欲
帰宅する前にご飯を食べなくてはならない。
今日は夢といい、先ほどの家族といい、不思議なことばかりだ。いつもの牛丼特盛を辞めて行きつけの店以外で夜ご飯を食べることにした。
途中で下車して市内を歩き回った。
夜の繁華街では人間が人間に飲み込まれる姿を見ることができる時がある。会社の先輩と後輩が居酒屋から出てきた。
「よっしゃ、もう一軒行くぞ!お前も行くよな!」
「ま、まだ飲むんですか?・・・分かりました」
本当はこりごりしている後輩だが身分的に各上の先輩の言うことを断れず、先輩の欲にそのまま飲み込まれていった。
次はキャッチのお兄さんが青年二人組に話しかける。
「お兄さんたち、可愛い子と一緒に呑まない?」
「いやー、いいです」
「今なら特別に2000円で飲み放題だよ」
「え!めっちゃ安いじゃん!じゃあ行こうぜ」
「う~ん・・・そうだな!いこいこ!」
最初に断っていた青年も金額の安さに飲み込まれた。
どうみてもぼったくりが見え見えだ。2000円は自分たちの分だけで女の子が飲むドリンクは別などという手法でお金が青年たちから吸い取られるだろう。
その前に椅子に座っただけで5万円という可能性がある。まあキャッチのお兄さんは一応嘘はついていないな。
人間が人間に飲み込まれないようにするには自論ではあるが自分自身の欲を持つことだと思う。
俺には答えを見つけるという欲がある。
だから18歳の時に大切なものを失っても答えを見つけるという欲が明日を生きる何かになっていたのだと思う。
そしてもう一つ自分には新たな欲が自分の中で生まれ始めていた。
それは夢で出てきた彼女にもう一度会いたい。だから生きる気力がさらに芽生えた。
今夜は街中の定食屋で焼き肉定食に瓶ビールを頼みお腹を満たした。
この時ユウトは頭の片隅で今夜寝るときにあの夢を見れることを願っていた。
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