表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

SSSSランクのSはどこまで増えるのか~無限増殖

作者: ふりがな

 とある現象は、その先がどうなるかを予測する事が出来る。

 数字で言えば、その入り口は収束の話になるが、それでは、この話を誰も読まないことだろう。


 Sランクの評価表記の由来は、日本の『特等』から来ているらしい。

 20世紀初頭辺りに始まった『特等』席、『特等』級の階級表現は、特等をいったん英語のspecialに言い変え、さらにSpecialの頭文字を取って『S』席や『S』級と表現方法を変える事となった。

 よって、例えばSS級を昔の表記方式に戻すと、特等特等級となる。


 このS表記の評価方法は国外ではマイナーだ。

海外での最高評価の表記は、単にA評価、AAA(トリプルエー)、3 star(三ツ星)、5 star(五ツ星)……これはAmazonの評価方式と同じ。

 legally、exotic、ゲームによっても最高評価は異なる。

 最近だと神級なんていうのも見かけるが、国外で宗教的な問題にならないのだろうか?


 疑問は色々尽きないが、最近評価S表記の数を重ねて、その数をやし続けるタイトルが増えつつある、このSはいったいどこまで増えていくのだろうか。

 実は、この疑問より遙かに重要な事がある。

 ランクSSS……の表記には、既に多くの人の認める価値があるという事だ。


 中にはそれを否定したい人も居ることだろう。

 人は真似が大好きな種族だ。

 誰かがSランク表記を真似し始めると、他の誰かもSランク表記を真似し始める。

 そうやってランクSの評価方式は、様々な作品に増殖し、浸透し続けていった。

 しかし、真に価値がある事柄は、真似されたから、価値があるのではない。

 Sランク表記が社会に溢れるようになり、多くの人がそこに価値があると認知するようになって、ようやく価値を持ち始めるのだ。


 ランクSSS……表記の価値を否定したいそこのあなたが、今ここに居るのも、この表現方法が既に価値を持ち始めている証拠だ。

 仮にランクSSSS表記が、本当に見るに値しない表現方法なら、あなたはけっしてこの記事を開く事は無い。

 答えはYES、その通りだ。


 Sを増やし続ける表現方法は、既に大きな価値を持ちつつあるのだ。

 これは我々が共有している大前提である。


 --真似は絶対によくない、オリジナルだけが本当の価値を持つ。

 それこそがランクSSSSSで、真のspecialなんだ。


 このように真似をよくないと思う人も中には居るだろう、しかし真似には価値があるのだ。

 例えば、恋人の何気ない会話の一字一句を、恋人の前で真似てみよう、短い呟きや素振りでも良い。

 恋人はそれを見てどう応えるだろうか?


 あなたいつも私の事を見ているのね、とそうなるのだ。


 そして、似たようなジャンルの作品には良質な手本があるからこそ、より良質な作品が生まれる。

 彼女を真似し見続けろ、あなたが彼女と上手くいきたければ……。


 真似には価値がある、情報を伝播してくれる、共感を広げてくれる、そして今の自分の振る舞いを再確認させてくれる。

 しかし、完全な真似を完成させた時、人は一旦満足し、それにちょっとしたアドリブを加わていくのだ。

 それが良い物であれ、悪い物であれ。


 人には、もう一つ、子供達から大人まで、誰もが夢中になる物がある。

 それが簡単な競争だ。

 社会には様々な所に競争が溢れている、コンビニエンスに溢れる商品は類似商品と戦っているし、出勤すればノルマを競う、一流のスポーツ選手が価値を持つのは、観衆が比較する中で競争して勝ち残ったからだ。

 何も無い所にランキングを作り出し、競い、争わせるのもそれだ。


 人は、大好きな真似に加えるちょっとしたアドリブを、大好きな競争にかける事によって、元はただの物真似だった物を、より価値の高い物に変えていく生き物だ。

 言うなれば、私達の本能の中に、真似と競争は組み込まれている。


 そうやってヒト社会は、発展し、拡大して来た。


 --でも、Sを一つ増やすだけの簡単な競争に、価値なんてなくない?


 ここに疑問を持つ人も居るだろう、それに私はこう答えよう。

 今ランクSSSSSS……表記を辞めたら、私たちは、明日からいったい何を競争したら良いんだ!机ドン!


 バブル経済のあらゆる基本原則は、誰でも参加出来る真似-模倣と簡単な競争だ。

 そうやってバブルは育っていく。

 真の価値とは、そうやってうず高く積み上げていく物なのだ。


 さて、バブルの話は脇に置いておこう。

 数字には不思議な魅力があるのを知っているだろうか。

 あなたが買い物に行くと1980円の値段の商品がある、もしくは98円の商品をよく見るハズだ。


 例えば、1から9の中で、8は大きくて弱い数字になる。


 数字は、大小の目安のための単純な基準だけではなく、数字によって異なる印象を持っている。

 1は強いと思う?2は弱い?

 ……それでは7は?


 これは割り切れる数と、その数字の大きさの大小が関係している。


 1から9の中でより強い数字は素数かつ数の大きい7。

 8は割り切れる数の多い、印象の弱くて大きい数なのだ。

 

 そして、0は通常無い物として認知される。


 --客は末尾の8や80や800を見て、数字が大きいけれども安い印象を持つ。


 このような数字の不思議な特質を避けるために、最高評価には素数と0を利用した方が良い。


 最高評価を、最も強い印象の数字にしないと、印象でどの数字が最高評価なのかがひっくり返るからだ。

 よって、Sを徐々に増やして行くなら1.2.3.5.7.10.11.13……の素数と0の組み合わせがベストとなる。


 そして最強数の論理からではなくとも、多くの人は、こう思っている事だろう。


 --S表記は面倒にならない、せいぜい3つか5つが限界だ、かつベストでもある。


 このような理知的とも思える判断は時に、今起こっている現象の説明を放棄させる。

 そう、バブルの説明の放棄だ。

 いくらSの数がこのまま増えても、結局は使いやすい3つか1つに戻って来る--多くて5つだろう。

 そうやってあなたは今日も競争に打ち勝つために、アドリブでSを一つ付け足す。


 ランクSSSSSSS--こいつが今最強の表現方法だ。

 これを否定する奴は、置いていかれるノロマだけ。

 なぜならば7ツは一桁の最強数、この上を行くなら、Sを3つも増やさなきゃならない、これで私は当分安泰だ。


 Sの増え続けたある時、とある人が、異常なSの増加にふと不安を覚え、誰かに訴え出るとしよう。


 --おいみんな、もうそろそろ止めにしないか?もう限界だろう。お前らいったいいくつSを積み上げるつもりなんだ?



 何言ってるんだ、Sはいくら積み上げたって良いもんだろう?それが今の常識だ。



 --実は俺の作品のタイトルにも『S』が一つ付いているんだ



 はっはっは。

 たったS一つかよ、お前はそれで何を不安に思えるんだ。

 Sランク評価の価値は崩壊してもせいぜい5が3で止まる、偉い奴も『みんな』そう言っている。

 俺の作品なんてSの数が293個付いてる、超売れ筋だぜ。

 お前はリスクも負えねえとんでもねえ負け犬だな。



 --頼む、子供が生まれたんだ。作品になにかあったら困るんだ。



 俺一人が止めても意味はねえよ。

 俺が止めても他の誰かがやる。

 もう誰にも止められねえ、知っているか?


 バブルに一旦どっぷり浸かったら、音楽が鳴っている内は、踊り続けなければならない。


 それが『参加者』の義務だってよ。



 --チューリップバブルの後、チューリップの値段がどうなったか、知っているのか?



 それを今考えても意味なんてねえだろ、悩むくらいならその作品にSを一つ増やせよ。 

 3つまでなら心配いらねえっての。

 俺が保証するぜ、偉い人もな!





 気付いたら、ほとんど全ての作品にS表記がつけられていた。

 タイトルにはSSSSSSSSSSSS……となんだか何を書きたいのかもう解らない事になっている。

 これが後の世に言われる狂乱のS世代である。

 そうして、ある日の月曜まで、Sの数は増え続けていったのである。

Sだけでページ埋まる前にやめるよね

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 超個人的Sの数活用法 Sが1個→普通に見る Sが複数→ほぼ見ない たて読みすると超SS→SSS
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ