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七十四歩目 「やめちゃうの?(III)」

時雨はアリアを捕まえて、吊し上げた。




「な、何これ?!ノアの魔法…………ノア!やめてくださいノア!!蔦を触って意思を伝えなきゃ………………あっ。」




アリアの体は、突然だらんとした。

時雨は黙ったまま、アリアの首をを絞めている。

アリアは、蔦が多すぎて術者が見えなかったため、エティノアンヌの魔法と勘違いしてしまったのだ。

その叫び声も、エティノアンヌには届かない。

それどころかエティノアンヌは、化け物が目の前にいることにすら気づいていない。


アリアは、首を絞められている。




「うぅ……ぐっ………!!」




アリアは、長く伸びた蔦によって空中で首吊り状態になっている。

遠くてよくわからないが、とても苦しそうな低い声が聞こえてきた。




「……………死に……た…く……………なっ!!」




もう、これ以上首を絞めていたら死ぬのではないだろうか。

そう思ったが、エイトを取り返す方法は、他にはない。

アリアには悪いが…………死んでもらわなければ。




「さ……い、ご……に…………ひと……め…………………………お会い、した… かっ…………」




エティノアンヌは、顔を覆っている。

先程『愛しています』と言っていたし、二人はきっと恋人関係だったんだろう。

最後に一目、恋人の顔を見たかったというほどに、二人は…………



時雨の蔦がアリアから外れ、アリアが落下した。

幸いにも蔦がクッションとなり、遺体に傷はついていない。

エティノアンヌが衝撃による空気の揺らぎを感じて、駆けつける。




「アリアの香り……!アリア?!大丈夫か?!アリア?!」


「…………………」


「アリア、手を………手を……………」


「…………………………」


「そ、そんな…………アリア?!死なないでくれ!!アリア!!!」




エピンは、悲しそうな目で二人を見つめた。

…………なんという悲劇を起こしてしまったのだろう。

こんな形で再開し、こんな結果になるなんて。


兄上とは、一度話し合うべきだと思っていた。




しかし次の瞬間、エピンの体に衝撃が走った。




「う、うーん………ノア?」


「……手が動いた!良かった、生きてるんだね。」


「もう、ノアが突然私を掴んだりするから……驚いて気絶しちゃいましたよ。」


「よくわからないが無事で良かった。」




は?



どういうことだ?

あれほど苦しそうな低い声を出しておきながら、生きていただと?そんな馬鹿な………





低い…………声?





やだ。

そんなはずない。

そんなはずはない。

ちがう、ちがう。


だってさっきまで、さっきまで………………




エピンは気を失ったエイトを少女達に託すと、蔦をかき分け始めた。

何も考えず、ただ蔦をかき分ける。


アリアがエティノアンヌの魔法だと勘違いしたということは、外からは誰の魔法かわからなかったということ。

外から中は、わからなかったということ。

だったら…………だったら…………………


嘘だ、信じない!!

首を絞められれば誰だって低い声になるだろ。

アリアの声は低めだ、あの声はアリアの声だ。


だから……………




「あ。」




なんで

なんでなんで


なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで



目の前の光景が受け入れられない。

これは幻覚なんじゃないか?

きっと兄上が幻覚作用のある植物を栽培したんだろう、周りを見渡し、他におかしいところを必死に見つけようとする。

だがおかしいところは見つからない。


きっと夢だ。

そう思う、頬を思いっきりはたく、痛みが走る。

その痛みの質感はこれまでに見た夢よりずっとリアルで、これが夢だとはとても信じ難い。

なんとかして、この光景が現実でないことを証明しなければ。



視覚はその光景を捉えた、聴覚は聞こえない大事な誰かの息遣いを探し、嗅覚は血の匂いで満たされている、味覚は必死になりすぎて噛んだ舌から出る液体の鉄の味を脳に焼き付け、触覚は脈を打たない誰かの………まだ残っている温もりを…………


五感全てが、現実を表している。

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