表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
152/205

百三十四歩目 「向き合いましょう?(II)」

『はは………こればかりは、バンボラ様に感謝せねば。若様に、あまり食べる習慣がなかったことが、役に立…………ゲホッゲホッ!!』


『ちょっ………?!早くこの薬草を!!』


『そんなもの………必要ありません。』


『ふざけてるの?!早く解毒を………』


『要りませぬ!!』




あぁ、大分思い出してきた。




『巫山戯ているのは、貴方です………吾輩も、貴方と……同じ。』


『え……?』


『父上の生誕魔法…………貴方のお母様とも、似ているから……………間違えたのでしょうね。』


『母さんが、何か関係あるのか?』


『まぁ、どちらにせよ、吾輩は、水に特殊な効果を付与できる………回復も例外じゃない。しばらくしていれば、効いてきますよ。』


『よく分からないが、この騒ぎが済んだら、母さんに聞いてみる。』




まだ、顔がぼやけている。

もっと鮮明に、もっとはっきりと………









『………ということが、ありました。』


『大丈夫だったのか?!』


『はい、若様はご無事です!』


『違う!!翡翠、お前に言っているんだ!!!』




あぁ、立ち聞きした時の会話………

か、彼は…………翡翠って、名前だったか?

どうも、しっくりこない。




『そ、その名前を、大声で言っては…………!』


『あ………すまない、悪かった。』


『その蔦も、抑えてください!死にたいんですか?!』


『…………一つ、言わせてくれ。』


『なんでしょう?』


『翡翠、僕は………翡翠を、心から大事に思っている。』




彼のことを、父が抱きしめた。

父は、彼のことを、心から愛していたのだろう。


僕や兄上は、愛されなかったけど。


まぁ、それは別に、おかしなことじゃない。

僕ら、感情に振り回される人間にとって、愛する人間は、選ばなければいけないものだから。





きっと、自分を一番に思ってくれていた、大事な人。

大分、思い出してきた。




『初めまして、我が主人となる、エピン様…………若様にお会いできて、光栄でございます。』


『わか、さま………?』


『あぁ、吾輩の母の国では、目上の子息様のことをこう呼ぶので…………はっ!お嫌なら、今すぐやめます!!』


『嬉しい!』


『ほ、本心……だと?!』


『………あれ、もしかして、心眼を使ってる?』


『…………………!!』


『そうだな、突然僕のことを、信頼なんてできるはずない。』


『い、いえ……………』




父上と、同じ色の髪。

僕のこの髪は………母方の祖父の、隔世遺伝らしい。


そうだ、僕は彼が羨ましかった。

何もかも、優れていた部分でもそうだが…………一番羨ましかったのは、父に似ていたこと。


母に似ていた自分が、本当に父の子供なのか、不安で不安で仕方なくて…………父の口調を、意識的に真似していた。

母上に、父に似ていないことを、責められたりもしたから。



なのに、彼は自分の誇りを貫いている。

中心となっている王国では、他国の者を軽蔑するような、そんな教育が施されているというのに。

聡明な彼は、自分の境遇を十分理解していたはずだ。

なのに、なのに……一族の誇りを、捨てない。



羨ましかった。

彼が大変な境遇にいるのは、わかっていたが、それでも僕は彼が羨ましかった。


彼は、彼は…………




『本当のことを、思ったことを、言ってくれて構わない。』


『なっ……?』


『僕は、いつか………自分の力で、お前に信頼してもらう。』


『…………』


『それまで、心眼を使ってもらっていい。自由に振る舞ってくれ。』


『………………!!!』


『僕は、エピン・ノーブル・フィススタンツェ=ブランシュだ。お前の名前は?』


『はい。吾輩の、名前は……………』















「………許さない。」




許さない、嫌い。

どう思われてもいい。

傷つけてしまう心配はいらない。


言いたいことも、理解している。




母 上 な ん て 、 大 っ 嫌 い だ 。





彼のことを思い出したと同時に、自分と母に対する嫌悪感が、自分の全てを埋め尽くす。


トルテの前で、話せた時と一緒だ。

相手のことなんて、どうでもいいと思っている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ