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六十九歩目 「やめちゃえば?(II)」

メイとトルテは、屋敷まであと少しという所まで来た。

しかし、そう上手くはいかない。



ギュッ



歩いていた二人の足に、植物のつるが絡み付いた。

なんの植物かは不明だが、足をあげることすらできないほどの重さと絡まり具合である。




「な、なんスか、これ!」


「メイさんもですの?」


「………動けない。」


「蔓が足に絡まっているのでは……」


「そんな、せっかくここまで来たのに!!」




二人は、どうすればいいのか全くわからなかった。

しかし、時間は待ってくれない。

時間が経つにつれて、どんどん足は重くなる。




「足が…………」


「もう膝まで来てる……?!」


「いくらなんでも早すぎますわ!」


「そうですよ!!なんで急に………こんなのおかしいッス!!!!」




トルテは、彼のその言葉を聞いて、はっとした。

そうだ、 ”こんなのおかしい” じゃないか。

こんなに早く動きを止められるなんて、普通ではおかしいのである。


これが自然現象だとは、とても思えない。

そう、自然現象でないなら…………必然的に誰かが魔法や秘術でやっている事になる。

誰かがやっているのなら、そこに敵意が生まれるはずだ。



敵意があるなら、フラワーベールで無効化できる!




「……………魔法、使いますね。」


「えっ、トルテさん……ここでですか?!なんで?!」


「無効化、できるかもしれないので!!」


「……………なるほど!そうか!!」


「やってみます。」




トルテは、フラワーベールを使った。

だが、この蔓はびくともしない。




「な、なんで?!こんなひどい仕打ちをする人間に戦意がないとでもいうの?!」


「…………あ。」


「メイさん?」


「これ……………遠距離の魔法なんじゃないッスか。」


「えっ…………」


「敵の目的はさておき、この魔法が……特定の範囲内の植物を遠くから操る能力だとしましょう。その場合、この植物自体に意思はない。敵が、トルテさんのフラワーベールの範囲外にいたら………戦意を喪失させても意味なんてないんスよ。植物に、戦意なんてありませんから。」


「…………………!!」


「そもそも敵なのかも、わからない。あの大きな屋敷に住んでいる人が仕掛けたトラップかもしれないし、ここにエピンさんがいたとしたら、あの蔦の魔法が暴走した可能性もある。いずれにしろ……………空想の域を出ないというやつです。」


「あ……あぁ……そんな………」


「でも、何もしないわけにはいきませんよね。」


「わたくしたちに、何ができると?もう何もできないではありませんか!!」


「……………………」


「…………」


「エピンさーん!!時雨さーん!!!」


「?!」


「エピンさーん!!いますか?!時雨さーん!いますかー!!!」




トルテは、わからなかった。

どうしてこの状況で、まだできることを見つけられるんだろう。

……………こんな山奥にエピンさんと時雨さんがいるわけないのに。

ここから動く方法もないのに、お二人を助けるどころか自分たちが帰れるかもわからないのに。


なのに、どうして?

どうしてそんなに前を向き続けられるの?

絶体絶命であるこの状況になってまで、どうなるかわからないこんな状況になってまで、どうしてそんなに前を向いて進み続けられるの?






「さ、叫んだって無駄ですわ。声なんて聞こえるはずない………」


「わかりませんよそんなこと。向こうから、ここにいる人の声を聞こうとしたことないでしょ?」


「道を間違えている可能性もありますのよ!ここで叫ぶなんて非合理的です!」


「80%より、20%を信じるんですか?それこそ非合理的ッス。」


「でも奇跡でも起きない限り………そんな……………」


「起きるかもしれないじゃないですか!!奇跡が!!!」


「……………!!」

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