Episode 95
「ところで、マリベル達はギルドになにか用事だったのか?」
レイフォン達三人は場所をギルド内にある酒場に移動していた。
酒は飲んでいない。
レイフォンが現在いる国、イースラ王国でも飲酒が認められているのは十六歳からである。
「あっ、はい……少し依頼をお願いしにきたのですが……」
「依頼を受けてもらえる可能性は低いって言われたのよ。レイフォン君はどうしてギルドに?」
マリベルの言葉にエリザが補足するように話したあと、レイフォンに尋ねかけた。
「ああ、俺は一応これでも冒険者なんですよ。だから、ちょっと依頼を受けようかと思って」
「そうだったんですか? レイフォンさんは二股だけの人ではなかったんですね」
「……いい加減、それ忘れろよ。つか、二股なんて俺はしてねぇよ!」
レイフォン=二股が頭から離れないマリベル。
そんなマリベルにレイフォンは呆れていた。
「それで、レイフォン君はなにか依頼を受けたの?」
話を戻したのはエリザ。
「いや、まだです。ちなみにエリザさん達が依頼した内容ってのは?」
エリザはチラッとマリベルを見て、マリベルが頷いたのを確認すると答えはじめた。
「私達の古郷はイルガリア王国という小国なのだけど……魔族達に国が襲われて一ヵ月ぐらい前にこのイースラ王国のカサンの街に私達は逃げてきたの」
「なるほど」
「そして現在、イルガリア王国がどうなっているのか気になる私達は、現状を知るためにギルドにイルガリア現状確認の依頼をお願いしたのよ」
「それって現状確認だけでいいんですか? なら俺が受けますよ?」
話を聞いたレイフォンは楽そうだと思った。
だが
「き、危険です! 依頼を出した私が言うのはおかしいですけど……イルガリア王国にはまだ魔族が潜んでるのかも知れないんですよ!」
大きく声をあげたのはマリベル。
「えっ? 大丈夫だろ、それぐらい?」
「魔族をそれぐらいって……貴方は……レイフォンさんは魔族達の恐ろしさを知らないからそう言えるんです!」
確かにレイフォンは魔族の恐ろしさなど知らない。
というか、レイフォンにとって恐ろしさを感じる対象はアシュリーだけである。
「いや、お前は依頼を受けてほしいのか、欲しくないのかどっちだよ……」
「受けては欲しいですけど……レイフォンさんにはふたりの女性がいますし……もしも、レイフォンさんになにかあったら私は……」
申し訳ない、そんな表情のマリベル。
「つか……ふたりの女性ってなんだよ?」
「それは……レイフォンさんは二ーー」
「それは、もう言わなくていいからな? つか、言わせねぇ。とにかくだ……俺は大丈夫だから、その依頼は俺が受けてやるよ。報酬も良さそうだしな」
レイフォンはいつのまにかマリベルが出した依頼の依頼書を手にしていた。
「ですが……」
「イルガリア王国の現状を知りたいんだろ?」
悩むマリベル。
そして
「な、なら私も同行します! 私はイルガリア王国のことなら詳しいので!」
椅子から立ち上がり言い放ったマリベル。
「ひ、姫様それはなりません!」
設定を忘れてこちらも立ち上がったエリザ。
「大丈夫ですエリザ……以前に私は帰れないとは言いましたが、これはいい機会かも知れません。私は自分の目でイルガリア王国の現状を確かめたいのです」
「姫様……」
「なので、私はレイフォンさんに依頼をお願いして、それに私も同行いたします。私だけは不安なのでエリザもついてきてもらえますか?」
「はい……姫様」
膝をつくエリザ。
(こいつら……隠す気あるのか? つか、それなら依頼する必要ないだろ)
レイフォンは思ったのであった。
お読み頂きありがとうございました。




