十三歩目 「新しい日々?(I)」
「本当にごめんなさい!!!!」
「いや絶対許さない!!」
「えぇ?!?!」
「当たり前でしょうが!!!」
メイの怒鳴り声に、帰ってきた小動物たちが萎縮する。
頭を下げたザッハトルテを、メイは決して許してはくれなかった。
物事はそんなにうまくいかない。
「第一、オレだけに謝っても意味ないんスよ!」
「そ、それは……」
「アンタらのせいで父さんが死んだ。まぁ、それは戻ってこないし請求しないにしても………店は?!そこにあった材料は?!盗まれた金は?!」
「えっ?」
「オレの父さん以外に死者はいないッス。許しはしないけど、いろいろ話聞いたらエピンさんがザッハトルテさんの父さんは助かったけれど両足をなくしたみたいだし………お互いにどうしようもないことを言うのはやめにしましょう。」
「メイさん………!」
「なに感動してるんスか?!お金は皆さんにキッチリ払ってもらいますよ!ここの人たちから盗んだ金品は返却!!」
「でも……燃やしてしまった家などに払うお金は…………」
いくら父が多少賭博に使っていたとはいえ、ザッハトルテの家…………スマイラー家はその賭博の金を生活費に当てても生活に困るレベルの貧困状態だった。
無断でいなくなったリスのジャスパーからの情報でそれを知ったエピンは、ある提案を持ちかける。
【僕がそれらの費用を立て替える
一応事業はやっていたのだろう?
衣食住は用意するから僕にお金を払ってくれ】
「い、いいんですの?!」
「エピンさん?!そんなお金どこに?!少なくても五個の建物が崩れたんスよ。いくら大金でもそれは……」
【僕の家からは最低でも25000000ブランシュほど出せる。】
「そんな大金どうやって……」
「はぁ?!この不景気にそこまで金が出せるんスか?!一等地に豪邸建てられますよ?………それを最低でもって、エピンさんはどこの金持ちなんだか。」
【僕にも責任がある、それくらいさせてくれ
少なめだが、一応合計3%利子を貰う
メリットが少なすぎるからな】
「利子は750000ブランシュ………それで衣食住が込みなんてかなり良心的過ぎではなくって?」
【自分を殺そうとした相手に良心的なんて言葉を使うな
責任をとらせてくれ、借りを作りたくはない】
「むしろローズさんに借りができましたけれど……………お言葉に甘えますわ。」
【自分で言うのもなんだが、僕のことをよく信頼できるな】
「今はローズさんに頼るしかありませんもの。わたくしは父の分まで償わなければいけなくてよ。」
ひとまず表向きは放火犯が逃げたことにし、エピンが良心で街の人々にお金を払ったことになった。
「エピンさん……これって宣伝したようなものですよね。」
【ここの町で話題になれば別の街からも人が来る可能性が高い
治安が悪いとはいえど、ここはかなりマシな方だ
街の人からの評判も上がるし、利子も得られる
リバーシブルの服や鞄は、実質複数のものを得ているのに一つ分の値段だろう?
それと同じようなものだ、これぞまさに一石三鳥】
「値引いたりはするのにこういうところはちゃんととるタイプか………」
「どうして皆様に謝らせてくれませんでしたの?!」
【それはお前の今後の事業に影響するし、僕の宣伝効果も落ちてしまう
父親の入院費は払っておくから墓場まで持っていってくれ
ザッハトルテは新しく生まれ変わるんだ】
「……わかりましたわ。」
ザッハトルテは少し悲しそうな顔をしたが、仕方のないことだと割り切った。