百十四歩目 「姉妹喧嘩?(I)」
「う、うん。リア………リアだよ。」
「そ、そっ………そっか……!」
「あっ、ごめんなさい。何から話せば良いのか、わからなくて。」
「いや大丈夫、リサもわかってないから。」
「………リア、何話せば良いのかは、わからないんだけどね。」
「……うん。」
「お家から追い出されても、お姉ちゃんには、ずっと会いたかった。」
「違うの!パパとママはね、リアのために………」
姉妹は、感動の再会を果たしている。
…………こちらの兄弟は、どうだろうか?
「…………………」
「……………」
「…………元気?」
「ひっ!!」
「ご、ごめん……怖いか。」
【違う、体が勝手に動いただけだ】
「ちょっと……………お互いに、色々あり過ぎちゃった、かな。」
「………………!」
「互いに、互いを傷つけすぎて、どこから謝ったらいいのか、私にはわからない。だから、できれば話し合いたい。」
「……… 僕、僕……も、えっと……ね、わから……………な……………」
「無理して喋る必要はないよ。」
【自分の声で言いたいのに】
「でも今は、@>#&%………」
「ぐ………っ?」
「だっ、大丈夫?!」
【大丈夫】
エピンは、ゆっくりと椅子に戻る。
…………また、何か暗号のような声が聞こえたのだ。
「アリサはここに居続けて、エピンはアリサを自分の家で匿っていたわけだし、私たちと、話し合うってことでいいよね?」
「リサは問題ないわ。」
【構わない、元よりそのつもりだから】
「…………とりあえず、状況を整理しよう。自分が互いに対してどう思っているか、確かめなきゃ。」
皆は、エティノアンヌの指示に従い、互いにどうしてこうなったのかを考える。
「皆が言っていたことは、全部メモしたよ。これでいい?」
皆それぞれ、正直に自分の心中を語った。
それをエティノアンヌが記憶し、メモをとったのである。
彼は、現状把握に必要な部分を抜粋し、細かくまとめたものを、三人に見せた。
〔ノア → アリア 口頭で説明する、リアが嫌なら最低限の情報だけ伝える
ノア → エピン 色々あったが、とりあえず一緒にリアとアリサに謝罪するべきだと思う、国に関しても話し合いたい
ノア → アリサ とりあえず説明しなきゃいけないことが山程あることは、理解している
アリア → ノア 自分の言葉で説明、でもノアが詳しく語りたくない場合、またはこの場の誰かが聞きたくない場合は何も話しません
アリア → エピン 正直今でも少し複雑な所がある
アリア → アリサ 姉には会いたかったけど、ノアがエレノア家に行きたくないのなら、帰るつもりはない
エピン → ノア 信頼はしているし尊敬もしているが、兄上に数回豹変された時がトラウマで、今でも少し怖いと感じる
エピン → アリア 謝りたいが、アリアとどう接したらいいのかがわからない
エピン → アリサ もうほとんど和解済みだと感じる
アリサ → ノア とりあえず、リアとの関係を聞かせて欲しい
アリサ → アリア お父様が家を追い出したのには事情があって、実際は、家族全員リアを待っているから、可能なら家に帰ってきて欲しい
アリサ → エピン 既に和解した〕
四人で話さなければいけないことと、当人同士で話さなければいけないことは、別である。
本音で語り合わないと、物事は解決しない。
「まず兄弟、姉妹同士話そう。聞きたいことも、言いたいことも沢山あるだろうし。」
「リア……………この男と夫婦関係というのは、事実なの?」
「………本当。」
「なんで?!なんで自分を切り刻んだ人間と………」
「ノアは、自分の間違いを正せる人だから。」
「リサはね、確かに浅はかだったわ。リアとの約束が守れないと思い込んで、自暴自棄になってた。だから、リアの人生に口を出す資格はないと思う。」
「だったら……」
「でも、自分自身を傷つけた人間と結婚することは、本当にリアのためになる?!」
「な、なんてこと言うの!!」
「貴方は、自分に生誕魔法がないから追い出されたと思ってるかもしれない。でもね、実際は貴方が危険な目に遭わないように、家を追い出したのよ?お父様とお母様…………パパだって、ママだって、本当は貴方に会いたくてたまらない!!リサが頭のおかしい行動をとっても、止められなかったことがその証拠!!」
「………!」
「貴方が大人になったことは知ってる。だけど、姉としては、ちゃんと考えて行動してほしい。」
アリサは、必死にアリアに訴えかけた。
しかし、その訴えは、アリアの耳には届かない。