表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/205

七十九歩目 「そこにいるのは誰?(II)」

窓からの眩しい光で、エピンは目が覚める。




「ここは…………」




自分の部屋だ。

仮面はつけたままだが、服は寝巻きに変わっている。


思わず時雨を呼びそうになるが、もうここに彼はいない。

しかし、彼は少し寂しかった。




「……………ヴィオローネ、いるか?」




その心細そうな声を聞くと、ヴィオローネがやってくる。

彼女はいち早く駆けつけてくれたものの、どこか怒っているようだった。




「ヴィオローネ………」


「キュイッ。」


「すまない……………僕は、本当に馬鹿なことを!」


「キュキュキュ……………?」


「時雨が、死んだんだ。エイトも置いてきてしまったし。け、結果二人に助けられて………僕は……………」


「キュル………!」


「それに、僕は泣けなかった……………何がしたいのか、わからない………」




彼は、ヴィオローネと一緒に下の階へ向かおうとした………が、すぐにはそれが不可能なことに気づく。




「ヴィオローネ、ハンカチを持ってきてくれないか?流石に何か咥えないと………」


「キュルキュ!!」


「見たくないなら、傍にいなくても大丈夫。……………人間が痛がる姿なんて、見たくもないだろう?」













その頃、メイとトルテは話し合っていた。




「エピンさんが抱えている問題を、どう解決するか………と?」


「はい。」


「それって……オレたちが入っていい所、なんですかね………」


「確かに、わたくし達が立ち入ることではないかもしれません。けど……時雨さんは、きっと亡くなられたと思うんです。時雨さんが生きていたら、きっとあんなことにはならない。」


「………………」


「大事な人がいなくなった時、余計なお世話をする人がいないといけないと思うんですの。」


「………確かに。」


「動物たちと話せるかもしれませんけど、家族じゃないわたくし達にしかできないことだってありますわ!」




二人はエピンのことを全然知らない。

これは、それを理解した上での考えである。


何かを失った二人だからこそ、どうして欲しかったのかがわかるのだ。

そしてメイは、湧いてきたとある疑問をトルテにぶつける。




「というか、エピンさん………靴でなんでも願いを叶えられるんッスよね。」


「それが、何か……」


「………それって、本当なんですか?」


「え?」


「絶対に何か制限がある。なんでもできる靴を、作れていいはずがありませんから。」


「………わたくしの時は叶いましたわよ?」


「で、でも……その気になれば世界征服とか、できちゃうだろうし………」


「確かに、エピンさんが過去に何かトラウマを抱えているなら…………靴を使って過去を変えたりできるのでは?と感じたことはありますけど。」


「…………あぁっ!!!!!!」




メイは、突然大きな声を出した。

トルテは驚いて、少しだけ疎んだ顔を見せる。




「と、突然なんですの…………?」


「エピンさんが自分で靴を履いて、時雨さんが生き返りますようにって願ったらいいんじゃないッスか?!」


「さっき条件とか言ってましたのに………………?!」


「条件を一回、全無視して見ましょう。オレは、エピンさんの力を…………ちゃんと知りたいです。」


「…………そうですわね。」


「オレは朝からメロンパン売らなきゃなんで、トルテさん先に言っててください!」


「わ、わたくしだって暇ではありませんのよ?!……。まぁ、先に行って参りますわ。」







トルテは、再びエピンの家に訪れた。

……………そして、鍵が空いていることに気づく。

前、とんでもない場面を見てしまった彼女は、しっかりドアの前で耳をすませた。

前回と同じ気持ちには、なりたくない。




「はぁ……はぁ………」




……………………荒い息遣いが聞こえてくる。

トルテは、あの時と同じように気まずくなった。

どうして毎度毎度こんな場面に出くわしてしまうのだろう?


自分の運の無さを嘆きながら、彼女は一度戻ろうとする。

仕込みを忘れていたとでも言えば、誤魔化せるはずだ。



しかし、エピンの次の言葉にトルテの足が止まる。




「あっ!!い、痛い………許して………っ……?!」




トルテは、少し心配になってきた。

恋人といるのに、そんなに苦しいのか?

もしかしたら…………本当に体を壊しているのかもしれない。




「ハンカチ、落として……………咥えないと………くっ?!あ…………許し……」




トルテは耐えられなくなり、ドアを開ける。

昨日…………メイは、エピンさんが持っていた部屋の鍵を勝手に拝借して、着替えさせて包帯を巻き、寝かせたと言っていた。

メイが、命に別状はないと判断したからに決まっている。

だから、きっと、無事だ………無事である可能性の方が高いんだ。


…………今は、そんなことを考えている場合ではない!!



ガチャ!!ダッダッダッダッ………



トルテは中に入り、階段を駆け上がった。

……………血の匂いがする。


そして、足音に気づいたエピンは、誰かが来たのだと悟った。

来たのが誰にしろ、今やっていることを………絶対に見られてはならない、絶対に!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ