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笑う門には福来たる
ある時から、私は笑わなくなった。
ずっとしかめっ面のままで過ごすようになる。
徐々に笑うことを忘れていった。
いつの間にか、顔は能面みたいになり心も冷たく乾いている。
数年間はそうだった。
だが、最近になって昔からの知人にお子さんが生まれて。
遊びに知人宅を訪ねた際に生まれたばかりの赤ちゃんを見せてもらえた。
まだ、生まれて間もないその子を勧められて緊張しながらも抱っこをさせてもらう。
粉ミルクの匂いがほのかにする。
両腕に温かさや赤ちゃんの重さ、小ささが伝わってきた。
そして、私は顔を覗きこんでみる。
まだ、目はよく見えていないだろうが。
素直に可愛いなと思った。
赤ちゃんは最後には泣き出してしまったが。
じんわりと私の乾いた心を潤してくれたように思う。
知人宅を後にしながら、しばらくは赤ちゃんの顔が脳裏から離れなかった。




