夢じゃないのか?
朝と昼に見る海の景色と夜に見る海の景色はまるで別世界である。
だが自分の住んでいる世界では海の向こうにある空港の明かりが綺麗であるがこの世界は空港に明かりもなく前に来た時と同じく電車も通ってないし音もない。
周りを見渡しても街灯もついていなく真っ暗だ。
だが一つだけ明かりがついていた。彼女がカレーライスを自分にご馳走してくれたフードコートだ。
「もしかしたら」と彼女がいるのではと夢の中なのにも関わらず妄想を膨らませた。
夢日記を続けて連続で夢の続きは見たことはあるがストーリーは全く別のものだった。同じ人物が出てきても、初めましてと記憶がリセットされている。
あの時の出会いと会話がリセットされていると胸が苦しくなってきた。
でも仕方がない、夢なのだからと自分に言い聞かせフードコートを探索するとユウトは「ウソだろ?」とつい口から言葉が出てしまった。
彼女が自分の座っていた椅子に座りテーブルにふさぎ込んでいたのだ。
ユウトは益々不安になる。会いたいのに会いたくないという複雑な気持ちが胸を苦しくさせた。
数分間悩んだ末、ユウトは腹をくくった。そうだ、これは単なる夢だ、自分が彼女に会いたいという欲望が夢になっただけなんだと考えると心が落ち着いた。
顔をマッサージしてフードコートの扉を開けテーブルにふさぎ込んでいる彼女に近づくとユウトは目を疑った。
(本当に夢だよな?)
彼女の前には自分が食べていたカレーライスの食べかけがそのまんま置かれていた。
だから夢だからおかしくはないだろと思うかもしれないが違うんだ。
よく考えたら今日一日手首に付けているアクセサリーがなくなっていたことに今気づいた。
自分の食べかけのカレーライスの近くで眠っている彼女は右手で自分の何年も前に無くしたアクセサリーを握っていた。
間違いない自分のだ。
何年も身に着けていたアクセサリーのどこに傷があるのか自分ではよくわかっている。
心臓の鼓動が激しくなる。
彼女は目を覚まし目をこする。
ユウトに気づいた彼女は驚きのあまり両手で口をふさいだ。
「え、こ、これって夢なの?」
ユウトも何がどうなっているか分からない。これは夢じゃないのか?
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