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十五歩目 「新しい日々?(III)」

あれから二日後


メイとトルテが忙しく働いていたその頃……エピンは男に責め立てられていた。




「だーから!!さっさと飛べる靴を作ってくれよ!」


「で、でも………そ、そそそそれ……だ…と……………」


「鬱陶しいなぁ、さっさと作れ。」


「あ………あ…あの、あ……の……」


「さっさと作れって言ってるだろ?!」


「ひっ…!!」




エピンは男の威圧感に負けた。




「わ、わ…かった………から。」




エピンは逃げるように部屋に入る。

そして部屋に入ると、そばにいたヴィオローネを抱きしめた。




「キュッ…?!」


「ヴィオローネ……すまない、怖くなって。」


「キュイッ。」


「自分への思いを聞かなければいけないのに……僕はなんて内気な人間なんだ!嗚呼、不安だと靴が作れなくなってしまう……!」


「キュウゥ………」


「あの男、ここの規約書も読んでくれないではないか!………けど、もうメイやトルテに迷惑をかけたくはない。僕は今までの罪を清算するんだ。」


「…………」


「なんとかしてみせる。」






彼が靴を作り始めた、その時。

男が勝手に部屋に入ってきた。




「え…?!あ、あ………」


「いつになったら出来んの。」


「…………………………」


「ちょっとくらい喋れよ、それに顔も見せねぇとかふざけてね?」


男は、エピンの仮面に手をかける。

エピンは恐怖を感じ、咄嗟に人形で抵抗した。


ドンッ!


「痛っ!なにしやがる!」


「はぁ…はぁ…!!!」


「話になんねー、さっきのパン屋呼ぶわ。」


「……………?!」


男は店から出て行き、メイを呼びに行く。


エピンは、体の震えを止めることができない。

そしてあっという間に彼は蔦に囲まれてしまった。

あまりの恐怖に感情を制御しきれなかったのである。

顔は絶対に見られたくない。

顔を見るたびに皆が震えだすあの時に戻りたくない。

喋ったら、大事な人が大変なことになってしまう。

黙っていた方が、感情も押し殺せる。


また、メイに頼ってしまった。

何かあった時……メイを巻き込みたくはないのに。


外から声がする。

あのエプロン姿はおそらくメイだろう。




「アンタ、言いがかりでタダにしてもらっといて何言ってるんスか?」


「はぁ?!あの女が食いもんに変なもの入れた責任を取ってもらってるだけだろ!」


「エピンさんは人と話すのが苦手なんです。その上無理に仮面を外そうとするなんて、正直性格悪いッスよ。」


「俺が悪いってのか?!」


「自覚なかったんだ!!あら可哀想可哀想〜!」


「いい加減にしろ!」




男はメイの胸ぐらを掴んだ。

それを見たエピンは、外に飛び出そうとする。

しかし、それこそがメイの狙いだった。




「助けて!襲われる!!」




メイのよく通る声は、町中に響き渡った。




「あら大変!人が襲われてるわ!」


「あれは………あの靴屋さんと一緒に来て、お金を払ってくれた子じゃないか!」


「みんなで不審者をとっ捕まえよう!」




メイはニヤリと笑った。

これでやり返せると思ったのである。

その顔を見て、男は怒り狂った。




「テメェ死にたいのか?!」




メイは殴られそうになる。

しかし、エピンが人形で彼の動きを止めた。




【作るからメイに何もするな】













【飛べる靴が欲しいのはわかった

 だから自分への思いを言ってくれ】


「靴に想いを込めるために自分への思いを言ってほしい、だそうッス。」


「えー、だる。でもまぁ仕方ねぇか。自分への思いは俺すげぇ、目的は目立ちたい。だから飛べる靴をくれよ。」


「…………そ、それだけッスか?」


「そうだけどー」

【もう少し明確に願わないと靴への思いが足りない

 その靴でどうなりたいのか、自分への思い、それらがまだまだ必要だ

 思いが少ないと、場合によっては危険さえあるぞ?】


「も、もう少し具体的に……」


「あーあー!もういいって、飛べりゃなんでもいいから作ってよ!!時間潰してまたくるから。」


男はそう言うと、店を出て行った。

エピンは、ようやく体の力を抜く。

メイも疲れたのか、そばにあった椅子に座り込んだ。

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