Episode 91
朝、レイフォンが目覚めるとニッコリした表情のアシュリーの顔が目の前にあった。
「おはようアシュ」
「おはようレイ……それで説明してくれるかしら?」
「へっ? 何を?」
アシュリーの言葉の意味がわからない寝起きのレイフォン。
「へっ? じゃないわよ? 今レイに抱きついて眠っているのはミリベアスさんよね? どういうことかしら?」
ベッドから起き上がるアシュリー。
表情はニッコリとしたままだが、目は笑っていない。
「ミリベアス?」
レイフォンはゆっくりとうしろを振り向いた。
「はっ!?」
「レイフォン……むにゃむにゃ……」
そこにはレイフォンに後ろから抱きつき、気持ち良さそうに寝言まで言っているミリベアスの姿があった。
「違っ! つか、俺は何も知らない!」
慌ててミリベアスの手をどけて起き上がるレイフォン。
「何が違うのかしら?」
ミリベアスが魔族あることをアシュリーに伝えるか悩むレイフォン。
その時
「ん? おはようレイフォン。どうしたの? あら? アシュリーもおはよう」
ミリベアスが目元をこすりながら起き上がった。
「何がおはようだよ! つか、お前が何でここにいるんだ!」
「言ったじゃない……わたくし、レイフォンの側にいるって……」
頬を赤らめて答えたミリベアス。
「「はっ!?」」
レイフォンとアシュリーの反応は同時だった。
「レイ? どういうこと?」
レイフォンを睨み付けるアシュリー。
「ご、誤解だアシュ!」
「何が誤解なのかしら?」
「お前! ちゃんと説明しろよ!」
ミリベアスに焦った表情で説明を求めるレイフォン。
「お前じゃ説明しないわよ? ちゃんと名前を呼んでくれないと」
そっぽを向くミリベアス。
「ミリベアス頼む! 頼むから説明プリーズ!」
「プリーズ? まっ、しょうがないわね……わかったわ」
ミリベアスはアシュリーに説明をはじめた。
・アシュリーが眠っている間の深夜にレイフォンと戦ったこと
・その闘いでミリベアスがレイフォンに負けたこと
・結果、ミリベアスがレイフォンに興味を持ってしまったこと
魔族であることは明かさなかったミリベアス。
「……どうして戦いになったのかはわからないけど、とにかくミリベアスさんはレイの強さに興味をもってしまった、と言うことね?」
「らしい、な?」
レイフォンはよくわかっていない。
「そういうことになるわね」
説明をを聞いたアシュリーは大きなため息をついたあとに小さく呟いた。
「……レイのバカ……浮気者」
ーー
街の定食屋。
「はい、レイフォンあ~ん」
笑顔で自分の料理をレイフォンの口元に差し出すミリベアス。
「自分で食べれるわ!」
「レイ……私も……はい、あ~ん」
対抗するように、アシュリーも少し恥ずかしそうにしながらレイフォンの口元へと料理を差し出した。
「アシュもかよ!」
左右から2人の美少女に料理を差し出されるレイフォン。
端から見れば恨ましい状況ではあるのだが……。
レイフォンはそうは思っていなかった。
「ミリベアスは何をしたいんだよ! アシュもアシュでこいつに対抗しようとするな……まったく……」
疲れたような表情を見せるレイフォン。
「別にいいじゃない? ただの交流でしよ?」
「なんのだよ!」
「ミリベアスさんがやめないなら私もやめないわよレイ!」
「アシュ……お前まで……はぁー」
ため息をついたレイフォンは思った。
(どうしてこんな状況になってんだよ……)
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