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九十歩目 「やっぱり妬ましいんだ?(IV)」

あのやりとりで……………あれは防げたはずなのに。


母が恐ろしいのに、何故か母がまじないを込めたこの仮面をずっと持っていたこと………そして、理想を押し付けられて苦しんだことも話した。




「そんなことがあったんスね………」


【だから、僕は母に嫌われたかった】


「オレ、最初………顔とか声とか、その………すみません。」


【もう気にしてない】




トルテは、そういうエピンの近くに寄った。

そして、彼の目をまじまじと見つめる。




「あの、目の色…………わたくしには、どちらも白に見えますけれど?」


「…………オレにも同じに見えます。」


【なんていうか、オレンジに変わったりしていたこともある

 誰の前でかは思い出せないけど、確かにあの時は変わった

 たまに赤い色になったりするけど、基本的には変えないように頑張ってる】


「エピンさん今、変えないように頑張るって言ったッスけど……なんとかなるものなんですか、それ。」


【感情によって変わるから、根性で!】




すると、彼の左目が、色を変え始めた。

先程まで白かったエピンの左目が、紫に変わっていく。

それはもう、仮面越しでもわかるほどに。




「色が変わりましたわ!!」


「す、すごい………こんなことが可能だなんて。」


【似合うか?】


「はい、とっても素敵ですわ!」


「そりゃ勿論!…………それより、これ、何色にもできるものなんですか?」


【赤、ピンク、白、黄色、紫、オレンジとかがある

 バリエーションはそんな感じだが、赤やピンクには変えにくい

 普通は白で、紫やオレンジが比較的簡単だ】


「めっちゃお洒落じゃないッスか!」


【いや、色で感情が読まれるから、結構大変

 近しい人は、なんとなく何してたか分かっちゃうし、何考えてるか分かっちゃうし

 色による感情が知られたら、二人も案外わかると思う】


「なるほど………」


【とりあえず、僕の身の上話はこれくらいにしよう

 作戦を思いついたから、まとめなきゃ

 本当に二人ともありがとう

 また明日】


「えぇ、わたくしの方こそ、話してくれて嬉しかったですわ。」


「オレも嬉しかったです!」




ガチャ



二人は、玄関から外に出る。

そこでメイはなんとなく………エピンの方を振り返った。


彼は、エピンの目の色が変わっていることに気づく。




「エピンさん、左目………」


【どうかしたか?】


「ちょっと左目、赤くなってますよ。充血とかではなさそうですが………」


「あ……………!!」




目は口ほどに物を言う、とは………このことか。

いいや、彼には何かを言う口なんてないかもしれない。




【気にしないでくれ、なんでもない】


「わかりました。なんかあったら言ってくださいよー?」


「メイさん?お菓子試食してくださるんじゃ………」


「あ、はーい!じゃあまた。」




バタン



人形で扉の鍵を閉めると、エピンは仮面を外して、手鏡を見た。

抑えていた感情が、全て解放されたのか、彼の左目は真っ赤に染まる。




「馬鹿か僕は………これが、薔薇の花言葉を表してるって気付かれたら、何考えてるかなんて、一瞬でわかるのに……………僕、馬鹿だ。」




さらに二人の前で仮面を外せなくなった。

…………仮面を外せば、頬の模様が見えてしまう。

一族の薔薇のような模様も、気分と一緒に変わってしまうので、薔薇の花言葉だと推測される可能性も捨てきれない。

なんてことをしてしまったのだろう。


今日は、どこにも行かないという、あの約束のせいだ。

まず、メイに見せるために外した、 これ をつけなければならないのに、痛いのが嫌だというより、浮かれた気分が勝っている。

それが最後の最後、雑念が入ったせいでこんなことに………


とりあえず、辛いことはさっさと終わらせよう。

そっちの方が、いい。



母上は、木兎ミミズクに惚れたといったら、なんという言葉を発するのか。

きっと、美しくない、というのだろう。

でも、母上の美しさは限定されているのではないか。

人形こそが、母上の美しさなのかもしれない。


でも、僕と母上は違う。

そう心に言って、鉄を自分の足に押し付けた。

その美しさは、誰にとっての美しさでしょうか。

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