ってるんだ…。昔やった事、できなかった事、やりたかった事。全部ひっくるめて、戦ってるの。」


ニーア:「流石、ノエルの仲間だ。会ったことは無いけど。凄く。本当に、すーーーごく、優しい人だ」


ノエル:「…うん…っ。」


ニーア:「…ごめんね、ノエル。その選択をさせるのは、酷だと分かってる。君の口から聞くのが、少しだけ。寂しかった自分が居る」


ノエル:「…」


ニーア:「兄なら。妹のやりたい事、背中押してあげるべきだって。分かってるちゃんとした兄の自分も居て。自分より仲間を取られるのが嫌だっていう、ちゃらんぽらんな兄の自分もいて、はは。やっぱり兄妹だね。よく似てる」


ノエル:「…でも。私が、オーウェンさんを信じたから。皆がこんな事に巻き込まれちゃったんだ。兄さんに背中を押してもらったって。何も出来ないかもしれない。また、皆に迷惑をかけるかもしれない」


ニーア:「そう考えるのは傲慢だ。人は人に迷惑をかけ続けて、かけられて、それが支え合うっていう結果になるだけだよ。全部君一人が背負わなきゃいけないだなんて考えるのは、ノエルの仲間に失礼だ」


ノエル:「だって、怖いんだもん。また皆を失うのが怖い。1人になりたくない、また、置いていかれるくらいなら、初めから1人で居た方がマシなんだよ…っ。」


ニーア:「ノエルが言ったんだろ。君を助けに、こんな所まで来てくれる仲間が居るんだって」


ノエル:「それが怖いの…っ。アイツらは優しいから…っ。馬鹿みたいに優しいからっ。何回突き放しても、またこうやって助けてくれるって分かるから…っ。」


ニーア:「…」


ノエル:「だから。次失敗したらって。誰かを信じるのも、信じられるのも、怖いんだ…」


ニーア:「…。僕は。オーウェンを信用して、結果としては失敗に終わった。けれど、後悔はしてない。」


ノエル:「…」


ニーア:「だって、オーウェンが居なかったら。こうしてまたノエルと会える事も無かったかもしれない」


ノエル:「…!」


ニーア:「信頼出来る人との繋がりを無理矢理絶とうとするのは。寂しい事だよ。それで救われるのは君じゃない。周りも救われない。さっきも言った、結局はノエルがどうしたいかだ。」


ノエル:「…私が…」


ニーア:「手は差し伸べられてる。それを取るか取らないかは、ノエルが決める事になる。後悔の無い選択と、後悔から目を背ける選択では、大きく違う」


ノエル:「…っ…」


ニーア:「偉そうな事言ってごめん。でも、ノエルには。ノエルにだけは。孤独で居て欲しくないんだ」


ノエル:「…うん。」


ニーア:「…どれもこれも。きっと、ノエルの友達なら。全部受け止めてくれる。」


ノエル:「…うん…っ。」


ニーア:「僕は、オーウェンに繋いだ。オーウェンは、君に繋いだ。大丈夫。君はひとりじゃない。仲間も、僕らも居る。」


ノエル:「うん。」


ニーア:「君ならきっと出来る。なんでも出来る。だって、僕の妹だ。」


ノエル:「…うん…!」



ニーア:「行ってらっしゃい。ノエル」


ノエル:「…行ってきます。兄さん…っ。」


0:場面転換

0:ノアの方舟 医療室


ジャイロ:「ーーー意味は。自分で決めるよ。」


ラテ:「それでこそ、私たちが知る」


ヒュウリ:「問題児だ。」


0:場面転換

0:ノアの方舟 甲板



グランシオラ:「…アガット。船内を見てきてくれ」



ジャイロ:(M)こんなこと。今までも。これからも。幾度とある試練だよ。



グランシオラ:「激動の匂いだ」



ジャイロ:(M)そうだろ。相棒



林檎:「ーーーScrambleスクランブル


ジャガー:「なんやぁ。」


カラス:「桜華流。執刀」


ポルジッコ:「ブランコ山脈の…!」


カラス:「二連。巻柄ァッッ!」


0:2人の腹を斬った


ポルジッコ:「ごぶっ。」


ジャガー:「ぎゃはぁーっ!」


0:2人は膝を着く


グランシオラ:「おやおやおやおや。」


カラス:「初めましてだな。グランシャリノこら。」


0:場面転換

0:ノアの方舟 2階


オーダー:「なるほど。奇襲か。まあ、来るだろうとは思ったが」


ヴァン:「思ったんならもっと早めに対策練るべきだったな。お生憎、こっちも急ぎなもんで」


フェリス:「悪いけど、ちゃーんとマークさせてもらうよ。」


0:場面転換

0:ノアの方舟 医療室


ガロ:「ーーーおお〜っ。よかったあ。まさか一発目で会えるとは!」


ジャイロ:「が…ガロ…!?」


ヒュウリ:「こいつが例の…!」


ラテ:「そんな劇的に登場されちゃあ、妬けちゃうなあ…っ。」


ガロ:「助けに来たぞ、ジャイロ!」


ジャイロ:「…っ…。」


0:場面転換

0:ノアの方舟 甲板


林檎:「総員、適当に飛ばしたけど。やる事はひとつだ。ジャイロ・バニングス。ノエル・ベルメットの奪還。以上、最大限危険には注意して進んでくれ。」


グランシオラ:「まさかまさか、あの窮地から再び刃向かってくるとは…!人とは分からないものだねえ。」


林檎:「悪いね。君に構ってる暇は無い。僕を敵に回したことを後悔するしかない」


ポルジッコ:「120MAミリアンペア


ジャガー:「STOCKストック


林檎:「来るよ、カラス」


カラス:「分かってる。」


ポルジッコ:「VOLTボルトッッ!」


0:身を傾け躱した


カラス:「遅せぇよ、ハゲタコ」


ポルジッコ:(M)こいつ。強いな。報告よりずっと。一等級の監察官。下手すりゃあそれよりあるかもしれねえ。


ジャガー:「TNTティーエヌティーッ!」


林檎:「Scrambleスクランブル


0:爆弾はその場から消えた


ジャガー:「お前なぁ〜チートやねん林檎野郎!!」


林檎:「言ったろ。僕を敵に回した事を後悔するしかないって。」


0:場面転換

0:ノアの方舟 2階


オーダー:「そうか。アーヘンの出か。通りで筋がいい」


ヴァン:「元ナンバーズに褒められるなんざ光栄だな…!」


0:ヴァンが殴るが受け止められる


オーダー:「そう急くな。君はまだ若い」


フェリス:「させないでしょ…!Switchスイッチfeatherフェザー!」


オーダー:「そういう話じゃあーー」


0:フェリスのレーザーを難なくよける


オーダー:「無いんだ」


0:ヴァンを蹴りつける


ヴァン:「ごはァ…!」


フェリス:「ヴァン…!」


オーダー:「こっちを見ろ。」


0:オーダーはフェリスに急接近


フェリス:「やば…っ。Switchスイッチーー」


オーダー:「そぉおら…ッ!」


0:地面へたたきつけた


フェリス:「ぶべぁ…!」


オーダー:「この程度で出張ってくる。見誤ったか?」


ヴァン:「お前がな。」


オーダー:(M)薬莢の匂い。本流は銃術か


ヴァン:「ぶっ死ね…ッ!」


0:銃を放つが剣で捌かれる


オーダー:「ーーー…。なるほど。二丁拳銃。どうやら変わった出自らしい」


ヴァン:「はは、そりゃどうも。」


0:ヴァンは咄嗟に距離をとった


ヴァン:(M)弾丸剣で捌くってなんだよ…!アメコミじゃねえんだから加減しろや。それに、あの剣。


オーダー:「…」


ヴァン:(M)腕に縫合させてやがる。あれじゃ「一生外せねえ」が。ンマ〜きっと、そういう事なんでしょうね


フェリス:「Automataオートマタ


オーダー:「遅い」


0:剣先をフェリスの肩に突き刺す


フェリス:「がァあ…!」


オーダー:(M)外したか。流石に禄戀会。マシな動きをする


ヴァン:「対・異常体執行術。」


オーダー:「…!」


ヴァン:「轆轤ろくろッ!」


0:弾丸を放ちつつ蹴りあげる


オーダー:「っぉうお…!どうして中々、やりにくい初動だ…!」


ヴァン:「フェリスちゃんっ。体制立て直すぞ」


フェリス:「了解…っ。」


オーダー:「流石にまあ、一筋縄では行かないか。」


0:場面転換

0:ノアの方舟 医療室


ガロ:「とりあえずは、コイツらぶっ飛ばせばいいんだな。」


ジャイロ:「…」


ガロ:「…ジャイロ?」


ジャイロ:「…本当にお前は。何にも聞かねえんだな」


ガロ:「だから。俺はお前を信用してるからいいって。それに」


0:ガロは拳を合わせた


ガロ:「いつか話してくれるって信じてるからな」


ジャイロ:「…そりゃあ上々で。」


ガロ:「…。あ!!忘れてた!」


ジャイロ:「何をだよ!」


ガロ:「…。俺、ガロンドール・ウォンバットだ!」


ジャイロ:「あ…?知ってるけど」


ガロ:「ジャイロ!!俺の仲間になってくれ!」


ジャイロ:「…」


ガロ:「…」


ジャイロ:「はっ。お前の中でも、何かの節目があったんだな」


ガロ:「おうっ。」



ジャイロ:(M)…。サーティーン。


ジャイロ:(M)どうせ。意味も理由も。今は分からねえなら。


ジャイロ:(M)俺は。後悔がない方を選ぶよ。


ジャイロ:(M)だからーーーー


0:ジャイロはガロの手を叩いた


ジャイロ:「これからよろしくなァ!相棒!!」


ガロ:「だははっ。おう!!」


ジャイロ:「ただしひとつ条件がある!」


ガロ:「ああ!何だ!」


ジャイロ:「目の前にいる二人は、俺が。俺だけで決着をつける。コイツらをぶっ殺す」


ガロ:「…」


ジャイロ:「お前の仲間になるのは、それが出来たらだ。」


ガロ:「分かった!」


ラテ:「本当に、どこまで見せつけたら気が済むんだよ、お前ら」


ヒュウリ:「全くだ。」


レーヴェ:「あれぇ〜?確かにこの辺から物音したんだけどな…」


ガロ:「あ」


レーヴェ:「お」


ガロ:「てめえ!ツンツン野郎!」


レーヴェ:「ガロぉ!来てたのか!」


ジャイロ:「はっ。丁度いい。そいつの相手は任せるぞ、ガロ!」


ガロ:「おお!任せろ!!」


レーヴェ:「なんだなんだ、来て早々喧嘩か」


ガロ:「おう。俺の冒険に欠かせねえもん取り返しに来た!」


レーヴェ:「だははは!そりゃあしゃあねえ!じゃあかかって来い!!」


ガロ:「FANBLEファンブル


レーヴェ:「…!」


ガロ:「そぉおおら!!」


0:ガロはレーヴェを殴った


レーヴェ:「ごほぉえ…ッ!」


0:レーヴェは壁を突き破り向こう3部屋先へ飛んだ


ガロ:「あんま出力上げすぎると船ごと壊れるからな。加減はまだムズいや」


ジャイロ:「…はは。どこまで規格外だお前は…!」


ガロ:「なにが?」


ジャイロ:「いいやあ、こっちの話だよ。」


ガロ:「ならいい!」


0:ガロはそのままレーヴェのいる方へ向かう


ジャイロ:「…待て!!」


ガロ:「あ?なんだ!」


ジャイロ:「またな。ガロ」


ガロ:「…だははっ。またな!ジャイロっ。」


0:二人は別れた


ジャイロ:「…さて。いい加減に、な。」


ラテ:「やっと私達の相手ですか」


ジャイロ:「ああ。デザートは最後に。大事に、な。」


ヒュウリ:「ほぉらさっさと来いよ。思えばお前とまともに戦ったこともなかったからな。」


ラテ:「確かに。泣きべそかいてもしらないよ〜ん。」


ジャイロ:「勝てると思ってんのかァ〜ん?お前らが、俺にィ」


0:ーーーー



0:回想

0:6日前


ラテ:(M)私達が異常器になってから。7年。


ヒュウリ:(M)オーダーはあれから、人が変わったように人を殺した。何かの歯止めが切れたかのように。


ラテ:(M)私達はそれを。ただただ眺める事しかできなかった。


ヒュウリ:(M)だって俺達。もう死んでるようなものだから。


ラテ:(M)オーダーを恨んでもない。誰も悪くないって、分かってる。けど。どうしたってやり切れない。


ヒュウリ:(M)俺達の身体はもう。歳を重ねる事も。変化することも無く。ただ機械的に、体中が血液を巡るだけ。


ラテ:(M)そんな、日を数える事すら辞めた日常に。懐かしい顔を見た。


オーダー:「…。」


0:傷だらけのジャイロを運ぶオーダー


ラテ:「…!オーダー、それ…っ。」


ヒュウリ:「…」


オーダー:「…。うん。ジャイロだよ。」


ヒュウリ:「無事、だったのか…っ。」


ラテ:「……」


ラテ:(M)オーダーは。何も言わなかった。あの人は、優しいから。全部自分で背負ってしまう。


ヒュウリ:(M)俺達にはもう。オーダーを止めることも。手を貸すことも出来ない。


0:その日の夜

0:集中治療室


ラテ:「……。ねえ。ヒュウリ」


ヒュウリ:「…なんだ。」


ラテ:「もし。だよ。もしもジャイロが目を覚まして。私達と一緒に来るって言ったら。どうする」


ヒュウリ:「………。」


0:ヒュウリは天井を眺めた


ヒュウリ:「…それはダメだ」


ラテ:「…」


ヒュウリ:「俺たちは。もう、終わったんだ。アイツと一緒に居ていい筈がない。生きてる事すら、ルールから外れてるんだよ。」


ラテ:「……。じゃあ。ジャイロが、私達を殺すって言ったら?」


ヒュウリ:「…はっ。あいつの事だしなあ。そういう事、言うだろうなあ。」


ラテ:「…うん。」


ヒュウリ:「…その時は。」



ジャイロ:「ーーーー勝てると思ってんのかァ〜ん?お前らが、俺にィ」


0:2人は少し笑った。


ラテ:「思わない」


ヒュウリ:「思わない」


ジャイロ:「…。はは、はははっ。相変わらず素直だな。その通り。あぁその通り…!お前らは俺に勝てない。じゃあ、後は俺次第だよ…!」


0:ジャイロは拳握った


ジャイロ:「腹は決めた…!歩く道も、選んだ…!」


ラテ:「うん。」


ヒュウリ:「ああ。」


ジャイロ:「お前らが、ちゃんと人間として死ねるように。家族への手向けだ。俺の手を汚す、最後の機会をお前らにくれてやる!!」


ラテ:「…はは。」


ヒュウリ:「ありがとう、でいいのか。」


ジャイロ:「そりゃお前らが決めろ。これは俺が勝手に決めたことだ。俺が、俺の為に。過去にちゃんと、キッチリ精算つける為だ。」


0:ジャイロはアロハシャツを着た


ジャイロ:「ーーーさよならだ。俺の青い春」


ヒュウリ:「はは、くせぇよ。」


ラテ:「臭いねえ」


ジャイロ:「うるせえ。これが俺だ。」


0:5秒の間


0:1986年 夏

0:蝉の声が聞こえる


ラテ:「あ〜、暑い」


ヒュウリ:「暑いな」


サーティーン:「暑い暑い言うな。余計暑くなんだろうが」


テオ:「でも暑いもんは暑いですよ」


オーダー:「お前達はまだいいだろ。僕の格好見ろ。なんだこれ」


ヒュウリ:「オーダーが好き好んで着てるんだろ」


ラテ:「そーだそーだ」


オーダー:「しょうがないだろ。ああ、暑い」


ラテ:「暑いなあ」


ヒュウリ:「暑い」


テオ:「暑いですねえ」


ジャイロ:(M)群青が照らす。唯一の夏


サーティーン:「なあ、ジャンケン勝った方があそこのアイス、ふんだくって来ないか?相棒」


ジャイロ:(M)ああ、畜生。夏が、終わっちまう。


0:ジャイロは目を瞑った


ジャイロ:(M)思い出は、大事に。大事に。懐にしまった。



0:ノアの方舟

0:医療室



0:傷だらけの2人



ラテ:「ーーーー…はは。まあ。そりゃあ、そうだよね」


ヒュウリ:「…ああ。ここまで、すぐカタが付くとは思わなかったけどな。」


ジャイロ:「…。」


ラテ:「…私たちは。もう全部止めちゃったけど。ジャイロは、ジャイロだけは。ダメだよ。」


ヒュウリ:「…じゃなきゃあ。傷つくだろ。名誉が」


ジャイロ:「……。ああ。後は。俺がケリ付けるよ。お前らの分も。」


0:2人はまた少し笑った



ヒュウリ:「…」


0:二人はもう動かない


ジャイロ:「…。」



ジャイロ:「〜〜…っ。」



ジャイロ:「じゃあな。兄弟」



0:場面転換

0:ノアの方舟 2階


オーダー:(M)予感。何かが崩れている予感。


ヴァン:「うぉぉおおらぁああ!」


オーダー:(M)いつかも感じた事のある。自分の行い全てが、間違っていたんじゃないかと思わされる。そんな予感


フェリス:「Switchスイッチfeatherフェザーッ!」


オーダー:(M)早く殺そう。一刻も惜しい。さっさと、殺してしまおう


林檎:「Scrambleスクランブル


オーダー:「…!」


フェリス:「は、はぁぁ。」


ヴァン:「おお、林檎くん、やっと来たかよ…っ。」


林檎:「うん。上の方はカラスに任せても大丈夫だと判断した。けど、あまり長くは持たないかもしれない。選手交代だ。君達はカラスの居る甲板へ向かってくれ」


フェリス:「正直、マジ助かった…っ。ありがとう!林檎さん!」


ヴァン:「後でなんか奢るわ!」


0:二人はその場から去った


林檎:「ふふん。勝利のパフェも確約したところで。サクッと行かせてもらうよ」


オーダー:「そうか。勝手にしてろ」


0:オーダーは急接近した


林檎:(M)流石に早い…!体術でもビットマンクラスはあるか…!?


0:林檎は一歩下がった


林檎:「Scrambleスクランブル


オーダー:「ーーー…」


林檎:「…心臓ひと抜き。悪いね、君は本当に手を抜ける相手じゃない。呆気ないけどーーー」


0:オーダーの刃が林檎の胸を貫いた


オーダー:「…言ったぞ。勝手にしてろ、と。」


林檎:「ーーーごぶ…っ。」


オーダー:(M)赤い林檎の異常性は転移。その気になれば人の人体すら操れる異常性だ。このまま頭に向けて引き上げる。思考する脳を切断しない事には勝利にならない


0:オーダーは刃を逆立てる


林檎:(M)まずい…っ。刃を引かれる…!


オーダー:「うぉぁおお…っ!」


林檎:「Moveムーブ…ッ!」


0:壁に押し付けられる


オーダー:「ーーーがはぁっ……!」


林檎:「…まったく。とんだびっくり箱もあったもんだね。まさか君。もう異常器に魂ごと持ってかれてるとは」


オーダー:「飛び道具もこの程度しか与えられないか。鈍ったか。」


林檎:「いやあ、君が勝負を焦りすぎなだけだと思うけど。ともあれ、異常性が使えない元ナンバーズと来れば、話は相当変わってくる。」


0:林檎は構えた


林檎:「僕一人で勝てるよ」


オーダー:「舐めんな、クソガキ」


0:場面転換

0:ノアの方舟 3階


ヴァン:「はあ…っ。はあ、クソ…!体中が痛い…!」


フェリス:「アザ治るかな…っ。」


ヴァン:「骨だよ骨、心配するべきなのは」


フェリス:「だって花の乙女の顔だよ!?」


ヴァン:「確かにー!」


0:地面が盛り上がる


ヴァン:「ん?」


フェリス:「なんか地面がモッコリしてーーーー」


レーヴェ:「ごぼぉおおおッ…!」


0:地面からレーヴェが貫き上がってくる


ヴァン:「えええええ!?」


フェリス:「ええええええ!?」


0:地面からもう一人上がってくる


ガロ:「12GRID」


レーヴェ:「かはっ…!っっぶねえ!意識飛びかけた!」


ガロ:「quickクイックBURSTバーストッッ!」


0:レーヴェの顔を殴る


レーヴェ:「ごぶぉえッ!」


0:ガロは着地する


ガロ:「うし。4発目」


ヴァン:「えええええええ」


フェリス:「えええええええ」


ガロ:「あれ!フェリスとヴァンじゃねえか!そっちはもう終わったのか!」


ヴァン:「いや…林檎に代わってもらったよ。分代わりい」


ガロ:「なるほど!ってことは…カラスが一人か!まずいな!」


フェリス:「私たちが今から行くところだよ。安心して」


ガロ:「ならいいや!アイツのこと頼んだ!」


レーヴェ:「だぁああああっ!好き放題殴りやがって!」


ガロ:「うげっ。タフだなあ、あいつ…」


レーヴェ:「ニーアの妹はあんなに可愛かったってのに…!ウチの弟と来たらよお!」


ガロ:「だから!お前なんか兄貴じゃねえ!」


レーヴェ:「はい傷ついた!もう許さん!」


ガロ:「お前ら!早く行ってくれ!」


ヴァン:「言われなくても!」


フェリス:「そうします!」


0:二人は爆速でその場から離れた


レーヴェ:「さーーて、本気だすからな」


ガロ:「やれるもんならやってみろ。」


レーヴェ:「ーーーACTアクト


ガロ:(M)別のトリガーワード…!アレジの言うことが本当なら、多分別の効力を持った異常性になってる…んだろうな!


レーヴェ:「そぉぉおおいッ!」


ガロ:「ぅぅおぉおおおおッ!」


0:レーヴェとガロは掴み合いになった


レーヴェ:「ははは!まじで強くなってんじゃん!たった一週間で!すげーよガロ!」


ガロ:「お前に褒められたって嬉しくねえよ!!」


レーヴェ:「あっそッ!」


0:膝蹴りを入れる


ガロ:「うお!?…あれ、痛くねえ」


レーヴェ:「そぉらそらそらそらそら!」


0:殴り続ける


ガロ:「なーにやってんだお前!痛くも痒くもねえよ!」


レーヴェ:「SteinsシュタインズBORROWボロウ


ガロ:「45GRIDグリッド


レーヴェ:「1Limit・BURSTッッ!」


ガロ:「Quick・BURSTッッ!」


0:拳が衝突する


レーヴェ:「うおおっほおー!」


ガロ:「うぐぐがぐぉぉおお!」


0:レーヴェの拳がすり抜けガロの顔面に直撃する


ガロ:「ごぼぉおッッ!」


レーヴェ:「はーいまず一発!」


0:ガロは船外まで飛ばされる


ガロ:「ぉぉおおおおおああ!?やべえ!外出ちまった!死ぬ!」


レーヴェ:「安心しろよ、そんな酷い殺し方はしねえさ」


0:レーヴェはガロの頭を掴んだ


ガロ:「はぁ!?てめぇ、いつの間に…!」


レーヴェ:「よっこら…せいッッ!」


0:レーヴェは空を殴り方舟へ戻る


ガロ:「ごぶぶぶぶっ!」


レーヴェ:「だっははは!人間ヤスリだ!楽しいだろ!」


ガロ:「だのじいわげねえだろ…ッ!」


0:ガロはレーヴェの服を掴んだ


ガロ:「FANBLEファンブル


レーヴェ:「おぉ〜っとぉ!?」


ガロ:「ぅっおおおらぁあ!!」


0:地面へ叩きつける


レーヴェ:「ごぶべっ!」


ガロ:「痛っってぇ…っ。畜生、やっぱちゃんと強ぇんだなお前…っ。」


レーヴェ:「ガロもだ!まじで強くなった!ちょっと感動してる!」


ガロ:「だから、兄貴面すんなっての!!」


レーヴェ:「けど、まだここまで来てないか」


ガロ:「あ?」


レーヴェ:「定義反転」


ガロ:(M)髪の毛が逆立つような。体の中心部がえぐれて行くのを感じる


レーヴェ:『ーーー強制返済』


0:謎の衝撃がガロに走る


ガロ:「ごほっ…!ごえっ。ぶぶふぁっ!?」


レーヴェ:「ははは!驚いてる驚いてる!」


ガロ:(M)なんだ!?いつ殴られた!?見えなかったっ。っていうか、絶対殴ってない!なんだ、これ…!


レーヴェ:「定義転換が使えるようになっただけ十分だよ。それが普通だ」


ガロ:(M)…!さっきの謎に痛くねえパンチか!!俺らの異常性が前借りなら、これは後払い!俺が貰うダメージを先に払ってたって事ね…っ。


0:ガロは距離をとる


ガロ:「…はぁ…はぁ…っ。くそ…!駄目だな、まだ俺より強い」


レーヴェ:「まあ、兄貴だからな」


0:場面転換

0:ノアの方舟 甲板


カラス:「桜華流。執刀」


ジャガー:「ははは!流石に2対1はキッついやろ!クソ剣士!」


0:蹴る


カラス:「ごぶっ…。」


ポルジッコ:「120MAミリアンペア


カラス:(M)トリガーワード。先に鷲鼻の方を捉えるか…!


ポルジッコ:「VOLTボルト!」


カラス:「乱れ桜ッッ!」


0:互いに負傷する


ポルジッコ:「ちィ…!痛ぇじゃねえか…!」


カラス:「がッ…。こっちの、台詞だ…!」


ジャガー:「BomberボンバーRANラン


カラス:(M)くっっそが…!こいつら、連携がとにかく取れ過ぎてやがる…!こんなもんクールタイム無しの数打ち戦法じゃねえか…!


ジャガー:「よォやった方やと思うで!ブランコ山脈の女剣士よりは強いわ!それは認めたる!」


ヴァン:「動くな」


ジャガー:「おお…?」


フェリス:「射程距離内だよ。」


ポルジッコ:「…。」


カラス:「お前ら…!」


フェリス:「やっぴ〜っ!流石カラス、耐えるねえ」


ジャガー:「ああ〜。3対2はよくないわ」


ヴァン:「さっきまで1対2だったヤツらの言う言葉かよ」


ポルジッコ:「…まあ。そろそろ潮時だろう。」


ジャガー:「せやな。」


ヴァン:「あ?」


ノエル:『船内放送から失礼します。ノエル・ベルメットです』


カラス:「ノエル…!なんだ、ピンピンしてそうじゃねえか。」


フェリス:「ノエルさんだ〜!よかったあ、あの人も無事で」


ノエル:『時間が無いので手短に説明します。ノアの方舟には二つのギミックがあります。ひとつは、現在リベールで確認されている電子機器の強制停止。』


0:場面転換

0:放送室


ノエル:「もうひとつが。有効範囲内における。異常性抑止領域の展開です。それの展開には30分程かかるそうですが、異常性抑止領域が展開されれば、全員が蜂の巣にされます。現在行っている戦闘を止め、今すぐ方舟から脱出してください。」


0:方法機を切った


ノエル:「…ふぅ…。なんとか、間に合ったな」


アガット:「人の船で、随分好き放題やるやがるなあ。」


ノエル:「…やっぱり来たな。アガット」


アガット:「なんだその言い方。癇に障るな。わっしが来るって分かってました〜ってか」


ノエル:「まあ、グランシオラはさっき話した準備で忙しいだろうからね。来るならグランシオラが一番信用を置いているお前だと思った」


アガット:「あっそ。まあ、あと一歩間に合わなかったって事で。おいとまするわ。悪ぃが、ここでアホレンジャーの一行は必ず潰す」


ノエル:「…待った。」


アガット:「…なんだぁ?」


ノエル:「行かせるわけないだろ。正直、異常器をここぞとばかりに使い回すお前が一番未知数だ。異常性抑止領域内で異常器だけは有効、だなんて事になればアガット無双クソゲーオブザイヤーだからな」


アガット:「ああ〜なるほど。つまり」


ノエル:「リベンジマッチだよ。行かせないさ」


アガット:「いいのかよ。お前を助けに沢山のお仲間が来てるぜ」


ノエル:「私には私なりの戦い方がある。ここで死んでも、必ずガロ達が後は何かしら馬鹿してくれるさ。」


アガット:「…」


ノエル:「言ったろ。お前らを、絶対に地獄に落としてやるって。」


アガット:「ああ。そうだ…なッッ!」


0:蹴りつけた


ノエル:「ーーーごぽっ…!」


アガット:「生憎今のわっしは少し気が立ってる。ノコノコ現れちゃあ好き放題する。こんな状況を楽しんでられる姉御の気もよく分からん。わっしの目には、「今の」お前らはちゃんと危険だ、と言うふうに見える。」


0:アガットは槍を構えた


アガット:「伸びろ。ゲイ・ボルグ」


0:槍はノエルの胸を貫いた


ノエル:「がは……ッ…。」


アガット:「あの時みてぇにはいかねえな。指一本触れさせてやんねえよ。」


ノエル:(M)あ。やばい。心臓、抜かれた。痛いと言うよりも。苦しい。息ができない。出来てるんだろうけど、息が意味を成してない。


ノエル:(M)目の前が真っ白になっていく。足に力も入らない。駄目だ、これ。死ぬ


アガット:「…」


ノエル:「…っ。」


0:ノエルはアガットの足を掴んでいる


アガット:「ったく。まぁたこいつは。」


ノエル:「…来たんだよ。ガロ達が」


アガット:「…あ?」


ノエル:「私達を迎えに、来てくれたんだよ。あのバカ達が…!」


アガット:「…だったらなんだよ」


ノエル:「私は、戦えない…っ。強くないから…!アイツらみたいに、強い敵をバッタバッタなぎ倒すことなんて、到底できない…!だから、私は私なりの戦い方を選ぶんだ…っ。」


アガット:「はあ…?」


ノエル:「あの時は離したけど…っ。今はもう、絶対に。死んでもこの手を離さない…!」


0:ノエルはアガットの足を強く握っている


ノエル:「じゃなきゃ…!私があいつらに会わせる顔がない…!!」


アガット:(M)マジかこいつ。心臓に槍ぶっ刺さってんだぞ…!?冗談じゃねえ、マジで異常体より異常だっつーの…!


ノエル:「…っ…。」


アガット:「…じゃあ、耐えて見せろよ。」


0:アガットはノエルの手を踏みつけた


アガット:「何も出来ないお前が!」


ノエル:「…っ。」


アガット:「わっしら相手に何が出来る!」


ノエル:「ぁ…っ。」


アガット:「あの名探偵も!オーウェンも!絶対的な力を前に挫けた!暴力だ!どれだけ頭が良くても、どれだけ品行方正でも、暴力ひとつで全部無くなる!」


ノエル:「…ッ…。」


アガット:「耐えるんだろ!!絶対に手ぇ緩めんなよ!!」


0:アガットはノエルの顔を蹴りあげた


ノエル:「ごふっ…!」


アガット:「右目、もう見えねえな。そりゃ」


ノエル:「…は、はは。かもね」


アガット:「…わっしは。自分の言葉に責任をもてねえやつが嫌いだ」


0:手を踏みつけ続ける


アガット:「死んでも離さないって言ったんだから。死んでも離すなよ。」


ニーア:「…っ…」


アガット:「耐えるんだろ。耐えろよ。ノエル・ベルメット」


ノエル:「耐えるっつってんだろ…っ。しつこいな、お前」


アガット:「ははは、威勢が良いのは、かなり好きだ!」


0:腹を踏みつけた


ノエル:(M)ああ、兄さん


アガット:「そぉら!」


ノエル:(M)私は今。最高に


アガット:「…ッ…!」


ノエル:(M)一矢報いてる気持ちだ


アガット:「…っらぁッ…!」


0:頭をけった


ノエル:「ッ……。」


アガット:「…。」


ノエル:「……。」


アガット:(M)顎に入った。確定失神コース


0:ノエルの手はアガットの足から離れていない


アガット:(M)だってのに。マジで離さなかったな。こいつ。


ノエル:「………」


アガット:「いいね。お前はいい女だ」


0:アガットはノエルの腕を振り払った


アガット:「けど。死んで離したからお前の負けだな、ノエル・ベルメット」


林檎:「Scrambleスクランブル


アガット:「…あ…?」


ガロ:「こいつは負けてねえよ。」


カラス:「まだ俺らが居る。」


アガット:「…ガロンドール……!」


ジャイロ:「動くなよ、槍女。」


アガット:「…異能狩りまで。やぁーっぱ復活すんじゃん。だから言ったんだわっしは」


カラス:「アロハ…!」


ジャイロ:「よお、髪伸びたな。ナマクラ」


林檎:(M)よかった。まだ息がある。肉体の時間移動はそこまで脳に負担がかからない。これならまだ何とかなる。


ノエル:「…ガ、ロ。ほんとに、来た。バカだ」


ガロ:「そりゃ来るだろ、俺らアホレンジャーだし。」


ノエル:「…はは」


ガロ:「ありがとな、一人でずっと戦ってくれて」


0:三人は声を合わせた


ガロ:「後は任せろ」


ジャイロ:「あとは任せな」


カラス:「後は任せろ」



ノエル:「…う、ん…」


林檎:「Scrambleスクランブル


0:ノエルの身体は傷つけられる前の状態に戻った


ノエル:「…」


ガロ:「アレジ、ああいや、林檎。ノエルは大丈夫なんだな」


林檎:「うん。心臓が止まる前で本当に良かった。」


ガロ:「OK。さんきゅー林檎!まじで助かったっ。」


林檎:「いいや。彼女がいなければ、きっと成しえない何かがある。僕はね、そういう予感を感じるのが特技なんだ」


アガット:「…あ〜あ。もう。」


林檎:「これで目的は達成した。ズラかるよ。」


ガロ:「ああ!やれるもんならかかって来いよ、槍野郎」


アガット:「もういいよ。さっさと行け」


0:アガットは不貞腐れたように手を払った


アガット:(M)どーせ姉御の事だ。何か考えはあるんだろ。


林檎:「全員、この場から飛ばす。座標を合わせてる暇は無いから、とりあえずリベールに飛ばす。いいね」


ガロ:「おう!」


ジャイロ:「了解だ」


カラス:「わかった」


林檎:「Scrambleスクランブル


0:全員がその場から消えた


アガット:「…あ〜あ。欲しかったなあ。サーティーンってやつ。かっこいいのに。」


0:アガットはつまらなさそうに酒樽を蹴った


アガット:「ちぇ。」


0:場面転換

0:リベール キャリオン街


林檎:「ーーー…!ふぅっ。皆、居るかい」


ジャイロ:「ああ、居る」


カラス:「おう。」


ガロ:「居るぞ!ノエルもな!」


ヴァン:「こっちも、ちゃんと居るぜ」


フェリス:「いやあ…まさか本当に生還できるとは…」


林檎:「…はぁぁぁああ。よかったぁぁああっ。」


フェリス:「あーーー!怖かった!」


ヴァン:「いや、生きた心地がしなかったわ。まじで。」


林檎:(M)アリアンロートが居なかったのが救いだったな。侮っていたつもりは無いけど、グランシャリノがあそこまで手練を揃えてるとは思わなかった。


フェリス:「ほーら、林檎さん、そんな難しい顔…仮面越しだからわかんないけど。多分難しいこと考えてるでしょ」


ヴァン:「ああ、今は生還を喜ぼう、何より。これでチームバカがフルメンバーだ。」


林檎:「…。ああ、そうだね」


ガロ:「…はは。ジャイロ!」


ジャイロ:「…おう。」


ガロ:「あれから。どうなったんだ。」


ジャイロ:「…。お陰さんで。昔の事とは、いい感じに決着付けれたよ。ただ、決着っつっても、まだ全部が全部終わったわけじゃねえ。一番、どうにかしてやらなくちゃ行けねえ奴が。まだ不幸なままだ」


ガロ:「おうっ。因みに俺、グランシャリノぶっ飛ばすつもりだけど。ジャイロは?」


ジャイロ:「…ああ。アイツが不幸なままじゃあ、俺が不幸になる。そんなのは俺の自由から逸脱しちまうからな」


0:ガロとジャイロはハイタッチした


ジャイロ:「改めて。世話になってやるよ、冒険家」


ガロ:「だはははっ。よろしく!」


カラス:「…。おい、アロハ。」


ジャイロ:「あ?」


0:カラスは手のひらを構えている


ジャイロ:「…はっ。」


0:二人は無言でハイタッチした


フェリス:「いやあ〜いいねえ。いいですねえ」


ヴァン:「ああ。なんか、ジーンと来るわ。歳かね」


フェリス:「君いくつよ」


ヴァン:「3歳」


フェリス:「いい加減にしろ」


ノエル:「…」


ジャイロ:「あぁ〜そうだ。聞きたいことがふたつ。」


ガロ:「おう、なんだ?」


ジャイロ:「フェリスが合流してる理由と、そこの赤いパーカーのフルフェイスが敵なのか味方なのか」


ガロ:「あ〜えっとな。」


カラス:「かくかくしかじか」


フェリス:「しかじかぶんぶん」


ヴァン:「ぶんぶんしゃかしゃか」


ガロ:「って訳だ!」


ジャイロ:「ほげえ…。とんだ大物捕まえたもんだな…」


林檎:「という訳で、改めてよろしく。ジャイロくん」


ジャイロ:「ああ、随分カッコつけた手前、なんとも言えねえが。生き残っちまったからにゃあ全力で生きてやるよ」


林檎:「いいね。そういうのは好きだ。…で、ガロ」


ガロ:「ん?」


林檎:「ジャイロくんとノエルちゃんを救出した今、もう君が打倒グランシャリノを掲げる意味ってあんまりないと思うけど。その心は?」


ガロ:「ん〜。ムカつくからだな」


林檎:「…そんだけ?」


ガロ:「まあ、因縁あるやつもいるみたいだし。レーヴェってやつ。アイツは。なんか。…うん。なんか、もっかいちゃんと話したい。今日会って、そんな感じがした。」


林檎:「…そっか。了解。それじゃあ、引き続き…」


ヘルマン:「準ギルド。アホレンジャーの一行だな」


ガロ:「え?あ!刑事のおばさん!!」


林檎:「リベール市警の…?」


ジャイロ:「久しぶりじゃねえか、おい」


カラス:「なんか窶れたか」


ヴァン:「…」


ヘルマン:「ガロンドール・ウォンバットに。リベール教会神父。オーウェン・ブルーハット。シスター、レム・フェルスタン。中央政府研究部、ジハン・タンバリン。計3名殺害の容疑が掛かっている。」


フェリス:「…へ?」


林檎:「…」


ヘルマン:「暫くはリベール市警で身柄を預かる。連行する!身柄を確保しろ!」


ジャイロ:「おい、ヘルマン…!こいつは…」


0:小声で耳を着いた


ヘルマン:「…私は言ったろうが…。これ以上は、庇ってやれないと」


ジャイロ:「…」


ヘルマン:「…すまない。許してくれとは言わん。これが、リベール市警の指示だ。」


ヴァン:「リベール市警…そりゃあ、グランシャリノの手が周りまくってるに決まってるか」


林檎:「ここで下手に暴れたら、外界の情報を完全に遮断されたリベールでガロの立場がなくなる。少なくとも、ギルドにはガロの除名願書が集まるだろうな」


ヴァン:「…はっ。ここまで計算づくだったってか?」


林檎:「…僕らを方舟から逃がそうが、どの道リベールには足止めするつもりだった、と。」


カラス:「殺しちまうか。」


フェリス:「まずいでしょ。たたでさえ疲弊してるリベール市民に余計緊張を与える。…あ〜くそ。考えたな、グランシャリノ…っ。」


ジャイロ:「おい、ガロ!」


ガロ:「…」


ヘルマン:「…」


0:ヘルマンはガロの目を見ず手錠をかける


ガロ:「大丈夫だ!」


林檎:「…なにが?」


ガロ:「すぐ戻る!今は、こいつらをこれ以上苦しめたくねえ!」


ジャイロ:「…本当に。変なところで鋭い野郎だ」


カラス:「まあ、あいつのすぐ戻るは、本当にすぐだろうからな。」


ガロ:「それまで、頼んだ!」


ジャイロ:「…おう!」


ノエル:(M)遠ざかるその背中を


ガロ:「…」


0:連行される後ろ姿をニーアと間違える


ノエル:(M)誰かに重ねた。思わず手を伸ばすほど。


ガロ:「…」


ノエル:(M)けれど振り返ったその顔は


ガロ:「…お?」


ノエル:(M)私のよく知る馬鹿だった


ガロ:「…」


0:ガロは意識が戻るノエルを確認すると安心するように笑った


ノエル:「…ガ、ロ…」


ガロ:「…」


0:去り際、ノエルにガッツポーズを送る


ノエル:「……はは。…了解…」


ヘルマン:「…っ。連行しろ…っ。」


0:警察はガロを連れていく


ガロ:「…」


ヘルマン:「…責めないのか。私達を」


ガロ:「責めねえよ。グランシャリノだろ。全部」


ヘルマン:「…」


ガロ:「大丈夫だ。俺の仲間が、なんかいい感じに手を打ってくれる」


ヘルマン:「…なんだその抽象的な…」


ガロ:「だははっ。信じてるからな。俺一人いなくても、大丈夫だ!だから俺は、俺に出来ることを精一杯考えるよ」


ヘルマン:「…そうか。」


0:ヘルマンは足を止めた


ヘルマン:「私は、君たちが羨ましいよ」


0:場面転換

0:リベール キャリオン街


林檎:「結局、最大の敵は地域かい」


ヴァン:「…。どうする。異常性抑止領域が既に展開されてたなら、もう箱舟に乗り込む手段もないが」


ジャイロ:「再会早々早すぎる退場だ…流石にテンション下がる」


カラス:「大丈夫たぁ言ってたが」


ノエル:「は、は…。」


林檎:「ん?」


ノエル:「なーーにへこたれてんだ!アホ共!」


0:ノエルは足がぷるぷる((^ω^))


ノエル:「久しぶりだな!こら…!」


ジャイロ:「…お嬢…!」


カラス:「…っ。よかった、まじで。」


ノエル:「はは。さっきぶり。なに?この私が死ぬかと思ったか!ははは!ヴァカめ!天下のノエル・ベルメットが、そんな簡単にくたばる玉かよ!」


ヴァン:「足プルプルやん」


フェリス:「ほんまに」


ヴァン:「しかし惜しかったな。復活があと数秒はやけりゃあ、ガロンドールとも話せただろうに」


ノエル:「…うん。ガロは、なんか。面倒なことになっちゃったかあ。ごめん、私のせいだ」


カラス:「お前が気に病むことじゃない。」


ノエル:「それでも。人殺しは人殺しだよ。私は、何らかの形で、それに報いなきゃ行けない」


0:ノエルは力なく立ち上がった


ノエル:「ガロが戻るまでに。全部の準備を整えよう。大丈夫。もう、大丈夫…っ。ジャイロ、ごめん。カラスも、ヴァンも。ごめん…!」


0:ノエルは頭を下げた


カラス:「なんの謝罪だよ」


ジャイロ:「…ああ。それに、そりゃあ。」


0:ジャイロはノエルの頭を軽く叩いた


ジャイロ:「あの馬鹿がちゃんと帰ってきてから。全員揃ってからもっかい聞く。許すか許さないかはその時次第だ。」


ノエル:「…うん…っ。」


ジャイロ:「言っとくが。俺は許さねえからな。そんくらい傷付いてんだ。名誉が」


ノエル:「…うん。」


フェリス:「素直に見限られて悲しかったって言えばいいのに」


ヴァン:「空気読みなー」


林檎:「ははは、野暮だねえ。」


カラス:「アイツはそういう奴だよ。至って自然体で人を傷つけやがる」


フェリス:「いやあ、それほどでも。」


ジャイロ:「うるっせえよお前らっ。」


ノエル:「…はは。」


カラス:「まあ、正式なご挨拶はガロが帰ってきてから聞くとして。一先ず」


0:カラスはノエルの背中を叩いた


ノエル:「うおっ。」


カラス:「おかえり。馬鹿野郎」


ノエル:「____…っ…。うん。」


ジャイロ:「は。まだ何も終わってねえ。だから、もっかい力貸してくれや。お嬢」


ノエル:「…うん…っ。頑張る…っ。」


林檎:(M)ノエルは立ち直るまでもう少し掛かりそうだけど。彼らが居ればこっちは大丈夫そうだよ。ガロ。


0:林檎は3人を遠目に見ている


林檎:(M)やっぱり、何者にも変え難いものだな。縁って言うのは。



ジャイロ:(M)…。オーダー。最後だ。これっきりだ。お前は、俺が終わらせてやる。


0:ジャイロは拳を握った


ジャイロ:(M)まだだ。まだ折れんな。ガロも居ない。お嬢も帰ってきたばっかだ。ナマクラとも合流したばっかり。ここからなんだ。


ジャイロ:(M)今まで。散々道を違えてきた。けど、お前らとなら、違えたっていい。終わりの見える度でもいいって思ってた。けどよ。噛み締めずにはいられねえよ。


ジャイロ:(M)今俺は。お前らとは別の道を歩いてんだ。


0:ジャイロは自分の手のひらを見た


ジャイロ:(M)でも。…まったくもって。後腐れがねえよ。兄弟に託されたんだ。なに、何回だって。何回だってあった試練だよ。


ジャイロ:(M)なんのこれしき、乗り越えられなきゃあ


0:風が吹いた


サーティーン:傷ついちまうからな、名誉が


ジャイロ:「…!」


0:振り向いたが、誰もいない


ノエル:「ジャイロ!なにやってんの、行くよ」


カラス:「ほっとけほっとけ。」


フェリス:「ジャイロきゅ〜ん、置いていくよん」


林檎:「うわ、寒くなってきたな。」


ノエル:「ちゃっかり冬だからねえ」



ジャイロ:「…。」


0:ジャイロは誰も居ない背後に拳を向けた


ジャイロ:「行ってくるよ、兄弟」



0:場面転換

0:ノアの方舟 船内


レーヴェ:「おーーーい。おーーーい、グラン。もういいだろ、早く解除してくれよ。異常性使えないってだけでなんかすげぇもどかしい」


グランシオラ:「やれやれだぜ。今張らなくていつ張ると言うんだい」


レーヴェ:「え?なんで」


アガット:「国家独立宣言は明日だからな。それまで、中央からの妨害コミコミで考えれば絶対不可侵の方舟だった方がいいって事だろ」


レーヴェ:「あーなる。」


ジャガー:「ったく。宣言前にとんだ茶番やらしてかれたもんやな。おい」


ポルジッコ:「まったくだ。時間外労働だぞ」


グランシオラ:「ああ、その分金払いはよくするさ。安心してくれ」


アリアンロード:「ーーーただいま戻りました。」


ジャガー:「うお!?びっっくりしたっ。急に出てくんなや!」


レーヴェ:「おー!アリっ。おかえり!どうだった、中央」


アリアンロード:「想像以上の手練が控えていましたが。問題ないかと」


レーヴェ:「そーかそーかっ。俺もいつか行きたいなぁ〜中央」


アリアンロード:「貴方はお尋ね者でしょう」


レーヴェ:「それはそう。俺が中央に行ける時は捕まる時か、グランが中央にカチこみかける時か」


グランシオラ:「はは、そう遠くは無いさ。なんなら、一週間以内。いいや、或いはもっと早く。中央政府最高戦力が出張ってくる可能性もある」


アガット:「…?」


グランシオラ:「彼らもどうやら愚策を練っているらしい。恐らくは明日。どれほどの策を講じるのか、見物だろう」


アガット:「泳がすねえ。アホレンジャーの一行も着実に力をつけてた。侮るにゃあ事足りねえ相手だと思うが」


グランシオラ:「問題無いよ。リベールの士気はご覧の通り低迷状態。下ではリベール市警が職権乱用の嵐だ。どんな動きも、私達の磐石さを示す要素にしかなり得ない。」


0:グランシオラは袖を広げた


グランシオラ:「足掻いて足掻いて、最後の賭けに出た矢先に叩き潰す。これこそが、反抗の意志を削ぐ最たる手段だ。未だ動けない中央政府がいい例だろう」


レーヴェ:「真っ向から叩く。いいね、俺は好きだ。」


ポルジッコ:「計画性の割にアドリブが多すぎる。このクライアントはぁ嫌になる」


ジャガー:「人使いもあっらいしなぁ。勘弁してや」


アリアンロード:「私が居ない間に、なにやら一悶着あったようですね」


レーヴェ:「アホレンジャーの一行が襲ってきたんだよ、だはははっ。ウケるよな」


アリアンロード:「それは、中々無謀な。彼らが生きて帰ったと?」


レーヴェ:「舐めんなよぉ〜。俺の弟。超強くなってっから」


アリアンロード:「そうですか。」


アガット:「…そういやあ、オーダーはどこ行った?」


グランシオラ:「ああ。ほっといてやれ。同胞が逝ったそうだ。」


アガット:「あー。無題の。死んだのかあいつら。」


レーヴェ:「え!?死んだのか?!まじかよ!なんか言えよ〜!寂しいわ〜!」


ジャガー:「死体に口なしやろがい!言うて」


レーヴェ:「へへへへへへ」


ジャガー:「へへへへへへ」


ポルジッコ:「笑えんな」


アリアンロード:「笑えませんね」


0:場面転換

0:ノアの方舟 医療室


オーダー:「…」


0:オーダーは二人の亡骸を見つめている


オーダー:「………。」



グランシオラ:「ーーー私は。グランシオラ・ルルカブル。君が、無題筆頭。オーダー・アルバーナだね」


オーダー:「…グランシオラ…?」


グランシオラ:「おや。流石に名前くらいは聞いたことがあるか。それはそうだな、君も元中央政府職員だ」


オーダー:「…お前も参画してるのか。解体作戦に」


グランシオラ:「そう敵意を向けるものじゃない。私はねえ、どちらかと言うと。君たちを助けに来た」


オーダー:「…は…?」


グランシオラ:「元中央政府職員。きっと中央に抱く感情にそう大差はないだろう。君への同情含め、まだ未来ある若人達が犬死する様は見ていられない。だから、私から君に取引だ。オーダー」


オーダー:「…」


グランシオラ:「無題の全員を。私の手で不死にさせて欲しい」


オーダー:(M)それは。神が人の世に降りてきたかのような物言いだった


グランシオラ:「君達の平穏は、永遠に続く。悪い話ではないだろう。それを飲めるなら、君たちを助けてやる」


オーダー:(M)人の理りから離れた業を、作業の様に語るその目は。深淵そのものだった。


グランシオラ:「さあ、どうする。イタリア南西の部隊はどんどん南下していく。テオという異常体が居る限り、逃れることは出来ない。結論は早い方がいい。今この瞬間も、君の家族が死にかているという報告が入っている。つい5分前だ」


オーダー:(M)ここに来るまで、213人殺した。僕もそれなりに消耗した。現役ナンバーズが出動した今、私が向かったところで、全員を助け、居場所が割れ続ける子供達を連れて逃げるのは不可能だと理解してしまった


グランシオラ:「さあ。どうする。私の気まぐれが揺らぐ前に決めた方がいい。君なら賢い選択が出来るだろう、仮とは言えど、彼ら若人の母親なのだから。」


オーダー:(M)その手を取らない理由が。無かった。



オーダー:(M)蓋を開ければ。それは人間では無くなる証明そのものだったけれど。それでもいいと思った。皆が助かるのなら、あの日々がまだ続くなら、と。


オーダー:(M)…でも。皆は、違った。皆は、僕なんかよりずっと、覚悟が出来てた。人を殺した。犯罪を冒した。いつかは終わるべき夏だという事を、しっかり理解してた。だからどうやら。


オーダー:(M)…夏の終わりを受け入れられなかったのは、僕だけらしい。


0:1986年

0:ノアの箱舟 試作品


グランシオラ:「…。まあ。そう来るだろうとは思ったよ。とんだ逆恨みだ」


0:オーダーはグランシオラに剣先を向けている


オーダー:「僕の質問にだけ応えろ。」


アガット:「てめぇ、姉御に向かって剣先向けるたァいい度胸じゃねえか。調子乗んなよ、今のお前ならわっしでも」


グランシオラ:「アガット。やめておいた方がいい。」


アガット:「いいやダメだ。姉御の敵はわっしが殺す。」


グランシオラ:「…。そうか。じゃあ、試してみるとしようか。敵となるか否か」


オーダー:「…中央政府特務研究員。観測室の産みの親でありながら、中央を謀反したお前が行き着く先は何処だ。」


グランシオラ:「また随分と曖昧だ」


オーダー:「…」


グランシオラ:「…ひとつ言えるならば。私は、夢を見ている。その先にあるのは、私達の求めた回答だ。」


アガット:「…」


グランシオラ:「人と言うのはさ。如何せん何かに触れる敷居が低くなればその間口は広くなるものでね。電子動力なんかいい例だろう。ほんの数年前まで大層なコンピューターを持ってしてでしかなし得なかったことが、今となってはこんな小型携帯機一つで叶うようになった。素晴らしいながらも、恐ろしいことさ」


0:グランシオラは立て続けに口を開く


グランシオラ:「間口が広くなれば需要が増え、需要に比例して人口も増える。統一されなくなっていくルールやレギュレーションは更にその分野の格式と敷居を低くする。その先にあるのは混沌さ。」


オーダー:「…現代社会の行く末の話をしてるのか」


グランシオラ:「そうさ。少し頭の良い奴なら分かるよ。便利の先にあるのは退屈だ。人は何かと大層な理由をつけたがるものでね、退屈を凌ぐ為に過度な刺激を求めたりもするだろう。平穏と滅亡はすぐ隣り合わせにあるのさ。それが私達の見た、予測可能な混沌と、終焉。現在、国家間で行われる軍需品も敷居が下がれば闇市に出回るだろう。そして敷居や格式が…この繰り返しさ。」


0:グランシオラはなにかの書類をばら蒔いた


グランシオラ:「余りにも。馬鹿らしいと思わないかい。」


オーダー:「…」


グランシオラ:「それもこれも。統一された、唯一絶対の力があれば解決する。それに為す術なく隷属する他ない何かがあれば、庶民があれこれと対抗策を練らなくて済むだろう。何より、無像が思いつく事くらい、私ならすぐ看破出来る。どんな技術革新をも先回りで潰せる。だから、その為に一度リセットするのさ」


オーダー:「リセット…?」


グランシオラ:「現代社会からの。脱却さ。既得権益者にとっては不利益で。今不平等を目の当たりにしている者には太陽が差し込むような、つまるところ、完全フラットな更地だよ。」


オーダー:「…」


グランシオラ:「これが、私の見ているものだ。回答になっていたかな」


オーダー:「…。その更地では、異常体はどうなる」


グランシオラ:「さあ。民意は知れずとも、少なくとも私の想定では、少し秀でた特技のある一般人と変わりない」


オーダー:(M)この先。人類による異常体の撲滅運動はより加速していく。それは僕でも分かる。


オーダー:(M)何度も失敗した。僕が誰かを愛するのも、大切にするのも。もうやめだ。その資格がない。


オーダー:(M)…最後だ。


オーダー:(M)こんな体になってまで、まだ僕が生きている意味があるとするなら


0:数日後


グランシオラ:「ほお…。よもや、だけれど。手を貸してくれる選択に至るか。嬉しい誤算だね。私は君の異常性さえ手に入ればそれで良かったのだけど。いいや、例え異常性を失った身であろうと君は十分に戦力足る人材さ。歓迎するよ」


オーダー:「どの道この体じゃ死ねないんだ。だから、考えた。今の僕に出来る、償いを」


グランシオラ:「償い、か。」


0:グランシオラは整備された木材の上を歩く


グランシオラ:「人の根源にあるのは必ず欲さ。目的意識は欲に。欲は動機に。動機は理由に。君がその道を歩く理由はなんだい」


オーダー:「僕じゃない誰かが。誰かを大切にできるように。」


グランシオラ:(M)嗚呼。オーダー・アルバーナ。


オーダー:「僕ら異常体が。人として夏を迎えられる世界を作る為だ」


グランシオラ:(M)やはり君は。「止まって」いるよ。


0:数年後


オーダー:(M)それからは早かった。


オーダー:(M)グランシオラの計画はあれよあれよという間に進み、どこから仕入れてきたともしれない異能協会の異常体に、バグテリアの連中まで傘下に入れてしまう程の手腕。終いには、ノーザンブリアの変人冒険家。


オーダー:(M)激動は。グランシオラ自身と言っても過言じゃないだろう。彼女を起点に、世界は在り方を変える。


オーダー:(M)これでいい。どれだけの血が今流れようとも。全てをかなぐり捨てて、何を犠牲にしてでも。必ず、あの日々に贖うと。


0:1991年。12月21日


オーダー:(M)ある日。一発の弾丸が、報せを齎した。


オーダー:(M)ふざけた名前の準ギルドに、グランシャリノ構成員が殺されたらしい。


オーダー:(M)急遽作戦開始を早めたと聞き、現場に駆けつければ。「君」が居た。


オーダー:(M)嬉しいような。寂しいような。悲しいような。罪悪感と喪失感に押し潰されそうになりながら、君を生かした。


オーダー:(M)結局。最後まで僕と来てくれた子供がその目を開くことはなくなった。他でも無い、自分に誓ったって言うのに。全てを捨てて、贖うって。



オーダー:「…ごめん。」



オーダー:(M)君達の死を無駄にしないためには。どうしたらいいかな。あの時も、あの時も、あの時もあの時も。今も。何を選択すれば。君達は幸せになれたんだろうか


オーダー:(M)嗚呼。こんな時でさえ。最後の我が子を憂うばかりだ。




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