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八十六歩目 「側に居てくれますか?(IV)」

目も、傷付けることなくとれた。




『植物コンビ、そいつの腕と足と目を持ってきてくれ。』




殺し屋のみんなの中では、植物コンビと呼ばれていたような気がする。

エティノアンヌの能力と、僕の、エピン………〔茨〕を意味するその名前から、そう呼ばれていたんだっけ。




『【分かった】』


『了解したよ、弟もそう言っている。』


『【兄上、大丈夫?なんか、さっきからおかしい。】』


『も、問題ない、寧ろ………まだ遊び足りない、かな。だから、私はここに残る、絶対に。』






その翌日、僕は足を失った。

…………一人でいるところを、復讐されたから。

既に喋れなかった僕は、助けを呼ぶことができなかった。




『お前が噂の殺し屋、植物コンビの片方…………あの子に、あの子になんてことをしたの?!あの子の死体はどこに行ったの?!ねぇ!ねぇ!!』


『……?!』


『約束、守れなかったじゃない………お前のせいで!!お前のせいで!!!』


『…………だ、だ………れ?』


『憎い、憎い、憎い!!!………あの子と、あの子と同じにしてやるから。お父様には、あの子がどうなったかが分かってしまうの。そして、リ………いや、私には………お前をあのこと同じにする力がある。』




グシャッ



その人物のことは全然覚えていないが、素手で足を潰されたことは覚えている。

潰された瞬間に、傷口から蔦が生えて勝手にその人物を攻撃し、途中仲間が助けてくれたこともあって、腕や目まで同じにはならなかった。


……正気に戻り、その日を境に僕は殺し屋を、人を殺すのをやめた。

そしてその半年後、家出をして──────なんやかんやあり、今に至る。






エピンは、メイに文字を見せた。




【その復讐は、まだ終わってないんだ】


「なっ…………!」




そうだ、復讐はまだ終わっていない。

足だけではなく、腕も切り落とされ、目もくり抜かれないと、この復讐は終わらない。


その人物は、きっと狂っている。

当時、僕は、殺し屋である皆と同じデザインの、布とガスマスクで顔を隠していた。

きっと、その人間は僕の顔も声も今の姿も知らない。

知っているのは、植物コンビと呼ばれていたことだけ。



そう、植物コンビと呼ばれていたことだけ。

その由来を考えた結果、その人物は、植物を意味する名前の持ち主の呼ばれ方だと判断したのではないか。

今もずっと僕を探し、その途中で人を殺し続けている。


そしてきっと、その人間には経済力もあるはずだ。

流行り病をいいことに、身体の一部を欠損している人間は全て検査しろと病院に直接言える人物………相当な貴族、一族の生まれだと考えていい。

きっとトルテの父親が病院で無料で検査を受けることができたのはそのためだろう。

足ではなくても、とりあえず検査をさせることで、人を探していると極力勘付かせないように立ち回っていると思われる。


そこまでして、傷跡が残っている僕を捕まえたいなんて……………



そして、その人間はおそらく、もうかなり近くにきている。

……………植物の名前を持つ女性が、もう既に身の回りで二人死んでいるじゃないか。

ナンシーと、ロベリアだ。


もしかしたら、昔の身長がなかった僕を、当時から髪の長かった僕を、女性だと勘違いしている可能性もある。

植物の名前、花の名前を持つ女性は多い。

一人目は持病の可能性があるが、二人目は明らかに殺人だ。

関係ない人間を襲い、違うと分かったら、傷口から蔦が生えなかったら殺す…………この時点で、もう既に復讐では済まされなくなっている。





メイやトルテも、殺してしまうかもしれない。





彼、あるいは彼女は…………僕が王子だと、気づいているのだろうか?

いいや、それならまず母上を取り込むに違いない。

時雨の母親の家系、新家も引き入れるはずだ。


なんにせよ、わからないことが多すぎる。

…………相手の行動基準が、イカれているからだ。




【その相手は、僕より余程イカれている

 メイもトルテも殺すかもしれないから、言いたくなかった】


「オレに、オレに……!できることが、あれば……手伝います。」


【じゃあ、一緒に打開策を考えてくれ】


「えっ?」


【その人物に謝った所で、殺されるだけだ

 素手で僕の足を潰したんだからな】


「素手で足……そ、そんな屈強な人に喧嘩を売ったんですね。」


【姿は覚えていないから、なんとも言えない

 とりあえず、逃げるにしても謝るにしても倒すにしても策が必要だろう?

 だから、手伝って欲しいんだ】


「………はい!手伝います!」




メイは、元気よく返事をする。

どうしてこんなに嬉しいのか、メイは、自分でもそれが不思議だった。

傍じゃなくて側がいい、対等でありたい。

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