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七十三歩目 「やめちゃうの?(II)」

エティノアンヌには植物由来の毒は一切効かない。

体が毒に塗れても、解毒性のある植物の一部を体に浴びせるか、二人に薬草を服用させたりなどして、アリアと教祖の元に戻るだろう。

火や除草剤や化学性の液体、塩や味噌などがあればまだ何かできたが、もうここまでくると打つ手がほとんどないのである。

無謀を承知の上で武術向上を使い、突っ込むか?それとも…………



二人が完全に思考停止している中…………エティノアンヌに、アリアが近づいた。

アリアは彼の手を取ると、指で何かを書く。

するとエティノアンヌは少し屈んでアリアを抱き寄せると、不思議な植物で周りを覆った。

エピン達の方からは、何も見えない。


彼女は、エティノアンヌの顔に手を触れる。

……………そして自分自身の力を、限界まで高めた。

アリアは背伸びをして、彼に顔を近づけていく。




花の蜜ような甘い味を感じると、アリアはエティノアンヌから顔を離した。




「愛しています、ノア。」




そういうと、アリアは教祖の後を追う。


しかし、アリアがマッハ2を使っていないことに気づいたエピンが、アリアに向かって人形を操り、そのまま彼女目掛けて投げた。

この鉄の人形は確実に当たる、アリアは気づいていないし、エティノアンヌは今気づいたが、彼が硬い植物を育てるにも、時間が足りないため確実に間に合わない。

アリアが負傷すれば、エティノアンヌは彼女の回復に入るだろう。

そうすれば隙が生まれる、この位置ならエイトにも当たらなくて済む。



バシッ!!






エピンは、目を疑った。

鉄の人形が、なぜかとんでもない速度で床に落下したのである。

床には、痛々しいヒビ。




「ノ、ノア?!」


「………………ッ!!」


「手を……」


「だ、い、じょ、う、ぶ……?って書いたの、かな………私は平気だ。なんか、殺気を感じてね……咄嗟に動いてしまったんだよ。」


「怪我は?!えっと、指で…………」


「大丈夫、それにこれは私のミスだから。感覚をそのままにしておいたのは私だ…………道管が少し痛むが、感覚を切り離せば問題ない。アリアは先に行ってもらえないか、それに今……驚いて足を捻っただろう。」


「ば、バレてる………それより、腕は?」


「復讐されたときよりかは………マシだ。」




エピンは、先程何が起こったのかを理解する。


………………エティノアンヌが、とても太い植物の蔓で鉄の人形を跳ね返したのだ。

まさか、あんな速度で植物を育てることができたなんて。

あり得ない、絶対にあり得ないのだが、実際に怒ってしまった以上信じるしかない。

足を引きずりながらも、アリアは確実に一歩一歩向こうに進んでいく。


横を見ると、そこにいる時雨も大分消耗している。

何か………しなきゃ……………




「誰だか知らないが、今のはなんだい?物体を操る生誕魔法でも使ったのか?」


「あ、兄………上………」


「アリアを殺そうとした人間の匂いはどれだ………?アリアを殺そうとした人間は美しい花で殺す価値もない、楽に殺すつもりもない!!」


「や、やめ………!!」


「この懐かしい香り………こいつか?それともあの辺にいる者か?」




視界を完全に覆っている……だけではない。

おそらくこの耳につけている何かで、音を遮っている。

アリアとの会話にも手を使用していたのだから、きっとそうだ。


これ以上何をすればいいと?

感情を声に乗せても無駄、会話も不可能、まず勝てる相手でもない。

無理だ、絶対に無理だ。




「…………返せ。」




時雨が、何か呟いた。

エピンは、彼の聞いたことがないような声に驚く。




「返せ、返せ、返せ、返せ、返せ返せ返せ返せ返せ。」


「えっ……し、しぐ……時雨?」


「若様の幸せを返せ、エイトの幸せも返せ、さっき少女をありがとうとか言ったな。あぁ言った。全部貴様がやったんだな。」


「………………………」




時雨の足元から、蔦が伸びた。

…………………蔦はどんどん伸びていく。

蔦は、どんどんどんどん伸びていく。


少女達は、恐怖に震えて縮こまった。

エティノアンヌも異変を感じ、辺りの匂いを確認している。




「なんで奪ってばかりなんだよ、なんでいつもこうなるんだよ、馬鹿げてる、馬鹿げてる。貴様がいるといつもこうだ。嫌いだ、近寄るな、吾輩に現実を教えるな。」




蔦の量が、増えた。




「貴様は愛されていないが自由。吾輩は愛されているが縛られている。愛してはならない。実の母親でさえも、純粋な少女でさえも、少し苦手な兄すら愛してはならない。お母様にあったら名前を聞きたい。会えても会えなくても聞いてはいけない。会えても会えなくても辛い。若様は好きだ、だけど若様にしか愛情を持ってはいけない。」




蔦の量が、さらに増えた。




「愛を知らない子供に愛を教えることなんてできない。知らないから、許されなかったから。もうやり直せない。もう二度とやり直せない。」




蔦が伸びて、更に更に量が増えた。




「初めて吾輩が、自分から守りたいと思ったものを返せ!!!」




蔦は、とんでもない速度でアリアに向かっていく。

足を怪我したアリアは、当然逃げられない。

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