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三十四歩目 「それは本心?(I)」


「……………ロベリア殿。」


「いらっしゃいませ。って…ちょ、ちょっとアナタ……」


「その靴、若……いいえ、ローズさんに作ってもらったんですよね。」


「そうだけど……また来たの?なんか話しづらいんだけど、用件を教えて。」


「貴殿は誰かの一番になりたいのですか?」


「な、何よ突然来て!今、誰かの一番になるとかタイムリーな話は…」


「確かに突然すぎました、ではさらに突然を増やしましょう。ロベリアという花の、花言葉を知っていますか。」


「え……ロベリアって、花の名前だったの?」


「花なんて、お金に余裕がある者以外図鑑でみていればいい方ですからね。知らなくても無理はありません」


「この名前の意味………語呂がいいだけだと思ってたわ。」




ロベリアは、少し恥ずかしそうな顔をした。

彼はお構いなしに話を続ける。




「………貴殿は、東の国の血をひいているのでしょう?」


「なんで知ってるのよ!!怖いじゃない……というか、そのことは黙っててって言われたるの。急に言われたからほんとのこと言っちゃったけど。」


「大丈夫です、言いませんから。」


「ならいいわ。それより、その花言葉って何かしら?」


「おそらく、名前の由来はベニバナサワギキキョウかと。」


「その花の花言葉が私の名前の意味?」


「確かなことはわかりませんが、卓越・優秀さを表す花です。」


「へぇ、少しいいこと聞いたわ。変態に感謝するのは気が進まないけどありがとう。」



ロベリアは、笑顔で時雨を見た。

時雨は笑顔の人間にどう接すれば良いのか分からず、目を逸らす。


要領がいいだけで、普通の接し方なんて彼は知らない。

なんとなく気まずくなり、彼は帰ることにする。




「…………そろそろお暇します。」


「良いけど……随分急ね。アナタって本当に変わってるわ。」


「ベ……………べニバナサワギキキョウのような、素敵な赤毛ですね。」


「また急に………何よそれ。……まぁありがとう。でもね、私のこの髪…だんだん色が薄くなっているの。昔はもっと赤かったのだけれど。不思議なこともあるものね。……お母さんとお父さんが私の名前に込めた想いがその花から来ているのなら、このままの髪でいられることを願うわ。」


「…………………」




時雨は、礼をしてロベリアの見せを後にした。









「ただいま戻りました。」


【おかえり】


「……何が起こったのか、全てわかりました。」


【期待通りだ】




二人は、とても驚く。




「本当ですの?!」


「ま、マジッスか!」


「一体どうやって………」




時雨は、仮面を外して微笑んだ。




「明日、全て終わらせますのでご安心を。ふふふ……」


「…………なんか、嫌な予感がするッス。」











翌日、彼は街中の人々を集めた。

そして彼は更なるリスクを背負うため、なんとトルテもそこに連れて行った。




「ちょっと?!こんなの聞いていませんわよ?!」


「まぁ、楽しみましょうよ♪」


「えぇぇぇぇぇ?!?!」




街の人々は、トルテに冷たい視線を向ける。




「あの子の母さんの病気を悪化させた娘だよ。」


「いや、あんなに優しい子がそんなわけ……」


「奥さんは騙されてんだ!」




皆がざわめく中、時雨が声をあげた。






「皆様!!!!」






彼の声に、皆が振り向いた。




「トルテ殿は被害者なのです。アサヒという少年が母を被害者に仕立て上げているだけなのですよ!!!!」




ざわめきはさらに広がる。




「なんでそう言い切れるんだ?!」


「嘘つきに決まってる!」




時雨はにこりと微笑むと、人混みの中にアサヒを見つけた。




「アサヒ殿、さぁこちらへ。」


「……………え?」


「さぁ、前へどうぞ。ショータイムです…ふふふ……ふふ………」




時雨とアサヒの討論が始まる。










「言いがかりだ!!ぼくは何もやってない!!!」


「貴殿のお母様は、ただ疲労で床に伏せていただけでしょう?」


「そ、そんなことない!!このお菓子のせいだ!!」


「証拠は?」


「だって、食べたすぐだったもん!!」


「第一、トルテ殿がそうした動機はなんなんでしょうか?ふふふ………」


「クッソ、笑いやがって…………ぼ、ぼくのママはこのお菓子で倒れたんだ!」


「…………坊や、嘘はよくないですよ。」


「さぁ、なんのこと…?」


「じゃあ、こうしませんか?………吾輩の手を握ってください。そして先ほどの内容をもう一度言うのです。その内容が誠なら何も起こりませんが、偽りなら今から雨が降ります。」


「………わかったよ!そうすればいいんだろ?」


「どうなるんでしょう……ふふふ………」




少年は、時雨の手を握った。

………どうせハッタリだと心の中で願いながら。




「ぼくのママはこのお菓子で倒れた!!」




少年の声が街中に響き渡る。

次の瞬間、空から滴が降ってきた。




ポツ、ポツ………




「嘘なら、もっと上手に言った方が良いですよ………吾輩のように。」




「……………………!!」






ザーーーーーーーーーー………




小雨は、あっという間に大雨になった。

野次馬の中にいたメイとエピンも、驚きを隠せない。




「エピンさん……あの人本当に………!!」


「…………!」


「何者なんだ……時雨さんって。」




時雨は笑顔のまま、少年の耳元で囁く。




「もう何もかも諦めてしまえば楽になれますよ?ふふふ………」




少年の目から、輝きが消えていった。




「犯人はザッハトルテ殿ではない、そして足跡もなかったらしくて………しかしロベリアさんではないでしょう。なら犯人はもう明確……貴殿ですよね?ね。ね!」




その声を聞いたロベリアは、耐えきれずに叫ぶ。




「そんな……アサヒが犯人なわけないわ!!」




違う。


きっと何かの間違いだ。

あの変態が言ってることがあってるはずがない。




「ロベリア……ごめん。ぼくだ。」

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