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五十歩目 「理解しようね?(III)」

ーー 前回の小説に関して ーー


読者様へ


小説は毎晩21時の予定です。

ですが前回、一時間早い20時にセットしてしまいました。

昨日のはこちらのミスです、混乱させて申し訳ありません。

これからもこの小説をよろしくお願いします(・▽・)


作者


これほどまで、人に寄り添えない人間はいただろうか?


……………違う。

吾輩は加害者だが、被害者でもあるのだ。

人への寄り添い方なんて、教わってない…………


彼は、考え事をしていたが、彼女の心から漏れる助けの声に、はっとする。

黙り込む時雨の前で、エワルはなぜか、涙をこぼしていた。




「だいじょうぶ……だいじょうぶ、なのに…………」




彼女は大丈夫じゃない。

時雨は、今まで自分がしてきた行いに疑問を抱き始めた。


これで良かったのか?

不正解を避けることしか考えていなかったんじゃないか?

正解まで避けていたのではないか?いいや………不正解を先送りにしていただけだ。

そして今までの不正解が、ここで牙を向いただけだ。




「だいじょうぶなのにね、かなしいの。だれにもあいされずにしぬのがかなしいの、こわいの。」


「…………本当に大丈夫になったら、取り返しがつかない!!!!」


「え…………え?」


「泣けなくなったら、もう何もできなくなる!!」


「ふふふ……おにいさん、やっぱりへんなひとだね。」


「は、はぁ?!」


「なんでおにいさんが、そんなにあせってるのか……エワルにはわからない。さっきまでおもちゃみたいにあつかってたのに。」


「………………………」


「………もう、じかんつぶせた?ならエワルをころして。」


「殺す?!ば、馬鹿なことを言うな。」


「おにいさんは、ひとをころしたことがあるよね。」


「ない、人を殺したことなんてない。」


「うそついてるでしょ。」


「その……根拠は?」


「そういう め を、してるもの。」




時雨は、ますます自分がわからなくなる。

自分がどれほどの罪を犯したのか、それによって自分はどう思っていたのか。

それだけが頭の中をぐるぐると回っている。


この少女は、頭が悪いフリをしていたのか?

先程より饒舌で、話し方も細やかだ。


運命は吾輩をどうしたい?

運命は吾輩に絶望を与えたいのか?

自分が全てを放り投げた時、この少女は無理矢理全てを奪われていたと。

そう言いたいのか。



この少女を殺すのは簡単だ。

だが、殺してしまったら若様の意思に叛いてしまう……

それに、生かしておいても彼女が再び同じ道に行けば、彼女の苦しみは終わらない。

…………何故彼女を判断材料として認識している?!

若様以外はどうでもいい、若様がこの少女を生かした時点で吾輩の選択は決まっているのだ。


頭の中がこんがらがって、時雨は何を考えているのかもわからなくなってきている。

彼は悩んだ末、勢いに任せることにした。




「殺しもしません、帰しもしません、保護します!!」


「えぇ?!」


「吾輩は大人です、子供を保護する責任があります。まぁ面倒なことはあとでいいでしょう。」


「こうげきしといて、いまさら……………?」




本当に、自分の行動原理が自分でもわかっていない。

自分は何によって何を思い、何を感じているのだろう。

何もわからないが、自分には何かしらの罪がある。

その事実だけが、そこにあるのだ。





時雨はエワルを連れて、靴屋に戻った。

鍵は空いているかと思ったが、鍵はちゃんとしまっている。



ガチャ



鍵を開けて中に入るが、そこは時雨が予想していた光景とは違う。

物は散らかっていないし、エピンはあのまますぐに寝てしまったような感じだ。

ミミズクとの見てはいけない展開が少々あるかと思って時間をおいたが、心配要らなかったか?




「………………あれ?」


「どうかした?」


「その、全く………何もなかったから。」


「…………かめんのおにいさんが、いろいろした こんせき がないってこと?」


「こ、子供にはまだ早い!!」




時雨は辺りを見渡す。

そして、ゆっくりと動物たちが眠る部屋のほうへ足を踏み入れた。

とても繊細な作りの木の籠に、ヴィオローネとエリーゼが寄り添っている。

物の配置も同じだ、一階で触れ合えば多少はズレるはずなのに………


エピンの記憶能力は尋常じゃないので、物をぴったり元に戻そうと思えば可能だろう。

だが、ヴィオローネの羽が落ちていない以上、彼はそこまでのことをしていないと考えていい。




「…………とても冷静な方だ。」




エピンが、自らの考えを完璧に読んでいたことを知らなかった時雨は、素直に彼を尊敬する。


ちなみに……………媚薬のピークが過ぎて少しまともになってきたエピンは、一階でそこまで事を荒立てずに人形で少しずれた家具の配置を戻すと、部屋に行く時に前もってジャスパーにヴィオローネの羽を全て拾うようにお願いして、ヴィオローネに長い時計の針が一周したらエリーゼと寝るように言い、その後自分の部屋でしばらくヴィオローネと過ごしていた。


器用で察しのいいレナが、自発的に食器を全て洗ってアリバイも作っている。

食器をエピンが洗ったことに見せかけ、ヴィオローネと過ごす時間がなかったかのように見せかけたのだ。

時雨は実際に相手と対面して行う読み合いならエピンより上手うわてだが、離れている相手と行動の読み合うことに関してはエピンの方が上手である。


時雨はすっかり騙されていたが、エワルはある物が落ちていることに気づいた。

そして、それを拾い上げて時雨に見せる。




「これ…………おんなのひとの、かみのけ?」

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