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外伝 「本能に負けちゃえ(IV)」

誓いの儀、当日。


部屋に、男が一人だけいた。

この男が、例の相手………




「お初にお目にかかります、ベルエギーユ様。私は、バンボラ・スタンツェと申しま……」


「堅苦しいのは嫌いだ、ベルで良い。」


「……………………初めまして、ベル。」


「……………嗚呼。」




顔を覆った背の高い男の声は、意外にも澄んでいる。




「一つ聞いていいかしら?」


「構わない。」


「なんで、あたしを妻にしたの。あんな無茶な要求をのんでまで。」




これだけは、聞いておかなければ。

……相手の思惑が読めないのは、困る。




「簡単な話だろう?僕にとっての目当ては、貴方の生誕魔法でなければならないはずだ。」


「この能力で、誰かを殺したいとか?」


「そんなわけあるか。単純に、子供に強い魔法を遺伝させる目的に決まっている。」


「…………子供が、あたしの能力持って生まれてきても、ただのバーサーカーになるだけよ。何であたしが良いわけ?」


「理由は、僕の生誕魔法と貴方の生誕魔法が、とてもよく似ているから………らしい。実際に決めたのは家臣たちだからな。」


「あなたの生誕魔法は?」


「僕は、触れた生き物以外のものを、任意で花にできる。」


「…………確かに、触れたものを変えるという点では、とても似ているわね。」


「あっ、突然で悪いが………貴方は人間の体を人形にし、不老不死にできるのだったか?」


「違うわ、人間や動物を人形やぬいぐるみにする。これしかできないわ。戻せないし、自分には使えない。」


「じゃあ、その人形の従者は…………何故動く。」


「 ”マリオネット” 。スタンツェ家の秘術。人形を自在に操れるの。」


「これは傑作だ、素晴らしい……!」




顔を布で覆っているのに、かなりの音量で高笑いが聞こえてくる。

あたしには、何がおかしいのか、全然わからないけれど。




「バンボラ、忠告するが、僕は貴方を生涯……………絶対愛さない!」


「……えっ?!」


「王族は感情を持てば死ぬ、だから、僕は誰も愛さない。」


「あたしには、何がなんだか……さっぱりわからない!一応、妻になる覚悟はしてきたのに……」


「ただ、共に公務に出て、一緒に生活をし、二人で夜を過ごすだけの関係だ。そこにはそれだけの事実があり、感情は一切ないものと思え。」


「…………そう。まぁいいわ。愛なんて、期待してなかったし。」


「王族が感情を持ちすぎたら死ぬというのは、重大な秘密………言っておくが、口外無用だ。」


「わかった。」


「物分かりが良くて助かる。」




……………すると、彼は、顔の布をとった。




「さぁバンボラ、一応結婚の誓いはしておこう。」


「……………」


「………何か僕に言いたいことでも?」


「貴方………なんて、美しいの。」


「なんだ……そんなことか。そうだな、確かによく言われる。きっと僕は他の者より美しいのだろうな。」


「本当に美しいわ、骨格も顔立ちも声も、全てが美しい。今すぐこの手袋を剥いで、人形にしたいくらいよ。」


「外したいなら外してもらって構わない。まぁ外したら、僕は貴方を殺すけど。」


「ならやめた。あたしは死にたくないの。人形になりたいから。」


「なるほど、確かに僕も花になりたいと思う時がある。そのような点では気が合うな。」


「……………貴方、あたしを気持ち悪いとか言わないのね。」


「僕に罵られたいのか?悪いが、そういう趣味はない。」


「違うわよ!不思議だなって思ったから言っただけ!!」


「なるほど。」




あたしが言えたことじゃないけれど、なんて失礼な人なのかしら。

…………少しくらい悪態をつかないと、やってられない。




「言っとくけど………あたし、貴方のこと全然タイプじゃないわよ。あなたは、確かにとても美しいけれど、全体的に雑。そんな人より、あたしは紳士的な人が好きね。あと、もう少し背の低い男性が良いかも。ベルを見上げていると、首が痛くて痛くて。」


「ふふ……はっきり言われると、少し傷つくな。」


「全然傷ついた顔をしてないじゃない。むしろ同意さえ受け取れる。あなただって、どうせあたしのことタイプじゃないくせに。」


「…………確かに本音を言えば、バンボラの僕の好みからはやや遠い。貴方はとても可憐な女性だが、僕はもう少し背の高い人が理想だ。そんな人形のような小ささでは、踊るときに足を踏んでしまう。内面で言えば、もっと思い通りになりそうで、ならなそうで、その上表情がわかりやすい人間が良い。」


「理想の相手としては、かなり贅沢かもしれないけど、あなたのスペック的に見たら妥当かも。」


「その言葉をそっくり貴方に返そう。」




ベルは、あたしを突然抱きしめた。




「さて、僕らは誓いをしなければならない。」


「えぇ、わかってる。じゃあ……さっさとして。」


「バンボラ…………貴方のファーストキスは何時いつだ?」


「今からするのが、初めてよ。」


「嘘をつくな。」


「嘘じゃないけど。」


「体制の変え方が慣れ過ぎている。」


「………………」


「気になっただけだ、他意はない。」


「そう、さっきのは嘘よ。五歳の時、友人にキスをしたから。」


「友人と、ではなく………友人に。」


「だって、お人形にしちゃったんだもの。」


「そういういことか。」


「…………あなたも、初めてのキスにしては、強引すぎない?」


「あぁ、そうだな。」















最低。

なんで、こんな蛆虫が………


人形でありたい自分を、何度も否定したのに。

最低、最低、最低!!



時間がかかったのに、周りの目だってあるのに、何でこんな生誕魔法を引き継いだの?!

頑張ってきた、あたし………馬鹿みたい。


もう駄目。

ベルが、本当の愛を知り始めたから、もう駄目。

もうあたしは駄目。

こんなのじゃ、こんなのじゃ駄目なのよ。

自分として、生きて行けなくなってしまう。






蛆虫として生まれた、あなたの存在が、あたしの人生にとって、最大の過ちだ。

明日から本編再開です!

お楽しみ(・▽・)

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