百二十一歩目 「そこをなんとか出来ませんか?(IV)」
「エリーゼ、文字はどれくらい習得できた?」
「ぴっちゅ!」
「そっか、もうそんなにか。やっぱり飲み込みが早い、凄いね。」
「ぴちゅぴっちゅ!!」
「………自分で書いた文字を僕に見せたいのか?あぁ、構わない。」
〔そろそろ ねぇねと ふたりきり する?〕
「?!……か、揶揄うのは、止せ!というか、エリーゼにとって、ヴィオローネは姉的存在なんだ。ちょっと意外かも。」
「…………ぴっちゅぴ?」
「それはどうだろう……………………でも、そんなことを言ったらヴィオローネに怒られると思う。言っておくが、僕は知らないからな?」
「ちゅぴい?!?!」
ヴィオローネの怒りを感じる視線に気付いたエリーゼは、慌てて自分の巣箱がある部屋に逃げ込む。
ジャスパーは、それを見て、後を追った。
皆はそれぞれのベッドや木などで、暮らしているが、仕切っているだけで、今はレナとルナ以外、大体の動物たちが暮らしている部屋は同じなのである。
そしてレナも、ルナの看病ために、その場を去って行った。
二人きりになったタイミングで、エピンは、ヴィオローネに問いかける。
「ヴィオローネ、僕に言いたいことがあるんじゃないのか?」
「……?!」
「……………だって、 ”あの靴” を一緒に作り始めてから、元気がないから。」
「キュル……」
「今作っているあの靴は、メイの履いていた靴を元にして作ってるんだけど、何故か完成しないんだ。思いが中途半端で、毎回失敗する。あれから依頼を受け付けるのをやめて、あの靴だけに力を使っているのに、完成しない!」
「………………」
「靴は履けないから、別に完成しなくてもいい。でも………」
「キュイキュイ?」
「もしかして、ヴィオローネは……………………その原因を知っているんじゃないか?!」
ヴィオローネは、とても驚いている。
………………………そんなことは、全く知らない、自分が言おうと思ったことではない。
「キュルキュルキュ?!?!?」
「えっ、違う?」
「ルキュ!!キュイィ……」
「言いたいことはあったけどそれではない?!じゃあ、僕に何を言いたかったんだ?」
「………キュッ!」
「そ、そこは教えてくれ!何が言いたかったのか、単純に気になる……」
しかし彼女も、彼の物に思いを込める力については、どこか違和感があった。
魔法ではないはずなのに………あの能力は、どこか魔法に見える。
ヴィオローネは、彼が動物と話せる魔法を持っていることが、不思議で仕方なかったのだ。
もちろんただでさえ不思議な魔法だが、問題はそこではない。
子供の生誕魔法は、両親の生誕魔法に影響される。
前世が人間だったからか、エピン以外の人間が話す言葉も理解できたヴィオローネは、今は亡き時雨から、そんな話を聞いた。
〔若様が持つ、動物と話せる魔法が不思議でならない〕と、彼は普段からよく口にしていたのである。
例えば、エティノアンヌの生誕魔法、 ”植物を育て、人と植物を変化させる” 先程のそんな説明を、ヴィオローネは聞いていた。
時雨から聞いた魔法の内容は、こんな感じだっただろうか。
自分たちの父の生誕魔法は、生き物以外の触れたものを、任意で花にできる魔法で、エティノアンヌの母の生誕魔法は、愛を相応の金に、金を相応の愛に変えることができる魔法。
そして、自分の母の生誕魔法は、水を自在に動かせ、温度を変えることも可能。
自分の魔法は父に似ていないが、雨を降らせ、自分自身を水にでき、温度が変わったりするこの魔法は、母と似ている………………なのに、どうして若様……エピンは、両親に生誕魔法が似ていないのか、おかしいとは思わないか、と問われた。
先程聞いた、エティノアンヌの魔法も、今聞くと、両親と近しいところがある。
主に、父の魔法に似たのだろうが、進化の過程で、母に よって いったのかもしれない。
言われてみれば、エピンだけどうしてこのような魔法を持っているのだろう。
「キュ、キュイ?」
「え、急に………どうしてそんなことを、聞くの?」
「キュキュ!」
「答えてって言われても……はっ、母上の生誕魔法なんて、知らないんだが………」
「………キュル。キュキュ!」
「…………………確かに父上は、僕に良い魔法を継がせるために、母上と結婚し……させられたのだろう。でも……」
そこには、少しくらい愛があったと思う……………エピンは、そう言おうとした。
だが、それは所詮ただの願望。
彼女には、そんなことは言わなくていい。
次回は外伝です!
いよいよ伏線回収大会も終盤に差し掛かって参りました!!!
……………とりあえず、お楽しみに(・▽・)




