Episode 96
依頼はイルガリア王国の現状確認からマリベルの護衛に切り替わった。
依頼を受けるのはレイフォン。
イルガリア王国に向かうのはマリベルとエリザと合わせて3人。
残りふたりの護衛には秘密にするらしい。
神様のことは知らない。
そして
「ーー話はわかった。マリベルが実は王女様でエリザさんがその護衛だったんだな」
マリベル達はあっさりと正体をレイフォンにばらした。
「……驚かれましたよね?」
「……まぁな」
嘘である。
レイフォンは知っていた。
「それで、俺は別にひとりだろうがなんだろうと報酬さえもらえれば、マリベルが姫様だろうとどうでもいいんだよ」
本当である。
「助かります」
「けど、マリベルは俺の実力知らないけどいいのか?」
「それはたぶん……大丈夫です」
何故かマリベルはそう感じていた。
「まっ、依頼だから何かあったら俺がお前を守ってやるけどな」
「えっ……それって……」
レイフォンの言葉に顔を赤くさせたマリベル。
「さ、三股ですか!?」
「なんでそうなるんだよ!」
「だ、だってレイフォンさんは女好きで……まさか!? エリザまで狙って……四股……」
「お前の頭はどうなってる! つか、誰が女好きだアホ!」
「ち、違うんですか!?」
今日一番の驚きの表情を見せたマリベル。
「違うわ! はぁ~……エリザさん? この姫様はどうなってるんですか? 頭のことですけど」
レイフォンはため息をついたあと、エリザに疲れたような表情で声をかけた。
「ふふふっ」
だが、エリザは楽しそうな表情で笑うだけであった。
「いやいや、笑ってないで答えてくださいよエリザさん!」
「ふふっ、私は姫様が楽しそうならそれで良いと思ってるわ」
「……答えになってないんですけど?」
「な、な、なら……レイフォンさんは男性好きなんですね?」
「どうしてそうなる! 俺はノーマルだ!」
大人しいと思っていたら違う想像を含ませていたマリベル。
ちなみにマリベルは純粋に思ったことを口に出しているだけである。
悪気は……たぶんない。
「……とりあえず、明日の朝出発で良いんだな?」
「えっ? 何の話ですかレイフォンさん?」
「お前が出した依頼だろ!」
「そ、そうでした……すみません……私ったら……つい」
赤くした顔を両手で恥ずかしそうに押さえるマリベル。
(ついってなんだよ。本当に大丈夫かこいつ……つか、エリザさんはまだ笑ってるし……)
簡単だと思った依頼が面倒な依頼になってきたと思いはじめてきたレイフォン。
「じゃあ、明日の朝に門の待ち合わせでいいな? なら、俺はもう行くからな?」
「あっ、はい。明日から"少しの間"よろしくお願いしますレイフォンさん」
「ふふっ、よろしくお願いねレイフォン君」
2人から言葉が返ってきたあと、レイフォンはギルドを出た。
そして思った。
(少しの間?)
「そうか! ふたりが同行ということは、俺ひとりでさっさと行って帰ってくるってわけにはいかないんだよな……しまったな……」
深くは考えていなかったレイフォン。
「面倒だな……アシュにも1度戻って説明しないといけないし……あいつ(ミリベアス)もたぶんまだいるだろうしな……」
とにもかくにも、依頼を受けたからにはやるしかないレイフォン。
レイフォンの宿屋に戻る足取りは重い。
アシュリーがレイフォンになにかを言ってることは間違いない。
依頼とはいえ、女性ふたりとのちょっとした旅になるのだから。
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