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外伝 「弟のことが好き過ぎる、植物(II)」


兄上は、苦しそうに床に膝をついた。

時雨も申し訳なさそうな顔をしている。

あぁ………僕はいつも間に合わない。




「……………ご、ごめん……………なさい。」




なんの役にも立てない。

そんなこと知ってるのに、どうしてこんなに心が苦しいんだ?

感情なんていらないんだってば。

父上だって時雨のお母様を愛してから、体を壊した。


抑えなきゃ。

感情を出しても出さなくても苦しいなら、周りを傷つけない方がいいでしょう?




「若様!若様が謝る必要なんてありません!!」


「そうだ、エピンの問題ではない………私たちが悪ふざけし過ぎただけで……ゲホッゲホッ!!ヒュー……ぐっ………」


「おい塵!除草剤を撒いたのは悪かったが、かなり薄めた除草剤でそこまで苦しむな!!」


「それだけじゃ………なか、った……!!カル、ミアが………ヒュー……ヒュー………」


「貴様、呼吸が………?!」


「塩だ………!カルミアの………ペンダント………ゲホッ!!はぁ……っ?!しゅ、宗派………はぁ……」


魂避こんび教……………物に魂が宿ると信じる宗派で、その魂に呪われないように清めの塩を持ち歩く習慣がある!!!カルミアは意識を失う前にペンダントの中身を開けたというのか?!」


「内側から、なら、人間の…………ヒュー………はぁ、臓器で……吸収するが………外側……だ……と…………」


「少し待ってくれ、魔法で雨を降らせる。外に出て水を吸って塩分を薄めろ!!」


「レイ、あそこの上にある…………土の、袋を……とって…っ……」


「……………貸し一つだからな。」




なんでそんなに冷静なんだ?

なんでそんなに優秀なんだ?


僕の魔法で出来ることは一つもない。

水魔法は制御できないし、花魔法は名前に花があるだけで花なんて関係ない。

お人形遊びができて何になる?




「ほら、土!!今開けましたよ!!」


「よし……………互いに、愛し愛される…………ちかっ、力を………貸し、ゲホッゲホッ!!………貸して…………くれ、そして…………咲き誇れ…………!!」




土から、綺麗な花が育った。

兄上はそれを体に取り込み、少しずつ回復している。

そして、同時に時雨の雨も降ってきた。


兄上は、ベランダに飛び出して雨を浴びる。




「はぁ……はぁ……………根と維管束が痛い………」


「塵、大丈夫か?」


「ありがとう、レイ………」


「お礼を言うのはやめろ、吐き気がする。」


「改めて、レイのつくるご飯の安全さとありがたさを知った。私の分はいつも味が薄めだが、それは人の部分だけでなく、植物の部分に負担がかかりにくくするためだったんだね。」


「若様はお前を必要としているからな、殺されそうになった相手を助けるのは複雑極まりないが。」


「あの時は殺虫剤をかけられてそれどころじゃなかったんだってば……………というか、除草剤を薄めてかけるのは、私に少しずつ耐性をつけるためだろう?前に一度、使用人にそれで殺されそうになったから。」


「……………死なれたら若様が悲しむ。貴様のためなどではない。」


「それでも嬉しいよ、仲良くしてくれたらもっと嬉しいけどね。」


「絶対にお断りだ……………さぁ、若様。」




時雨が、僕の方を見た。

……………見られたくない。

仮面、つけてくればよかったな………




「部屋に戻りましょう。」




時雨の手をとる。

……………ごめん、時雨。

本当は兄上と仲良くするべきなんだ。

時雨に僕以外の人を愛する権利はないって、母上は仰ってる。

でも……僕は………………




「レイ、借りは後で返す。高級茶葉を無償で提供しよう。今度育てる。」


「仕事が早いな…………」


「その……………レイ、エピン。できればまた私のところに来てくれないか?」


「はぁ?!?!」


「一人だと、寂しくてね。レイやエピンは、雨や水……または動物と会話できるかもしれないが、私にはできないから。」


「ち、塵なんかに構う暇はない!!わがは……俺は若様を部屋にお送りしてくる!」


「レイは、私の名前を知らないんだな。王とエピンと使用人以外の者の名前を覚えることが禁じられていると見える。エピンは私のことを兄上と呼んでくれるからね。君は確かにエピンを人殺しにしてしまった私のことを多少は憎んでいるが、君は冷静だ。レイは私と相棒にに殺虫剤をかけて暴走した人間の方を恨んでいるだろう。相棒は体の半分が虫だった、君も仕方がなかったと思っているんじゃないかい?」


「………………!!」


「私の名前は、エティノアンヌ…………家名は黙っておくね。勿論家名の後に ”ブランシュ” は付くし、王族ではある。」


「………ならエティノアンヌ様、吾輩……俺のことは時雨でお願いします。レイと呼ばれるのはあんまり好きではなくて。」


「わかったけど……………時雨、君にはノアと呼ばれたいな、ダメ?」


「気を許したわけではない!!あまり調子に乗るなよ?…………………さ、さぁ若様参りましょう。」




時雨、ごめんね。

…………僕がスタンツェ家だから、だよね?



バタン






「私は………なんて中途半端な人間なんだッ!!!必死に二人に嫌われるためになんかこわぁい感じで脅したり、人を殺しまくって頑張ってきたのに、仲良くなりたいなんて本音を………!違う悪いのは私じゃない弟だ、弟が可愛すぎるんだ………」




私は大馬鹿者だ。

情を捨てないと王族は死ぬのに………

死にたくない、死にたくないのに!!




「もっと人間を殺さないと……研究しないと二人を守れない、なんとかしなければ。三年間共に戦った相棒が居ない今、私が人を殺すしかないんだ。あの女に復讐されないために。」




バグノーシアは、最高の相棒だった。

だが 昨日 ……………私たちは殺虫剤を浴びて、我を失って二人に襲いかかってしまったのだ。

昨日からエピンは全く喋らなくなってしまったという。

悪いのは私なのに、バグノーシアを失った悲しみで……………従者を守り、自己防衛をしただけのエピンを殺しそうになった。


あぁ、また足元から蔦が…………

七歳の頃から殺し屋としてタッグを組んでいた相棒を失ったからか、どうも私はおかしくなっている。


唯一信頼しているアリアという使用人も、近頃体調を崩してしまった。

アリアを通して二人にはお小遣いをあげているので、アリアがいないと部屋の片付け以外の面でも困ってしまう。

二人に何かあった時、お金がないと話にならない。

週に一度、家が買えるほどの金額はあげないと…………

アリアには甘やかし過ぎだと言われるが、お小遣いをあげないと心配で眠れないのだ。

二人はお小遣いのほとんどを貯金しているようだし、大丈夫だろう。

何かあった時、なんとかなるようにしておかなければ!

備えあれば憂いなし、東の国の言葉でもこういう言葉があるじゃないか。


父上が倒れてお金が足りなくなっている今は、王政にもお金を分けている。

私自身も、美味しい水や良い肥料が欲しいし、やはりお金は必要だ。

お金なら商売でいくらでも手に入る。


少しだけ気まずいのは………………そんな多額のお金がどこから来るのかと、アリアによく聞かれること。

この植物を操る能力で、高位薬草や………”麻薬”を生成して売っていると言ったらアリアは怒るだろうな…………




だが、もう引き返せない。

私がずっと狂い続けるしかないのだ。

………………二人が、血に染まった道を進みたいと、そう望むなら受け入れる。


だが、せめて二人には、好きなことをして生きて欲しくて。

エゴかもしれないが、そうして欲しくて。



だから、私は………………

次回から本編再開です!


え?3000文字を超えてる?

いや外伝書きたいことたくさんだけど長引くの申し訳ないなって思って!すみません!!!


じ、次回もお楽しみに(・▽・)

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