百五十歩目 「これで幸せに」
「本日は、アリアさんとの結婚をお許しいただきたくご挨拶に伺いました。数年前に、私の方からアリアさんに、プロポーズをさせていただき、了承を得て婚約関係になりました。まだまだ至らぬ身ではありますが、アリアさんと幸せな未来を築き、これからの人生を二人で歩んでいければと考えております。どうか、私の戸籍の作り直しと、アリアさんと結婚することをお許しくださいますよう、お願いします。」
「リアちゃ…………アリアを守れるほどの技量はあると、先程殴ってみて分かった。だが…………」
「………………」
「その愛が本物かは、まだ分からない。アリアへの愛を証明しろ。証明できないなら、結婚は認めないからな。」
「え………」
「………できないのか?」
「そんな簡単なことで良いんですか?!」
「なっ………」
「では、三日ほどお時間を頂いても?」
「み、三日だと?!その三日で何をする気だ……」
「彼女の良さを伝えます。」
「………三日三晩、娘のことを語る気なのか?」
「勿論、彼女の良さを全て伝えるには、最低でも三日はないと。」
「最低でも………か。」
「あ、時間がないのでしたら…………私の日記を見るのはどうでしょうか。」
「日記?」
「私が、普段彼女について、どう思っているのか。全部書いてあるので。風邪を引いた日でも毎日書いています。日記はそれぞれ、五種類あるので、お好きなものを。」
「………………」
「……ダメでしょうか?」
「素晴らしい!その日記を後で読ませてくれ!!」
「………?!」
「俺も、サンマリアについての日記を毎日書いている。君とは気が合いそうだ。」
「本当ですか!」
「本当にちゃんとした人で良かった。君ならアリアのことを本当に三日で語れるだろう。ごめんね疑って、アマンディーヌとサンドリーヌの連れて来た彼氏とやらが、ろくでもない人間だったから。君のことも警戒してしまったよ。」
「アマンディーヌさんと、サンドリーヌさんと言うのは………」
「あぁ、アリアは知らないから、君に言っていないのか……………アリアが王城に行った後、生まれた双子の娘だ。」
アントワーヌとエティノアンヌが話しているのを見ていた二人は、恥ずかしくて仕方なかった。
「アントワーヌったら、あの日記………恥ずかしいからやめてって言ったのに!まだやってたの?!」
「ノアのばか、ノアのばか!日記五種類あるなんて、聞いてないんですけど?!」
「…………ねぇリア、ママが昔言ったこと、覚えてる?」
「頭の良い人と付き合うには、自分も頭がよくなきゃダメ………でしょ。」
「それも正解だけど、ママが言いたいのは、もう一つの方。」
「……なんだっけ。」
「愛が重すぎる人と結婚すると、大惨事になる………よ。」
「もしかして………………パパ、まだママのこと、昔と同じくらい溺愛してるの?」
「自分で言うのもなんだけど、昔と同じどころか、昔より溺愛されている気がするわ。」
「………………」
「覚悟しなさい、リア。」
「マ、ママ………?」
「確かに貴方は、とても良い人を捕まえた。でも、あの人と多分、ちょっと何かがあっただけで……………甘えられて泣かれて嫉妬されて抱かれて甘やかされてまた甘えられて、そのフルコースが飛んでくるわよ。不器用で思ってもないこと言ったりして、上手く伝わらなくて甘えてくるタイプ。外面はほんとに、完璧っていいくらいなんだけど。」
「あはは……そ、そうかも。」
「その顔、心当たりがあるのね………………まぁ、ずっと幸せでいられるけれど、共依存にはならないようにってこと♪」
「気をつけます……」
「なんかあったら相談しなさい。アントワーヌも全く同じタイプだから、相談に乗れると思う。」
「はい!」
「あと…………貴方の妹を紹介したいのよ。今はリアが連れてきたあの女の子と、翡翠さんと一緒にいるわ。」
「妹……うん、楽しみ。」
もう二度とお前には会わない、会わせない。




