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九歩目 「貴方のため?(I)」

その日の夜。

かなりの深手を負ったエリーゼだったが、大分回復し、ご飯を食べれるようにまでなった。




「エリーゼが無事で良かった。」


「ぴっちゅ。」


「よしよし、良い子良い子。」




エピンは笑顔でエリーゼを撫でる。

しかし、そんな彼の行動にある者が黙っていなかった。




「キュイ!!」


「ヴィ、ヴィオローネ…………?」


「キュッ、キュルキュイィ!!」


「あの女は誰……浮気?って、あの方はお客様だ。」


「……………キュウ。」


「………すまない。そんな思いをさせるつもりは……………」




彼はエリーゼを小動物達に任せると、ヴィオローネを抱き抱える。




「皆、今夜は少し二人きりにしてくれ。」


「みゅ?みゅう。」


「みゃみゃ………」


「みぇっ!」


「…………ノーコメントで頼む。」




エピンは、寝室へ向かった。




「この前のこと、ちゃんと謝ってなかったな。すまなかった。」


「キュィィ、キュウ。」


「重いなんて思ってない。」


「キュイ?」


「ヴィオローネの前世は人間だろう?それに比べたら木菟ミミズクなんて軽いものだ。」


「キュッキュッ!!」


「そう怒るな………人間だった時からこんなに気難しい性格なのか?」


「キュル………」


「そんなわけない、ヴィオローネのそういう人間らしい所は実に可愛いからな。」


「キュッキュル……?」


「寧ろ、ヴィオローネが木菟ミミズクだからこうして心を通わせられる。人間として会っていればできないことだ。」


「キュキュイ、キュルゥ。」


「遊びで木菟ミミズクを口説く者なんてないだろう?」




エピンは、ヴィオローネにゆっくりと顔を近づける。

ヴィオローネは目をぱちくりさせた。

彼の長い髪で彼以外のものが見えない。


彼女は、目を閉じた。



しかし、次の瞬間──────



一人と一匹………いや、二人は窓の外が騒がしいことに気づく。

…………明らかに音が先程より強い。




「こんな時にすまないが……………何か音がしないか?」


「キュイ。」


「いや、僕にそれは分からない。」


「………………」


「もしかして、お前は気付いてて……」


「…………キュッ。」


「ヴィ、ヴィオローネ!!」




ヴィオローネは、すっかり知らん顔だ。

彼女にとって、そんな音よりもエピンに構ってもらう方が優先である。

そして、エピンはやっとこの音の正体に気付いた。




「この音……もしかして家事?」




ギィィィィ……



窓を開けると、そこには驚きの光景が広がっている。

思わず彼は目を疑った。

ヴィオローネも想定外だったようで、慌てて小動物達が寝ている部屋に急ぐ。




周りの家が、燃えていた。




「よく見えない………まさかメイの店も?!?!」




彼は慌てて仮面をつけ、外に出ようとする。




「ヴィオローネ、全員無事か?」


「キュイッ!」


「数えるから並んでくれ。ヴィオローネ、エリーゼ、ラナ、リナ、ルナ、レナ………………あれ、ジャスパーはどこだ?!」


「みゅっみゅ。」


「みゃ。」


「みぃみぃ!」


「みぇ………」


「キュウ。」


「ぴっちゅ?!」


「みんな知らないのか?どこにいったんだ…………取り敢えず皆避難しろ、ラナとリナでエリーゼを頼む。ルナとレナはジャスパーを探して欲しい。何かあったらヴィオローネの指示に従ってくれ!!」




エピンは、操り人形を引き連れてメイの店に向かった。









外は、炎に包まれている。

皆が震え、怯えていた。




「そこの兄ちゃん、しっかりしろ!」


「えっ?あ、あぁっ………………」


「ひょっとして…………あんたの家も強盗に燃やされたのかい?」


「ご、ごごご強………と、盗…………?」


「知らねぇのか?なら教えてやる、さっきそこら中に火を放って金や金品などを大量に持って逃げていったやつがいるんだりあの例の指名手配犯だよ。家のポストに投函されてたろ?」


「?!?!………そ、その………その……その人は…………?」


「それが早すぎて捕まえられないんだ!!目にも止まらぬ速さで逃げていったもんで……………あんなごてごてした靴であのスピードじゃあ相当速いに違いない。あれは無理だな。」


「ま、まさか……………!!」




エピンは、ザッハトルテに作った靴を思い出す。

彼女は靴をアレンジしていた。

そして、彼女が頼んだのは………………





誰よりも速く走れる靴。

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