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四十八歩目 「理解しようね?(I)」

書き忘れていましたが、前回の題名に 歩目 がないのは敢えてです(・▽・)


え?

…………………ただでさえミスが多いから気づかなかった?!

ご、ご冗談を!!!


その頃、時雨とエワルはまだ戦……遊んでいた。




「はぁ……はぁ……」


「娘、貴様殺し屋か?体術は甘いが刃物の扱いには長けているような気がする。」


「れんしゅうしたから。」


「何故そんなことを………」


「ゆうかいされる、ゆうかいされたらおかあさんにあえないもん。」


「随分と………物騒な御時世になったものだ。」




時雨が少し悲しそうな顔をすると、それを見たエワルが疑問をぶつける。




「それより、エワルをどうしたいの?!さっきからてかげんしてこうげきするばかりで、なにがしたいのかさっぱり!!そんなに悲しそうな顔をするくらいならもうやめてよ!!」


「少々暇潰しをしなければならなくて……」


「なんで?!」


「…………貴様が若に惚れ薬を盛ったせいだろう!」


「でも、そんなにまつひつようないじゃん!かめんのおにいさんとあなたはこいびとだからそういうの?」


「………お、幼い癖に何故そのようなことを知っている?!違う、吾輩は若の従者だ。」


「じゃあなんで?!」


「え?えっと…………」




時雨は必死に考えていた。


絶対に若は恋人に絆されてしまう。

時雨はそう予想していた。

現にその予想は当たっているのだが………



………………時間を潰さないと、かなり気まずいことになるだろう。

幸せなお時間を過ごしているのに邪魔するわけにはいかないのに………

この娘がしつこく聞いてくるせいで回答に困る!!

それに無駄に、 “無駄” に感が鋭い!!

若の恋人があの鳥籠にいた木兎だと言うか?

いや、この年齢の子供に教えるのは早すぎる。

否定はしないが、この年齢の子供の価値観形成に影響が………


もうこれ以上……この娘の価値観をねじ曲げるのは駄目だ。

…………だが、吾輩も歪んだ価値観を持っている。

予想外が欲しい、若の命令にしたがっていたいという欲望と価値観を娘に………


そう思っていても、滾ってしまう。

目の前の予想外が欲しい、欲しい、欲しい。

………それをこの娘に期待するな!!

心にそう言い聞かせても、抗えない。


これは決して、違法快薬のような中毒性では……ないのだ。

近くにある玩具が欲しくてたまらない子供という言い方の方がしっくりくる。

目の前のそれが欲しくて、欲しくて、仕方がないのだ。




「…………………」





だが、先程のように大胆な攻撃ができない。

いくらこの秘術が体力を使うからといって、もう疲れたなんてそんなことはないはず………


吾輩は、この娘を救いたいのか?

自分は救ってもらえなかったのに?

自分がしてもらえなかったことを、この娘にはしてあげようと思っているのか?

馬鹿げている、自分が得られなかったものを他人に与えるなんて馬鹿げている!!



………有名な歴史書で、とある魔王が言った言葉を思い出した。

その言葉は…………『もう、終わりにしよう?』という言葉。

負の連鎖を勇者より嘆いた魔王は母を殺し、自らも死を選んだという。


しかもそれを語り継いだのは、なんと勇者なのだ。

さまざまな時を渡ったとされる伝説の勇者である。

一度は人の道を外れたとされる勇者が、様々な世界で彼を幸せにしたり、終わらせたりしたらしい。

勇者が魔王に救われ、その恩を返した伝説の歴史は、皆に愛されている。



これは、負の連鎖だ。

誰かがやめない限り、ずっとこれからも続いていくだろう。


時雨は、秘術を解除する。

これは体に付与するタイプの秘術だ。


彼が纏っていたオーラが消える。

こんな幼い子供に何かを求める人間と、汚れた大人に騙されてその中で大人に求める子供。

力のある大人が相手に何かを求めるのは傲慢だ。

……………今更だが。


時雨は秘術でハイになっていたが、正気に戻る。

それと同時に、そこそこの倦怠感が来た。

〔武術向上〕を使うと、やはりこうなる。




「………気が変わりました、貴殿を一時的に保護します。」


「え?」


「貴殿の名前……もう一度言ってもらえませんか?」


「エワルはエワル、女の子。」


「自分の名前、かけますか?」


「……………書けるけど。」


「若様の家には戻れないか…………なら、吾輩の指になぞってください。」

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