Episode 97
レイフォンは宿屋に戻ると依頼のことをアシュリーに説明した。
マリベルがイルガリア王国の王女であることは伏せている。
「わかったわ。ならレイは長くて一週間ぐらいは戻ってこないのね?」
「えっ? あっ、はい」
「どうしたのレイ?」
「いや、依頼といっても俺は女性2人と旅をするわけでだな……」
すんなりと了承したアシュリーにレイフォンは戸惑っていた。
反対もしくは自分もついていくなどの反応を見せると思っていたからである。
しかし、実際は文句ひとつ言わずに頷いただけのアシュリー。
「レイはマリベルさんに何か変なことをする気なの? しないでしょ? もしかして……ヤキモチとか私に妬いてほしかったとか?」
「いや……そういうんじゃないけど……」
「なら大丈夫でしょ? 私はここで大人しくレイの帰りを待ってるわ」
アシュリーの表情は笑顔である。
目もちゃんと笑っている。
(何があったんだアシュに……)
おかしいと思ったレイフォン。
「旦那の帰りを大人しく待つのも妻の務めなのよレイフォン? だからわたくしも大人しく待ってるわ」
「お前は早く(魔国に)帰れ!」
話しかけてきたのはミリベアス。
ミリベアスは当然のように宿屋の部屋にいた。
そして、何故か顔の赤いアシュリー。
「まっ、とにかく。出来るだけ早くは帰ってくるさ。それにもしもーー」
『ーー何かあったらこうやって連絡するし、アシュに何かあってもペンダントが教えてくれるからな』
レイフォンは途中からアシュリーの頭に直接話しかけた。
「……うん」
アシュリーはいつも身に付けているレイフォンから貰ったペンダントを握り頷いた。
「何を目と目で通じあってるのかしら?」
ミリベアスから見るふたりは見つめ合ってる様にみえた。
「うるさいなお前は! さっさと帰れよ!」
「まっいいわ……二番目のわたくしは今日のところは大人しく帰るわ。またねアシュリー」
意味深な目でアシュリーを見たあとミリベアスは姿を消したのであった。
「なんだよあいつ……」
さらに顔を赤くさせているアシュリー。
「って! アシュどうしたんだよ? ミリベアスになにか言われたのか?」
「ち、違うの……」
「そうか?」
「うん……」
レイフォンには言えない乙女同士の話。
アシュリーはそれを思い出していた。
「つか、アシュとこうしてふたりきりって久しぶりに感じるな?」
「ふ、ふたりきり……」
目が泳ぐアシュリー。
「ん? やっぱりおかしいぞアシュ? 何かあったのか?」
「いや……あの……そのね……私とレイって幼馴染みよね?」
「ん? 当たり前だろ?」
モジモジするアシュリーと首を傾げるレイフォン。
「その……私とレイって幼馴染みの関係だけ?」
上目使いで聞いてくるアシュリー。
「今はな……」
「今は?」
「あれだよあれ? 俺はお前が、アシュが好きだ。これは今もこれからも変わらない。まずはこれをアシュにはわかっていておいてほしい」
「う、うん……」
「そして、俺はアシュとは幼馴染み以上の関係になりたいと思っている」
「それって……」
「まぁ~、俺とアシュが同じ考えかはわからないけど俺はお前とーーーー!?」
話の途中だった。
アシュリーはベッドに座るレイフォンに突然と飛びつき押し倒した。
そして
キスをした。
目を瞑っているアシュリー。
レイフォンは突然の出来事に驚き目を見開いている。
やがて、ふたりの唇が離れると
「私もレイと同じ気持ちなの……ううん、レイが思っている以上の関係に私はなりたいの……私はレイが好きなの!」
レイフォンの上に乗ったままのアシュリーは泣いていた。
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