表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/205

百十六歩目 「本音では複雑(I)」

「えっ………?!」


「……………兄上も、知りたい…は、はず。」


「でも、それはさ……」


「母上…………お人形が、好きでしょ?だ、だか………ら、僕を………人形に。うご……食べる、だ………駄目。うつく、しい、から………遠く、なって…………えっと、人形に…………でも、未遂。」


「……………!!」


「僕………謝らなきゃ!!僕のせいで、皆…………はぁ……ぐっ?!」


「……エピン?」


「はぁ………だから、うっ………はぁ……………」


「無理して話し過ぎだ!少し休んだ方がいい。」


「ジャスパー……レナ……エリーゼ…………誰か、薬………………」




ジャスパーが、薬を持って急いで駆けつける。

エピンは彼から受け取った薬を、水も無しに飲んだ。


段々とエピンの息が緩やかになり、顔色も少しは、見られるほどのものになった。




【ごめん兄上

 今でも話し過ぎると、こうなってしまう

 息が荒くなって、吐き気がして、頭がおかしくなる】


「ま、前より症状、酷くなってない?大丈夫じゃなさそうだけど……」


「…………………」


「今のリス………エピンは、動物の言葉がわかるだけではなく、動物に言葉を伝えることもできるんだったか。」


【そうだ

 人間にも、伝えられれば良いんだけどね】


「…………あの出来事を思い出しても、それが言えるの?」


【やはり、僕は何かを忘れているのか

 所々記憶が曖昧なのは、それが原因と見える】


「@・〜#|%%&………。。」


「………?!」


「少し頭痛がするみたいだね。今だって、頭を少し抑えた。……………人形を操り、字を書くのがやっとと言った所、かな。」


【お互い様だ】


「どういうことか、私にはよく分からないな。」


【兄上だって、幻聴が聞こえているだろう

 すごく必死に見えるよ】


「どうしてそう思う?」


【僕に対しての恐怖心が感じられる

 母上の話を聞きたがらなかったのも、そのせいだ

 例の、もう一人の兄が関係しているのか?】


「やはり、エピンは聡明だ。」


「………………」


「私には確かに、色々な声が聞こえているよ。」


【だから、饒舌になるのか】


「そうだ。母さんの声も相棒の声も従者の声も、父上や………エピンの忘れ去ったあの声も、バンボラの声も、もう聞きたくない。」


【やっぱり、兄上は僕のことが好きだけど、何か恨んでる】


「心眼を使っていないのに感情を…………頭が良すぎるというのも、不幸だね。」


【何故、僕が不幸に見えるんだ?】


「…………………気づきたくないこと全てが、気づかなくていいこと全てが、わかってしまうからだ!!」


【違う】


「……?!」


【もっと、優しくなくなればいいのに、ってこと】


「どういうこと?」


【僕に、本音を言ってくれ

 ここまできたら、本音で語らなきゃ】


「……私の本音か。エピンにそれを言われると、ものすっごく……………不快になる、かな…?」


【やっぱり兄上、僕のこと割り切れてない】


「それこそお互い様でしょ。ノアを揶揄からかうの、そんなに楽しいんだ。」


「ふふ……ふふふ…………」


「………………その笑みは、軽蔑からくるもの?まぁまぁ、エピンが楽しそうで何より。」


【軽蔑じゃない

 頑なに、兄上が本音で話さないこの状況が、面白すぎて笑えてきた】


「そんなにいうなら、そろそろ本音で話すね。上辺の言葉だけだと、ノアは全然楽しくないから。」




エティノアンヌは、フードをしっかりととって、赤い目でエピンを睨んだ。


自分と全く似ていない兄、そして自分と全く似ていない弟の顔を、二人は互いに見ている。

どうしてこうなってしまったのか、互いに何を思っていたのか。

二人の心の中には、そんな思いが渦巻いていた。



…………兄弟同士、家族としての愛は、確かにあったはずなのに。




「あぁそうだ、ノアは、エピンとバンボラが心底憎い!!!君と、君の母であるバンボラが!!!!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ