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二十七歩目 「許されないから望まない?(I)」

「え、エピンさん………終わったから戻ってきましたけど。」


「そろそろ雨もあがってしまいますし、ドアを開けてもらえませんこと?」



手紙に書かれた内容を実行したメイとトルテは、エピンの家に戻ってきた。

しかし、彼は先ほどの酷い荒療治で寝込んでいる。

仕方がないので、時雨が二人を出迎えた。




「ごきげんよう。」




それを見た二人は、衝撃を受ける。




「エピンさん……やっぱりイケメンだったッス!!」


「今……喋りましたわ!!」


「仮面はどうしたんスか?!」


「きゃー!!とうとうお顔を見ることができましたわ!!」




時雨は、二人が重大な勘違いをしていることに気づいた。




「お待ちください!吾輩は……」




メイとトルテは、時雨の言葉をを全く聞いていない。

顔を見せてくれたと大はしゃぎである。


しかし、彼はどう答えるべきか悩む。

従者と言った場合、弟だと訂正できない。

弟だと言った場合、こちらはその後に従者だとはとても言えないだろう。

後から指示通り訂正できてなおかつ、エピンに不都合がないようにするためには………




彼は被っていたフードを外した。




「か、髪が水色?!」


「エピンさんって黒髪じゃ?」


「でも聞き覚えのある声……そんな気がするんです!」




二人は、まじまじと時雨を見つめる。

しかし時雨は全く動じない。

彼は頭の中がまとまったので、話し始めた。




「すみません、名乗ることはできません。エピンさんに言われていますので。とりあえずお上がりくださいませ。」




彼は、自らの容姿と雰囲気を最大限活かして丸め込むつもりである。




「は、はい……」


「……わかりましたわ。」




美しすぎるその姿に、二人は言葉を失った。










「あ、これエピンさんに頼まれたやつなんですけど……」


「ふふふ……ふふ…」


「な、何がおかしいんスか。」


「いえ、なんでもありません。はぁ……はぁ……」




時雨は今、笑いと興奮を堪えるのに必死になっている。

エピンを運んでいる時の話から、二人はかなり遊びがいのありそうな人物だと思って、少しふざけたものを玄関吊るして置いたのだがまさかこれほどとは。




予想外だ。




「メイさん……いくらローズさんの頼みとは言ってもこんな意味のわからないことをする必要がありましたの?」


「やるべきでしょ!ここに挟んだ計算ドリルを全部解いてくれって書いてあったんッスよ?」


「それにしたって……まぁ別に難しくはなかったから、わたくしにもお手伝いはできましたけど……」




そう、時雨が玄関のドアに糸をつけて吊るしたのは、嘘の手紙と小学校レベルの計算ドリル。

これを全て解いてくれというメッセージを添えて、解いている間の時間稼ぎになったら面白いなという、九割悪ふざけの仕掛けである。


まぁ絶対不審に思われて、花札は中断するだろうと思っていた。

そのはずが、こんな予想外を作ってしまう人間がいるなんて。

解いたメイもだが、なんだかんだ手伝ったトルテもトルテである。

彼が興奮を抑えられるはずがない。


なんて面白い人間なのだろうか!!

若様が起きる前に関係を結んでしまおう。


彼は二人と関係を持つために話し始めた。




「トルテ殿は、吾輩のことをご存知なのではありませんか。」


「えっ……申し訳ありませんが、わたくし達は初対面では?」


「そういや、いつも顔を隠していましたからね。いつもトルテさんのお店で、コーヒーやハーブティーと色々なケーキを頼んでいました。」


「あぁ!いつも日光の当たらない席に座る方?」


「そうです。」


「いつもたくさんのケーキを買ってくれて嬉しいと思っていましたの。本当にたくさんのケーキを食べるのに、とてもお上品に味わって食べてくれるから印象に残っていますわ。」


「こちらこそとても美味しいケーキを毎度ありがとうございます。」


「いえいえそんな!味を変えるとすぐ気付いてくれますから、こちらとしても嬉しいです。」




時雨は、トルテの店の常連。

普段は王子という身分を知られないために顔を隠していたが、毎日通っている。

甘いものを好むところもよく食べるところも、エピンとにたのかもしれない。


彼自身もスイーツを作るが、その辺を歩いていた時、彼女の店からあまりにいい香りがしたため、飲食店には寄らないと決めていたのにも関わらず立ち寄ってしまった。

そして味と接客に感動して以来、ずっとここに通い続けている。




「は、話についていけないッス………」




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