表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/205

百十二歩目 「理由はどこ?(III)」

だから、それを、望むことは、許されない。

どんなに自分を愛してくれていても、人を殺して、奪ってきたのだから、何かを求めてはいけない。




「それは、ノアも、信用できないってことでいいかな。」


「ノアは違います。」


「………ノアだって、リアを殺そうとしたことに変わりはない。」




アリアは、彼を見る。

…………特に、何か変わった様子ではなかった。

しかし平然としているようで、いつもより声が低くなっている。

彼女には、なんとなくエティノアンヌが何を言いたいのか、分かっていた。


〔ノアを信じてくれているのは分かる、しかし、エピンを信用しない理由が、自分が傷つけられたからなのではないのか

 それなら、ノアを信じてくれる理由が分からない〕…………とでも、言いたいのだろう。


少しの不安と計り知れない疑問が映る、彼の目を見ながら、アリアは言った。




「あなたは、リアの為に全てを放り出した。あなたは、それを〔自分が苦しみたくないという理由でやった、 ”偽善” 〕だと言ったけれど………最後まで自分の過ちと向き合い、どんなに絶望的な状況でも諦めず、自分の命を削ってまで、リアを助けてくれた。こんなこと、なかなかできません。生まれ持った頭の良さや、魔法に恵まれていた、ということだけでは、できないことなんです。城を飛び出して、ほとんど助からない従者を助けるなんて、普通はそんなこと、できない……………城を出たら、もうそこに帰るわけには行かないでしょうから。」


「………………?」


「あなたは、自分の命を懸けて、頑張っても無駄になるかもしれないことや、叶えられないかもしれないことに、飛び込める人。そして、それを叶えることもできる人。」


「………!!」


「ノアは、リアがずっと城にいる間、リアを守り、勉強も教えてくれて、一緒にたくさん遊んでくれました。ただでさえ………立場上不利なノアが、周りから、どんな目で見られていたか、今なら分かる。けど、あなたは自分が、自分が正しいと思うことを突き通した。」


「……………」


「自分の間違いを正し、誰かのために全力を尽くせる。リアは、そんなノアの姿を見て、隣に居たいと思ったんですよ。」


「…………………………」




…………エティノアンヌは、嫌な予感がした。

アリアの穏やかな表情が、曇り始めたからである。




「だから、リアは絶対に、ノアを二度とスタンツェ様に会わせたくない!会わせない!」


「?!」


「命を懸けてまで、苦しい思いをしてまで、向き合う必要なんてありません。その店への、道を教えてください……………リアは一人で、お姉ちゃんとスタンツェ様に、会いに行く。」


「そ、それはダメだよ!!」


「私、もう子供じゃないんですよ?」


「一度、冷静になって。」


「私は冷静です!」


「君がいつも私に言っていることじゃないか、冷静になれ。」


「…………………」


「ねぇ、アリア…………もしかして、エピンを殺そうとか思ってる?」


「いいえ。」


「じゃあ、一応言っておくね………………万が一対立して、その場で戦いになったら、エピンには絶対勝てないよ。」


「そんなことありません!勝て…」


「勝てない。」


「でも………!!」


「目を合わせなければ、心が読まれないから、勝てると思ってる?……………そんなことない、あの時は消耗戦だっただけ。人を守りながらだったエピンの方が、不利だったよ。」


「でも、あの場にはアルバート様もいました!!」


「でも………時雨は、あの少女の魔法にかかっていた。本来だったら彼は、エピンを最優先で守り、それ以外を見捨てるような性格の持ち主。少女が人を殺したくないと思っていたから、アリアは死ななかったんだ。けど普通なら、エピンが止めるまで、アリアを痛めつけていたと思う。」


「っ………!!!」


「あの時エピンは、人形を守りに使っていたようだから、そこまで強さを感じなかったかもしれない。でもね、あの人形は、子供が遊ぶような大きさからは、想像もできないほどの力を発揮する

。……………仮に、追い詰めたとしよう。だがエピンは、いざとなれば、竜や魔獣を呼べる。動物たちに助けを求めることもできるんだ。頭の良い猫に、簡単な読み書きすら教えたほどだから、文字を書ける動物がいたっておかしくない。そしたら、動物が人を連れてきてしまうよ?」


「そんな……ど、どうすれば………」


「エピンは、こちらから仕掛けない限り、何もしてこない。きっと、最初に話し合いを持ちかけてくる。」


「…………………」


「大丈夫、大丈夫だから。」












「本当に、二人はここに来るのかしら………?もう、私がここにきて、三日経ってない?ケーキ屋の人と、パン屋さん意外、誰もきてないんだけど。」


【絶対に来る

 というか、どちらにしろ待つしかないんだ】


「仕方ないわ…………全員、覚悟が必要なんだもの。」


【確かに、覚悟が必要かもしれない】

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ