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花冷え
今日はしとしと雨が降っていた。
春の桜が咲く時季に、雨が降ることを花冷えと言うらしい。
ひんやりとした空気が頬を撫でる。
アスファルトの道路で傘を差しながら、歩く。
私はふと、立ち止まった。
桜の木が横側に植わっている。
ポツポツと雨粒が花や枝に当たっていた。
確か、昔にいたある美女が泣いている様子を雨に打たれる梨の花に例えた故事があったか。
それを思い出しながら、桜の花のようだと讃えられたある女神様が泣き悲しむ姿にも見えるなと独り言ちる。
相変わらず、雨は降り続くが。
儚げな花に一時、見惚れていた。




