プロローグ
0:プロローグ
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0:登場キャラ
阿久間 累:あくま るい 学者
芽久里 典氏:めぐり てんし 学者
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0:No.01。某都市、研究室
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阿久間:ひどい。ひどい結末だったろう。典氏
典氏:君の未来予測を信頼しているからこそ言うけれど。君は本当に最低だ、累
阿久間:なんでさ。私は私の見える物の予測をしたまでだよ
典氏:君が用意した駒と盤上での出来事だろ。昔から君は、人をなんだと思ってるんだ
阿久間:数字だ。
典氏:違う。人は生き物だ。それぞれに意思があって、感情があって、過去がある。私は人を愛してる
阿久間:私だって愛している。人こそが最も楽しい演算式を導く生き物だからね
典氏:君のは面白いもの見たさだろ。あの彼に、私達の力を分けたのだってそうだ。
阿久間:いいじゃないか。ファンタジーよりもよっぽど
典氏:ファンタジーだろうがなんだろうが、そこに生きているのは人だ。私はそれを許さない
阿久間:君とは喧嘩ばかりだねえ。典氏
典氏:私は君が嫌いだからね。累。
0:立ち去ろうとする
阿久間:どこへ行くんだい?
典氏:分かりきっている質問をしないでほしい
阿久間:ああ。過去にこだわるね。典氏は
典氏:未来は、過去の上で成り立ってるんだ。
阿久間:そうか。救えるといいね。全部を。行ってらっしゃい。
典子:…。
0:退室
阿久間:君のその行動は。きっと…。いいや、やめておこう。今は。
阿久間:異能力者は夢を見るか。
阿久間:…。芽久里 典氏
0:
典氏:行ってきます
0:
阿久間:私が未来を見る力なら、君のは。過去を見る力?変える力?
阿久間:どうだろう。過去が変われば、未来は変わるし、結末は変わる
阿久間:やっぱり。人というのはかくも面白い数字をしている
阿久間:―――これだから、観客席から降りれない
0:
典氏:実行世界を、更新する。
0:
0:場面転換
0:No.641117893
0:
アレジ:………。随分と。
アレジ:随分と長い夢を、見ていた気がする。
典氏:夢ではないよ
アレジ:………誰だ君は
典氏:私は芽久里 典氏。超超超偉い学者だ。
アレジ:なんだ。日本人か?
典氏:ああ。ずっと。これからずっと先の。はるか遠い未来の。日本人学者だ。
アレジ:……。そんな君が、僕に何の用だ。ここはどこだ。バグテリアじゃないな
典氏:ここは、君に分かるように説明するのが難しいけれど。狭間って言えばいいかな
アレジ:…。そうか。本当に。本当に僕にはどうでもいい。カイは。マルボロは?
典氏:皆、死んでしまったよ。君の記憶通り
アレジ:……。って事は。ここは天国…。ああ、地獄か
典氏:そんなものは存在しないよ。この世のどこにも。観測できていない
アレジ:じゃあなんなんだよ。もう、僕のやることは終わった。全部終わったんだ
典氏:…長いこと。見てきたよ。君たちの全てを
アレジ:…
典氏:私には。度し難い。阿久間 累と。セノ・アキラ。この二人は、この世界に種を振り撒いた。人が一人では抱えられない程の原罪の種を
アレジ:…。
典氏:私は。こんな結末を認めたくない。余りにも、酷いじゃないか。
アレジ:さっきから!!なんなんだよお前は!!
典氏:うぇ
アレジ:僕のやることは終わったんだ!!マルボロも、カイも、僕だって死んだ!!もうこれ以上、僕は僕で在りたくない!さっさと死んで成仏でもなんでもしたい!!
典氏:…
アレジ:終わったじゃないか。全部
典氏:アレジ・ロンドン
アレジ:…なんだよ
典氏:君は。これでいいのか
アレジ:…。いいさ。全部僕が選んで、僕が招いた事だ
典氏:…。私は。今まで、沢山の世界を観測してきた。ギリシャ、アドネ、ローマ、ケルト、ドルツェア、ムー、ヘルケネス、メソポタミア、アルゼリア、アトランティス、エルデ。
典氏:人が人の赴くまま。その結果をまねいたのなら。私はそれに関与しない。でも、君達はそうじゃない。外部から。意図的に仕組まれたその結末を。私は君達の未来だと認めない
アレジ:…。意味がわからない。どういう意味だ
典氏:みた方が。早いかもしれないね
アレジ:…は?
典氏:君は一度、この世界におけるスイッチを使って意図的にないにしろ、実行世界を渡った。君はそこで、また別のきみと邂逅した
アレジ:……。ああ、あの時の。
典氏:過去には戻れない。やってしまった事は、もう戻らない。それでも、可能性の連続は常にある。この世界線の君達は死んでしまったけれど。まだ、こうなってしまう前の時間軸は、現在進行形で悪路を辿っている
アレジ:…
典氏:だから。まずは見に行こう。君たちがなぜ、こうなってしまったのかを。
アレジ:なにを
典氏:私の手を、握って。
アレジ:―――――。
0:
阿久間:それからきっと、彼は数多の歴史を、過去を見るだろう。私がセノくんに知恵を与え、セノくんが世界を再成し、セノくんが世界に与えた、毒を。
阿久間:そこから始まるのは、とある裏切り者たちの話。
阿久間:裏切り者は再成された世界を嫌った。何を思い、何をどうしたか、彼は知らなかった。
阿久間:次に語られるは、審判者達。どういう約束の果てに、どういう結末があるかを、彼は知らなかった。
阿久間:そして彼がよく知る、解放者達の話。彼がどういうつもりでどう行動したか。なぜこうなったかを、彼は改めて理解した。
0:
アレジ:…これが。原罪
典氏:…そう。セノ・アキラが齎した世界の全ては、必然的に起こったものじゃない。勿論、その後君たちが起こした全ては君達の意思だったろうけど。それでも、やっぱりそれは、君達の自由意志のものではないと私は思う
アレジ:…。
0:
阿久間:全てを見終わった彼は。再び、仮想世界に戻る。
阿久間:彼が何を思うかは。想像に容易い
0:
アレジ:…。
典氏:以上が、この世界の始まり。その全て
アレジ:…ああ
典氏:私は。こんな結末を、許容しない。それでも私は所詮は観測者。過去の事情にちょっかいは入れられない。でも、君なら。きっとできる
アレジ:…。
典氏:もちろん。君に決定権はある。アレジ・ロンドン。
典氏:君が、選ぶんだ。
0:アレジは座り込んでいる
アレジ:…。僕が今更何をしたって。君の言う、僕がいるこの世界線は変わらないんだな
典氏:ああ。そういう可能性を残して、君の体験した世界での出来事は何一つ変わらない。
アレジ:…そうか。そうかあ。
0:アレジは立ち上がった
アレジ:だったら。手をかそう
典氏:…え?
アレジ:…。この道は。僕が、友人達と共に歩いてきた道だ。そりゃ後悔はある。あの時ああしてれば、なんて思い出したらキリがない。
アレジ:それでも。僕はこの結果に。不満はない。僕は、僕が歩いてきたこの道が。間違っているとは。今も思わない
典氏:(M)…。少し、見くびっていたかもしれない。この世界を。いいや、この世界で生きていた人達のことを。
アレジ:それでも。やっぱりあの時確かに思ったんだ。皆が幸せになる未来もあったなら、それで十分だって。それを、羨ましいとも思った。
典氏:(M)嗚呼。ご覧よ。累。
アレジ:何より。僕はこう見えて負けず嫌いなんだ。
典氏:(M)人は。かくも聡い生き物だ
アレジ:やられっぱなしってのは。頭に来る
典氏:……。結論が出たかな。なら、これを食べて欲しい
0:林檎を渡した
アレジ:…これは。また食べることになるのか、これを
典氏:君のスイッチはペンスタン・レインによって削除されたみたいだったからね。この世界のルールに則って、ね
アレジ:なんでもありだな、未来の科学者は
典氏:見てきただろう。全ての可能性は、その全ての要因に繋がり最後はひとつになる。仮に、それを林檎にしよう
アレジ:…林檎。か。本当にこいつには。度々世話になってきたよ。本当に。
典氏:(M)それは、遠い昔かもしれない。遥か遠くの未来かもしれない。つい、さっきかもしれない。誰かがいつか、こう言った。
0:アレジは林檎を迷うことなく口にした
アレジ:…。うん。そうだね。そういう可能性を、もしもを。そうあれるなら、それがいいに決まっている。
典氏:(M)人類の原罪は。林檎を食べたことだという
アレジ:決断する時は。やっぱり、これなんだなあ
典氏:(M)この世は腐っていると、彼は言った
0:アレジはとある仮面を手に取った
アレジ:いいじゃないか。うん。全部の最悪から皆を救う。まるでヒーローだよ。でも違うんだ。誰の為でもない。他でもない、僕の為だ
典氏:(M)だから、どうやら彼は。世界にナイフを突き立てたらしい
アレジ:僕が。日々を、笑える為に。自由を、この手に。友人を、助けに。僕のたどってきた道は。ただのアレジは、ここに置いていく。
0:仮面を付けた
アレジ:僕は、赤い林檎。アレジ・ロンドン。
典氏:(M)曰く、それは感情であり、人間性。
林檎:この世界の。解放者だ。
典氏:(M)端的に言うのなら。それが、林檎だった
林檎:…。さて
典氏:行くんだね。アレジ・ロンドン
林檎:うん。ちょちょいと、世界救ってくる
典氏:……。実行世界を、更新する
林檎:SCRAMBLE。
0:
阿久間:…。は。彼以外にそういう事するやつが現れるとは
阿久間:さあて。もう、傍観者じゃいられないぞ。セノくん
0:阿久間は椅子に腰掛けた
阿久間:…ふむ。しかし、これはまた。計算し直しか。どうなるか。たったひとつ、毒を解く。その式が組み込まれるだけで結果は全く変わる。
0:椅子くるくる
阿久間:うーーーん。ああ、これは。もうひとつの、終わった後の、始まり。エピローグがあってこその、プロローグ。
阿久間:その昔。とある苦節の期間を乗り越えた歴史的事象を、人々はこう呼んだ。夜明け。と。
阿久間:だとするならばこれは…。
0:止まった
阿久間:異能力者達の、夜明け。か
阿久間:―――ははっ。これだから、観客席は降りられない