七十歩目 「やめちゃえば?(III)」
グシャッ!!!!
その頃エイトたち三人は、子供達の部屋を開けることに成功していた。
………………勿論、力ずくでだが。
「扉が潰れた………?!」
潰れた扉を見て、小さな子供達はざわつく。
エイトはその小さな彼女らの中で、一番大きい子に話しかけた。
「みんな、ここから逃げるよ!」
「お、お姉ちゃん!おかえり!!」
「……………この人達がみんなを助けてくれるよ、それより病気の子達は?」
「あたしたち…………助かるの?」
「…………………うん。」
「ほんとに?大人は嘘をつくよ………?」
「あの二人はね、絶対に嘘をつかないんだ。冗談は言うけど嘘はつかないから。」
「で、でも…………あっちの人は顔が隠れてて怖い!!!」
「えっ。」
その少女は、恐る恐るエピンの方を見つめた。
エピンはどうすればいいのかわからず、時雨に目線を送る。
しかし、時雨は見て見ぬふりをした。
子供は専門外、そう言いたいのだろう。
見て見ぬふりをした時雨は、なんとなくあたりを見渡す。
…………この人数にしては明らかに小さな浴室と人数分の布団、それ以外は本当に何も無い部屋だ。
子供部屋の隅っこに何故か大量の植木鉢があるが…………これはいったい何のためのものなのだろう?
…………………子供にでも投げつけるのか?
本当にそうなら酷い話である。
一方、一人では喋ることも、説明することもできない彼は、どうすればいいのかわからない。
仕方がないので、エピンは装飾された人形をどこからか取り出し、動かした。
その可愛らしい人形の手を、その少女の手に置く。
一人でに動く人形を見た皆が、嬉しそうな顔に染まる。
彼は、彼なりに進歩しているのかもしれない。
しかし次の瞬間、部屋に何者かが入ってきた。
ドアが壊れた衝撃音でこちらに駆けつけてきたその老婆を見ると、ざわついていた子供たちは一斉に黙る。
「な、なんの騒ぎだい?!」
「きょ、教祖様………」
「あぁあんた……やっと帰ってきたんだねぇ。あんたに行ってもらいたいところがあるから、さっさと支度を………」
「そんなの嫌だ!」
「?!」
「私たちは…………私たちは貴方の道具じゃない!このクソババア!!!」
「今、今なんて言った…………?」
エピンと時雨は、唖然とした。
エイトの成長にも驚いたのだが、それよりも教祖に驚いている。
教祖様とやらは確かに二人を見たはずなのだが、何故かこちらに気付く様子がないのだ。
よく観察してみると………………眼球の動きが明らかにおかしい。
教祖は……………彼女は、視野がひどく狭いのだろう。
エピンは、着飾っている人形を操るのをやめた。
そして、鉄でできた人型の模型のようなものを浮かせる。
こちらは、 ”彼がよく使う方の” 人形。
それを教祖の真上に持っていくと、思いっきり振り下ろした。
ガーンッッ!!!!
教祖は、その場に崩れ落ちる。
頭からは、血がダラダラと流れていた。
それを見て、時雨はエピンの元に駆けつける。
「若様?!」
「はぁ……はぁ……はぁ………」
「人は、殺して欲しく………なかったんですけど、ね。」
「…………………?」
「ん?吾輩の後ろに何か………」
時雨は、足に圧迫感を覚える。
彼が慌てて後ろを振り返ると、そこには……………
「誰だい………あんたらは………………!!!」
「なんで生きて…?!」
「年寄りだと思って舐めた真似を……!」
老婆は、時雨の足をつかんで離さない。
時雨は水を氷にして首を貫こうとしたが、冷静ではなかった。
バシャッ
ただの水が周りにばら撒かれる。
そこに、先程の女も駆け込んできた。
「お、お客様?!」
「おい………あんた、あたしを助けておくれ………!この小娘が……例のものだよ…………!!」
「一体、何がどうなって………だが、今はこの少女を捕らえなければ。」
女は、時雨の方に視線を移した。
しかし…………二人は目を合わせた瞬間に、青ざめる。
それを見ていたエピンも、震え出した。
その女はエピンの存在にも気付く。
なんで……ここに…………
エティノアンヌの
なんでここに 従者がいるんだ?
若君様の




