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百九歩目 「作り直そっか?(IV)」

【顔を上げてくれ

 足を潰された時の激痛は相当の物だったし、恨み言をぶつけたいと少しは思う

 けど、僕だって正しい判断ができていなかったからお互い様で】


「……………!」


【それに、悪いことばかりじゃない

 母のことを引き摺らなくなったのは、足が消えたからだ

 無理矢理に履いていた小さい靴のこと、それで吹っ切れたし】


「そ、そんな…………殿下が、王子として家に帰れば、私を極刑にすることだって容易なのに?」


【もう、そういう辛いお話は、おしまい】




本当にこの男が、妹を刻んだ兄弟の片割れなのか?

事実だと分かっていても、彼からは残虐性が感じられなかった。

正直アリサは、まだ少し、心のどこかで疑っている。




「ねぇ、殿下…………」




アリサは、後ろを向いたまま小さく呟いた。

しかし、エピンは呼びかけに答えない。

反応がなかったため、彼女は彼の方を振り返る。


……………エピンは、自分の長い髪を編み込んでいた。

なんと切り替えが早く、自由な人なのだろう。

先程まで、あんなに暗い話をしていたというのに。


彼が髪を編み込み終わるまで、アリサはなんとなく無言で待った。

エピンは髪をまとめ終わり、バレッタをつけると、手鏡を二つ取り出す。



しばらくすると、エピンは表情筋を全く動かさずに、目をキラキラさせた。

どうやら、ヘアアレンジがいつもより上手く行ったようだ。


少しして、アリサの見守るような視線に気づいたのか、エピンはハッとする。

彼は慌ててメモ帳を取り出し、文字を書いた。




【朝ご飯、どうしよっか?】




アリサは、少し驚いた。

彼が今ハッとしたのは、視線が気になったわけではなく、ご飯を食べていないことを思い出したからだったことに驚いたのである。




「任せる、殿下の好きなものでお願い。」


【エピンでいい】


「いや、流石に殿下か王子様じゃないと…………」


【エピンでいい】


「そう言われても困るわ。リサ敬語が本当に下手だから、せめて呼び名だけでもちゃんとしたいの。」


【エピンでいい】




同じ字面を見せられたアリサは、諦めて頷く。

エピンは、少し閉じ気味だった目を見開いた。


エピンは、軽快な足取りでキッチンに向かい、冷凍された何かを、魔法具で解凍し始める。




「エピン、それは何?」


【お米】


「オコメ、って………?」


【東の国のメジャーな主食だ】


「あら、そんなものがあったなんて、知らなかったわ。エピンは、かなり博識みたい。」


【昨日作った味噌汁と焼き魚が余ってたから、お米がいいかなと】


「ミソ、シ…………良くわからないけど、エピンが結構、生活力に長けてることはわかった。」


【そんなことないと思う

 たまたま昨夜は気が向いて作っただけで、普段は、動物たちにご飯を任せっきりだし

 家事とかは正直、皆に頼りすぎている】


「あら、動物と話せるの?」


【僕の生誕魔法が、動物と会話できるものなんだ】


「そうなのね。」




彼は解凍されたご飯を白い皿に盛ると、温め直していた味噌汁をスーププレートに注いだ。

焼き魚は、四葉の模様が入った四角い皿に乗せられている。

人形で作業を進めているため、調理だけでなく、運搬もとても早い。


テーブルに全ての食材が並ぶと、エピンはアリサを手招きし、共に座った。

意思疎通できるようにするため、メモ帳と、ペンを持たせた人形を引き寄せる。

人形を一度近くまで引き寄せ、ぎゅうっと抱きしめると、彼は人形を手放し、彼女にフォークとスプーンを手渡した。




「ありがとう。…………まぁ!貴方は、そのスティックで食べるの?」


【やはり、こういう時は、フォークやナイフじゃなくて、箸の方がいい】


「箸っていうものなのね………私、ちゃんと覚えて帰る。」


「………………」


「それにしても、人形に持たせたメモ帳に、もう一体の人形に持たせたペンで文字を………すごく器用だわ。」


【人形の扱いは慣れているから、得意分野

 とりあえず、冷めないうちに食べよう】


「えぇ。」

作り直せるなら、全部捨てられるかも。

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