三十八歩目 「真相は闇の中?(I)」
「やっと話せますね。」
彼は、一匹のミミズクに声をかけた。
勿論ヴィオローネである。
「キュキュ。」
「吾輩には、ヴィオローネ殿……いいや、ヴィオローネ様が何を話しているのかはわかりませんが、ヴィオローネ様には人間の言葉がわかるようですから……一つ悪戯をしにきました。」
「キュイィ…?」
「ヴィオローネ様は花言葉にお詳しいと若様から聞……筆談で知りました。なので、ロベリア全般の花言葉もご存知なんじゃないかと思いまして。」
「キュキュッ?!?!」
「ヴィオローネ様なら、若様と普通にお話するでしょう?心当たりがあるのでは?」
「………………」
「というか……話を木の影で聞いていましたよね。少し羽が濡れていますし。それに、吾輩が最後頭を下げた時に鳥が飛んだような音が……」
「キュイキュイ!」
「まぁそれはいいです……本題はロベリアの花言葉。まぁ、べニバナサワギキキョウに限った花言葉なら確かに、卓越・優秀さを表します。」
「キュ………」
戸惑うヴィオローネに、彼はにっこりと笑いかけた。
「彼女は、アサヒ殿が靴を勝手に使ったことに気付かなかったのでしょうか?子供が夜に起きて一人で侵入……それならアサヒ殿はとてもすごいですよ。足跡のつかない靴を使ったのだからトルテ殿はまだしも、靴を使わずにロベリアさんの部屋に侵入してよく ”気付かれなかった” ですね………もしかしたら、あの方は吾輩より上手だったかもしれません。」
「キュイキュキュ!!」
「何か怒っているのでしょうか?………若様は自分の靴が悪用されたことを知ればまた心を痛めてしまうでしょう。おそらくあの様子からして、過去にも同じことがあったように見える。」
「キュイッキュ?」
「木兎の感情は読めませんね。」
「……キュウ。」
「少し悪戯がしたかっただけです、前世の記憶がある木兎なら予想外を提供してくれるかと思いまして。恋路を邪魔する予定はないですよ、吾輩の意思で人に対して求めるのは予想外とスリルのみ。自分の意思………後は若様に尽くすことくらいでしょうか?」
時雨はそういうと、笑顔を消した。
………彼の本当の顔はどこにあるのだろうか?
今となっては、彼もわかっていない。
「ロベリア全般の花言葉は………〔悪意〕だ。」
【話があると言っていたな
何かあったのか?】
「じ、実は………」
メイは、気まずそうな顔をした。
彼の目は恐怖に染まっている。
「……………です。」
【すまない、聞こえなかった
もう一度頼む】
「殺されたんです!!ロベリアさんが!!!」
「…………?!?!」
エピンは、何が起こっているのかわからなかった。
まださっきから二時間しか経っていない。
何があったんだ?
殺されただと?誰に?なんで?
「しかも、片腕がなくなってて。」
【待ってくれ、意味が分からない】
「オレだって分かってないッス!!!」
王政が崩壊した今、警察やライフラインなんて消え去った。
病院ですら経営難で存続が怪しく多額の費用を請求される時代。
貴族と平民の定義や関係も、だんだん曖昧になっている。
【いや、それを聞いたところでどうすればいい?】
「トルテさんを、なんとかしてください。オレには……」
エピンは、手帳も持たず外に飛び出した。
「あれ……お、おかしいですわ……あはは。」
「……………………!!」
「き、貴族のわたくししか……魔法は……使えないのに。回復、しないと……」
野次馬をかき分けると、必死にロベリアだったものに回復魔法を使っているトルテの姿が。
トルテは、エピンにようやく気づき、質問をする。
「あ、ローズさん!この方を助けてください。そうだ!!ローズさんなら魔法使えますよね?」
「……………え。」
「さっきからおかしいんですの……回復魔法を使っているのに全く血が止まらなくてよ!!」
「も……う……死、ん………で……」
「まだ死んでないです!!死んでいいはずがないのですわ!!死んだら……アサヒさんはどうなりますの?!」
「ま、た……?」
「わたくしには罪がある、ロベリアさんご死んでしまったら………アサヒさんは幸せを許されない。アサヒさんが許されないならわたくしだって許されない!!許されないならわたくしは……自分でいることをやめなければなりませんの!!!!だから助けなきゃ、助けなきゃ!!」
「う……で………な、い………」
「うるさい!!わたくしは助けないと、助けないと助けないと助けないと!!!」
「と……ど…………め?」
エピンは、トルテを押さえつける。
すると、彼は彼女を睨みつけた
「何を…?!離してくださいまし!!!」
「み………み、ご………」
「離してください!!早くロベリアさんを助けないと…!!」




