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二十一歩目 「浮気とお菓子とヤバイ人?(IV)」

「ローズさん……わたくし………!!」


【何があった

 さっきまでは外にクレーマーがたくさんいたような気が】


「実は……変なものが入ってるお菓子で体を壊したと言われてしまって…………わたくしは…そ、そんなことしていません!!」


【抗議したか?】


「みんな聞いてくれませんの!い、言い訳だって………」


【なら僕がなんとかする】


「ま、またローズさんに頼るなんて………そんなことできませんわよ!!」


【何故だ?!】


「わたくしは、誰かがいないと何もできない人間にはなりたくない!!!」




エピンはやっとメイの気持ちを理解した。

そうか、メイには僕がこう見えているのか。

そりゃ手を差し伸べたくなるのも無理はない。


本人の意思と関係なく、人は勝手に頑張って進んでいるボロボロの者を救ってしまう。

なぜなら、その人に何かあった時に自分のせいだと思いたくないからだ。

自分が助けたという、自己肯定感が欲しいからだ。



立ち上がれる人間と、本当に助けなければいけない無理をしている人間を区別するのは極めて困難である。

人間は人を救わなければ生きていけないのだ。

自分を救えない人間は、他人を救わなければ生きていけない。

善だろうが偽善だろうが、人を救ったと思い込まなければ人間は生きていけない。


所詮その程度の弱い生物だ。




人間は、本当に助けを求めている人間より、頑張っている人間を助けたがる。

本当の意味で人間を助けるのは難しく、責任がつきまとうのだ。

ごく一部の選ばれた人間以外、本当の意味で人を助けている者なんて存在しない。

自分を救えない人間は、自分を救うために他人を救っていることにしたがる。

みんな大体同じだ。

なのにその選ばれた人間になろうとするから苦しくなる。




選ばれた人間にほぼ自覚がないのが、更に病んでいる凡人の感情を抉って抉って抉って抉って抉って。




病んでいる凡人は、天才並いろいろなことを考える。

だが、結論も下せないし、その考えを何にも活かすことができない。


それなら、気楽な凡人に生まれるべきだったんだろう。

エピンは、それ以上思いを伝えるどころか、何も書けなかった。









その頃。

ロベリアのお菓子屋では、トルテのお菓子屋の常連の一人が怒っていた。




「……………違う!」


「?!」


「全体的に味が違います!!クリームだけ再現したって意味がありません!!!」


「そ、そんなこと言われたって……」


「貴殿が無理やり吾輩を引き留めたのでしょう?しかも初対面で突然あそこの店の常連ですかなどと聞いてきて……あの味を再現できたって言うから一応食べてみようと思って食べましたが………吾輩は人を探しているのです。美味ではないお菓子にかける時間なんてない。」


「私のことを否定するのはいいけど、あの子のやったことは否定しないで!!いろいろ大変なのにわざわざ私に付き合って再現を手伝ってくれたんだから!!」


「ところで……この茶葉、期限切れでは?」


「はぁ?!ちょっと口をつけたくらいで何が分かるのよ!!」


「吾輩は味覚が人より優れていますから。」


「今見てきたけれど……………き、期限切れだわ。これ。」


「香りが落ちるはずですね。」


「あの子が……アサヒが頑張ってくれたのに……!!!!」


「そろそろお暇しても?」


「アナタねぇ!!!さっきから偉そうに何様なのよ?!ちょっと味がわかるからって調子に乗って!!」


「嗚呼、まだ名乗っていませんでした。これは失礼、吾輩は…………………レイ・アルバートです。」


「アルバート?!?!」


「何様か、と聞かれましたから答えたまでです。」


「さ、さっ先程までのご無礼をお許しください!!!大変申し訳ございませんでした!!!」




ロベリアは慌てて頭を下げる。

レイは、にこりと笑った。




「貴殿って……とっっっっっってもつまらないですね!!」


「…………?!」


「行動パターンが予測できる人間ほど吾輩にとってつまらないものはない。アルバートという名に怯える。やはり予測は当たりました、実につまらない。」


「アナタは……アナタは………!」


「アナタは何を言っているの?!馬鹿すぎてわからないわ!!と言おうとしましたよね。ね?ね!」


「な………」


「どうせ見た目だけ家名だけ、人間は極めて曖昧なものに流される。貴殿もそうだ。その曖昧なものに納得していないのに、その曖昧なものに不満があるのに周りの真似事をする。そこからは何も生まれない。たぎらない!!!!そそらない!!!!」


「……………?」




ロベリアは、泣きそうな顔でレイを睨む。


するとレイはロベリアに近づき、彼女の顔を見つめ始めた。




「きゃっ?!」


「ほら、できるじゃないですかぁ……その顔。」


「……………!!」


「人間の歪む顔を見るのはとてもたのしい、予想ができない、自分がどうするか相手がどうするかで全て変わるその顔はイイですよね。」


「怖いわ………一体何が……アナタの………原動力なの?」


「今の言葉は予測になかった!!!あぁ興奮する………吾輩はこういうものが好きだ。」


「な、なんで………?!」


「泣いていいんですよ……ふふふ……」




彼の目はずっとロベリアを見ている。

しかし、レイの意識は玄関の靴にあった。

目立たないように、けど流されないように。

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