百六十五歩目 「見つけられない?(IV)」
「根拠は……」
「こ、根拠は?」
「私が、彼の兄だからです。」
「…………………は?」
「異母兄弟なので、あまり似てはいません。血液検査ならお好きにどうぞ。」
「待ってください!!ちょ、ちょっとエレノア殿、突然なにを言いはりますの?!」
「根拠一つ目、翡翠の目には和の一族の模様がある。根拠二つ目、翡翠の言葉遣いや覚えている秘術が東の国のものに近い。根拠三つ目、実の兄弟が彼のことを翡翠だと証言している。」
「確かに、目には和の一族の模様があるし、刀を持っているということは、魔法中心ではなく、主に東の剣術を学んだということ…………もう、エレノア殿の言っていることが、嘘だとは思えません。けど………」
「何か言いたいことが?」
「あのお方が…………我が主人は、翡翠様は王国にいると仰っていました。一応あまりそこに触れてきたことはありませんが、あの方はおそらく、禁断の恋をなさってしまったのでしょう…………でも、あの方はこちらに帰国した後、『息子は王国にいる、彼に何かあった時は、とある人から連絡が来るだろうから、迎えに行って。』と言っていました。どうして北の国の一族の貴方が、翡翠様と兄弟なのでしょうか?」
「問題はそこなのです。これを解説すると、国際問題に発展してしまう。」
「こ、国際問題?ただの規約違反ではなく?………確かに知られてしまうと、心の一族と東の一族の評判は下がる。でも、異国の一族同士が問題を起こしたくらいで、そこまでの大惨事には……………」
「そんな、評判なんて私はどうでもいい。」
「……じゃあ何故、口外してはあかんのです?」
「雷丸棟梁代理……………ここから先は、後戻りできません。本当に、聞く勇気がお有りで?」
「勿論!!翡翠様が……こちらに戻ってくるのならば!!!」
雷丸の返事を聞き、エティノアンヌはやや安堵したのか、少しだけ笑ってみせた。
「あぁ、良かった。」
彼は、そうため息混じりにつぶやくと、ゆっくりと深呼吸する。
「………翡翠。」
「………………なんでしょう?」
「ちょっと、外で待ってて。ここ防音みたいだし、外なら聞こえないよね?」
「………は、はい。」
翡翠は何か言いたげだったが、聞いてはいけないような何かを察知し、退室した。
スッ……カタン
場の空気が、一層張り詰める。
…………二人きりになったからだろうか。
いや、二人きりになったという事実ではなく、翡翠がいなくなったことが、原因かもしれない。
そして。エティノアンヌは、雷丸に真実を告げた。
「私と翡翠の父は、ブランシュ王です。」
「…………………?!」
「………ふふ、良い反応しますね。」
「さ、ささ、流石に冗談きついて!!堪忍してください!!!」
「私の母はエレノア家時期当主になる予定の人でした。北の国では、性別を問わず当主になれるので………………でも母は、自分で何一つ決められない人生に嫌気がさし、家を抜け出した。信頼できる弟と、友人数人を除き、交友関係を断ち切ったのです。おそらく母は、家を出た後自らを売り、王に迫ったのでしょう。お金を愛に変える生誕魔法で、稼いだお金を全て父に…………母は衝動で動く人で、常にスリルを求めていました。なんでそうなったのかは、私にも正直わかりません。まぁそれで奇跡的に私が、王家の次男として、生まれたわけなんですけど。そしてその後、翡翠も生まれました。長男が亡くなった後、悲しみにくれて、翡翠のことを知る機会は、あまりなかったので、私は…………翡翠のお母様が、どこで王と出会ったのかは、私には見当もつきませんが。」
彼さえ居なければ。