表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
190/205

百六十九歩目 「崩れそう?(IV)」

「ふふふ……」


「…………」


「………………笑う以外の表情を、知らないからですよ。」


「………?!」


「ごめんなさい………多分記憶を失う前から、ずっと笑ってきたので。」


「ずっと……」


「本当は先程、大嫌いって言われた時は、笑顔を………やめてみたかったのですが。」





挿絵(By みてみん)





翡翠は眉を下げたが、まだ笑っている。




「申し訳ない。初対面の方に言うようなことではありませんね。」


「いいえ、とんでもない。」


「…………………その煙草の香り、大事な何かを感じられて、暖かい気分になるのに、同時に大事な何かが遠くにあるような気がして、とても寂しくなる。」


「……………」


「記憶はほとんど飛んでいると言うのに、可笑しい。何故なのでしょう。」




そう言って俯く彼の手を、雷丸は思わず握った。

しかし、それは彼を励ますためなどではない。

雷丸はただ、大事なことを忘れていたのである。




「すみません、翡翠様!大事なことを忘れていました!!」


「えっ?あの、手……」


「ちょっと、俺についてきてください!!」


「えぇ?えぇぇぇ?!」




雷丸は、翡翠を引き摺っていった。



















雷丸と翡翠は、とある病室のような場所に辿り着いた。

奥には王国式のベッドがあり、誰かが寝ている。

点滴が複数打たれていることから、寝ている人物の体が、せいと逆方向に向かっていっていることが伺えた。




「棟梁。」




雷丸の声を聞いて、その人物は、ゆっくりと起き上がる。




「雷丸、ここでその呼び方はやめてと言っ………」


「……あの、雷丸様。この方は?」




寝ていた女性は、雷丸に何かを言おうとしたようだが、翡翠の姿を見て、固まった。

彼の顔を見れば見るほど、ある人物が蘇ってくる。


この髪色、切長の目、先程の声。

女性の記憶の中の、 ”あの人” にそっくりだった。



彼女は、困惑する。

こんなことは、絶対有り得ない。

わかっているはずなのに、どうしてもどうしても、心の声が、実際の声として出てしまう。




「……………翡翠?」




翡翠は彼女のその声を聞いても、ただただ黙っていることしかできなかった。


疑問系で名前を探ってきた時点で、この人物と自分は面識がないのだろう。

だが、そう理解しているはずなのに、初めて会った気がしない。

多少戻った断片的な記憶の中にも、彼女らしき、中年の女性の姿など、見つけることはできなかった。

でも、それでも…………


彼は思考を必死に巡らせていたが、とある記憶が、自分の中で引っ掛かる。

うっすらとしか思い出せないものの、確かにその記憶から何かを感じていた。



その記憶の中で彼は、送られてきた物を開けて、何か読んでいた。



〔いつか会いたい〕という言葉が、三度に一度は書かれていた手紙。

毎回毎回、服や美しい刀が出てくる大きな箱。

郷土料理のレシピが、細かく記されたメモ用紙。


送られてきたそれからは、いつも同じ香りがしたような気がする。






雷丸が先程火をつけかけた、あのお香と同じ香りが。






そんな朧気な記憶が、翡翠の頭をくるくると回っていた。

自らの意思や明確な感情が整理できず、彼は混乱している。




「い………嫌、です。」




震え始めた翡翠の姿を見て、二人は心配そうな顔をした。

それを見て、翡翠はさらに訳がわからなくなる。




「やめて……ください。その目、その目を…………」


「申し訳ありません、翡翠様。俺、また何かしてしまったでしょうか?」




雷丸のその一言を聞き、彼は部屋を飛び出した。

………病室に入る際に脱いだ下駄も履かずに。

作者です、突然失礼します。


風邪と、ワクチンの副作用が重すぎて、二週間ほどあったストックが、ここで全て切れてしまいました。

現時点では数日分あるものの、一向に体調が回復していないどころか、悪化しているので、おそらくストックを使い果たしてしまうと思われます。


風邪気味の時にワクチンを受けたのがダメでした、大変申し訳ありません。

まだ熱が下がらず、喉の痛さと鼻水も悪化している状況です。



もともと一日一回(これは機械が原因とはいえ)を守れておらず、もはや三日に二度くらいになっていますが、少し投稿出来ない、または更に頻度が落ちるかもしれません。


両手で数えられる程度(予測)の読者様に、お詫び申し上げます。10/29

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ