表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/205

十一歩目 「貴方のため?(III)」

建物は、靴屋を含めて煤だらけだった。

靴屋は奇跡的に原型をとどめており、他の建物は骨組みだけや灰になっている。


ザッハトルテは罪の意識を感じたが、それを振り払って靴屋の戸を叩く。




「ローズさん!どういうことですの?!あの靴を履いたら、父の足が無くなってしまいましたわ!!」




ガチャ



エピンはドアを開けると、冷たい目でザッハトルテを睨んだ。




「何故かしら。説明してくださります?」


【それをお前が望んだからだろう?

 第一、お前の父は咎人だ

 犯人はとんでもない速度で逃げていったらしい

 お前達がこの街を荒らしたことは覚えておく】


「……………それとこれとは話が別ですの!!わたくしはそんなことは望んでいませんでした!!罰を受けて欲しい。でも捕まらないで欲しいと願った……………それだけですの。」


「ふふふ………ふふ……………」


「しゃ、喋った?!」


「…………………絞めろ!!!」




ギュッ



エピンは魔法で操る蔦で首を絞め、彼女を靴屋に引き寄せた。

小動物達は別の大きな建物に避難しているので、巻き込む心配はない。

そして靴屋の戸を閉めると、彼はザッハトルテをぎろりと睨む。

目から、ザッハトルテと自らへの怒りが感じられた。




「ぐっ…………?!」


「騒々しい………黙れんのか…………?」


「喋って…………?!」


「僕は、喋りたくない。それはもう嫌われたくないからだ。言いたいことを言えないより嫌われる方が余程辛い。」


「……………?」


「頭が湧いているから分からないか。お前のような愚民になら、なんと思われても構わないということだ。」


「ど、どう……いう……」


「罰を受けて欲しい?でも捕まらないで欲しい?お望み通りではないか。」


「ふざけないで………!わ、わたくしは………」


「両足を失うという罰を受け、走るのが早いという犯人候補からも外れる。お望み通りだろう?!」


「………………?!」


「感情に任せて口を開けば、あの時のように動物達以外皆消えてしまう。顔を見せたら恐れられてしまう。それが怖くて何も喋れなくなった。だが……………お前など消えても構わない。だから…………」


「な、何故………そんなの嫌、嫌よ………!!!」


「お前の為に思いを込めて作った靴が、他人を傷つけてしまったからだ!!!だからそれらを今すぐ精算する!!!」


「ひっ?!」


「エリーゼが………メイが……………僕のせいで…………絶対にここで終わらせる!!」




エピンは、ザッハトルテの首を絞めようとする。

しかし、あの言葉が頭から言葉が離れない。




『エピン、お前のような化け物は一生出てくるな。』





僕は化け物ではない!!






鳥を殺されたくらいで怒り狂うから怖い?

鳥くらいとはなんだ?!

お前らは自らの友人を人くらいなどと蔑むというのか?


正直、理解不能だ。




僕がたった一言……嬉しい、と言ったら皆が狂喜乱舞する。

僕がたった一言……不快だ、と言ったら皆泣きながら命を絶っていく。


僕は化け物ではない!!

………なのに皆が過剰に僕を気遣う。

ここでは違うが、僕の過去の世界はそれが僕の 当たり前 だ。




エピンは、それが嫌で嫌で仕方なかった。

目に入る顔は全て愛想笑い………大したことがない失敗を泣きながら謝られる。




『どうかお許しください……!!』




別に怒っていないのに。

そんなに僕が恐ろしく見えるのか?

安心してくれ、僕は寛大だ。

姿形は兄と重なるかもしれないが、僕は兄のような人間ではない。

そのような言葉をかける前に、皆逃げ帰る。





僕にとっての理解者は動物だけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ