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三十一歩目 「何がしたいの?(II)」

その名前を聞いたメイは、どうやら頭が宇宙に旅立ってしまったようだ。

トルテもよくわからなかったため、もう一度きく。




「も、もう一回行ってもらえませんこと?」


「新 翡翠 / レイ・アルバート=時雨・ゾア=ブランシュ≠フィススタンツェです。」


「その名前の響き、東の………ブランシュってことは王族だから存在が法律違反ではなくて?」


「はい。」


「…………まぁ生まれる場所は選べませんもの、仕方ありませんわ。」


「寛大ですね、口を封じなくてもすみそうで安心しました。」


「えっ?!ちょっと待ってください全然わかんないッス!!!」




メイは思わず突っ込んだ。




「まず長っ!!!名前いくつあるんですか?アンタも王族ってことなんスか?」


「吾輩だって好きでこんな名前になったんじゃないんですよ……」


「そんなこと言われても訳がわかりませんよ。」


「…………解説しますね。新 翡翠というのは東の国の名前でして。ちなみに東の国の名前なので後につくのが名前です。王国の方式で名乗るなら ヒスイ・アラタ 。


 レイ・アルバートはアルバート家の養子なので名乗っています。名前を同じにすると東の国の血を引き継いでいることがバレてしまうのでレイにしたとか。


 時雨・ゾアは、父上が吾輩を城に入れるために足したもの。要は従者としての身分作りです。しかしブランシュ自体は家名として扱われないため、父の姉の夫……伯母様の旦那様の家名と、母が足した新しい名前を使ったそうです。なので従者としての名前は時雨・ゾア。そのため呼ぶときは時雨で構いません。一番慣れていますし。


 ブランシュ≠フィススタンツェは、吾輩の立ち位置をわかりやすくしたものです。貴族でもないのに王族なのですから、スタンツェ家だと思われてしまうでしょう?かと言って和の一族だと正直に言うわけには行きません。まぁ、破産して家名が消えた貴族との子供だけど、すごく優秀だから、たとえ三番目でも王位継承権一応あげとこう?みたいな感じで無理やり通したんだと思いますよ。」




彼の長すぎる名前と解説に、メイはついていけない。




「とりあえず時雨さんって呼びます。」


「というか、若様は今まで何を………」


「そういやその若様ってどういう意味ですか?」


「あぁ、一応異母兄弟なんですけど従者として育てられたので。」


「えぇ?!?!…………………………さらに王族の謎が深まりましたよ。王政崩壊とかいろいろ聞きたいですけどもう一日に覚えられる情報量超えてるッス。」


「とりあえず、すごく拗れてお互い感情的になったんですよ。はいこの話おしまい。吾輩たちには優先すべきことがあるはずです。」


「そ、そうッス!」


【トルテの店をどうするか考えなければ】


「そこで提案なのですが、ここは吾輩に頼ってもらえませんか?」


「なんとかなりますの?!」


「暴動を起こしている市民だけが全員ではありません。きっと皆から批判されるのが怖くて黙っている者もいるでしょう。」


「でも、どうすれば………」



時雨は、とても頭が良かった。


問題点にもう気づいたのである。


すぐに言い訳を思いつく兄といい勝負かもしれない。



「まず、被害を受けた方は何方どなたです?」


「…………そういえば知りませんわね。」


「被害者がはっきりしていないのに、皆が暴動を起こすはずありません。必ず被害者を名乗った人物はいます。その人物にアレルギーなどがあった可能性も捨てきれないですよね。ね?ね!」


「確かに、それは……」


「それとも、何者かが異物を混入した形跡でも?」


「いいえ、毎回お菓子は念の為お味見しますもの。昔、父が手違いで期限切れの牛乳を入れたトラウマがありまして…………」


「何か変わったことは?」


「…………レシピのなくしものが多くなったことくらいですわね。覚えているから書き直せばよいのですけれど。」


「だいたい分かりました。まぁ吾輩がなんとかします。美味しいものも若様の笑顔も……手放したくはないので。」




時雨は、外に出ようとした。




「わたくしはアレルギー表記を見直してきます。何か不備があったのかも……」




トルテはそう言って、時雨の後を追おうとする。

しかし、時雨はそれを止めた。




「吾輩の雨はもう止んでしまいました、外に出るのは危険極まりない………それに、そんなことはあり得ませんよ、吾輩の舌と記憶力に狂いはないです。感覚は少し狂っていますけど♪」


「笑えねぇ………」


【自分を狂わせた原因の前……僕の前で言うのか、それを】




メイとエピンは微妙な顔をした。




「はい!若様の前で言った方が若様を困らせることができますから!」


【とんだブラックジョークだ】


「ブラックなのは昔の労働環境と、コーヒーだけでございます。」


【ようは僕の苦い顔を見たいと、なぜそれを求める】


「コーヒーは苦い方が美味しいと思いますけど?」


【僕はカフェオレの方が好きだ】


「気が合いませんね、吾輩は、何事も中途半端というものが嫌いなのです。」


【カフェオレのように、苦さを抑えた優しい困らせ方でお願いできないか?】


「お断りします、吾輩に優しさがあると思っているなんて……少し考えが甘いのでは?」


【砂糖は入れなくても飲める】


「ちょっと!ここは大喜利会場じゃないんスよ!もう。」

避難→批判

5/19 9時35分 訂正しました(・▽・)

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