カサンドラ魔法学院編入一次試験
二話目です
大幅に編集させてもらいました
「やめてくれ、僕はまだ王の器じゃ無いよ」
シルフィードに言われたことが小っ恥ずかしくてライネルは顔を逸らし再び王都の城壁を見つめる。
「まだ、ってことはいづれは王の器に相応しくなるということかしら?」
「うん、そうなれる様に頑張ってみるつもりだけど……」
まだ12歳の子供に王の器かどうかを問うのは酷な話である。
シルフィードはそれぐらい知っている。何故それを問うたのかというと…………
「ライネル。安心しなさい。貴方は私達最上位精霊6人全員が認めた精霊王なのだから。だから、自信を持ちなさい。そして信じるの自分の力を」
「わかった。信じてみるよ。みんなに鍛えてもらった自分の力を」
そう、シルフィードはライネルのことをただ元気付けたかったのだ。
少し話が逸れてしまったが、ライネルのことを心配してのことなのだ。
そのことにライネルも気付き、心の中でシルフィードに感謝する。
直接言うのは何かと恥ずかしいらしい……………
「さあ、行きなさい。私達はいつでも貴方についているわ」
シルフィードはそれを最後に消えてしまう。
ミズガルド全域には魔力障壁という外部からの高密度な魔力を遮断するものが張られているので最上位精霊のシルフィードが実体化しているとはじかれてしまうのだ。
無論、中で再び実体化できるのだがライネルはまだ知らない。
もちろん、シルフィードはそのことを知ってて陰で見守っているのだとか。
シルフィードが消えたあと、ライネルは少し遠くにある王都城壁の検問を目指す。
遠目から見てもわかる行列だが、あれは商人達や冒険者用であり、ライネルなどの編入試験受験者とその付添人は一つ隣の簡易的な検問を使うこととなっている。
「よし、次の方」
5分ほど並びライネルの番となる。
「坊主も編入試験の受験者か?」
「はい」
付き添い人がいない受験者は珍しく、少し驚いた顔をする門番だが、すぐに気を取り直し手順通りの質問をした。
「なら、何か身分証を見せてくれ」
「はい、どうぞ」
ライネルはポケットから仮冒険証を取り出す。
これは元々ツーベルクで作っていたものだ。12歳になるまでは冒険者ギルドに仮登録しかできないが、これでも十分身分証明にはなる。
「よし、おーけーだ。編入試験、頑張れよ坊主」
仮冒険証でも問題はなかった様ですんなり通る事ができた。
「ありがとうございます!!」
ライネルはお礼をしっかりと言って王都ミズガルドへと入っていった。
早速ライネルはカサンドラ魔法学院へと向かい、受験登録をしようとしたところ、どうやら受験登録は必要なく、明日行われる編入試験に来てくれればそれで良いらしい。
そこで受験番号とともに筆記テストを受ける。
この時受験者の人数に関わらず上位50人が合格となるとのこと。
二次試験の説明は一次試験通過後に行うらしいので、ライネルは近くの宿屋に泊まることにした。
だったのだが、宿屋は満席であった。
「ちょっと舐めすぎてたな………」
なにを、とは言うまでもない。
カサンドラ魔法学園の編入試験は世界から人が集まる。貴族が大半だが、受験者だけではなく、商人や冒険者が集まるのだ。
人の多さは普段とは比べることは出来ない。
肩を落とし、どこかで空いてるところはないかととぼとぼと歩いているライネルを一人、気にかける人物がいた。
「どうしたのかな、少年。見たことは、宿屋競争に負けたのかな?」
そこに居たのは茶髪の人当たりの良さそうな笑みを浮かべた長身の青年であった。
「はい、おっしゃる通りです。まさかここまで人が集まっているとは思わなくて」
「毎年のこの時期には君みたいな子を何人か見かけるよ。おいで、ぼったくりの心配もなくて、安いけど、防犯がしっかりしててご飯が美味しいところに案内してあげる」
それだけ言って青年は歩いて行った。
返答を待たないあたり、ライネルが拒否するとは思っていないのだろう。
実際拒否などできなかった。
その後青年に案内された宿屋は本当に安くてご飯が美味しいところであった。
そして、試験当日となった。
カサンドラ魔法学園の門の前に行くと、まだ試験開始二時間前だというのに多くの人々が門の前に並んで受付を待っていた。
大半は貴族だが、中には普通の平民が混ざっていた。
服が普通の平民よりも薄汚れているのでおそらく家は裕福ではないのだろう。
そんなことを考えていると。
「ちっ、平民風情がこの栄光あるカサンドラ魔法学園に編入できると思ったら大間違いだぜ」
そんな小さな声が聞こえてきた。
平民を見下している様な言い振りは、アホ貴族の典型的な例とでも言えた。
(だいたい、ああいう子供に限って地味に出来そうなんだよな……)
ライネルの編入試験はまだまだ先は長い。
あれからさらに一時間ほどかかり、やっと試験会場に入ることができた。
試験会場は実際に授業で使われる講堂の様なもので100人ほど入ることができる。
席を一つ飛ばしにして座るので入ることができるのは実質50人だ。
そして、さらに一時間、とうとうカサンドラ魔法学園編入一次試験が始まった。
科目は算数、王国歴史学、魔法学、魔導学の四科目行われる。
算数は簡単な四則演算がほとんどだが、最後の方になると中学3年レベルにまで跳ね上がる。
そして、王国歴史学、これは大雑把に王国の歴史を聞くだけのもので、1番簡単と言われている科目である。
そして、運命の分かれ道がこの魔法学と魔導学である。
一言で言えばむずかしい。
半分解ければほぼ一次試験は通過間違いないと言われるほどだ。
試験は一科目一時間、それが四科目ある。
それを1日でやるため、12歳の子供にはなかなかに厳しものとなる。
精霊達に鍛えられたライネルにはその心配も無用のものだが。
算数から始まったテストは順調に進んでいき、魔導学のテストの最終問題まで行った時、ライネルの手は止まった。
『精霊について述べよ』
その簡潔な文章だけだが、回答スペースはテスト用紙の裏全部。
朝出会った人によるとこれは校長が楽しむためのものらしい。
(これはどこまで本気で書いていいのか悩むな)
精霊。それについてなら、もしかしなくともライネルは校長よりも知っているだろう。
ここで書きすぎるつもりはないが、一般的なことだけを書くだけではつまらない。
なのでライネルは一般的に知られてはいないが、校長なら知っているかも知れないようなことを書いてみることのしたのだ。
もちろん、裏面を埋め尽くす程度には文章は続いた。
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あまり書く時間が取れないので更新しても埋もれてしまうので………