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七十一歩目 「やめちゃえば?(IV)」


「その髪の色は…………アルバート様?何故………」


「アリアこそ、どうしてここにいるのですか?!」


「…………………一体、私の名前を、誰から聞いたのでしょうか。」


「………そうか、貴様は塵を追いかけていったのか。」


「死なないためだとしても、塵だなんて………そんなこと仰らないでください。」


「…………………アリア、申し訳ありませんが、あなたを殺すことになりそうです」


「アルバート様、私は若君様に手を出すつもりなんてありません!これ以上あなたと関わる気もないのです。」


「………はぁ。」


「だから………若君様のそばにいる少女を引き渡してください。」


「絶対にできません!!!」


「はっ?!」


「絶対に危険な目には合わせない、誰も。」


「なんで……あなたは若君様しか……」


「俺は……吾輩は、あなたを殺す。」


「…………あぁ、この少女に操られているのか。」


「なんのことです?」


「聡明なアルバート様が気づかないとは……それもあの少女の意思か、はたまた………」




アリアはナイフを持って、時雨に襲いかかった。

時雨はナイフを交わし、少女たちをなんとか一点に集める

エピンは鉄でできた人形で、少女たちを守るように並べた。


アリアは、エイトに向かってがんじがらめを放った。

彼女も、どうやら魔法が使えるらしい。

時雨が前に割り込み、刀で一瞬のに切り捨てる。


………………しかし、次の瞬間。

アリアがとんでもない速度で動き、エイトを捕まえた。




「いやっ?!」


「……………!!」




エピンは咄嗟に人形を動かすが、間に合わない。

アリアはがんじがらめでエイトを縛ると、彼女を抱えたまま、教祖を守るように立つ。




「さっきのはなんだ?!」


「…………マッハ2という秘術です、私は心の一族の出来損ないですから。」


「離せ……エイトを離せ!!!」


「キャンドラーを使われたら、困ります。」




エピンは焦っていたが、彼の頭の中には一つ疑問があった。



アリアの目的はエイトのはず……

僕らとこれ以上関わる気はないと言っているのに、なぜそのままエイトを連れていかないのだろう?

アリアは、先程この老婆のことを ”お客様” と言った。

もしかして、アリアは立場的に………教祖を見捨てられないんじゃないか?


それより、兄上はどこだ?どこにいる?

アリアは兄上の従者、それ故に兄上がいる可能性もあるのだ。

アリアは強力な攻撃の魔法は所持していない。

彼女だけなら時雨が力ずくで押せばなんとかなるかもしれないが…………兄上がいるのなら話は別である。

例えば兄上が、子供のみが致死する毒のある植物を知っていた場合、子供が全滅する恐れがあるのだ。

彼の能力が進化しているなんてこともありうる。



エピンは考えることが多過ぎて、頭がおかしくなりそうだった。




「……………やむを得ません。」


「いいからエイトを………!」




ザシュッ



音がした方を振り返ると、死にかけの少女が目に入る。

一番隅にいたその少女は首のあたりを切られ、苦しそうに息をしていた。




「その娘を引き渡してください。」


「貴様…………!!」


「早く、その娘を………!」




時雨は急いでその少女の近くに寄り、回復を始める。

彼は、必死に感情を抑えていた。

落ち着かなければ、回復効果を含んでいるこの水の温度が上がって、この少女が火傷をしてしまう。

これは高位の回復魔法ではなく、水にさまざまな効果を持たせたり、出来るだけだ。




心が、張り裂けるのではないか?

時雨は何度もそう思った。

自分から、感情なんてものは消し去ったと思ったのに。

若様も守りたい、エイトも守りたい、この少女たち全員も守りたい。



義務だった行動が、いつの間にか欲求になっている。


少女の手当てを終えると、時雨はアリアに向かって行った。

彼の周囲に、少し蔦が現れるのを見たアリアは、どこか悲しそうな顔で笑う。




「何がおかしい?!」


「………………………別に。」

辛いなら、全部やめちゃえばいいじゃん。

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