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VS 王国第一騎士団団長

アルバートの指示により、ダメージ転換装置が起動される。


ダメージ転換装置により、戦う両者は肉体的ダメージを受けることなく、精神的疲労のみ受ける。また、肉体的に致命傷を受けると、意識喪失となるため、寸止めで行う模擬戦よりも、実践的な動きができる。

唯一の欠点といえば、この装置専用の装備を使う必要があることだろう。



アルバートは、身の丈ほどある大剣を。ライネルは、シンプルに長剣を。

各々が自らの獲物を手に取り、フィールドで相対する。


この戦いを見守るのは、ライネルを案内してくれた騎士と、王族専用の観客席からこっそり見ている三人の合計四人である。


だんだんと空気が張り詰め、限界点に達した瞬間、二人はほぼ同時に駆け出して、フィールド中央で激突する。


そして、一合目から、学園ではまず見れないような高度な試合が始まることを、見守っている四人に示したのであった。カサンドラ魔法学園に入学前の10代前半の子供が、王国最強の騎士に互角以上の戦いを繰り広げるとは思ってもいなかったのだ。



一合目からさらに高速で数回剣で斬り合うと、一旦両者が下り、フィールドに静寂が訪れる。


「これぐらいはなんてことないという顔だな、ライネル」


構えはとかずに、対峙したまま、アルバートは口を開く。


「次からはもっと速度を上げましょうか?」

「ふっ。こいつ。言うではないか」


今回の速度がライネルの限界なら、この勝負の軍配はアルバートに簡単に上がってしまう。

ライネルが速度で相手を翻弄するタイプなのに対して、アルバートは、一撃の威力が大きいアタッカー。ライネルが速度で上回れないなら、そもそも勝ち目など存在しないのだ。



剣士としての直感が伝えてくる、この勝負に対する期待からか、二人の口元は緩み、かすかに笑っていた。


「「はぁぁっ!!!」」


二人は再び、中央で剣を合わせるが、先ほどとは違い、鍔迫り合いはおこらなかった。


ライネルが自分のスタイルである、スピード重視の戦い方に切り替えたのだ。

ここは学園最大のコロシアム。広大のフィールドである以上、スピードの出し過ぎで戦いにくいことなどありえない。



かつての()()により失われたとされる、古代剣術の中でも最強と言われている「ノヴァク流」。それをライネルは使用する。速さと重さ、その両方を極めたこの剣術は現代では再現不可能であると同時に、相対すれば勝利することは困難を極める。



ーーーーーーーーーーーーーー



()()()()、それは精霊歴という暦が原因となったものである。




突如現れた邪神に人類は生活圏を侵略され、人口は急速に減少していった、絶望に満ちた戦い。明日を生きることすら難しかったかの絶滅戦争は、七英雄と呼ばれる者達によって、邪神を辛くも封印することで集結した。しかし、人類に大きな爪痕を残し、その犠牲は計り知れなかった。



最終局面、人類は生活圏を初期の頃に比べてると、その規模はやく1%にも満たないほど、縮小させていた。


邪神に決定打を加えるべく結成された決死隊は三百人。その中には七英雄もいたが生還者はわずか五人。七英雄も三人しか生き残ることができなかった。


初代精霊王、ネフィリア・エンテラルト。

初代アルストラ王国国王、アレキサンドル・シュヴァルツ・フォン・アウストラ。

初代アルストラ王国近衛騎士団団長、ユージーン・ノヴァク。



志半ばで散っていった、四人の七英雄は歴史に名を遺し、その半生は後世に語り継がている。






ーーーーーーーーーーーーーー

本気を出したアルバートと剣を交えるライネルは、一撃離脱を繰り返し、その度にアルバートの死角から攻撃を仕掛けていた。しかし、その全てをアルバートは完全にいなしてみせた。


(さすが、王国最高の騎士だ。完全に死角に回り込んでるのに、完全に対応されてる.........)



ライネルは悔しかったが、同時に興奮もしたいた。この最高の騎士ともっと剣を交えたいと!


剣を交えていく中で思考は加速していく。だが、経験の差ではアルバートに軍配が上がり、ライネルは読みを外され、アルバートの罠へと誘導されていたのだった。

しかし、このことにライネルは気づけない。なぜなら、なかなか有効な攻撃を決めれず、心のどこかで焦りが生じていたからだ。



何度めかの死角からの攻撃、アルバートは辛くも反応しているかのようにみせたが、剣がぶつかった瞬間、ライネルは自分が誘われたことに気づいた。



(まずいっ!!わざと死角を作って誘い出したのか......)


剣が合わさる瞬間、力が受け流されていることを感じたライネルは、すぐに離脱しようとするが一度剣を振り始めた以上、そう簡単には止まらない。完全に無防備となった。ライネルにアルバートは上段から大剣を振り下ろす。


これをまともに受ければ、ライネルの負けは確定する。それを避けるために剣の勢いを殺さない様に体を無理矢理捻り、上段から振り下ろされる剣の側面に剣の柄を叩きつける。

すると、剣と剣がぶつかる甲高い音ではなく、鈍い音が響き渡る。



両者は勝負がこれではつかないことを悟り、一旦距離を取る。


「ライネルよ。次の一撃に全力を込めよう。その一撃でこの勝負をおわらせよう」


そう言うとアルバートは大剣を右肩に担ぐようにして力を溜める。


「わかりました。僕もこの一撃に全力を込めましょう」


今まで片手で持っていた剣を両手で持ち、顔の右横に構える。



空気が張り詰め、最高潮に達したそん瞬間、二人は同時に駆け出した。



二人が交差し、剣が交わり、闘技場内に甲高い音が響き渡った。



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