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二十八歩目 「許されないから望まない?(II)」

メイが話に入れない間に、話題が変わる。




「そういえば、なぜ今日はお店をやっていなかったのですか?」


「それは……その……」


「今日は火曜日ではありませんよね。」


「じ、実は………」







トルテは、起きた出来事を話した。




「えぇ?!そんなはずはありません!!吾輩は証明できますよ?」


「えぇ?!は、こっちのセリフッス!!どうやってそんなの証明するんですか!」


「三週間の間、毒検査キットで一度も陽性になりませんでしたからね。」


「あぁそういうことか……………は?」


「あの味は添加物を一切使ってないでしょうし、材料も全て良質でしたよ。あんなに美味しいのに傷んでいるはずがない。」


「待ってください!さっきからツッコミたくなるところしかないんですけど?!」


「どうかいたしましたか?」


「いやいや、検査キットって?それにさっきからめっちゃ味わかる人みたいな発言……」


「…………毒が入っているかを確かめるのは昔の癖でして。あ、舌は普通に良い方ですよ?」


「(この人爽やかそうにしてるけどヤバイ人なんじゃ……)」




彼が時雨のことを不審がっていると、向こうの方から音がする。

すると人形がトコトコと歩いてきて、時雨の前に現れた。


何かが書かれた紙を持っている。

殴り書きで書かれたその文字からは、とんでもない怒りが感じられた。




【僕の仮面をどこにやった】



エピンが起きて、向こうの部屋から人形を操っているのだろう。


時雨はにこりと笑って、来ていた和の一族の伝統衣装の内側から、洋風の仮面を取り出す。




「あぁ〜申し訳ありません!吾輩としたことが、互いの仮面を摺り替えてしまったようです♪」




エピンのつけているお面二つ、仮面二つはそれぞれ、密かに王族の証として贈られているもの。

そのため、時雨もお面と仮面を二つずつ持っている。


それをすり替えてしまったのだ。


エピンは、母の感情抑制のおまじないがかかったお面・仮面ではないとつけたがらない。

そのためそれぞれスペアは就寝用として使っている。



どちらも博物館に展示されてもおかしくない代物だが、王族には’’あらくれ殺人鬼’’と’’隠キャコミュ障’’と’’爽やか変態’’しかいなかった為、この素晴らしい伝統的な贈り物は結構雑に扱われていた。

本来はショーケースに入れるべき品の数々、それを長男は川に捨て、次男は普段使い………三男に至っては現在進行形で次男と遊ぶための玩具に。

本当に酷い有様である。


寝室の方から蔦が伸びている。

相当お怒りのご様子だ。




「メイ殿とトルテ殿がこられていますよ、ほら…早くこちらに。」


「………………」


「お人形遊びをしている暇などありません。」


【仮面を返せ、命令だ】




その紙を見ると、時雨も激怒する。




「お人形遊びなどしている暇などないと言ったでしょう?!?!吾輩がここにきた目的は仲良く時間を取り戻すことではないのです!!先程心の中で目的を思い描きました。花札を始めて心眼を使用した時に気づくはずなのに……」




時雨は、兄弟ごっこなんて望んでいない。

エピンもそれは十分わかっていた。




【なんでそんな回りくどいことをする】


「直接言えと?どの口が言うんですか。」


【僕は、ただお前がそう願う理由がわからない】


「対等なんて望まないに決まっている!!吾輩も、そして貴方様も人のためにしか行動できないんですから。」


【それでも僕は対等を望む

 なら時雨に対等でいろと命じればいいのか】


「………ちゃんと言えばわかってもらえるのでしょうか?」




時雨は深呼吸する。

そして、意を決して口を開いた。




「吾輩が王政を破壊しました。それは、貴方様の存在を否定することになるから、そして母を否定することになるからです。」


「王政を破壊?!どういうことですの?!」


「い、一体何が………」




トルテもメイも、驚きを隠せずにいる。




「吾輩はただ人を痛めつけてその反応と予想外を楽しんでいただけ………そんなわけないでしょう。」


「…………………」


「吾輩は、貴方様のお願いを叶えてしまったのです!!!死にたくないというお願いを!!!!」


「…………?!」


「吾輩が即位すれば、貴方様が存在することをよく思わない者が出てきてしまう。貴方様の願いも…………壊れてしまう。」


「あっ………え?」




エピンの困惑する声を聞いた時雨はその場に膝をついた。

そして指を咥えると、皮膚を噛みちぎる。



ギチッ……



彼の指から、血が滴った。




「ちょっ!!指…?!」


「きゃっ?!?!」


「……………もう一度、立場を戻して傍に置いてくださいませ。吾輩は自分より優れている何かに縋らなければ生きていけないのでございます。」

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