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百四十四歩目 「違和感は無視しなきゃ(III)」


「もしかして……………ああ見えて、嫉妬していた……のでしょうか?」


「エティノアンヌ様が嫉妬しているのは、十分感じていましたが…………まさかコップを粉々にするとは。」


「長い間一緒にいるんですけど、ノアってどういう人か…………未だに、よくわかっていないんですよね。」


「なら、エティノアンヌ様について、解説してみましょうか?」


「…………え?!」


「あくまで吾輩の見解ですけど。」




アリアはその言葉に、思わず頷く。

優れた洞察力と推理力を持つ彼なら、何かわかるかもしれない。


翡翠は、彼女が頷いたのを確認すると、どこからかノートを用意した。

………そして、そのノートを読み上げ始める。




「まずは基本的思考と、基本的行動から。普段は感情的になることが多いが、人前ではあまり表情を変えないようにしている。しかし愛が非常に重く、意外と独占欲もあり、嫉妬しやすい。二人きりの時は素直だが、相手が自分にしかしない表情を、他者に見られたくないため、普段は何事もないように振る舞っていた。と言ったところでしょう。」


「な、なるほど。」


「次に、根本的考え方と、自身の制御能力………それによる感情の動きです。 ”愛しているけど、その愛を全て行動に移したら、嫌われてしまうかもしれない” という不安が常にある。子供のように無邪気な一面が見られるものの、自身が子供っぽいことを理解していて、それと同時に子供扱いされたくないと思いが強そうだ。相手の嘘に気づいても、しばらく嘘に気づいていないフリをして、様子を伺う派。」


「確かに、そうかも………………」


「最後に、主な傾向のまとめと、エティノアンヌ様のタイプを……………………相手のことを心から思っているので、故に相手の行動を咎めたり、束縛などは絶対にしません。だが、束縛する人間と同じくらい嫉妬深く、子供のような行動や言動が見られる。愛が重量級の、衝動的二面性タイプですね♪」




笑顔で語る翡翠に、アリアは感心してしまった。

いつの間にノートに書き込んでいたのだろう。

いや、いつ書き込んでいたかなど、どうでもいい。


……………普通に凄い!アドバイスが欲しい!!




「あの、どうすれば良いですか?」


「どうすれば、とは?」


「ノアを不安にさせないための、アドバイスをください!」


「そうですね……………人前でも軽い接触を試みるのが良いかと。手を繋ぐとか、寄り添うとか。嗚呼、でも頭を撫でるのは避けるべきです。人前で子供扱いされるのは、嫌いなタイプだと思うので。」


「ありがとうございます!」


「改めて言っておきますが…………あくまで吾輩の見解なので、責任はとりませんよ。」


「はい!参考にさせてもらいますね!」




翡翠は少し呆れた顔をしたが、なんとなく、役に立てたことが嬉しかった。

昔から、誰かに尽くすのが生き甲斐だったような気さえしてくる。



自分はどんな人間だったのだろう。

兄があれだけいうのだから、人の道を外れてしまっていたかもしれない。

でも……………昔から、自分は自分の意思で動いていなかったような感じがした。


誰かに選んでもらった素晴らしい道を歩き、素晴らしいと褒め称えられていたような、そんな感覚である。




「…………アリア様。」


「なんでしょう?」


「吾輩は……………昔、エティノアンヌ様のことを、なんと呼んでいましたか。」


「それは、ノアから聞いた方が………」


「やっぱり、吾輩のことを全然ご存知ないのですね。」


「私は、あまり翡翠さんとお話していませんでしたから。」


「………………それは、嘘でしょう。」


「何故ですか?」


「アリア様は、吾輩のことを、どこか怯えた目で見ているではありませんか。」


「…………そう見えてしまったなら、謝ります。」


「否定しない、ということは……………心当たりがあると?」


「……………え。」


「ブラフですよ。今の……」


「……!!!!」


「エティノアンヌ様は、嘘がお上手だ。でも少し上手過ぎて…………不自然に見えてしまう。」


「ノアは、嘘なんてついてません!」


「いいえ。何か嘘をついていることは、断言できます。」


「どうしてそんなこと、言い切れるんですか?!心眼なんて使ってないのに………」


「心眼………?やはり吾輩には、何かしら心を読む魔法があるのですね。生誕魔法以外のことは、まだ少々朧気なのですが。」




アリアは、やってしまったと、心の中で思った。

………………完全に、翡翠の手のひらで踊らされている!!

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