Episode 99
早朝。
街の門の前にはマリベルとエリザ2人の姿、それと一台の馬車がとまっていた。
「おはようございますレイフォンさん」
「おはようレイフォン君」
「……おはよう、ございます」
にこやかに朝の挨拶をしてきた2人に対してレイフォンは顔色を悪くして挨拶を返した。
「レイフォンさん顔色が悪いですよ?」
「そのだな……言ってなかったんだけど、俺は馬車が駄目なんだ」
「もしかして、レイフォン君は馬車酔いをするの?」
「はい……」
そんなレイフォンにどうしたものかと考える2人。
「あっ、俺は歩く、いや走るんで大丈夫です」
「いやいや! レイフォン君それは流石に……」
「そうですよレイフォンさん……」
困った様子を見せるふたり。
そんなふたりにレイフォンは馬車に乗るくらいならと
「あっ、実は俺って魔法が使えるんです。だから強化魔法を使って走るんで気にしないでください」
魔法が使えることを告白した。
「レイフォンさんが魔法ですか?」
「それは凄い」
「まっそういうことなんで、ふたりは俺のことは気にしないで馬車に乗ってください。ほら、それに外の方が護衛もしやすいですし」
笑顔で話すレイフォン。
「わかりました。だけど……無理はしないでくださいねレイフォンさん」
「大丈夫だってマリベル」
ーーーー
レイフォン達が三人が街から出発してから約5時間後。
「レイフォンさん! 疲れてないですか? 大丈夫ですか?」
マリベルは馬車の中から何度目かとなる声かけを、馬車の横について走っているレイフォンに送った。
「大丈夫だって言ってるだろ! なんなら、このままイルガリア王国まで行ったていいんだぜ?」
汗ひとつかいていない余裕の表情を浮かべているレイフォン。
そんなレイフォンに馬車を操っているエリザは「何者なのだろう」かと思いはじめてきていた。
「レイフォンさんは! あれですか? 体力バカと言いますか魔力バカって言うんですか?」
「バカは余計だマリベル!」
「なら! レイフォンさんはアホなんですか?」
風が邪魔をするため、先程から互いにふたりは大きな声で話していた。
「それ! ただの悪口だろうが!」
「えっ?」
マリベルには悪気はなかった。
レイフォンは確信していた。
(こいつは天然だな……)
「お前ってさ! 天然だろ?」
「天然? ですか? 当たり前じゃないですか! 人は天然の生き物ですよ? おかしなことを言いますねレイフォンさんは」
「そうだな……聞いた俺が間違いだったよ……」
「何か! 言いましたかレイフォンさん?」
「なんでもねぇよ!」
ふたりのやりとりにエリザはクスクスと小さく笑っていた。
ーー
休憩の為に馬車をとめて休む3人。
「レイフォン君はあれだけ走ったのに全然疲れていないみたいね?」
スープを一口のんだあとにエリザはレイフォンに話しかけた。
「え? あっ、まぁ俺はずっと歩きで旅をしていましたから」
パンを口に含みながら言葉を返したレイフォン。
「歩きで旅ですか? けどレイフォンさんなら問題なさそうですね」
「まぁな。このペースで行ったらどのくらいにイルガリア王国にはつきそうなんだ?」
「このペースなら明日の夜には到着すると思います。そうよねエリザ?」
「そうですね姫様」
以外と近いと思ったレイフォン。
「そういえばマリベルって姫様だったな? 忘れてたけど。俺って普通にお前に話してるけど大丈夫なのか?」
「ふふっ、そのままで大丈夫ですよレイフォンさん。今さら敬語とかで話されたら気持ち悪いです」
「気持ち悪いってなお前……」
笑いながら答えたマリベルと微妙な表情を見せたレイフォン。
「エリザさん? こいつ大丈夫なんですか?」
「レイフォン君、私にも姫様に話すように普通に話していいのよ?」
「いや、年上の人に対してはいつも俺はだいたいこんな話し方なんで」
「そうなの? 残念」
残念そうには見えないニコッとした表情のエリザ。
「姫様のことだったわね。姫様は素直と言うか正直なだけなのよ」
「素直……正直……ですか……」
「なんですかレイフォンさん? その顔は?」
苦笑いを浮かべるレイフォンにマリベルが不服そうな表情で尋ねた。
「素直で正直な姫様は可愛いなって思っただけだよ」
感情のこもっていない言葉でレイフォンは適当に返したつもりだった。
だが
マリベルは
「わ、私が可愛いなんて……困ります……」
顔を赤くして両頬を抑えてモジモジとしていたのであった。
(やばっ、言葉をミスった)
お読み頂きありがとうございました。